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第二部・第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑱

ー/ー



「白草さん、さっき宮野さんが自己紹介でも話してくれたけど、彼女には試験的に、広報部のSNS担当になってもらおうと考えているの……そこで、この分野のエキスパートである白草さんに、宮野さんのアドバイザーになってもらいたいと考えているの」

 鳳花先輩の言葉を静かに聞いていたシロにとって、それは、魅力的なていあんだったのだろう、彼女は声を弾ませて、ふたつ返事で了承した。

花金(はながね)先輩、素敵なお話しです! ぜひ、その役目を引き受けさせてください!」

 シロの言葉を受けて、思惑どおりにことが運び、ホッとしたようすの鳳花部長は、

「そう言ってもらえると、心強いわ。白草さん、よろしくお願いします」

と、丁寧に頭をさげた。
 自分に対して最大限の気遣いをあらわすような部長の仕草に、シロは恐縮したのか、

「そんなに気を使わないでください、部長サン!」

と、鳳花部長に返答したあと、オレの隣に移動してきた桃華に視線を向けながら、断言した。

「広報部に、わ《・》た《・》し《・》を《・》慕()っ《・》て《・》く《・》れ《・》る《・》下級生が入部しようとしてくれているんです。喜んで協力させてもらいます!」

 その視線と発言を受け止め、桃華もシロの挑発に応じる。

「それは、楽しみですね。SNSのカリスマの実力、見せてもらいましょう」

 シロと桃華、ふたりの間には、目に見えない火花が、バチバチと音を立てているようだ。
 そんな空気をあえてスルーするように、鳳花部長は、パンと手をたたき、穏やかな笑顔で宣言した。

「宮野さんの顔合わせと白草さんへのお願いも無事に済んだことだし、今日は、解散にしましょう。もちろん、打ち合わせなどの用事がある人は放送室(ここ)に残ってね」

「りょ〜かい、お疲れさま。宮野さん、これからよろしくね」

「なにかわからないことや困ったことがあったら、いつでも聞いてね」

 荒木先輩と大宮先輩は、それぞれに用事があるのか、そんな風に声をかけて放送室をあとにする。
 一方、先輩たちが出て行くのを「お疲れさまでした〜」と見送った壮馬は、ニヤニヤとした表情で、オレに話しかけてくる。

「新学期が始まってから、もう一ヶ月以上が経ったけど、また面白いことが起きそうだね」

 こいつは、自分に実害が及ばなない、とタカをくくって、この状況をたのしんでいるのだろう。
 
「オレとしては、『面白いこと』と言ってイイ状況とは思えないがな……」

 そう反論すると、友人は、なかば、呆れたという表情で言い返してくる。

「なに言ってんのさ。その原因を作った張本人のクセに……」
 
 壮馬は、そんな風に言うが……。

 シロはともかく、オレが知る限り、中学一年のときに恋愛がらみのい《・》ざ《・》こ《・》ざ《・》に巻き込まれて以降、とくに中学二年になってからは、笑いを取るときやジョークを言うとき以外に、他人を悪く言うようなことがなかった桃華が、ここまであからさまに、敵意を向ける場面を見たことがなかったので、困惑するばかりである。
 
 モモカが、中学生の頃からのよ《・》し《・》み《・》で、自分の味方になってくれる、という気持ちはありがたいのだが――――――。

 オレとしては、桃華には、部外者とはいえシロとも上手く付き合ってほしい、と考えている。
 しかし、壮馬は、こちらの表情をうかがいながら、

「竜司の顔を見れば、ナニを考えているか、だいたいわかるけど、もう少し自覚を持って行動したほうが良いと思うよ。まぁ、ボクも中学時代の佐倉さんの気持ちには気付いていなかったけどさ……」

と、意味深な発言を残して、オレのそばを離れて行った。
 そして、ヤツにしては珍しく、初対面の体験入部希望者に話しかける。

「宮野さん、二年の黄瀬壮馬です。よろしくね」

「あっ! はい、よろしくおねげします」

 不意に壮馬から声をかけられた宮野は、ピクリと身体を震わせたあと、ピョコンと小さくお辞儀をした。
 そんな彼女のようすをとなりで見ていたシロは、「んんっ!」と声をあげて、

