朝目覚めて音色は驚いた。自分の身に何が起こっているのか状況が呑み込めない浦島太郎状態だ。
大きな部屋、大きな窓、大きなテレビもある。そして自分がいるのは大きなベッド。派手さはなく、清潔感のある空間。
ホテルかしら? 瞬間的にそう感じる。そして思い出す、おじさんは? ホームレスと呼ばれる明かりも乏しく、小さく薄汚れたあの空間とは真逆な場所に飛ばされて、まるで異世界転生したかのようだ。
自分の身の回りを確認する。金品などは持っていない、案ずるのは身体だ。だが着衣に乱れはない。少しホッとする。
部屋にある大きな古い時計を見る。重厚感があって、歴史を感じる置時計……『大きなのっぽの古時計』ってこんな感じなのかな? なんて頭の片隅に過る。
時計の長い針は6を、短い針は8と7の間で次の動作を待っていた。
良し悪しは分からないが、高そうな絵が飾ってある。あの小さい絵なら持って行けそうだな……邪な考えが湧いてきたとき、家中に聞こえるような呼び鈴が鳴り響いた。
そして家の人が応えたとは思えないタイミングで『おはようございます』と扉が開かれる音がする。
(どうしよう?!)
音色は自身の立ち位置が分からない……ここに居ていい存在なのか? 泥棒と思われてしまう? 疚しい気持ちは……無きにしろ非ず……その心がとりあえず身を隠す行動に出てしまう。
声が近づいて来る。音色は咄嗟にカーテンの後ろに身を潜めた。