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031

ー/ー



「お前みたいにグループのこと考えない自分勝手なリーダー初めて見たわ! ほんと。スゲーよ! アイドルの方もリーダーなんだろ?」

 身体を揺さぶられながら雪枝は〝え、ええまあ〟とふんわりした受け答えをした。

「いえ、あの、あくまでその時の気持ちをですね、聞かれたのでお答えしただけで……それからのち、色々考えましたよもちろん。皆さんそれぞれ考えていることも、人生の目標も違うでしょうし。結局のところ」

「いや意外だった。人ってわかんねえもんだな。雪枝って思ってたよりだいぶ面白いヤツだったんだなあ。十子さんや丁さんが気に入ってたのもわかるよ」

「ほ、褒められているんでしょうか?」

 数凪はそのままポンポンと肩を二、三回叩いて手を離した。

「リーダーはやる気満々みたいだぞ。どうする? 多数決でも取るか?」
「あ、多数決はあまりやりたくないんです。出来るだけ……」

 雪枝は下を向いてかぼそい声を出した。

「いいよもう。やんなさいよ。伊代がそっち側にいった時点で、もう決まったようなものだったんだから」

 なりが渋々、雑巾を絞るように言った。隠しようのない不快感が発散されている。

「なっ、何その言い方! どっち側とかそういう話じゃないでしょ?!」

 なりは〝やってられない〟といった調子で、物も言わず犬を追うような仕草で掌を振った。

 ……本当は沙希が向こう側に傾いた時点で大勢は決していたのだが、腹立ちまぎれに伊予のせいにしてしまった。理由は自分でもよくわからない。

「そっか。決まっちまったんじゃしょうがねえな」

 数凪は何やらすっきりした様子である。

「まぁこうなったからには、私ももっとお前らの調査に協力するよ。……クビんなっちゃうかもしんないけど。私だけリスク負わないってのも違うよな」

「すみません……」

 真銀はしょんぼりして頭を下げた。

「いいよいいよ。私は慣れてんだよ」

 歯を見せて笑う数凪に、
「あの、調査協力という点ではですね、早速ですがお願いしたいことがありまして……」
 本当に恐る恐る雪枝が切り出した。

「わかったわかった。何でも言ってくれよ」

 絵に描いたような快活。こっちも何かのやる気に火が点いたようだった。少し打ち合わせをしたのち、
「取り合えず今日は帰るよ。ありがとな」

 数凪は部屋の扉へ向かった。

「……あの、四季がまだ生きてるって言ってくれて嬉しかったよ。ほんと感謝してる。じゃあな」

 最後に振り返り、ひらひらと手を振る。雪枝も〝いえいえ〟と、微笑みながら応えた。上着を引っかけ数凪は颯爽と去って行く。

『そこ?!』

 雪枝以外の全員が心中で叫んだ。

 こういってはなんだが四季が生きている、というのは雪枝が述べただけの仮説である。みな、そこまで二人の間に信頼関係があるとは思っていなかった。

 加えて雪枝は別に数凪を慮っているわけではない(多分)。自分の考えを話しただけだ。

 どう考えてもすれ違っているとしか思えなかった。

『しっかし……』

 決まったことは決まったこととして、なりは雪枝のあのよくわからない感じを面白いと感じた数凪と自分との差を感じていた。

 自分でも雑用と言っていたように、数凪はだいたい千代エーで表のなりと同じような仕事としていると思われる。

 ゆくゆくはプロデューサーとのことなので、おそらく新人の発掘みたいなこともしているだろう。

 数凪は何か自分とは違う視点で、雪枝の中にアイドル性のようなものを見出したのではないか? と思ったのだ。それを生かせれば、まだどうにかなるかもしれない。

 ……こっちに舵を切った以上、新レーベル移籍・(実質)再デビュー(のようなもの)はお流れと考えた方が良い。

 両立だのなんだのと調子の良いことを言っていたが、そんなことは不可能だというのは本人たちが一番良くわかっているはずだ。

 何を考えているのか、どう感じているのかはメンバーそれぞれであろうが、少なくとも覚悟は決まってしまったようである。

