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病室

ー/ー



 目が覚めると、フカフカのソファー……でなく、病室のベッドの上だった。
 病室のベッドの上、まるで子供のように微笑みを浮かべたまま、眠れる森の少女だった。
 (参照:『ロード』虎舞竜)
 え、それは「十代のカリスマ」とはちょっと違うって?
 そんなの、関係ない。だって、俺は天才を超えた超天才なのだから。この儚き狂気の腐敗した世界に落とされたゴッヅチャイルドなのだから。

 意識を取り戻した俺は、ぱっちりと目を開けた。すると、白衣を着た医師らしき者と母親が俺を覗き込んで頬を緩ませ、ほっとした安堵の表情を浮かべた。
「お目覚めになりましたか、よかった」
「あぁ、圭介。よかったぁ」
 『病室のベッドの上。永久に続くかとも思われる眠りから息子が奇跡的に目を覚ました』という、誂えられたこのシチュエーション。その中で彼らは、偽善に溢れる幸せごっこをした。
 俺には分かる。これは全て仕組まれた世界という名の劇場だ。そしてこいつらも、その舞台でピエロを演じているに過ぎないのだ。
 え、何を言っているのか、意味が分からないって? そんなの、当たり前だ。何故なら、俺は天才を超えた超天才なのだから。崇高な俺の考えは、所詮はこの世の誰も理解できんのだ。

 すると、母親は眉をひそめてまるで台本を読むかのように、心配ぶった声を出した。
「圭介。あなた、どうして、河川敷に飛び込んだりしたの?」
 母親はなおもピエロを演じている。俺が気付いているなんてことは思いもせずに。
 だから俺はわざとそれに乗ることにし……自分の飾らぬ言葉を投げかけた。
「俺は、十代のカリスマだからだ」
「は?」
 母親の眉間に皺が寄る。俺はそんなことには構わず続けた。
「俺は、天才を超えた超天才なんだ。だから、俺には分かる。2999年十二の月、振動とともに悪の組織が世界に悪魔をばら撒き、世界は火の海となり滅亡する」
 すると途端に母親の目は大粒の涙で溢れた。
「まぁ……何てこと。圭介。あなた、余程、悪い所を打ったのね。先生、どうか、この子を元に戻して下さい」
 母親は、医師に涙ながらに懇願する。
 何という……今まで気付かなかったが、母親には役者の才能があったのか。
 そして医師は、それにすっかり騙された風を装った。
「分かりました。できる限り、手を尽くしましょう」
 事務的にそう言うと、俺の腕をつかみ注射器の針を向けた。それを見た俺の顔からは、一気に血の気が引く。
「違う、嫌だ! これは、所詮は偽善に溢れた幸せごっこなのだろう? どうしてそんなものを向ける必要がある!? おかしいのはお前らだ! 俺は、天才を超えた超天才なんだぁ!」
「これはいけない。非常に危険な状態だ。看護師を呼んで来てくれ」
「嫌だ、ダメだ、俺は天才を超えた超天才なんだぁ!」
 そんな叫びも虚しく、俺は看護師達に押さえ込まれ、医師から安定剤を投与されて強制的にベッドに寝かされることになった。


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 目が覚めると、フカフカのソファー……でなく、病室のベッドの上だった。
 病室のベッドの上、まるで子供のように微笑みを浮かべたまま、眠れる森の少女だった。
 (参照:『ロード』虎舞竜)
 え、それは「十代のカリスマ」とはちょっと違うって?
 そんなの、関係ない。だって、俺は天才を超えた超天才なのだから。この儚き狂気の腐敗した世界に落とされたゴッヅチャイルドなのだから。
 意識を取り戻した俺は、ぱっちりと目を開けた。すると、白衣を着た医師らしき者と母親が俺を覗き込んで頬を緩ませ、ほっとした安堵の表情を浮かべた。
「お目覚めになりましたか、よかった」
「あぁ、圭介。よかったぁ」
 『病室のベッドの上。永久に続くかとも思われる眠りから息子が奇跡的に目を覚ました』という、誂えられたこのシチュエーション。その中で彼らは、偽善に溢れる幸せごっこをした。
 俺には分かる。これは全て仕組まれた世界という名の劇場だ。そしてこいつらも、その舞台でピエロを演じているに過ぎないのだ。
 え、何を言っているのか、意味が分からないって? そんなの、当たり前だ。何故なら、俺は天才を超えた超天才なのだから。崇高な俺の考えは、所詮はこの世の誰も理解できんのだ。
 すると、母親は眉をひそめてまるで台本を読むかのように、心配ぶった声を出した。
「圭介。あなた、どうして、河川敷に飛び込んだりしたの?」
 母親はなおもピエロを演じている。俺が気付いているなんてことは思いもせずに。
 だから俺はわざとそれに乗ることにし……自分の飾らぬ言葉を投げかけた。
「俺は、十代のカリスマだからだ」
「は?」
 母親の眉間に皺が寄る。俺はそんなことには構わず続けた。
「俺は、天才を超えた超天才なんだ。だから、俺には分かる。2999年十二の月、振動とともに悪の組織が世界に悪魔をばら撒き、世界は火の海となり滅亡する」
 すると途端に母親の目は大粒の涙で溢れた。
「まぁ……何てこと。圭介。あなた、余程、悪い所を打ったのね。先生、どうか、この子を元に戻して下さい」
 母親は、医師に涙ながらに懇願する。
 何という……今まで気付かなかったが、母親には役者の才能があったのか。
 そして医師は、それにすっかり騙された風を装った。
「分かりました。できる限り、手を尽くしましょう」
 事務的にそう言うと、俺の腕をつかみ注射器の針を向けた。それを見た俺の顔からは、一気に血の気が引く。
「違う、嫌だ! これは、所詮は偽善に溢れた幸せごっこなのだろう? どうしてそんなものを向ける必要がある!? おかしいのはお前らだ! 俺は、天才を超えた超天才なんだぁ!」
「これはいけない。非常に危険な状態だ。看護師を呼んで来てくれ」
「嫌だ、ダメだ、俺は天才を超えた超天才なんだぁ!」
 そんな叫びも虚しく、俺は看護師達に押さえ込まれ、医師から安定剤を投与されて強制的にベッドに寝かされることになった。