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第11話 忍びの少女、琥珀と鬼との再戦 -1

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一夜があけた。
一変して穏やかな朝だった。

清々しい朝日に照らされた森の中を、太郎と黒鉄は再び歩き始めていた。夜明けの冷たさが残る空気は、朝露に濡れた木々の葉の匂いを運び、肺腑を満たす。木々の間からは、朝日が細い光の筋となって降り注ぎ、地面にきらめく朝露を照らし出していた。

遠くからは、まだ眠りから覚めきらない鳥たちが、さえずり始める。その音は、昨日までの嵐の喧騒が嘘であったかのように、穏やかに響き渡る。


彼らの足取りは、昨日までの激戦による疲労を微塵も感じさせず、力強く、前向きな決意に満ちていた。
一歩一歩、土を踏みしめる音が、彼らの固い意志を物語る。

太郎の瞳には、もはや力の暴走への恐怖の色はなく、澄み切った朝の光を映し、確かな自信が宿っている。彼の表情は、まるで夜明けの空のように、一点の曇りもない。

隣を歩く黒鉄の顔にも、若様を支えることへの揺るぎない誇りと、共に戦うことへの覚悟が刻まれていた。彼女の琥珀色の瞳は、太郎の横顔を時折見上げ、その決意を自らのものとして受け止めているようだった。

「黒鉄、準備はいいか?今度こそ、あの鬼を討つぞ。もう、迷いは、どこにもない」

太郎の声は、森の静寂に響き渡る。その声には、昨夜の洞窟での気づき、そして黒鉄との誓いが、確かな自信となって込められていた。彼は、槍の柄を握りしめ、その感触を確かめる。

「いつでも、若様。この身、若様のために。昨夜の誓い、決して違えませぬ」

黒鉄は、迷いなく応えた。彼女は腰の刀にそっと触れ、その冷たい感触が、彼女の決意を一層強固にする。彼女の琥珀色の瞳は、太郎の背中を見つめ、その決意を支えるかのように輝いていた。その視線には、若様への深い忠誠と、そして、秘めたる愛情が宿っていた。二人の間には、言葉以上の、確かな信頼が流れていた。

再び、あの鬼と対峙する時が来た。

森の奥深く、昨日と同じ場所。しかし、その空気は昨日よりも一層重く、湿った土と、腐敗した木の葉、そして鬼の瘴気が混じり合った、不快な匂いが、あたりに満ちている。

鬼は、太郎たちを待ち構えていたかのように、その巨体を横たえていた。昨日の激戦で負った傷跡が、その醜悪な体表に生々しく残っている。特に、太郎の槍が貫いた脇腹の傷口は、まだ完全に塞がっておらず、そこから不快な瘴気が、より一層強くあたりに漂っていた。

鬼の瞳は、血走っており、その視線は、まるで獲物を狙う猛獣のように、太郎と黒鉄を捉えていた。その眼差しには、昨日味わった屈辱と、彼らへの深い憎悪が明確に宿っている。

「また来たか、人間どもめ!懲りない奴らだ!昨日の屈辱、今日こそ晴らしてやる!今度こそ、骨まで食い尽くしてやるぞ!貴様らの血肉を、この羅生門の糧としてくれるわ!」

鬼が、下卑た笑みを浮かべながら、森の木々を震わせるほどの咆哮を上げた。
その声には、明確な殺意と、飢餓感が込められている。
鬼の巨体が、ゆっくりと、しかし確実に、彼らに向かって動き出す。地面が微かに揺れる。

「そうはさせない!お前のような鬼に、これ以上好きにはさせない!父の仇、そして村の者の無念を、お前のような下級鬼に踏みにじらせはしない!貴様のような悪しき存在は、この世から消え去るべきだ!」

太郎は、怒りに燃える瞳で鬼を睨みつけ、父から受け継いだ槍を構えた。その槍の切っ先は、微かに桃色の光を宿している。その光は、鬼の瘴気を払うかのように、清らかな輝きを放っていた。彼の全身から、静かながらも確かな神気が漲り始める。

「若様、お任せを!この黒鉄、若様の道を開きます!」

黒鉄は、太郎の言葉に呼応するように、腰の二本の刀を抜き放った。その刀身が、朝日に鈍く輝く。彼女は、太郎の右側面へと素早く回り込み、鬼の注意を引くように一歩踏み込んだ。その足音は、土の上を滑るように軽やかだった。彼女の構えは、完璧だった。

