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第二部・第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑦

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「はい! いま話すたように、ヨツバちゃんのSNS発信は、投稿に統一性があること、自分の個性を掛け合わせたオリジナリティーがあること……あとは、ファンとの交流を大事にしていることにあると思ってまス! わたすも、ヨツバちゃんにリプを飛ばスて、お返事をもらったことがあって、とっても嬉すかったモンで……」

 四葉とのSNS上でのコミュニケーションを思い出したのか、ほおを掻きながら、照れたような表情で語る雪乃。

「ふ〜ん……さすがは、同世代のカリスマ! やっぱり、白草さんの人気はスゴイんだね。インフルエンサーの影響力を実感させられるわ」

 美奈子が感心したようにつぶやく一方で、鳳花は、なにやら思案顔で新入生の語りに耳を傾けていた。

「どうする鳳花? 今からでも白草さんに頼み込んで、SNS担当として広報部に入部してもらう?」

 友人のようすに、ニヤけ顔でたずねる生徒会長だが、広報部の責任者は、自分時自身を納得させるように、軽くうなずいたあと、

「それには、およばないわ」

余裕の表情で答える。
 予想外の言葉に、怪訝な顔を向ける美奈子に対して、鳳花は、微笑をたたえながら、弾むような声で返答した。

「SNSでの広報を担うのに相応しい人材は、目の前に居るじゃない?」

 広報部部長の言葉に大きな反応を示したのは、友人をからかってやろうと声をかけた生徒会長ではなく、入社面談のような質問に答え続けた新入生だった。

「えっ! えぇ〜〜〜!? わ、わたすですか?」

「えぇ、そうよ、宮野さん」

 先ほどまでの微笑みよりも、さらに優しげな笑顔で、鳳花は一年生に語りかける。

「いま、聞かせてもらったお話しで、宮野さんのヨ《・》ツ《・》バ《・》ち《・》ゃ《・》ん《・》に対する強い想いと同時に、あなた自身の深い洞察力を知ることができたわ。宮野雪乃さん、あなたさえ良ければ、SNSでの情報発信担当として、私たち広報部にチカラを貸してくれない?」

 広報部の責任者の言葉に、再び動揺したのか、雪乃は、

「いや、いや、いや、いや! わたすなんか、ヨツバちゃんに憧れているだけで、とても、あんな風に素敵な投稿なんてできないべ」

と、お国言葉で自分自身への期待の眼差しに、当惑の意思を示す。
 熱烈な勧誘の言葉に困惑し、謙遜する彼女に対して、鳳花は、変わらず穏やかな口調で語りかける。

「そんなことないと思うわ。白草さんのSNSでの活動をとても丁寧に分析できていると思うし、ファンの視点に立つことは、とても大切な姿勢よ」

 そうして、雪乃の持論の的確さを肯定したあと、広報部の部長は、勧誘の口説き文句となる切り札を切った。

「学校行事の節目ごとに、白草さんの活躍の場が広がれば、広報部公認のアカウントとして、彼女のPRを頼みたいんだけどな……」

「わ、わたすが、ヨツバちゃんの活動の宣伝担当――――――」

 鳳花の言葉を受け取った雪乃は、一言つぶやくと、「あわわわわ……」と、震えだし、

「わたすなんかが、そんな恐れ多い役割をさせてもらって良いんだべか?」

と口にしたあと、パイプ椅子の背もたれにもたれかかり、放心状態になってしまった。
 突然の申し出に、脳がオーバーフローを起こしてしまった雪乃に、鳳花は

「もっとも、白草さんが、私たちの活動に快く協力してくれることが前提だけどね、って、聞こえてないか……」

と、話しかけるが、相手の耳に自分の声が届いていないことに気づく。

「お〜い、雪乃ちゃ〜ん?」

 となりの椅子に座る美奈子も下級生に近寄り、手を振りながら声をかけるが、反応がないことを確認して、

「だめだ、彼女がこっちの世界に戻って来るまで、このお話しはいったんお預けみたいね」

と、苦笑しながら鳳花に告げる。

「私としたことが、少し勧誘を焦りすぎたわね……」

 ほおに手を当てながら、反省の弁を述べる広報部部長の表情を観察していた友人は、茶化すような表情で語りかける。

「相手が、こんなになるまで交渉するなんて、あんたにしては珍しいじゃない?」

「そうね……自分の求めているヒトが、急に目の前にあらわれたから……ちょっと、結論を急ぎすぎたわ。彼女に話しを聞いてもらえるようになったら、体験入部のお誘いをしてみるわ」

