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SCENE000 始まりは肝試し

ー/ー



 きっかけは、よくあることだと思う。

 ある日のこと、僕は、クラスメイトたちから誘われていた。

「よう、三枝(さえぐさ)。ちょっといいか?」

「うん、どうしたの?」

 僕の目の前にいるのは、家が近所だからということでよく遊ぶことのあった数人の男友だちだ。

「近所にある、無人のダンジョンに肝試しに行かないか?」

「ええっ、僕たちの年齢じゃ、ダンジョンは立ち入り禁止でしょ? なんでそんなことをしようと思うんだよ」

「うるせえ。無人だから問題ねえだろうよ。モンスターのいない一本道のダンジョンだぞ?」

「はは~ん。三枝くん、もしかして怖いのかい?」

 僕が断ろうとすると、そろってからかってくる。

「怖いんじゃないよ。ダンジョンは十六歳から、法律でそう決まってるでしょ?」

 友だちの誘いに乗らないのは、怖いからじゃない。単純に法律を守るからだ。
 だけど、そんなことにはお構いなしに、みんなは僕を笑ってくる。さすがにこれにはカチンときてしまう。

「まったく、しょうがないな。今回だけだからね」

「よっし、それじゃ今夜早速行こうぜ」

「おーっ!」

 結局、断り切れずに、僕も一緒に行くことになってしまった。

 だけど、実は僕はわくわくしていた。
 中学生になると、入学式直後に探索者適性チェックというものを全員が受けることになっている。これは、将来ダンジョンに潜れるかどうかを調べるために行われるんだ。ダンジョンに潜れるかどうかで、授業内容が変わっちゃうからね。
 ちなみに僕は、そのチェックで適性ありと出ていたんだ。
 中学三年生になってからというもの、高校生になればダンジョンに潜って、探索配信者となって有名になるつもりでいた。なにせ今の世の中、探索者は人気の職業だもん。

(配信用のドローンだって買ってあるんだ。せっかくだから持っていくかな)

 僕は楽しみを抑えきれずに、小さなウェストポーチの中に配信用のドローンと懐中電灯を入れて、約束の時間になるのを待った。

 真夜中、僕はこっそりと家を抜け出す。
 ウェストポーチを持った僕は、待ち合わせとなっているダンジョンの入口まで急いだ。
 普通のダンジョンは管理が厳しいのだけど、中が空っぽと認められたダンジョンには警備員はいない。なので、今の僕たちのようにこっそりと中に忍びこもうという事件は後を絶たない。全国のニュースでも、補導されたという話が時々流れている。
 ばれたらこっぴどく怒られるというのに後を絶たないのは、きっと好奇心が強いからなのかもしれない。特に探索者適性ありという結果が出ていると、なおさら我慢ができなくなるんだと思う。
 そんなわけで、今夜は僕もその誘惑に勝てずに、ダンジョンまでやってきた。

「おっせーぞ、三枝」

「うん、ごめん。親の目を盗んで出てくるのに苦労しちゃった」

「それじゃ、さっさと入って往復してこようぜ」

 集まるなり、僕たちはすぐさま無人ダンジョンの中へと入っていく。

 中はごつごつとした岩肌が目立つ、普通の洞窟といった感じだ。
 かなり大きな通路が奥まで続いているし、思ったよりも中は明るかった。これなら懐中電灯は要らなかったかな。
 真っ暗で怖かった外に比べれば、ダンジョンの中の方がなぜか落ち着く感じがした。

「なんだか、雰囲気が違いませんかね……」

 僕が感動していると、一緒に来ていた友だちの一人が怖がっている。

「へっ、何をびびって……」

 バカにしたように発言していた、友だちが振り向いた瞬間に顔を青ざめさせている。

「な、なんだ。あれは……」

「あれ?」

 僕たちもくるりとその方向を見ると、思わず体が固まってしまう。

「も、モンスター?!」

「嘘だろ。ここは無人ダンジョンのはずだろ?!」

 無人ダンジョンということは、モンスターすらもいないはず。
 だけど、どういうわけか僕たちのすぐ近くにまで、一体の大きな蛇型のモンスターが迫っていたのだ。

「にに、逃げろーっ!」

 大声とともに、僕たちは一斉に外に向かって走り出す。
 とても必死だ。だって、僕たちは無人ダンジョンだと思って、何も持たずにやって来ているんだもの。あんな大きなモンスターの相手ができるわけがないんだ。
 だけど、モンスターは僕たちをしつこく追いかけてくる。
 このままでは全員が食べられて終わってしまう。
 そう思った時だった。

 ドンッ!

(えっ?)

 衝撃を感じた時、僕は男友だちに突き飛ばされていた。

「足の遅いお前に合わせていたら、俺たちは全員あいつに食われちまう。だから、俺たちのために犠牲になってくれ」

「そうだぞ、三枝。たまには役に立てよ」

「じゃあな」

 そんな……。
 友だちだと思っていたのに……。危険にさらされた時、僕はあっさりと裏切られてしまった。

「あたっ!」

 僕は突き飛ばされたショックで尻餅をついてしまう。
 動けない僕に、黒い影が覆いかぶさってくる。

「シャーーーーッ!!」

 大きな蛇の口が、僕に向かってくる。
 ダメだ。怖くてもう動けない。こんなことなら、こっそりとでもいいから、配信用のドローンを動かしておけばよかったな。
 後悔が頭に浮かんだ瞬間、僕は大きな蛇の口の中に閉じ込められてしまった。
 巨大な蛇に飲み込まれて僕の人生はここで終わりなんだ。
 真っ暗な空間の中、恐怖と諦めを感じた僕は、そのまま意識を失ってしまった。


