車は曲道をガードレールすれすれに急カーブを描く。遠心力で身体が大きく揺れる。
「お断りします」
「何で?」
「このお嬢様はすっかりご就寝になられていて、起きる気配もありません。どうやってご自宅まで送り届けるのですか?」
「そりゃ、そのうち起きるだろ……おい、前、前!」
「それまで待ってろと?」
「うむ」
今度は前方に大きく身体が引っ張られる。車は急減速してから再びコーナーを曲がっていく。
「『うむ』じゃないですよ、仕事はもう終わりました。私も帰って休みたいです」
「でも、仕事モードに戻ってるじゃないか」
「それは……それは社長が突然社長っぽく振舞うから……」
「では、起きなければ瑞稀の家に泊めてあげなさい」
「は? 嫌だね、一颯の家の方が大きくて部屋も余ってるんだから、一颯が泊めてやれよ」
「何で俺が……」
「拾ったのはお前だろ?」
「交番に届ければ良いのか?」
「落とし主が現れれば、謝礼で二割まで請求できるよ」
「彼女の二割ねぇ……下着とかか?」
「好きにしろ」