「はは!小賢しい!だが、無駄だ!貴様ら二匹ごときが、この我に敵うと思うか!」

鬼は、黒鉄の動きを嘲笑うかのように、巨大な腕を振り下ろした。その爪は、まるで鋭利な岩の刃のようであり、風を切り裂く轟音を立てて、黒鉄の頭上へと迫る。その一撃は、大地を揺るがすほどの破壊力を持つ。周囲の木々が、その風圧で大きく揺れる。

「くっ…手強い!連携を崩すな、若様!」

黒鉄は、瞬時に体勢を低くし、両手の刀を交差させて鬼の腕を受け止めた。甲高い金属音が森に響き渡り、彼女の足元には、衝撃で土が抉れる。
腕に走る痺れに顔を歪ませながらも、彼女は一歩も引かない。
その体は、まるで鋼鉄の盾のように、鬼の猛攻を受け止めていた。彼女の足が、地面に深くめり込む。

その隙を太郎は見逃さなかった。

黒鉄が鬼の攻撃を受け止めている間に、太郎は神速の動きで鬼の側面へと回り込み、槍を突き出した。
槍の切っ先が、桃色の光を帯びて、鬼の脇腹、昨日の傷口へと吸い込まれるように深く抉る。
その一撃は、鬼の体内に深く食い込んだ。

「ぐあああああ!小僧め、よくも…!この痛みを…忘れぬぞ!」

鬼が、苦痛に叫び声を上げる。その巨体が、大きく揺らぎ、バランスを崩した。その隙に、黒鉄は体を翻し、鬼の腕の下を潜り抜ける。彼女の動きは、まるで水のように滑らかだった。

「若様、鬼の左足が止まりました!この隙に!」

黒鉄が、素早く太郎に指示を飛ばす。彼女の琥珀色の瞳は、鬼の動きのわずかな変化も捉えていた。その声には、冷静な判断が宿っている。

「よし!【真槍・桃紋閃】!」

太郎は、鬼のバランスが崩れたその瞬間を狙い、槍に神の力を集中させた。槍の切っ先から放たれる桃色の光が、さらに輝きを増し、鬼の左足の関節めがけて、稲妻のように突き刺さる。その光は、鬼の肉を焼き焦がすかのように、激しい熱を放っていた。

