ある日のこと。その小さな町に突如、謎の飛行物体が現れた。その物体はUFOのような円盤をしているわけではなく、飛行機のような形をしているわけではない。ただ、殺風景な立方体をしており、飛行高度は飛行機よりかなり地上に近く、百米程度であった。飛行速度も極めて遅く、一日かけてその町中を巡り、翌日には元の位置に戻っている。そんな物体だった。
そうした物体に対しては、その町の人間は相当に敏感だった。
「あれはUFOだ」
「いいや、そんなの、あるはずがない。飛行機か何かだろう」
「馬鹿を言え。飛行機があんな形なわけがない。それに、あんなに近くを飛ばないだろう」
「それを言うなら、UFOこそ、あんなに近くを飛ぶわけがないだろう」
日々、その飛行物体を指差してそんな議論が交わされることとなった。
そのうちに、その飛行物体はその町の人間にとって悪いものだという者が現れた。
「あれは外国がこの町をスパイするために送り込んだ飛行物体だ。さもなくば、この町を滅ぼすために、何者かがあの物体から有毒な物質を撒こうと画策しているのだ」
「馬鹿を言え。これと言って取り柄もないこんな町にそんなことをしたところで、誰にも何の得もないだろう」
「悪い奴らは、そう言う人間心理を巧みにつくんだ。お前、油断してるとやられるぞ」
誰彼ともなくそんなことを言う者が現れて、その物体を撃ち落とそうと試みる者が出た。
しかし、その物体はどんなに狙いを定めても、撃ち落とされることはなかった。いつも飛行速度は極めて遅いにも関わらず銃弾は極めて俊敏に避け、いつも通りにゆっくりの速度での飛行に戻る。それは誰もが、何回撃ち落とそうとしても同じだった。
やがて誰もがそんな試みは無意味だということに気付き、撃ち落とそうとする者はいなくなった。何しろ、相手は飛行物体なのだ。俊敏に銃弾を避けられては打つ手がない。それに、その物体はその町に危害を及ぼすものではなく、人畜無害だったのだ。