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第三部・第1章〜クラス内カーストでアウトサイダーのボクたちが動画投稿で人気配信者を目指す件〜④

ー/ー



「なにかしら、佐倉さん? グループ分けの結果に異論があるなら、受け付けるわよ」

 おっとりした口調で応じる部長の言葉に、モモカは笑顔で答える。

「いえ……()()()()()()()()()()、ワタシは、この組み合わせに、まっっったく不満はありません!」

 わざわざ、自分の方に視線を送りながら語る下級生の言葉に、シロは、露骨に表情を歪める。

(まったく……ふたりとも、少しは仲良くしろよ……)

 なぜ、ふたりが反発し合うのか――――――。

 オレには、()()()()()()()()()のだが、今後の円満なクラブ活動のためにも、彼女たちには、一刻も早く和解をしてもらいたい。

 それはさておき、モモカは、オレやシロの意向など、まるで意識していないかのように、語り続ける。

「今回のコンテストでは、自分たちが動画を制作することによるメリットとリスクが、あまりにも少ない気がするんです」

「リスクが少ない、というと……?」

 下級生の言い分に、疑問を感じたのだろう、鳳花(ほうか)部長が問い返すと、モモカは、自信に満ちた表情で答えた。

「お仕事の場面では複数の提案の中から、企画内容やコストなどを総合的に勘案し、依頼主が最も良いと判断した提案を行った業者が選ばれ、仕事が発注されると思うんですけど……一方で、広報内容を提案する側は、競争相手よりも良い提案を作るために、実作業やコストが発生しますし、お仕事が取れなければ、その努力は、まったくの無駄になっちゃいますよね?」

「えぇ……たしかに、そうね」

「実際のお仕事のように、具体的な報酬というメリットを得るのは難しくても、せめて、お仕事を取れなかった……つまり、制作した動画への投票数が一番少なかったグループには、なんらかのリスクを負ってもらうのは、どうでしょう?」

「それは、つまり――――――最下位のチームには、罰ゲーム的なモノを課す、ということ?」

「はい! そういうことです!」

 さすが、鳳花(ほうか)部長、話しの理解が早い、と言った感じで下級生は返事をするが、自分たちの身に降りかかることで、勝手に話しが進むのは困る。
 
 しかも、罰ゲーム的なモノを課される、というなら、なおさらだ。

「おいおい! モモカ、早まるな……」

 と、声を掛けようとすると、オレよりも先に、壮馬(そうま)が声を上げた。

「ちょっと、待ってよ佐倉さん! 罰ゲームをするなんて、今回の企画とは関係ないことじゃないか! それになにより、紅野(こうの)さんや天竹(あまたけ)さんは、広報部の部外者だ。二人をこんなことに巻き込むわけにはいかないよ!」

 さすがは、我が友人。一点のスキもない、正論だ。
 ただ、部外者という意味では、シロ……白草四葉も、広報部の部員ではないのだが、壮馬(そうま)の中では、シロは()()()()()()()()()()()()()()にカウントされていないのだろうか?

 オレが感じた疑問には、()()()()()も思うところがあったようで、すぐに手が挙がり、異論が挟まれる。

「はい! わたしも、広報部の部外者なのに、黄瀬クンから心配してもらえてないようなんですけど……ただ、わたし自身は、佐倉サンの提案に賛成してもイイかなって思ってます。なにか、モチベーションが上がることがないと、つまらないと思いますし……第一、()()()()()()ならなければイイんですよね?」

 不敵な笑みを浮かべながら、彼女は、モモカと紅野に視線を送る。
 なんで、こんなときだけ、モモカとシロは、意見が一致するんだ……。

 ただ、何にでも物怖じしない性格のふたりはともかくとして、壮馬の言うとおり、紅野(こうの)天竹(あまたけ)にまで迷惑を掛けるわけにはいかない。
 ここは、友人に同調し、前のめりになっているモモカとシロに、その提案を取り下げさせるべく、説得しようとしたのだが――――――。

「白草さんと佐倉さんが、そう言うなら、私も、その条件を受けようと思います!」

 クラスメートが発した予想外の一言に、

「「「えぇっ!?」」」

オレ、壮馬、そして、天竹(あまたけ)の声が重なった。
 
「ちょっと、ノア! どうしたの急に?」

紅野(こうの)さん! わざわざ、自分から、こんなことに首を突っ込んで行くことなんてないよ!」

 こんなふうに、 紅野(こうの)アザミと同じグループで動画を制作することになった天竹(あまたけ)と壮馬が、オレ以上の熱心さで、彼女に考え直すように、説得を試みようとするものの……。
 オレとともにクラス委員を務める女子生徒の意志は固く、生来の生真面目さゆえなのか、自分で決めたことを撤回するつもりは無いようだ。

