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第一話 不器用な爆炎使いは、今日も盾役を焦がす

ー/ー



「――『フレア・キャノン』!」

 ルナの叫びと共に、青白い炎の塊が唸りを上げて放たれた。巨大な魔物の右肩を狙ったはずの炎は、まるで磁石に引き寄せられるようにわずかに逸れ、前線で盾を構えていたアインの、腰のすぐ横の地面に着弾した。

 ドォンッ!

 土煙が舞い上がり、熱風がアインの黒髪を乱す。アインは体勢を崩したが、すぐに立ち直った。盾には少し焦げ跡がつき、腰のあたりから軽い熱気が立ち上っている。

(リーシャの心内: はい、本日二回目の「恋焦がれボム」いただきました。今回はターゲットから逸れ角が過去最小。さすがルナ、アインへの情熱が上がると精度が上がるわね )

「またかよ、ルナ!」

 アインが呆れたように叫ぶ。

 ルナは顔を真っ赤にして、杖を強く握りしめた。

「ご、ごめんなさい! アイン! 手が滑ったの! 熱いって言ったらごめんなさい!」

(ザックの心内: 「手が滑った」って、アインを撫でる時の言い訳かよ。ていうか、いつもは魔物に向かって「爆殺しろ!」とか言うくせに、アインに当たると途端に語尾が弱くなるの、ホントにわかりやすいんだよな、鈍ちんルナちゃん )

 魔物を退け、戦闘が一段落つくと、アインは焦げた盾を地面に立てかけた。

「はぁ……。お前の魔法、威力は十分すぎるほどあるんだから、せめてこっちには当てるなよな。さすがに全身焦げ臭い」

「う……。弁償する! 新しい盾を買うまで、私のパンをあげるから!」

 ルナはそう言って顔を俯かせた。

(アルクの心内: いや、ルナ。アインはパンじゃなくて、お前の素直な好意を待っているんだがな。そしてアイン、盾よりもその天然な頭をどうにかしろ。お前も大概だぞ )

「いや、いいよ。どうせまた当たるし」

 アインはそう言うと、ルナの前にしゃがみ込み、地面に落ちた杖を拾い上げた。

「……でもさ、ルナ」

 アインがふいに真面目な声を出した。

「なんで俺ら、お前を責めないんだと思う?」

「それは……私が必死に謝るから……?」

(ザックの心内: そうそう。謝罪が可愛いから許される……ってわけねーだろ! 違う! )

「それもあるけどさ」

 アインは少し笑いながら、杖の持ち手をルナに差し出した。

「お前の魔法、俺に当たる時だけ、ちょっとだけ威力が落ちてる気がするんだよな」

 ルナはハッとして顔を上げた。

(リーシャの心内: 「ちょっとだけ威力が落ちてる」じゃないわよ、アイン。あの爆炎、周囲の熱量を一瞬で愛の力で中和してるわよ。解析結果から言えば、あれは一種の特殊なバリアよ )

「だから、お前が俺に魔法を向ける時、本当の殺意を込めてないって、皆知ってるんだ」

(アルクの心内: 本当の殺意どころか、お前への好意が溢れて制御不能になっているだけなんだ。ああ、早く気づいてやれ、この鈍ちん二人組め )

 ルナはついに、アインの目を見ることができなくなり、叫んだ。

「だ、だまれ! ばか! そんなわけないでしょ! 私はあんたを! あんたのその鈍い頭を! 焼き尽くしてやりたいのよ!」

 ルナの全身から、今度は本物の怒りのような、しかしどこか甘いオレンジ色の炎が立ち上った。そして、手に持った杖を、魔物とは逆方向の空に向けて一閃した。

 炎の塊は遥か上空で爆発し、まるで巨大な花火のように散っていった。

 アインは爆音を聞きながら、その大きな花火を見上げ、そしてニヤリと笑った。

「ほらな。今日も俺には当たらなかった」

(ザックの心内: そうそう、花火だ、花火。夜空に打ち上がる「アイン大好き」花火だ。綺麗だね、ルナ )

(リーシャの心内: あの花火、いつもアインの頭上で爆発するのよね。……ルナの脳内では、アインの頭が魔物の代わりなのかしら )

 ルナは口をきつく結び、アインから顔を背けた。その心の中では、爆発した炎よりも激しい「好き」という熱がくすぶっていた。

 パーティーの誰もが、この不器用な爆炎使いが、盾役の彼を特別な目で見ており、誤射が制御不能な恋心の現れであることを知っている。そして、彼らがこの甘くて熱い痴話げんかを見るのが、遠征のささやかな楽しみであることを。

(――次こそは、ちゃんと魔物に当てるんだから……!)

 ルナはそう心に誓うが、次に魔物と対峙した際、ルナの攻撃魔法は、またしてもアインの足元を焦がすことになるのだった。そして、パーティーメンバーの心内ツッコミも、また再開されるのだった。


(一応、完)

※つづきも見たい方はこのままどうぞ!






