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SCENE017 侵入者

ー/ー



 そういえば、僕の曜日感覚はだいぶなくなっていた。
 ダンジョンマスターをしていることもあってか、毎日が同じようなことの繰り返しなんだもん。今度の休みって言われても、何日後なのか分からなかった。
 とりあえず入ってきたら分かるので、ダンジョン管理局の人たちが来るまで僕たちはのんびりと待つことにした。

 谷地さんと日下さんが妹のことを伝えに来てから二日後のことだった。
 ぞわっとした感触が僕に伝わる。

「なんだろう。いつもと違った感じがする……」

「そうですな。明らかな敵意を持った連中が入ってきたようですな」

「ということは……」

「探索者のようですな」

 バトラーの言葉に、僕は顔を青ざめさせる。
 探索者がやってきたということは、僕はこのダンジョンのマスターとして、その人たちを迎え撃たなきゃならないってことだ。
 僕は元人間だからか、人と戦うということに慣れていない。ましてや、その命を奪うなんてことができるわけがない。
 僕は怖くてがくがくと震えている。

「しょうがないですな。プリンセスの手を汚すわけには参りません。この我にお任せを」

 バトラーが僕のことを気遣ってくれている。

「さあ、プリンセス。配信をお願いしますぞ。プリンセスの聖域に入り込んできた羽虫を、華麗に叩きつぶしてやりましょう」

 手にはめた手袋をぎゅっと引っ張りながら、バトラーが強気の発言をしていた。
 そこまで言うのだったらと、僕はドローンを引っ張り出して、配信をすることにした。

「こんにちは、ダンジョンマスターのウィンクです」

『おっ、ウィンクちゃんだ』

『こんらみあー!』

「えっ、こ、こんらみ……、なんですって?」

 唐突に飛んできた挨拶に、僕は混乱している。

『ウィンクちゃん、ラミアだからね』

「ああ、そういうことですか。でも、ごめんなさい。今日はそれどころじゃないんですよ」

『なになに、どしたん?』

 僕の慌てた様子に、視聴者さんもびっくりしているみたいだ。

「いつもの人と違う誰かが、このダンジョンにやって来たんです。探索者っぽいので、バトラーが追い払うって言っているんです」

『ああ、そこもダンジョンだからな』

『でも、管理局が人を配置していないダンジョンは、基本的に立ち入り禁止だろ。無人と認められている場合を除いてさ』

『だな、ダンジョン管理法違反だ』

『ウィンクちゃんのところは有人ダンジョンと認められたばかりだから、そのわずかな期間を狙ってきたってことか。やってられねえな』

『どこにでも穴を狙うやつはいるからな』

 そうこう言っている間に、僕たちの目の前にはバトラーと向かい合う三人の探索者が立っている。

「おうおう、できたてのダンジョンだっていうから来てみたんだが、変な蛇がいるな」

「ぐへへへ、かわいこちゃんを出せば、見逃してやるぜ」

 見るからに気持ち悪そうな連中だな。

『うげぇ、ああいうやついたのか』