「ぐおおおおお!貴様ら…!この我に、二度も同じ手を使うとは…!」

鬼は、激痛にのたうち回り、その巨体が大きく傾いだ。森の木々が、鬼の動きに合わせて大きく揺れ、枝が折れる音が響く。地面が揺れ、小石が跳ねる。






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一夜があけた。
一変して穏やかな朝だった。
清々しい朝日に照らされた森の中を、太郎と黒鉄は再び歩き始めていた。夜明けの冷たさが残る空気は、朝露に濡れた木々の葉の匂いを運び、肺腑を満たす。木々の間からは、朝日が細い光の筋となって降り注ぎ、地面にきらめく朝露を照らし出していた。
遠くからは、まだ眠りから覚めきらない鳥たちが、さえずり始める。その音は、昨日までの嵐の喧騒が嘘であったかのように、穏やかに響き渡る。
彼らの足取りは、昨日までの激戦による疲労を微塵も感じさせず、力強く、前向きな決意に満ちていた。
一歩一歩、土を踏みしめる音が、彼らの固い意志を物語る。
太郎の瞳には、もはや力の暴走への恐怖の色はなく、澄み切った朝の光を映し、確かな自信が宿っている。彼の表情は、まるで夜明けの空のように、一点の曇りもない。
隣を歩く黒鉄の顔にも、若様を支えることへの揺るぎない誇りと、共に戦うことへの覚悟が刻まれていた。彼女の琥珀色の瞳は、太郎の横顔を時折見上げ、その決意を自らのものとして受け止めているようだった。
「黒鉄、準備はいいか?今度こそ、あの鬼を討つぞ。もう、迷いは、どこにもない」
太郎の声は、森の静寂に響き渡る。その声には、昨夜の洞窟での気づき、そして黒鉄との誓いが、確かな自信となって込められていた。彼は、槍の柄を握りしめ、その感触を確かめる。
「いつでも、若様。この身、若様のために。昨夜の誓い、決して違えませぬ」
黒鉄は、迷いなく応えた。彼女は腰の刀にそっと触れ、その冷たい感触が、彼女の決意を一層強固にする。彼女の琥珀色の瞳は、太郎の背中を見つめ、その決意を支えるかのように輝いていた。その視線には、若様への深い忠誠と、そして、秘めたる愛情が宿っていた。二人の間には、言葉以上の、確かな信頼が流れていた。
再び、あの鬼と対峙する時が来た。
森の奥深く、昨日と同じ場所。しかし、その空気は昨日よりも一層重く、湿った土と、腐敗した木の葉、そして鬼の瘴気が混じり合った、不快な匂いが、あたりに満ちている。
鬼は、太郎たちを待ち構えていたかのように、その巨体を横たえていた。昨日の激戦で負った傷跡が、その醜悪な体表に生々しく残っている。特に、太郎の槍が貫いた脇腹の傷口は、まだ完全に塞がっておらず、そこから不快な瘴気が、より一層強くあたりに漂っていた。
鬼の瞳は、血走っており、その視線は、まるで獲物を狙う猛獣のように、太郎と黒鉄を捉えていた。その眼差しには、昨日味わった屈辱と、彼らへの深い憎悪が明確に宿っている。
「また来たか、人間どもめ!懲りない奴らだ!昨日の屈辱、今日こそ晴らしてやる!今度こそ、骨まで食い尽くしてやるぞ!貴様らの血肉を、この羅生門の糧としてくれるわ!」
鬼が、下卑た笑みを浮かべながら、森の木々を震わせるほどの咆哮を上げた。
その声には、明確な殺意と、飢餓感が込められている。
鬼の巨体が、ゆっくりと、しかし確実に、彼らに向かって動き出す。地面が微かに揺れる。
「そうはさせない!お前のような鬼に、これ以上好きにはさせない!父の仇、そして村の者の無念を、お前のような下級鬼に踏みにじらせはしない!貴様のような悪しき存在は、この世から消え去るべきだ!」
太郎は、怒りに燃える瞳で鬼を睨みつけ、父から受け継いだ槍を構えた。その槍の切っ先は、微かに桃色の光を宿している。その光は、鬼の瘴気を払うかのように、清らかな輝きを放っていた。彼の全身から、静かながらも確かな神気が漲り始める。
「若様、お任せを!この黒鉄、若様の道を開きます!」
黒鉄は、太郎の言葉に呼応するように、腰の二本の刀を抜き放った。その刀身が、朝日に鈍く輝く。彼女は、太郎の右側面へと素早く回り込み、鬼の注意を引くように一歩踏み込んだ。その足音は、土の上を滑るように軽やかだった。彼女の構えは、完璧だった。
「はは!小賢しい!だが、無駄だ!貴様ら二匹ごときが、この我に敵うと思うか!」
鬼は、黒鉄の動きを嘲笑うかのように、巨大な腕を振り下ろした。その爪は、まるで鋭利な岩の刃のようであり、風を切り裂く轟音を立てて、黒鉄の頭上へと迫る。その一撃は、大地を揺るがすほどの破壊力を持つ。周囲の木々が、その風圧で大きく揺れる。
「くっ…手強い!連携を崩すな、若様!」
黒鉄は、瞬時に体勢を低くし、両手の刀を交差させて鬼の腕を受け止めた。甲高い金属音が森に響き渡り、彼女の足元には、衝撃で土が抉れる。
腕に走る痺れに顔を歪ませながらも、彼女は一歩も引かない。
その体は、まるで鋼鉄の盾のように、鬼の猛攻を受け止めていた。彼女の足が、地面に深くめり込む。
その隙を太郎は見逃さなかった。
黒鉄が鬼の攻撃を受け止めている間に、太郎は神速の動きで鬼の側面へと回り込み、槍を突き出した。
槍の切っ先が、桃色の光を帯びて、鬼の脇腹、昨日の傷口へと吸い込まれるように深く抉る。
その一撃は、鬼の体内に深く食い込んだ。
「ぐあああああ!小僧め、よくも…!この痛みを…忘れぬぞ!」
鬼が、苦痛に叫び声を上げる。その巨体が、大きく揺らぎ、バランスを崩した。その隙に、黒鉄は体を翻し、鬼の腕の下を潜り抜ける。彼女の動きは、まるで水のように滑らかだった。
「若様、鬼の左足が止まりました!この隙に!」
黒鉄が、素早く太郎に指示を飛ばす。彼女の琥珀色の瞳は、鬼の動きのわずかな変化も捉えていた。その声には、冷静な判断が宿っている。
「よし!【真槍・桃紋閃】!」
太郎は、鬼のバランスが崩れたその瞬間を狙い、槍に神の力を集中させた。槍の切っ先から放たれる桃色の光が、さらに輝きを増し、鬼の左足の関節めがけて、稲妻のように突き刺さる。その光は、鬼の肉を焼き焦がすかのように、激しい熱を放っていた。
「ぐおおおおお!貴様ら…!この我に、二度も同じ手を使うとは…!」
鬼は、激痛にのたうち回り、その巨体が大きく傾いだ。森の木々が、鬼の動きに合わせて大きく揺れ、枝が折れる音が響く。地面が揺れ、小石が跳ねる。