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SCENE022 不殺設定の効果

ー/ー



「こんにちは、みなさん。ダンジョンマスターのウィンクです」

『こんらみあ~』

 うん、僕への挨拶が、知らない間に「こんらみあ」で統一されちゃってる。無駄に語呂もいいから、みんな相当気に入っちゃってるみたいだ。
 なんともむずがゆいんだけど、僕の配信を見てくれる視聴者さんたちの共通認識みたいだから、僕だけが我慢すればいいよね。
 ぞわぞわと背筋に寒気がするけど、僕はとにかく配信を続ける。

『今日の話題はなんだろう』

『ウィンクちゃんの配信は、基本的にダンジョン機能の拡張の時だよね?』

 視聴者さんたちが今日の内容を楽しみにしてくれている。
 なんだか嬉しくなってきちゃうな、こんな風に言われちゃうと。
 ちょっと照れ笑いをすると、すぐに真面目な顔をして配信を続ける。

「はい、今回はダンジョンの機能を紹介したいと思います」

「それは、我から説明いたしましょう」

『うわっ、バトラーさん、いきなり画面に出てこないで。びっくりする』

『蛇顔のドアップはきつい』

 いきなりにゅっとバトラーがドローンの前に割り込むものだから、視聴者さんたちが驚いてるんじゃん。
 僕もまだバトラーの顔のドアップには慣れないんだよね。離れて見るには慣れたんだけど、やっぱりきついよね。

「失敬な。おほん、気を取り直して今回のダンジョンの機能について説明いたしますぞ」

『わくわく』

 バトラーが咳払いをして説明に入ると、視聴者さんたちの反応が静かになる。

「今回紹介するのは、不殺設定という機能ですぞ。ダンジョンであれば、どこにでも備わっておるものですが、プリンセス以外に使おうとするダンジョンマスターは、まずおらんでしょうな」

『不殺設定?』

『そんなんあるん?』

 やっぱりみんなびっくりしているね。

「はい、ございますとも。不殺設定というのは、設定した相手同士で、殺すことができなくなるというものでございます。ケガをさせることはできますが、それが原因で死ぬことはなくなるのです。この設定下にいれば、ダンジョン内のマナを消耗し、傷は時間をかけて治るのですぞ」

『ふっしぎ~』

『それを設定した相手同士だと、とどめはさせないってわけか』

『でもよ、横殴りで倒すってことをするやつはいそうだな』

「まあ、ありえる話ですな。ここはまだ人にあまり知られていないダンジョンですから、その危険性は低いでしょうがね」

 視聴者さんたちのコメントに、バトラーが反応している。

「まあ、論より証拠ですな。ちょうど、ダンジョン管理局の方々が来られておりますし、物は試しというものです」

「ちょっと待って下さい。私たちは非戦闘員ですよ?!」

「なあに、ちょっと痛いだけですから、我慢なさってください」

 にこにことした笑顔で近付いていくバトラーに、谷地さんが怖がって下がっていく。
 バトラーの右腕が蛇に変わり、谷地さんの左腕に絡みついていく。

「ぐわあああっ!!」

 バキボキと、ものすごく痛そうな音がしてるんだけど?!
 バトラーが腕を解放すると、谷地さんの左腕は完全にぶらりと下がって使い物にならなさそうになっていた。

「やりすぎじゃないの?」

「いえ、プリンセス。これくらいしないと、効果は確かめられませんからな」

『えっぐいな』

『骨が砕ける音が伝わってきたぞ』

「う、腕が動かない……」

 完全に砕けてしまっているらしく、谷地さんの表情はものすごく青くなっている。
 だけど、すぐにこの不殺効果が現れる。

『なんだ?』

『管理局の人の腕に光が集まっているな』

「はい。今見えているのがダンジョンのマナですな。プリンセスと我、それと谷地殿と日下殿の四人の間で不殺設定をしておりますので、我によって傷つけられた谷地殿の傷をダンジョンが修復しておるのです。とはいえ、我も初めて見る光景ですがな」

『まあ、ダンジョンのモンスターは基本的に探索者と敵対してるからな』

『管理局の人がダンジョンに潜るのもまれだししょうがない』

 視聴者さんたちと話しをしている間にも、谷地さんの腕にマナが吸い込まれていく。気が付くと、青ざめていた谷地さんの顔色が元に戻っているみたいだった。

「おや、もう痛くないぞ」

 谷地さんが左腕をぐっぱしたり、ぶんぶんと振り回したりしている。さっきまでは間違いなく砕けてたのに、もうすっかり動かして平気になっている。不殺設定ってすごいなぁ。

『ダンジョンってすっげぇ……』

『俺たちも仲良くなれば、こんな恩恵受けられるのかな』

『やめとけ。下心なんて持ってたら、頼む前にバトラーさんに砕かれるぞ』

 視聴者さんたちが興味津々だ。

「もちろんですとも。プリンセスを害するものは我の敵。そのような輩には手加減はしませんぞ」

『は、はい……。謹んで遠慮いたしますです、はい』

 バトラーが本気なものだから、視聴者さんたちはものすごく怖がっているみたいだ。

「ま、まあ。そんなわけで、管理局側の準備が整ったら、気軽に遊びに来て下さいね。お二人の話では一両日中に正式なゲートが設置されるそうですからね」

『おお、やっとそのダンジョンに遊びに行けるんだな』

「はい、その通りです。みなさんとお会いできる日を楽しみにしてますね」

 僕の言葉に、歓迎するようなコメントばかりがついていく。やっぱりこれもきっと魅了の力だよね。ラミアの力って怖い。
 そんなこんなで、この日の配信は終わり。
 不殺設定を見せつけられたことで僕は満足したものの、谷地さんからはこっぴどく怒られたよ。


