@37話
ー/ー
赤坂離宮迎賓館を彷彿させる会場。フランス・ルネサンス様式におけるフランソワ1世様式。
ホワイエ(* ロビー)で顔合わせの挨拶を済ませたのなら、すぐに晩餐会、と言うわけもなく、アペリティフ(* フランス語で、夕食前に食欲を増進させる『食前酒』を指す)……メインの食事に入る前に少しおしゃべりをしながら乾杯し、軽いおつまみでリラックスする時間を持つ、フランスの文化でもあるアペリティフ。 それを促すように、当時流行った座面が前に開いたカクトワール(* お喋り椅子)が設けられてある。
音色は気が遠くなる思いがした。
晩餐会会場となる『風月の間』は主にフランスの宮殿をモデルにしており、家具や天井画なども多くはフランスから取り寄せられているという。豪華なシャンデリアもフランス製。一面板張りのシックで重厚感ある室内で柱などの直線や平行線を利用した、落ち着いた雰囲気の部屋には凛とした空気に満ちている。
化粧が落ちてしまうくらいの緊張の汗を浮かべながら、どうにか食事の席まで辿り着く。
社長の仕事とは永続的に、会社の未来を同じベクトルで仕事をするべくステークホルダーと共有し、大きな還元を考える。そのためにはヒト・カネ・モノ・情報という資源をインプットして、会社の方向性を決定していかなくてはならない。
パーティーでの人脈はその最たる仕事でもある。
「素敵なお嬢さんをお連れになられて……」
挨拶される人々からのせっかくの魔法の言葉も、お世辞にしか感じられない。なぜなら、他のレディーたちはみな、堂々としていてドレスに見合う輝きを発していたからだ。緊張と気後れから下手な愛想笑いしかできない。
側の一颯がそれらを慣れた所作でこなしていく。挨拶の時に初めて社長の七草一颯というフルネームを知った。
「食事のマナーは俺のを真似ればいいよ」
春の七草のように優しい穏やかな笑顔で癒そうとしている気持ちはよく伝わる。社長という重苦しい肩書からは似つかない。
一颯が安心を促してくれるものの、音色からすればそうもいかない。
席次が決まっているパーティーなので、ホワイエ(ロビー)での挨拶のときには視界に入るよう見守っていた瑞稀の姿がなくなっている。不安が一層増してくる。
コースのサーブが始まった……。
瑞稀は会場に料理が運び出されるのを見たとき、気付く。
(しまった! 俺としたことが……)
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赤坂離宮迎賓館を彷彿させる会場。フランス・ルネサンス様式におけるフランソワ1世様式。
ホワイエ(* ロビー)で顔合わせの挨拶を済ませたのなら、すぐに晩餐会、と言うわけもなく、アペリティフ(* フランス語で、夕食前に食欲を増進させる『食前酒』を指す)……メインの食事に入る前に少しおしゃべりをしながら乾杯し、軽いおつまみでリラックスする時間を持つ、フランスの文化でもあるアペリティフ。 それを促すように、当時流行った座面が前に開いたカクトワール(* お喋り椅子)が設けられてある。
音色は気が遠くなる思いがした。
晩餐会会場となる『風月の間』は主にフランスの宮殿をモデルにしており、家具や天井画なども多くはフランスから取り寄せられているという。豪華なシャンデリアもフランス製。一面板張りのシックで重厚感ある室内で柱などの直線や平行線を利用した、落ち着いた雰囲気の部屋には凛とした空気に満ちている。
化粧が落ちてしまうくらいの緊張の汗を浮かべながら、どうにか食事の席まで辿り着く。
社長の仕事とは永続的に、会社の未来を同じベクトルで仕事をするべくステークホルダーと共有し、大きな還元を考える。そのためにはヒト・カネ・モノ・情報という資源をインプットして、会社の方向性を決定していかなくてはならない。
パーティーでの人脈はその最たる仕事でもある。
「素敵なお嬢さんをお連れになられて……」
挨拶される人々からのせっかくの魔法の言葉も、お世辞にしか感じられない。なぜなら、他のレディーたちはみな、堂々としていてドレスに見合う輝きを発していたからだ。緊張と気後れから下手な愛想笑いしかできない。
側の一颯がそれらを慣れた所作でこなしていく。挨拶の時に初めて社長の|七草一颯《ななくさいぶき》というフルネームを知った。
「食事のマナーは俺のを真似ればいいよ」
春の七草のように優しい穏やかな笑顔で癒そうとしている気持ちはよく伝わる。社長という重苦しい肩書からは似つかない。
一颯が安心を促してくれるものの、音色からすればそうもいかない。
席次が決まっているパーティーなので、ホワイエ(ロビー)での挨拶のときには視界に入るよう見守っていた瑞稀の姿がなくなっている。不安が一層増してくる。
コースのサーブが始まった……。
瑞稀は会場に料理が運び出されるのを見たとき、気付く。
(しまった! 俺としたことが……)