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36:……教えてくれ

ー/ー



ぐんっと寒さが身に染みる明け方近く、うっすらと遠くの山から太陽の光が見え始めるころ……グラウは【チーニ村】の周辺の森にたどり着いた。初めてこの世界の異変に気付き、ここからすべてが始まったと言っても過言ではない場所だ。

スンスンっと周辺の匂いを探るグラウ。

冴えた空気が少し鼻先に刺さるか感覚を感じながらゆっくりと森の中を進んでいく。

「あぁ……なるほど……」

追い求める者の香りを微かに……重く汚れた血の匂いが隠していく。

自分から向かっていくことはないだろうと……きっと自分を待っているんだろうと……【チーニ村】を出た後の会話を思い出しながらグラウは森の奥深くへと進む。

『わっ!立派な木!子供しか見れない不思議な生き物がこっそり住んでそうですね!』
『……かなりの老木だが今もなおたわわに実り恵みを与えているんだな』
『わー!わー!でっかい(うろ)!!えい!……あ……』
『イサネ……』
『すみません……はまりました……助けてください……』

思わず笑みがこぼれた。
やっと安心できると。

「今度は抜け出せる……そうだろう?」

森の外からでも確認できる頭一つ飛びているその大木の根元……くるりと丸まってすぅすぅと小さな寝息を立てて眠っている輝くキツネ。

グラウはそっとその体に触れ、柔らかい毛並みと温かさを感じる。

「キュヒッ?」

近づいてきたことには気づかなかったものの、体に触れられればさすがに目を覚ます。

「まったく……獣の姿であるものの……獣らしさはないな」

くあぁっとあくびをしたキツネの頭をグラウは優しく撫でる……寝ぼけているのかわからないが気持ちが良かったのか、強く頭を押し付けて甘えてきた。

その反応に嬉しくなる……が……

「すまない……どうしたら元に戻るのか……教えてくれ」

声をかけるグラウを見つめながら首をかしげるキツネ……それにつられてグラウも首をかしげていく。

「……どうしたものだろう」
「キュルルル……?」

お互い不思議そうにしたまま数秒……スーッと吹いた風に混じる強い血の匂いを感じるグラウ。

「タイミングがいいのか悪いのか……いや……悪すぎるか……」

手を離し立ち上がったグラウを見上げるキツネはその顔をしっかりと瞳に写し……スッと立ち上がった。

「っ!?」
「フンッ……!」
「勇ましさは変わらないのだな……だが……今はもう加護も癒しも関係なくなっているだろう?だからさが――」

グラウのすぐ隣立って威嚇していたキツネは守る素振りをしたグラウのその声を遮りトントンッと体を駆け上がり、肩にちょこんと座ってグラウの顔を見る。

しっかりとした表情があるわけではないが……にっこりと笑顔になっている気がして……グラウは優しく微笑み返した。

次の瞬間……鼻と鼻がコツンっと触れた。

「なっ……?!」

白い煙のような、白い光のような……ボフッとグラウの目の前で炸裂し、目が眩む……それがどういうことかを理解するのは難しくはなかった。視認するよりも先に強く……愛しい人の匂いを感じたから。

「くちゅんっ!!……さ、さむ……」

イサネが【聖女】としてその力とその身を捧げて世界を鎮めた後、グラウの体に宿っていた加護も消えた。力が抜けた反動か……その場ですぐに倒れてしばらくの期間眠りについていた。
目が覚めた時……一番に聞きたかった声の主はそこにはいなかった……女神の慈悲を願うしかなかった。

そして今……聞こえた声の主を確かめる……ゆっくりと目を開き……

「……おはよう……イサネ……」

笑顔とも泣き顔とも言えない……だが、確実に嬉しさが溢れている優しい眼差しを向ける。

「おはようございます……グラウ様……えへへ」
「っ?!」
「あ……その外套(がいとう)お借りしてもいいですか……?」

先ずはお互いの顔を見ていたのだが……身長差のせいでグラウは視線を落としていた……イサネが一糸まとわぬ姿であることに気付き赤面し、見たこともない速さで外套(がいとう)を脱ぎイサネに巻き付けた。