「大丈夫だよ、(あおい)! 罰ゲームを受けるのは、私だけにしてもらうから……それに、自分たちのチームだけ罰ゲームなしなんて不公平でしょ?」

 こんなところにまで公平さを求める彼女の律儀な性格は、尊敬(リスペクト)に値するが――――――。

 映像編集の技術に長けた壮馬と組むことになるとはいえ、動画配信においては、同世代で国内屈指の存在と言って良いシロと、中学時代から、放送部で広報活動に慣れているモモカを相手に回すのは、あまりにもリスクが大きすぎるだろう。

 自分と同じグループでないとは言え、彼女の身を案じて、

「いや、公平か不公平かで言えば、今回は、そもそも、白草と佐倉(さくら)のふたりに有利な条件なんだから、紅野が同じ土俵に立つ必要なんてないと思うぞ」

と、再考するように促したのだが……。

「ふ〜ん……クロは、紅野さんの味方をするんだ」

「そうですよ! くろセンパイは、()()()と同じチームなんですから、まず、自分たちのことを考えて下さい!」

 右斜め前と左斜め前に立っているシロとモモカから、十字砲火を浴びてしまった。
 さっきもそうだが、こんなときだけ鉄壁の二遊間コンビが見せるような連携プレーを披露するのは、やめてくれ……。

 そんなオレたちのようすを苦笑しながら眺めていた紅野は、

「黒田くん、気を使ってくれてありがとう……でも、自分の学校のことをPRするためだから……私も本気で取り組みたいんだ……白草さんや佐倉さんに負けないようにね」

と、決意を込めたような表情で語る。

「エライ! 良く言った! さすが、私の可愛い後輩だね! これは、もう次期生徒会長に推薦するしかないね!」

 満足したように語る現生徒会長の言葉に、はにかみながら、紅野は謙遜する。

「もう、大げさですよ……副部長は……」

 そんなようすを見ながら、我が広報部の部長が、オレたちに向かって語りかけてきた。

「ペナルティを回避するための『負のインセンティブ』的な発想は、私の好みじゃないけれど……あなた達が、そうしたいと言うなら仕方ないわね……それで、肝心の罰ゲームについては、どうするの?」