『さすがに俺らでも、あいつらの味方はしない』

『バトラーさん、やっちゃえ』

 視聴者さんたちは、どうやら僕たちの味方のようだ。これって魅了の影響じゃないよね?
 僕たちの目の前では、バトラーと探索者の戦いが始まろうとしている。

「なんという不埒な方々ですか。あなた方のような下賤な連中をプリンセスに近付けるわけには参りません」

「なんだとっ!? モンスターのくせに言ってくれやがるな」

「へっ、男のモンスターになんぞ興味はねえ。やっちまうか!」

「おうよ!」

 三人の探索者たちが、バトラーに向かって襲い掛かってくる。
 だけど、バトラーは動かない。

「やれやれ、品のない方たちですね。プリンセスはお優しい方ですから、一瞬で終わらせて差し上げましょう」

「何を言ってやがる、食らえっ!」

 体格の大きな探索者が、斧のようなものを振り回す。

「あ、が……」

(つよし)?!」

 ところが、襲い掛かるより前に、バトラーの左腕が蛇に変化して、探索者の脇腹をかみ砕いていた。

「弱いですな。せめて我に傷を負わせられるようにならなくては、プリンセスに会う資格はありませんね」

「こいつ!」

「なめてくれるなよ!」

 呆れた様子でバトラーが煽るものだから、探索者たちがキレて襲い掛かってくる。
 でも、どうしてだろうか。僕には絶対的な安心感があった。

『ひえっ、あのあの頑丈そうな鎧が一瞬で粉々に……』

『俺だと全身砕かれそうなくらい強力っぽいな』

『さすがバトラーさんだな、頼もしい!』

 視聴者さんたちがそんなことをいっている間に、バトラーに襲い掛かって来た探索者たちは壁に叩きつけられていた。僕には何が起きたのかまったく分からなかった。

「プリンセスが人を殺したくないと仰っておりますので、このくらいで勘弁しておいてあげましょう。さっさと帰って下さいますか。あなた方と同じ空気など、吸いたくもありません」

「く、くそっ……」

「お、覚えやがれよっ!」

 やって来た探索者たちは、最初に鎧を砕かれた探索者を引きずりながら、ダンジョンから出ていった。
 最後に捨て台詞を放っていたので、また来るつもりなのかな?

『いやぁ、バトラーさんって強いな』

『パイソニアってそんなに強い種族だっけか?』

『ウィンクちゃんの専属執事だぞ、強いに決まってるじゃないか』

 視聴者さんたちはバトラーのことでもちきりみたいだ。モンスター相手なのに、なんだか好印象でびっくりしちゃうよ。

「いかがでしたかな、プリンセス」

「うん、かっこよかったよ、バトラー」

「はっはっはっ、プリンセスに褒められたとあっては、我も鍛えてきたかいがあるというものです。それにしても、無法者が来るとは思いませんでしたな。早急に我々も何らかの対策をしませんとな」

「あっ、そうだね。ポイント、足りるかな……?」

 僕はついそこを心配してしまう。
 でも、あんなのが来たとなると、防犯のためにも何か対策をしないといけないのは事実だもんね。
 配信を終えた僕たちは、ボス部屋に戻って対策を話し合うことにしたよ。