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ぐんっと寒さが身に染みる明け方近く、うっすらと遠くの山から太陽の光が見え始めるころ……グラウは【チーニ村】の周辺の森にたどり着いた。初めてこの世界の異変に気付き、ここからすべてが始まったと言っても過言ではない場所だ。
スンスンっと周辺の匂いを探るグラウ。
冴えた空気が少し鼻先に刺さるか感覚を感じながらゆっくりと森の中を進んでいく。
「あぁ……なるほど……」
追い求める者の香りを微かに……重く汚れた血の匂いが隠していく。
自分から向かっていくことはないだろうと……きっと自分を待っているんだろうと……【チーニ村】を出た後の会話を思い出しながらグラウは森の奥深くへと進む。
『わっ!立派な木!子供しか見れない不思議な生き物がこっそり住んでそうですね!』
『……かなりの老木だが今もなおたわわに実り恵みを与えているんだな』
『わー!わー!でっかい|洞《うろ》!!えい!……あ……』
『イサネ……』
『すみません……はまりました……助けてください……』
思わず笑みがこぼれた。
やっと安心できると。
「今度は抜け出せる……そうだろう?」
森の外からでも確認できる頭一つ飛びているその大木の根元……くるりと丸まってすぅすぅと小さな寝息を立てて眠っている輝くキツネ。
グラウはそっとその体に触れ、柔らかい毛並みと温かさを感じる。
「キュヒッ?」
近づいてきたことには気づかなかったものの、体に触れられればさすがに目を覚ます。
「まったく……獣の姿であるものの……獣らしさはないな」
くあぁっとあくびをしたキツネの頭をグラウは優しく撫でる……寝ぼけているのかわからないが気持ちが良かったのか、強く頭を押し付けて甘えてきた。
その反応に嬉しくなる……が……
「すまない……どうしたら元に戻るのか……教えてくれ」
声をかけるグラウを見つめながら首をかしげるキツネ……それにつられてグラウも首をかしげていく。
「……どうしたものだろう」
「キュルルル……?」
お互い不思議そうにしたまま数秒……スーッと吹いた風に混じる強い血の匂いを感じるグラウ。
「タイミングがいいのか悪いのか……いや……悪すぎるか……」
手を離し立ち上がったグラウを見上げるキツネはその顔をしっかりと瞳に写し……スッと立ち上がった。
「っ!?」
「フンッ……!」
「勇ましさは変わらないのだな……だが……今はもう加護も癒しも関係なくなっているだろう?だからさが――」
グラウのすぐ隣立って威嚇していたキツネは守る素振りをしたグラウのその声を遮りトントンッと体を駆け上がり、肩にちょこんと座ってグラウの顔を見る。
しっかりとした表情があるわけではないが……にっこりと笑顔になっている気がして……グラウは優しく微笑み返した。
次の瞬間……鼻と鼻がコツンっと触れた。
「なっ……?!」
白い煙のような、白い光のような……ボフッとグラウの目の前で炸裂し、目が眩む……それがどういうことかを理解するのは難しくはなかった。視認するよりも先に強く……愛しい人の匂いを感じたから。
「くちゅんっ!!……さ、さむ……」
イサネが【聖女】としてその力とその身を捧げて世界を鎮めた後、グラウの体に宿っていた加護も消えた。力が抜けた反動か……その場ですぐに倒れてしばらくの期間眠りについていた。
目が覚めた時……一番に聞きたかった声の主はそこにはいなかった……女神の慈悲を願うしかなかった。
そして今……聞こえた声の主を確かめる……ゆっくりと目を開き……
「……おはよう……イサネ……」
笑顔とも泣き顔とも言えない……だが、確実に嬉しさが溢れている優しい眼差しを向ける。
「おはようございます……グラウ様……えへへ」
「っ?!」
「あ……その|外套《がいとう》お借りしてもいいですか……?」
先ずはお互いの顔を見ていたのだが……身長差のせいでグラウは視線を落としていた……イサネが一糸まとわぬ姿であることに気付き赤面し、見たこともない速さで|外套《がいとう》を脱ぎイサネに巻き付けた。