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SCENE025 管理局にサプライズ

ー/ー



 僕たちは谷地さんと日下さんを迎える。

「こんにちは。今日はどうなさったんですか」

「ようやくゲートの設置と職員の配置が決まりました」

 僕が尋ねると、谷地さんからそんな答えが返ってきた。どうやら、ダンジョンの謎を解き明かす体制が整ったみたい。その職員が後ろにいる人たちっていうわけかな。
 でも、どう見ても職員っぽい人じゃない人がいるんだけど、一体誰なんだろうかな。

「お世話になるわけですから、人員を紹介いたしますね」

 僕が不思議そうに見ていると、日下さんが前に出てきて説明を始めてくれる。
 やって来たのはゲートの守衛一名と研究員四名らしい。

「初めまして、みなさん。僕がこのダンジョンのマスターであるウィンクです。元人間ですので、仲良くしましょう」

 僕が挨拶をするものの、五人とも反応に困っているみたいだ。なんだろうな、やな感じがしちゃうよ。

「まったく、困ったものですね」

 僕が首を傾げていると、バトラーが後ろから出てくる。

「我はプリンセスの有能な執事であるバトラーと申します。プリンセスが挨拶をされたのですから、あなた方も挨拶をするのが道理ではないのですか?」

 バトラーの目が厳しい目を向けている。どうやら僕に対する態度で怒っているみたいだ。
 さすがレベル71のモンスターであるバトラーだ。非戦闘員っていうこともあって、みんな震え上がっちゃってるみたいだ。

「バトラー、僕はそこまで怒っていないから、あまり怖がらせないでよ」

「ですが、プリンセス。こやつらは礼節を欠いているのです。ここは厳しくいくのが正解ですぞ」

 バトラーはかなりうるさいタイプのようだった。やっぱり執事っていう立場だから、こういう場面には厳しいみたいだ。

「そうですね。バトラーさんの仰る通りです。この者たちが失礼しました、代わって謝罪いたします」

 日下さんが僕たちに謝ってきた。

「あれっ、後ろには別の人たちもいますね」

「はい。ゲートを設置するための工事を行う業者の人たちです。物は運んできていますので、夕方までには終わりますのでそれほど迷惑にはならないと思います」

「そうですか。ダンジョンのゲートってこうやって設置されているのか」

 僕の目の前で繰り広げられる光景に、つい見入ってしまっていた。なかなか見ることのない光景だもん。これもダンジョンマスターの特権かな。
 最後まで工事の様子を見ておきたかったけれど、僕には谷地さんたちを案内するという役目がある。だから、仕方なく工事を見守ることは諦めた。

「入ってすぐ左にあるここが、このダンジョンを観察するための部屋です。セキュリティをかけておかないと誰でも入れてしまいますので、そこはみなさんにお任せしますね」

「分かりました」

 僕は扉を開けて中へと案内する。部屋の中はダンジョンらしく岩でごつごつしてるんだけど、一般的な会議室のような間取りにしたつもりだ。奥には寝泊まりのための部屋も用意している。

「ずいぶんと部屋がありますね」

「そりゃ、ここで生活してもらうためですよ。二十四時間体制で監視するんですよね?」

「まあ、そうですね。何があるか分かりませんし」

「ですから、こうやって住んでいただくための空間を用意させてもらったんです。空間はどのように使っていただいても構いませんよ」

「心遣いありがとうございます」

 部屋のことについて、谷地さんがそのまま残って他の人と打ち合わせをすることになったので、僕は日下さんを連れてダンジョンを案内することにした。

「初めてのことばかりで驚かされます」

「そりゃそうでしょ。普通のダンジョンマスターは出迎えに出てこないでしょうし、入ったら排除しようとするでしょうからね」

「それはそうですな。ダンジョンの中でどれだけ相手を倒したかというのは、ダンジョンマスターにとってのひとつの勲章ですからな」

 僕たちの話に、バトラーはそのように口を挟んできた。異界のモンスターだから、言うことに説得力がありすぎるよね。

「まあ、その点、我がプリンセスは寛大ですぞ。自分の身に危険が迫らない限りは、安心していただいて結構。我もそれに従いますからな」

 バトラーは大きな声で笑っている。
 そう言っている間に、二階層への階段がある部屋に到着する。中にはキラーアントがいるけれど、バトラーが睨めば戦闘は回避できる。これで無事に二階層に降りられた。