「宮野サン、ううん、snow_fieldちゃん、なんてカワイイ生き物なの!? このまま、わたしの部屋に持って帰りたいくらい!」

と、興奮気味に語り、ふたたび、この下級生に抱きつく。
 宮野雪乃は、相変わらず照れながら、ほおをかきつつ、つぶやいている。

「ヨツバちゃんに、こんな風に言ってもらえるなんて……もう、()んでも思い残すことなんて、ねぇべさ」

 ふたりの女子が醸し出すほほえましくあるが、胸焼けしそうなくらい甘ったるい雰囲気に苦笑しながら、壮馬は再度、下級生に話しかけた。

「宮野さんは、ずいぶんと白草さんを熱心にフォローしているんだね? この前のオープン・スクールも見ていてくれたの? 良かったら、感想を聞かせてほしいな」

 自分たちが実行したイベントが、どう評価されているか気になっているのだろう、第三者的な意見を確認したいという気持ちは、もちろん良くわかるのだが……。


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 鳳花先輩の言葉を静かに聞いていたシロにとって、それは、魅力的なていあんだったのだろう、彼女は声を弾ませて、ふたつ返事で了承した。
「|花金《はながね》先輩、素敵なお話しです! ぜひ、その役目を引き受けさせてください!」
 シロの言葉を受けて、思惑どおりにことが運び、ホッとしたようすの鳳花部長は、
「そう言ってもらえると、心強いわ。白草さん、よろしくお願いします」
と、丁寧に頭をさげた。
 自分に対して最大限の気遣いをあらわすような部長の仕草に、シロは恐縮したのか、
「そんなに気を使わないでください、部長サン!」
と、鳳花部長に返答したあと、オレの隣に移動してきた桃華に視線を向けながら、断言した。
「広報部に、わ《・》た《・》し《・》を《・》慕《・》っ《・》て《・》く《・》れ《・》る《・》下級生が入部しようとしてくれているんです。喜んで協力させてもらいます!」
 その視線と発言を受け止め、桃華もシロの挑発に応じる。
「それは、楽しみですね。SNSのカリスマの実力、見せてもらいましょう」
 シロと桃華、ふたりの間には、目に見えない火花が、バチバチと音を立てているようだ。
 そんな空気をあえてスルーするように、鳳花部長は、パンと手をたたき、穏やかな笑顔で宣言した。
「宮野さんの顔合わせと白草さんへのお願いも無事に済んだことだし、今日は、解散にしましょう。もちろん、打ち合わせなどの用事がある人は|放送室《ここ》に残ってね」
「りょ〜かい、お疲れさま。宮野さん、これからよろしくね」
「なにかわからないことや困ったことがあったら、いつでも聞いてね」
 荒木先輩と大宮先輩は、それぞれに用事があるのか、そんな風に声をかけて放送室をあとにする。
 一方、先輩たちが出て行くのを「お疲れさまでした〜」と見送った壮馬は、ニヤニヤとした表情で、オレに話しかけてくる。
「新学期が始まってから、もう一ヶ月以上が経ったけど、また面白いことが起きそうだね」
 こいつは、自分に実害が及ばなない、とタカをくくって、この状況をたのしんでいるのだろう。
「オレとしては、『面白いこと』と言ってイイ状況とは思えないがな……」
 そう反論すると、友人は、なかば、呆れたという表情で言い返してくる。
「なに言ってんのさ。その原因を作った張本人のクセに……」
 壮馬は、そんな風に言うが……。
 シロはともかく、オレが知る限り、中学一年のときに恋愛がらみのい《・》ざ《・》こ《・》ざ《・》に巻き込まれて以降、とくに中学二年になってからは、笑いを取るときやジョークを言うとき以外に、他人を悪く言うようなことがなかった桃華が、ここまであからさまに、敵意を向ける場面を見たことがなかったので、困惑するばかりである。
 モモカが、中学生の頃からのよ《・》し《・》み《・》で、自分の味方になってくれる、という気持ちはありがたいのだが――――――。
 オレとしては、桃華には、部外者とはいえシロとも上手く付き合ってほしい、と考えている。
 しかし、壮馬は、こちらの表情をうかがいながら、
「竜司の顔を見れば、ナニを考えているか、だいたいわかるけど、もう少し自覚を持って行動したほうが良いと思うよ。まぁ、ボクも中学時代の佐倉さんの気持ちには気付いていなかったけどさ……」
と、意味深な発言を残して、オレのそばを離れて行った。
 そして、ヤツにしては珍しく、初対面の体験入部希望者に話しかける。
「宮野さん、二年の黄瀬壮馬です。よろしくね」
「あっ! はい、よろしくおねげします」
 不意に壮馬から声をかけられた宮野は、ピクリと身体を震わせたあと、ピョコンと小さくお辞儀をした。
 そんな彼女のようすをとなりで見ていたシロは、「んんっ!」と声をあげて、
「宮野サン、ううん、snow_fieldちゃん、なんてカワイイ生き物なの!? このまま、わたしの部屋に持って帰りたいくらい!」
と、興奮気味に語り、ふたたび、この下級生に抱きつく。
 宮野雪乃は、相変わらず照れながら、ほおをかきつつ、つぶやいている。
「ヨツバちゃんに、こんな風に言ってもらえるなんて……もう、|死《ス》んでも思い残すことなんて、ねぇべさ」
 ふたりの女子が醸し出すほほえましくあるが、胸焼けしそうなくらい甘ったるい雰囲気に苦笑しながら、壮馬は再度、下級生に話しかけた。
「宮野さんは、ずいぶんと白草さんを熱心にフォローしているんだね? この前のオープン・スクールも見ていてくれたの? 良かったら、感想を聞かせてほしいな」
 自分たちが実行したイベントが、どう評価されているか気になっているのだろう、第三者的な意見を確認したいという気持ちは、もちろん良くわかるのだが……。