「新入生にして、SNS担当責任者への抜擢から、えらくスケールダウンした勧誘ね」

「最初に大きな要求をしておけば、そのあとのより小さい要求は受け入れやすくなるでしょう? 心理学で言うところの『ドア・イン・ザ・フェイス』の法則というヤツよ」

 友人が、いつもの調子に戻ったことに少し安堵しながら、美奈子は相づちを打つ。
「ふ〜ん……鳳花は、ホント、そういう話しが好きだよね〜」

「ビジネスから、恋愛まで一般的な人間関係に限らず、心理学からは、学ぶことが多いわ。もちろん、広報活動においてもね」

 花金鳳花が普段の口調を取り戻し、余裕たっぷりの表情で寿美奈子に答えると、三年生の
二人に対面するように座っていた下級生が、申し訳なさそうに声を発した。

「あの〜先輩がた……たいへん言いにくいのでスが……勧誘方法のタネ明かしになりそうな、お二人のお話す、全部聞こえてまスた。わたすには、心理学の(むずか)すいことは、良くわかりませんが……広報部の体験入部なら、ぜひ、させてもらいたいと考えてまス」

 いつの間にか、正気を取り戻していた雪乃の告白に、

「「あら……」」

と、生徒会役員の二人は声を合わせる。

「それじゃ、宮野さん。ウチの部員にあなたを紹介したいから、月曜日の放課後に放送室に来てくれない?」

 鳳花に声をかけられた雪乃が、

「おおきに、ありがとがんす」

と、満面の笑みで答えたことで、新たに一年生が広報部に体験入部することが決定した。


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「はい! いま話すたように、ヨツバちゃんのSNS発信は、投稿に統一性があること、自分の個性を掛け合わせたオリジナリティーがあること……あとは、ファンとの交流を大事にしていることにあると思ってまス! わたすも、ヨツバちゃんにリプを飛ばスて、お返事をもらったことがあって、とっても嬉すかったモンで……」
 四葉とのSNS上でのコミュニケーションを思い出したのか、ほおを掻きながら、照れたような表情で語る雪乃。
「ふ〜ん……さすがは、同世代のカリスマ! やっぱり、白草さんの人気はスゴイんだね。インフルエンサーの影響力を実感させられるわ」
 美奈子が感心したようにつぶやく一方で、鳳花は、なにやら思案顔で新入生の語りに耳を傾けていた。
「どうする鳳花? 今からでも白草さんに頼み込んで、SNS担当として広報部に入部してもらう?」
 友人のようすに、ニヤけ顔でたずねる生徒会長だが、広報部の責任者は、自分時自身を納得させるように、軽くうなずいたあと、
「それには、およばないわ」
余裕の表情で答える。
 予想外の言葉に、怪訝な顔を向ける美奈子に対して、鳳花は、微笑をたたえながら、弾むような声で返答した。
「SNSでの広報を担うのに相応しい人材は、目の前に居るじゃない?」
 広報部部長の言葉に大きな反応を示したのは、友人をからかってやろうと声をかけた生徒会長ではなく、入社面談のような質問に答え続けた新入生だった。
「えっ! えぇ〜〜〜!? わ、わたすですか?」
「えぇ、そうよ、宮野さん」
 先ほどまでの微笑みよりも、さらに優しげな笑顔で、鳳花は一年生に語りかける。
「いま、聞かせてもらったお話しで、宮野さんのヨ《・》ツ《・》バ《・》ち《・》ゃ《・》ん《・》に対する強い想いと同時に、あなた自身の深い洞察力を知ることができたわ。宮野雪乃さん、あなたさえ良ければ、SNSでの情報発信担当として、私たち広報部にチカラを貸してくれない?」
 広報部の責任者の言葉に、再び動揺したのか、雪乃は、