「さっきのはモンスターですか」

「そうですとも。キラーアントという弱っちいモンスターですな」

「わ、私は怖かったんですけど……」

「まあ、戦闘能力がないのなら仕方ないですな。やつらは群れはしますが、かみつくくらいしか取り柄のないモンスターでございます。落ち着いて向かえば対処は可能でございますよ。プリンセスを守る兵士としては貧弱ですが、初心者用と提案したのはこの我ですからな」

「は、はあ……」

 日下さんは怯えたように体を小さくしている。やっぱり非戦闘員だと、どんなモンスターでも怖いんだろうな。
 案内をしている間に、ボス部屋に到着しちゃった。階層を増やしたけど、やっぱり短いなぁ、このダンジョン。

「一層、追加されてますね」

「はい、全部で三層と致しました。ダンジョンは最低でも三層仕立てですので、これで一般のダンジョンらしくなったと思いますぞ」

 バトラーの説明を聞いて、日下さんは頷いているようだった。管理局側しても、ダンジョンってそういうイメージなんだろうな。
 ここまでのことをメモに取っている日下さんをしばらく待って、僕たちは最大のサプライズを仕掛けることにした。

「日下さん、こちらにどうぞ」

「これは?」

 僕たちの目の前には、扉がある。
 僕たちは何も答えないで、扉を開けて日下さんを押し込んだ。

「ちょっと、何をするんですか?!」

「それは、この扉の向こうを見てのお楽しみですよ」

 そういって、僕は扉を開ける。
 扉をくぐると、そこには谷地さんたちの姿があった。

「えっ、これは?」

「僕のいるボス部屋と、管理局の人が入る部屋とを結ぶ短絡路です。これからダンジョンも深く複雑になりますから、谷地さんと日下さんの二人だけが使える通路を作ったんです」