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「こんにちは、みなさん。ダンジョンマスターのウィンクです」
『こんらみあ~』
 うん、僕への挨拶が、知らない間に「こんらみあ」で統一されちゃってる。無駄に語呂もいいから、みんな相当気に入っちゃってるみたいだ。
 なんともむずがゆいんだけど、僕の配信を見てくれる視聴者さんたちの共通認識みたいだから、僕だけが我慢すればいいよね。
 ぞわぞわと背筋に寒気がするけど、僕はとにかく配信を続ける。
『今日の話題はなんだろう』
『ウィンクちゃんの配信は、基本的にダンジョン機能の拡張の時だよね?』
 視聴者さんたちが今日の内容を楽しみにしてくれている。
 なんだか嬉しくなってきちゃうな、こんな風に言われちゃうと。
 ちょっと照れ笑いをすると、すぐに真面目な顔をして配信を続ける。
「はい、今回はダンジョンの機能を紹介したいと思います」
「それは、我から説明いたしましょう」
『うわっ、バトラーさん、いきなり画面に出てこないで。びっくりする』
『蛇顔のドアップはきつい』
 いきなりにゅっとバトラーがドローンの前に割り込むものだから、視聴者さんたちが驚いてるんじゃん。
 僕もまだバトラーの顔のドアップには慣れないんだよね。離れて見るには慣れたんだけど、やっぱりきついよね。
「失敬な。おほん、気を取り直して今回のダンジョンの機能について説明いたしますぞ」
『わくわく』
 バトラーが咳払いをして説明に入ると、視聴者さんたちの反応が静かになる。
「今回紹介するのは、不殺設定という機能ですぞ。ダンジョンであれば、どこにでも備わっておるものですが、プリンセス以外に使おうとするダンジョンマスターは、まずおらんでしょうな」
『不殺設定?』
『そんなんあるん?』
 やっぱりみんなびっくりしているね。
「はい、ございますとも。不殺設定というのは、設定した相手同士で、殺すことができなくなるというものでございます。ケガをさせることはできますが、それが原因で死ぬことはなくなるのです。この設定下にいれば、ダンジョン内のマナを消耗し、傷は時間をかけて治るのですぞ」
『ふっしぎ~』
『それを設定した相手同士だと、とどめはさせないってわけか』
『でもよ、横殴りで倒すってことをするやつはいそうだな』
「まあ、ありえる話ですな。ここはまだ人にあまり知られていないダンジョンですから、その危険性は低いでしょうがね」
 視聴者さんたちのコメントに、バトラーが反応している。
「まあ、論より証拠ですな。ちょうど、ダンジョン管理局の方々が来られておりますし、物は試しというものです」
「ちょっと待って下さい。私たちは非戦闘員ですよ?!」
「なあに、ちょっと痛いだけですから、我慢なさってください」
 にこにことした笑顔で近付いていくバトラーに、谷地さんが怖がって下がっていく。
 バトラーの右腕が蛇に変わり、谷地さんの左腕に絡みついていく。
「ぐわあああっ!!」
 バキボキと、ものすごく痛そうな音がしてるんだけど?!
 バトラーが腕を解放すると、谷地さんの左腕は完全にぶらりと下がって使い物にならなさそうになっていた。
「やりすぎじゃないの?」
「いえ、プリンセス。これくらいしないと、効果は確かめられませんからな」
『えっぐいな』
『骨が砕ける音が伝わってきたぞ』
「う、腕が動かない……」
 完全に砕けてしまっているらしく、谷地さんの表情はものすごく青くなっている。
 だけど、すぐにこの不殺効果が現れる。
『なんだ?』
『管理局の人の腕に光が集まっているな』
「はい。今見えているのがダンジョンのマナですな。プリンセスと我、それと谷地殿と日下殿の四人の間で不殺設定をしておりますので、我によって傷つけられた谷地殿の傷をダンジョンが修復しておるのです。とはいえ、我も初めて見る光景ですがな」
『まあ、ダンジョンのモンスターは基本的に探索者と敵対してるからな』
『管理局の人がダンジョンに潜るのもまれだししょうがない』
 視聴者さんたちと話しをしている間にも、谷地さんの腕にマナが吸い込まれていく。気が付くと、青ざめていた谷地さんの顔色が元に戻っているみたいだった。
「おや、もう痛くないぞ」
 谷地さんが左腕をぐっぱしたり、ぶんぶんと振り回したりしている。さっきまでは間違いなく砕けてたのに、もうすっかり動かして平気になっている。不殺設定ってすごいなぁ。
『ダンジョンってすっげぇ……』
『俺たちも仲良くなれば、こんな恩恵受けられるのかな』
『やめとけ。下心なんて持ってたら、頼む前にバトラーさんに砕かれるぞ』
 視聴者さんたちが興味津々だ。
「もちろんですとも。プリンセスを害するものは我の敵。そのような輩には手加減はしませんぞ」
『は、はい……。謹んで遠慮いたしますです、はい』
 バトラーが本気なものだから、視聴者さんたちはものすごく怖がっているみたいだ。
「ま、まあ。そんなわけで、管理局側の準備が整ったら、気軽に遊びに来て下さいね。お二人の話では一両日中に正式なゲートが設置されるそうですからね」
『おお、やっとそのダンジョンに遊びに行けるんだな』
「はい、その通りです。みなさんとお会いできる日を楽しみにしてますね」
 僕の言葉に、歓迎するようなコメントばかりがついていく。やっぱりこれもきっと魅了の力だよね。ラミアの力って怖い。
 そんなこんなで、この日の配信は終わり。
 不殺設定を見せつけられたことで僕は満足したものの、谷地さんからはこっぴどく怒られたよ。