 後は成り行きにまかせるしかなかった。


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「お前みたいにグループのこと考えない自分勝手なリーダー初めて見たわ! ほんと。スゲーよ! アイドルの方もリーダーなんだろ?」
 身体を揺さぶられながら雪枝は〝え、ええまあ〟とふんわりした受け答えをした。
「いえ、あの、あくまでその時の気持ちをですね、聞かれたのでお答えしただけで……それからのち、色々考えましたよもちろん。皆さんそれぞれ考えていることも、人生の目標も違うでしょうし。結局のところ」
「いや意外だった。人ってわかんねえもんだな。雪枝って思ってたよりだいぶ面白いヤツだったんだなあ。十子さんや丁さんが気に入ってたのもわかるよ」
「ほ、褒められているんでしょうか?」
 数凪はそのままポンポンと肩を二、三回叩いて手を離した。
「リーダーはやる気満々みたいだぞ。どうする? 多数決でも取るか?」
「あ、多数決はあまりやりたくないんです。出来るだけ……」
 雪枝は下を向いてかぼそい声を出した。
「いいよもう。やんなさいよ。伊代がそっち側にいった時点で、もう決まったようなものだったんだから」
 なりが渋々、雑巾を絞るように言った。隠しようのない不快感が発散されている。
「なっ、何その言い方! どっち側とかそういう話じゃないでしょ?!」
 なりは〝やってられない〟といった調子で、物も言わず犬を追うような仕草で掌を振った。
 ……本当は沙希が向こう側に傾いた時点で大勢は決していたのだが、腹立ちまぎれに伊予のせいにしてしまった。理由は自分でもよくわからない。
「そっか。決まっちまったんじゃしょうがねえな」
 数凪は何やらすっきりした様子である。
「まぁこうなったからには、私ももっとお前らの調査に協力するよ。……クビんなっちゃうかもしんないけど。私だけリスク負わないってのも違うよな」
「すみません……」
 真銀はしょんぼりして頭を下げた。
「いいよいいよ。私は慣れてんだよ」
 歯を見せて笑う数凪に、
「あの、調査協力という点ではですね、早速ですがお願いしたいことがありまして……」
 本当に恐る恐る雪枝が切り出した。
「わかったわかった。何でも言ってくれよ」
 絵に描いたような快活。こっちも何かのやる気に火が点いたようだった。少し打ち合わせをしたのち、
「取り合えず今日は帰るよ。ありがとな」
 数凪は部屋の扉へ向かった。
「……あの、四季がまだ生きてるって言ってくれて嬉しかったよ。ほんと感謝してる。じゃあな」
 最後に振り返り、ひらひらと手を振る。雪枝も〝いえいえ〟と、微笑みながら応えた。上着を引っかけ数凪は颯爽と去って行く。
『そこ?!』
 雪枝以外の全員が心中で叫んだ。
 こういってはなんだが四季が生きている、というのは雪枝が述べただけの仮説である。みな、そこまで二人の間に信頼関係があるとは思っていなかった。
 加えて雪枝は別に数凪を慮っているわけではない(多分)。自分の考えを話しただけだ。
 どう考えてもすれ違っているとしか思えなかった。
『しっかし……』
 決まったことは決まったこととして、なりは雪枝のあのよくわからない感じを面白いと感じた数凪と自分との差を感じていた。
 自分でも雑用と言っていたように、数凪はだいたい千代エーで表のなりと同じような仕事としていると思われる。
 ゆくゆくはプロデューサーとのことなので、おそらく新人の発掘みたいなこともしているだろう。
 数凪は何か自分とは違う視点で、雪枝の中にアイドル性のようなものを見出したのではないか? と思ったのだ。それを生かせれば、まだどうにかなるかもしれない。
 ……こっちに舵を切った以上、新レーベル移籍・(実質)再デビュー(のようなもの)はお流れと考えた方が良い。
 両立だのなんだのと調子の良いことを言っていたが、そんなことは不可能だというのは本人たちが一番良くわかっているはずだ。
 何を考えているのか、どう感じているのかはメンバーそれぞれであろうが、少なくとも覚悟は決まってしまったようである。
 後は成り行きにまかせるしかなかった。