「そ、そういうことなのか……。それは助かる、な……」

 谷地さんや日下さんたちが驚く中、僕とバトラーはしてやったりとにこにこと微笑んでいた。


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次のエピソードへ進む SCENE026 衝撃的な再会


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 僕たちは谷地さんと日下さんを迎える。
「こんにちは。今日はどうなさったんですか」
「ようやくゲートの設置と職員の配置が決まりました」
 僕が尋ねると、谷地さんからそんな答えが返ってきた。どうやら、ダンジョンの謎を解き明かす体制が整ったみたい。その職員が後ろにいる人たちっていうわけかな。
 でも、どう見ても職員っぽい人じゃない人がいるんだけど、一体誰なんだろうかな。
「お世話になるわけですから、人員を紹介いたしますね」
 僕が不思議そうに見ていると、日下さんが前に出てきて説明を始めてくれる。
 やって来たのはゲートの守衛一名と研究員四名らしい。
「初めまして、みなさん。僕がこのダンジョンのマスターであるウィンクです。元人間ですので、仲良くしましょう」
 僕が挨拶をするものの、五人とも反応に困っているみたいだ。なんだろうな、やな感じがしちゃうよ。
「まったく、困ったものですね」
 僕が首を傾げていると、バトラーが後ろから出てくる。
「我はプリンセスの有能な執事であるバトラーと申します。プリンセスが挨拶をされたのですから、あなた方も挨拶をするのが道理ではないのですか?」
 バトラーの目が厳しい目を向けている。どうやら僕に対する態度で怒っているみたいだ。
 さすがレベル71のモンスターであるバトラーだ。非戦闘員っていうこともあって、みんな震え上がっちゃってるみたいだ。
「バトラー、僕はそこまで怒っていないから、あまり怖がらせないでよ」
「ですが、プリンセス。こやつらは礼節を欠いているのです。ここは厳しくいくのが正解ですぞ」
 バトラーはかなりうるさいタイプのようだった。やっぱり執事っていう立場だから、こういう場面には厳しいみたいだ。
「そうですね。バトラーさんの仰る通りです。この者たちが失礼しました、代わって謝罪いたします」
 日下さんが僕たちに謝ってきた。
「あれっ、後ろには別の人たちもいますね」
「はい。ゲートを設置するための工事を行う業者の人たちです。物は運んできていますので、夕方までには終わりますのでそれほど迷惑にはならないと思います」
「そうですか。ダンジョンのゲートってこうやって設置されているのか」
 僕の目の前で繰り広げられる光景に、つい見入ってしまっていた。なかなか見ることのない光景だもん。これもダンジョンマスターの特権かな。
 最後まで工事の様子を見ておきたかったけれど、僕には谷地さんたちを案内するという役目がある。だから、仕方なく工事を見守ることは諦めた。
「入ってすぐ左にあるここが、このダンジョンを観察するための部屋です。セキュリティをかけておかないと誰でも入れてしまいますので、そこはみなさんにお任せしますね」
「分かりました」
 僕は扉を開けて中へと案内する。部屋の中はダンジョンらしく岩でごつごつしてるんだけど、一般的な会議室のような間取りにしたつもりだ。奥には寝泊まりのための部屋も用意している。
「ずいぶんと部屋がありますね」
「そりゃ、ここで生活してもらうためですよ。二十四時間体制で監視するんですよね?」
「まあ、そうですね。何があるか分かりませんし」
「ですから、こうやって住んでいただくための空間を用意させてもらったんです。空間はどのように使っていただいても構いませんよ」
「心遣いありがとうございます」
 部屋のことについて、谷地さんがそのまま残って他の人と打ち合わせをすることになったので、僕は日下さんを連れてダンジョンを案内することにした。
「初めてのことばかりで驚かされます」
「そりゃそうでしょ。普通のダンジョンマスターは出迎えに出てこないでしょうし、入ったら排除しようとするでしょうからね」
「それはそうですな。ダンジョンの中でどれだけ相手を倒したかというのは、ダンジョンマスターにとってのひとつの勲章ですからな」
 僕たちの話に、バトラーはそのように口を挟んできた。異界のモンスターだから、言うことに説得力がありすぎるよね。
「まあ、その点、我がプリンセスは寛大ですぞ。自分の身に危険が迫らない限りは、安心していただいて結構。我もそれに従いますからな」
 バトラーは大きな声で笑っている。
 そう言っている間に、二階層への階段がある部屋に到着する。中にはキラーアントがいるけれど、バトラーが睨めば戦闘は回避できる。これで無事に二階層に降りられた。
「さっきのはモンスターですか」
「そうですとも。キラーアントという弱っちいモンスターですな」
「わ、私は怖かったんですけど……」
「まあ、戦闘能力がないのなら仕方ないですな。やつらは群れはしますが、かみつくくらいしか取り柄のないモンスターでございます。落ち着いて向かえば対処は可能でございますよ。プリンセスを守る兵士としては貧弱ですが、初心者用と提案したのはこの我ですからな」
「は、はあ……」
 日下さんは怯えたように体を小さくしている。やっぱり非戦闘員だと、どんなモンスターでも怖いんだろうな。
 案内をしている間に、ボス部屋に到着しちゃった。階層を増やしたけど、やっぱり短いなぁ、このダンジョン。
「一層、追加されてますね」
「はい、全部で三層と致しました。ダンジョンは最低でも三層仕立てですので、これで一般のダンジョンらしくなったと思いますぞ」
 バトラーの説明を聞いて、日下さんは頷いているようだった。管理局側しても、ダンジョンってそういうイメージなんだろうな。
 ここまでのことをメモに取っている日下さんをしばらく待って、僕たちは最大のサプライズを仕掛けることにした。
「日下さん、こちらにどうぞ」
「これは?」
 僕たちの目の前には、扉がある。
 僕たちは何も答えないで、扉を開けて日下さんを押し込んだ。
「ちょっと、何をするんですか?!」
「それは、この扉の向こうを見てのお楽しみですよ」
 そういって、僕は扉を開ける。
 扉をくぐると、そこには谷地さんたちの姿があった。
「えっ、これは?」
「僕のいるボス部屋と、管理局の人が入る部屋とを結ぶ短絡路です。これからダンジョンも深く複雑になりますから、谷地さんと日下さんの二人だけが使える通路を作ったんです」
「そ、そういうことなのか……。それは助かる、な……」
 谷地さんや日下さんたちが驚く中、僕とバトラーはしてやったりとにこにこと微笑んでいた。