「部長、それについては、ワタシに良いアイデアがあります!」

 謎めいた笑みを浮かべながら主張したのは、またしてもモモカだった。


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「なにかしら、佐倉さん? グループ分けの結果に異論があるなら、受け付けるわよ」
 おっとりした口調で応じる部長の言葉に、モモカは笑顔で答える。
「いえ……|白《・》|草《・》|セ《・》|ン《・》|パ《・》|イ《・》|と《・》|違《・》|っ《・》|て《・》、ワタシは、この組み合わせに、まっっったく不満はありません!」
 わざわざ、自分の方に視線を送りながら語る下級生の言葉に、シロは、露骨に表情を歪める。
(まったく……ふたりとも、少しは仲良くしろよ……)
 なぜ、ふたりが反発し合うのか――――――。
 オレには、|ま《・》|っ《・》|た《・》|く《・》|わ《・》|か《・》|ら《・》|な《・》|い《・》のだが、今後の円満なクラブ活動のためにも、彼女たちには、一刻も早く和解をしてもらいたい。
 それはさておき、モモカは、オレやシロの意向など、まるで意識していないかのように、語り続ける。
「今回のコンテストでは、自分たちが動画を制作することによるメリットとリスクが、あまりにも少ない気がするんです」
「リスクが少ない、というと……?」
 下級生の言い分に、疑問を感じたのだろう、|鳳花《ほうか》部長が問い返すと、モモカは、自信に満ちた表情で答えた。
「お仕事の場面では複数の提案の中から、企画内容やコストなどを総合的に勘案し、依頼主が最も良いと判断した提案を行った業者が選ばれ、仕事が発注されると思うんですけど……一方で、広報内容を提案する側は、競争相手よりも良い提案を作るために、実作業やコストが発生しますし、お仕事が取れなければ、その努力は、まったくの無駄になっちゃいますよね?」
「えぇ……たしかに、そうね」
「実際のお仕事のように、具体的な報酬というメリットを得るのは難しくても、せめて、お仕事を取れなかった……つまり、制作した動画への投票数が一番少なかったグループには、なんらかのリスクを負ってもらうのは、どうでしょう?」
「それは、つまり――――――最下位のチームには、罰ゲーム的なモノを課す、ということ?」
「はい! そういうことです!」
 さすが、|鳳花《ほうか》部長、話しの理解が早い、と言った感じで下級生は返事をするが、自分たちの身に降りかかることで、勝手に話しが進むのは困る。
 しかも、罰ゲーム的なモノを課される、というなら、なおさらだ。
「おいおい! モモカ、早まるな……」
 と、声を掛けようとすると、オレよりも先に、|壮馬《そうま》が声を上げた。
「ちょっと、待ってよ佐倉さん! 罰ゲームをするなんて、今回の企画とは関係ないことじゃないか! それになにより、|紅野《こうの》さんや|天竹《あまたけ》さんは、広報部の部外者だ。二人をこんなことに巻き込むわけにはいかないよ!」
 さすがは、我が友人。一点のスキもない、正論だ。
 ただ、部外者という意味では、シロ……白草四葉も、広報部の部員ではないのだが、|壮馬《そうま》の中では、シロは|迷《・》|惑《・》|を《・》|掛《・》|け《・》|て《・》|は《・》|い《・》|け《・》|な《・》|い《・》|部《・》|外《・》|者《・》にカウントされていないのだろうか?
 オレが感じた疑問には、|当《・》|事《・》|者《・》|自《・》|身《・》も思うところがあったようで、すぐに手が挙がり、異論が挟まれる。
「はい! わたしも、広報部の部外者なのに、黄瀬クンから心配してもらえてないようなんですけど……ただ、わたし自身は、佐倉サンの提案に賛成してもイイかなって思ってます。なにか、モチベーションが上がることがないと、つまらないと思いますし……第一、|最《・》|下《・》|位《・》|に《・》|さ《・》|え《・》ならなければイイんですよね?」
 不敵な笑みを浮かべながら、彼女は、モモカと紅野に視線を送る。
 なんで、こんなときだけ、モモカとシロは、意見が一致するんだ……。
 ただ、何にでも物怖じしない性格のふたりはともかくとして、壮馬の言うとおり、|紅野《こうの》と|天竹《あまたけ》にまで迷惑を掛けるわけにはいかない。
 ここは、友人に同調し、前のめりになっているモモカとシロに、その提案を取り下げさせるべく、説得しようとしたのだが――――――。
「白草さんと佐倉さんが、そう言うなら、私も、その条件を受けようと思います!」
 クラスメートが発した予想外の一言に、
「「「えぇっ!?」」」
オレ、壮馬、そして、|天竹《あまたけ》の声が重なった。
「ちょっと、ノア! どうしたの急に?」
「|紅野《こうの》さん! わざわざ、自分から、こんなことに首を突っ込んで行くことなんてないよ!」
 こんなふうに、 |紅野《こうの》アザミと同じグループで動画を制作することになった|天竹《あまたけ》と壮馬が、オレ以上の熱心さで、彼女に考え直すように、説得を試みようとするものの……。
 オレとともにクラス委員を務める女子生徒の意志は固く、生来の生真面目さゆえなのか、自分で決めたことを撤回するつもりは無いようだ。
「大丈夫だよ、|葵《あおい》! 罰ゲームを受けるのは、私だけにしてもらうから……それに、自分たちのチームだけ罰ゲームなしなんて不公平でしょ?」
 こんなところにまで公平さを求める彼女の律儀な性格は、|尊敬《リスペクト》に値するが――――――。
 映像編集の技術に長けた壮馬と組むことになるとはいえ、動画配信においては、同世代で国内屈指の存在と言って良いシロと、中学時代から、放送部で広報活動に慣れているモモカを相手に回すのは、あまりにもリスクが大きすぎるだろう。
 自分と同じグループでないとは言え、彼女の身を案じて、
「いや、公平か不公平かで言えば、今回は、そもそも、白草と|佐倉《さくら》のふたりに有利な条件なんだから、紅野が同じ土俵に立つ必要なんてないと思うぞ」
と、再考するように促したのだが……。
「ふ〜ん……クロは、紅野さんの味方をするんだ」
「そうですよ! くろセンパイは、|ワ《・》|タ《・》|シ《・》と同じチームなんですから、まず、自分たちのことを考えて下さい!」
 右斜め前と左斜め前に立っているシロとモモカから、十字砲火を浴びてしまった。
 さっきもそうだが、こんなときだけ鉄壁の二遊間コンビが見せるような連携プレーを披露するのは、やめてくれ……。
 そんなオレたちのようすを苦笑しながら眺めていた紅野は、
「黒田くん、気を使ってくれてありがとう……でも、自分の学校のことをPRするためだから……私も本気で取り組みたいんだ……白草さんや佐倉さんに負けないようにね」
と、決意を込めたような表情で語る。
「エライ! 良く言った! さすが、私の可愛い後輩だね! これは、もう次期生徒会長に推薦するしかないね!」
 満足したように語る現生徒会長の言葉に、はにかみながら、紅野は謙遜する。
「もう、大げさですよ……副部長は……」
 そんなようすを見ながら、我が広報部の部長が、オレたちに向かって語りかけてきた。
「ペナルティを回避するための『負のインセンティブ』的な発想は、私の好みじゃないけれど……あなた達が、そうしたいと言うなら仕方ないわね……それで、肝心の罰ゲームについては、どうするの?」
「部長、それについては、ワタシに良いアイデアがあります!」
 謎めいた笑みを浮かべながら主張したのは、またしてもモモカだった。