「いや、いや、いや、いや! わたすなんか、ヨツバちゃんに憧れているだけで、とても、あんな風に素敵な投稿なんてできないべ」
と、お国言葉で自分自身への期待の眼差しに、当惑の意思を示す。
 熱烈な勧誘の言葉に困惑し、謙遜する彼女に対して、鳳花は、変わらず穏やかな口調で語りかける。
「そんなことないと思うわ。白草さんのSNSでの活動をとても丁寧に分析できていると思うし、ファンの視点に立つことは、とても大切な姿勢よ」
 そうして、雪乃の持論の的確さを肯定したあと、広報部の部長は、勧誘の口説き文句となる切り札を切った。
「学校行事の節目ごとに、白草さんの活躍の場が広がれば、広報部公認のアカウントとして、彼女のPRを頼みたいんだけどな……」
「わ、わたすが、ヨツバちゃんの活動の宣伝担当――――――」
 鳳花の言葉を受け取った雪乃は、一言つぶやくと、「あわわわわ……」と、震えだし、
「わたすなんかが、そんな恐れ多い役割をさせてもらって良いんだべか?」
と口にしたあと、パイプ椅子の背もたれにもたれかかり、放心状態になってしまった。
 突然の申し出に、脳がオーバーフローを起こしてしまった雪乃に、鳳花は
「もっとも、白草さんが、私たちの活動に快く協力してくれることが前提だけどね、って、聞こえてないか……」
と、話しかけるが、相手の耳に自分の声が届いていないことに気づく。
「お〜い、雪乃ちゃ〜ん?」
 となりの椅子に座る美奈子も下級生に近寄り、手を振りながら声をかけるが、反応がないことを確認して、
「だめだ、彼女がこっちの世界に戻って来るまで、このお話しはいったんお預けみたいね」
と、苦笑しながら鳳花に告げる。
「私としたことが、少し勧誘を焦りすぎたわね……」
 ほおに手を当てながら、反省の弁を述べる広報部部長の表情を観察していた友人は、茶化すような表情で語りかける。
「相手が、こんなになるまで交渉するなんて、あんたにしては珍しいじゃない?」
「そうね……自分の求めているヒトが、急に目の前にあらわれたから……ちょっと、結論を急ぎすぎたわ。彼女に話しを聞いてもらえるようになったら、体験入部のお誘いをしてみるわ」
「新入生にして、SNS担当責任者への抜擢から、えらくスケールダウンした勧誘ね」
「最初に大きな要求をしておけば、そのあとのより小さい要求は受け入れやすくなるでしょう? 心理学で言うところの『ドア・イン・ザ・フェイス』の法則というヤツよ」
 友人が、いつもの調子に戻ったことに少し安堵しながら、美奈子は相づちを打つ。
「ふ〜ん……鳳花は、ホント、そういう話しが好きだよね〜」
「ビジネスから、恋愛まで一般的な人間関係に限らず、心理学からは、学ぶことが多いわ。もちろん、広報活動においてもね」
 花金鳳花が普段の口調を取り戻し、余裕たっぷりの表情で寿美奈子に答えると、三年生の
二人に対面するように座っていた下級生が、申し訳なさそうに声を発した。
「あの〜先輩がた……たいへん言いにくいのでスが……勧誘方法のタネ明かしになりそうな、お二人のお話す、全部聞こえてまスた。わたすには、心理学の|難《むずか》すいことは、良くわかりませんが……広報部の体験入部なら、ぜひ、させてもらいたいと考えてまス」
 いつの間にか、正気を取り戻していた雪乃の告白に、
「「あら……」」
と、生徒会役員の二人は声を合わせる。
「それじゃ、宮野さん。ウチの部員にあなたを紹介したいから、月曜日の放課後に放送室に来てくれない?」
 鳳花に声をかけられた雪乃が、
「おおきに、ありがとがんす」
と、満面の笑みで答えたことで、新たに一年生が広報部に体験入部することが決定した。