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「――『フレア・キャノン』!」
 ルナの叫びと共に、青白い炎の塊が唸りを上げて放たれた。巨大な魔物の右肩を狙ったはずの炎は、まるで磁石に引き寄せられるようにわずかに逸れ、前線で盾を構えていたアインの、腰のすぐ横の地面に着弾した。
 ドォンッ!
 土煙が舞い上がり、熱風がアインの黒髪を乱す。アインは体勢を崩したが、すぐに立ち直った。盾には少し焦げ跡がつき、腰のあたりから軽い熱気が立ち上っている。
(リーシャの心内: はい、本日二回目の「恋焦がれボム」いただきました。今回はターゲットから逸れ角が過去最小。さすがルナ、アインへの情熱が上がると精度が上がるわね )
「またかよ、ルナ!」
 アインが呆れたように叫ぶ。
 ルナは顔を真っ赤にして、杖を強く握りしめた。
「ご、ごめんなさい! アイン! 手が滑ったの! 熱いって言ったらごめんなさい!」
(ザックの心内: 「手が滑った」って、アインを撫でる時の言い訳かよ。ていうか、いつもは魔物に向かって「爆殺しろ!」とか言うくせに、アインに当たると途端に語尾が弱くなるの、ホントにわかりやすいんだよな、鈍ちんルナちゃん )
 魔物を退け、戦闘が一段落つくと、アインは焦げた盾を地面に立てかけた。
「はぁ……。お前の魔法、威力は十分すぎるほどあるんだから、せめてこっちには当てるなよな。さすがに全身焦げ臭い」
「う……。弁償する! 新しい盾を買うまで、私のパンをあげるから!」
 ルナはそう言って顔を俯かせた。
(アルクの心内: いや、ルナ。アインはパンじゃなくて、お前の素直な好意を待っているんだがな。そしてアイン、盾よりもその天然な頭をどうにかしろ。お前も大概だぞ )
「いや、いいよ。どうせまた当たるし」
 アインはそう言うと、ルナの前にしゃがみ込み、地面に落ちた杖を拾い上げた。
「……でもさ、ルナ」
 アインがふいに真面目な声を出した。
「なんで俺ら、お前を責めないんだと思う?」
「それは……私が必死に謝るから……?」
(ザックの心内: そうそう。謝罪が可愛いから許される……ってわけねーだろ! 違う! )
「それもあるけどさ」
 アインは少し笑いながら、杖の持ち手をルナに差し出した。
「お前の魔法、俺に当たる時だけ、ちょっとだけ威力が落ちてる気がするんだよな」
 ルナはハッとして顔を上げた。
(リーシャの心内: 「ちょっとだけ威力が落ちてる」じゃないわよ、アイン。あの爆炎、周囲の熱量を一瞬で愛の力で中和してるわよ。解析結果から言えば、あれは一種の特殊なバリアよ )
「だから、お前が俺に魔法を向ける時、本当の殺意を込めてないって、皆知ってるんだ」
(アルクの心内: 本当の殺意どころか、お前への好意が溢れて制御不能になっているだけなんだ。ああ、早く気づいてやれ、この鈍ちん二人組め )
 ルナはついに、アインの目を見ることができなくなり、叫んだ。
「だ、だまれ! ばか! そんなわけないでしょ! 私はあんたを! あんたのその鈍い頭を! 焼き尽くしてやりたいのよ!」
 ルナの全身から、今度は本物の怒りのような、しかしどこか甘いオレンジ色の炎が立ち上った。そして、手に持った杖を、魔物とは逆方向の空に向けて一閃した。
 炎の塊は遥か上空で爆発し、まるで巨大な花火のように散っていった。
 アインは爆音を聞きながら、その大きな花火を見上げ、そしてニヤリと笑った。
「ほらな。今日も俺には当たらなかった」
(ザックの心内: そうそう、花火だ、花火。夜空に打ち上がる「アイン大好き」花火だ。綺麗だね、ルナ )
(リーシャの心内: あの花火、いつもアインの頭上で爆発するのよね。……ルナの脳内では、アインの頭が魔物の代わりなのかしら )
 ルナは口をきつく結び、アインから顔を背けた。その心の中では、爆発した炎よりも激しい「好き」という熱がくすぶっていた。
 パーティーの誰もが、この不器用な爆炎使いが、盾役の彼を特別な目で見ており、誤射が制御不能な恋心の現れであることを知っている。そして、彼らがこの甘くて熱い痴話げんかを見るのが、遠征のささやかな楽しみであることを。
(――次こそは、ちゃんと魔物に当てるんだから……!)
 ルナはそう心に誓うが、次に魔物と対峙した際、ルナの攻撃魔法は、またしてもアインの足元を焦がすことになるのだった。そして、パーティーメンバーの心内ツッコミも、また再開されるのだった。
(一応、完)
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