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 そういえば、僕の曜日感覚はだいぶなくなっていた。
 ダンジョンマスターをしていることもあってか、毎日が同じようなことの繰り返しなんだもん。今度の休みって言われても、何日後なのか分からなかった。
 とりあえず入ってきたら分かるので、ダンジョン管理局の人たちが来るまで僕たちはのんびりと待つことにした。
 谷地さんと日下さんが妹のことを伝えに来てから二日後のことだった。
 ぞわっとした感触が僕に伝わる。
「なんだろう。いつもと違った感じがする……」
「そうですな。明らかな敵意を持った連中が入ってきたようですな」
「ということは……」
「探索者のようですな」
 バトラーの言葉に、僕は顔を青ざめさせる。
 探索者がやってきたということは、僕はこのダンジョンのマスターとして、その人たちを迎え撃たなきゃならないってことだ。
 僕は元人間だからか、人と戦うということに慣れていない。ましてや、その命を奪うなんてことができるわけがない。
 僕は怖くてがくがくと震えている。
「しょうがないですな。プリンセスの手を汚すわけには参りません。この我にお任せを」
 バトラーが僕のことを気遣ってくれている。
「さあ、プリンセス。配信をお願いしますぞ。プリンセスの聖域に入り込んできた羽虫を、華麗に叩きつぶしてやりましょう」
 手にはめた手袋をぎゅっと引っ張りながら、バトラーが強気の発言をしていた。
 そこまで言うのだったらと、僕はドローンを引っ張り出して、配信をすることにした。
「こんにちは、ダンジョンマスターのウィンクです」
『おっ、ウィンクちゃんだ』
『こんらみあー!』
「えっ、こ、こんらみ……、なんですって?」
 唐突に飛んできた挨拶に、僕は混乱している。
『ウィンクちゃん、ラミアだからね』
「ああ、そういうことですか。でも、ごめんなさい。今日はそれどころじゃないんですよ」
『なになに、どしたん?』
 僕の慌てた様子に、視聴者さんもびっくりしているみたいだ。
「いつもの人と違う誰かが、このダンジョンにやって来たんです。探索者っぽいので、バトラーが追い払うって言っているんです」
『ああ、そこもダンジョンだからな』
『でも、管理局が人を配置していないダンジョンは、基本的に立ち入り禁止だろ。無人と認められている場合を除いてさ』
『だな、ダンジョン管理法違反だ』
『ウィンクちゃんのところは有人ダンジョンと認められたばかりだから、そのわずかな期間を狙ってきたってことか。やってられねえな』
『どこにでも穴を狙うやつはいるからな』
 そうこう言っている間に、僕たちの目の前にはバトラーと向かい合う三人の探索者が立っている。
「おうおう、できたてのダンジョンだっていうから来てみたんだが、変な蛇がいるな」
「ぐへへへ、かわいこちゃんを出せば、見逃してやるぜ」
 見るからに気持ち悪そうな連中だな。
『うげぇ、ああいうやついたのか』
『さすがに俺らでも、あいつらの味方はしない』
『バトラーさん、やっちゃえ』
 視聴者さんたちは、どうやら僕たちの味方のようだ。これって魅了の影響じゃないよね?
 僕たちの目の前では、バトラーと探索者の戦いが始まろうとしている。
「なんという不埒な方々ですか。あなた方のような下賤な連中をプリンセスに近付けるわけには参りません」
「なんだとっ!? モンスターのくせに言ってくれやがるな」
「へっ、男のモンスターになんぞ興味はねえ。やっちまうか!」
「おうよ!」
 三人の探索者たちが、バトラーに向かって襲い掛かってくる。
 だけど、バトラーは動かない。
「やれやれ、品のない方たちですね。プリンセスはお優しい方ですから、一瞬で終わらせて差し上げましょう」
「何を言ってやがる、食らえっ!」
 体格の大きな探索者が、斧のようなものを振り回す。
「あ、が……」
「|強《つよし》?!」
 ところが、襲い掛かるより前に、バトラーの左腕が蛇に変化して、探索者の脇腹をかみ砕いていた。
「弱いですな。せめて我に傷を負わせられるようにならなくては、プリンセスに会う資格はありませんね」
「こいつ!」
「なめてくれるなよ!」
 呆れた様子でバトラーが煽るものだから、探索者たちがキレて襲い掛かってくる。
 でも、どうしてだろうか。僕には絶対的な安心感があった。
『ひえっ、あのあの頑丈そうな鎧が一瞬で粉々に……』
『俺だと全身砕かれそうなくらい強力っぽいな』
『さすがバトラーさんだな、頼もしい!』
 視聴者さんたちがそんなことをいっている間に、バトラーに襲い掛かって来た探索者たちは壁に叩きつけられていた。僕には何が起きたのかまったく分からなかった。
「プリンセスが人を殺したくないと仰っておりますので、このくらいで勘弁しておいてあげましょう。さっさと帰って下さいますか。あなた方と同じ空気など、吸いたくもありません」
「く、くそっ……」
「お、覚えやがれよっ!」
 やって来た探索者たちは、最初に鎧を砕かれた探索者を引きずりながら、ダンジョンから出ていった。
 最後に捨て台詞を放っていたので、また来るつもりなのかな?
『いやぁ、バトラーさんって強いな』
『パイソニアってそんなに強い種族だっけか?』
『ウィンクちゃんの専属執事だぞ、強いに決まってるじゃないか』
 視聴者さんたちはバトラーのことでもちきりみたいだ。モンスター相手なのに、なんだか好印象でびっくりしちゃうよ。
「いかがでしたかな、プリンセス」
「うん、かっこよかったよ、バトラー」
「はっはっはっ、プリンセスに褒められたとあっては、我も鍛えてきたかいがあるというものです。それにしても、無法者が来るとは思いませんでしたな。早急に我々も何らかの対策をしませんとな」
「あっ、そうだね。ポイント、足りるかな……?」
 僕はついそこを心配してしまう。
 でも、あんなのが来たとなると、防犯のためにも何か対策をしないといけないのは事実だもんね。
 配信を終えた僕たちは、ボス部屋に戻って対策を話し合うことにしたよ。