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 きっかけは、よくあることだと思う。
 ある日のこと、僕は、クラスメイトたちから誘われていた。
「よう、|三枝《さえぐさ》。ちょっといいか?」
「うん、どうしたの?」
 僕の目の前にいるのは、家が近所だからということでよく遊ぶことのあった数人の男友だちだ。
「近所にある、無人のダンジョンに肝試しに行かないか?」
「ええっ、僕たちの年齢じゃ、ダンジョンは立ち入り禁止でしょ? なんでそんなことをしようと思うんだよ」
「うるせえ。無人だから問題ねえだろうよ。モンスターのいない一本道のダンジョンだぞ?」
「はは~ん。三枝くん、もしかして怖いのかい?」
 僕が断ろうとすると、そろってからかってくる。
「怖いんじゃないよ。ダンジョンは十六歳から、法律でそう決まってるでしょ?」
 友だちの誘いに乗らないのは、怖いからじゃない。単純に法律を守るからだ。
 だけど、そんなことにはお構いなしに、みんなは僕を笑ってくる。さすがにこれにはカチンときてしまう。
「まったく、しょうがないな。今回だけだからね」
「よっし、それじゃ今夜早速行こうぜ」
「おーっ!」
 結局、断り切れずに、僕も一緒に行くことになってしまった。
 だけど、実は僕はわくわくしていた。
 中学生になると、入学式直後に探索者適性チェックというものを全員が受けることになっている。これは、将来ダンジョンに潜れるかどうかを調べるために行われるんだ。ダンジョンに潜れるかどうかで、授業内容が変わっちゃうからね。
 ちなみに僕は、そのチェックで適性ありと出ていたんだ。
 中学三年生になってからというもの、高校生になればダンジョンに潜って、探索配信者となって有名になるつもりでいた。なにせ今の世の中、探索者は人気の職業だもん。
(配信用のドローンだって買ってあるんだ。せっかくだから持っていくかな)
 僕は楽しみを抑えきれずに、小さなウェストポーチの中に配信用のドローンと懐中電灯を入れて、約束の時間になるのを待った。
 真夜中、僕はこっそりと家を抜け出す。
 ウェストポーチを持った僕は、待ち合わせとなっているダンジョンの入口まで急いだ。
 普通のダンジョンは管理が厳しいのだけど、中が空っぽと認められたダンジョンには警備員はいない。なので、今の僕たちのようにこっそりと中に忍びこもうという事件は後を絶たない。全国のニュースでも、補導されたという話が時々流れている。
 ばれたらこっぴどく怒られるというのに後を絶たないのは、きっと好奇心が強いからなのかもしれない。特に探索者適性ありという結果が出ていると、なおさら我慢ができなくなるんだと思う。
 そんなわけで、今夜は僕もその誘惑に勝てずに、ダンジョンまでやってきた。
「おっせーぞ、三枝」
「うん、ごめん。親の目を盗んで出てくるのに苦労しちゃった」
「それじゃ、さっさと入って往復してこようぜ」
 集まるなり、僕たちはすぐさま無人ダンジョンの中へと入っていく。
 中はごつごつとした岩肌が目立つ、普通の洞窟といった感じだ。
 かなり大きな通路が奥まで続いているし、思ったよりも中は明るかった。これなら懐中電灯は要らなかったかな。
 真っ暗で怖かった外に比べれば、ダンジョンの中の方がなぜか落ち着く感じがした。
「なんだか、雰囲気が違いませんかね……」
 僕が感動していると、一緒に来ていた友だちの一人が怖がっている。
「へっ、何をびびって……」
 バカにしたように発言していた、友だちが振り向いた瞬間に顔を青ざめさせている。
「な、なんだ。あれは……」
「あれ?」
 僕たちもくるりとその方向を見ると、思わず体が固まってしまう。
「も、モンスター?!」
「嘘だろ。ここは無人ダンジョンのはずだろ?!」
 無人ダンジョンということは、モンスターすらもいないはず。
 だけど、どういうわけか僕たちのすぐ近くにまで、一体の大きな蛇型のモンスターが迫っていたのだ。
「にに、逃げろーっ!」
 大声とともに、僕たちは一斉に外に向かって走り出す。
 とても必死だ。だって、僕たちは無人ダンジョンだと思って、何も持たずにやって来ているんだもの。あんな大きなモンスターの相手ができるわけがないんだ。
 だけど、モンスターは僕たちをしつこく追いかけてくる。
 このままでは全員が食べられて終わってしまう。
 そう思った時だった。
 ドンッ!
(えっ?)
 衝撃を感じた時、僕は男友だちに突き飛ばされていた。
「足の遅いお前に合わせていたら、俺たちは全員あいつに食われちまう。だから、俺たちのために犠牲になってくれ」
「そうだぞ、三枝。たまには役に立てよ」
「じゃあな」
 そんな……。
 友だちだと思っていたのに……。危険にさらされた時、僕はあっさりと裏切られてしまった。
「あたっ!」
 僕は突き飛ばされたショックで尻餅をついてしまう。
 動けない僕に、黒い影が覆いかぶさってくる。
「シャーーーーッ!!」
 大きな蛇の口が、僕に向かってくる。
 ダメだ。怖くてもう動けない。こんなことなら、こっそりとでもいいから、配信用のドローンを動かしておけばよかったな。
 後悔が頭に浮かんだ瞬間、僕は大きな蛇の口の中に閉じ込められてしまった。
 巨大な蛇に飲み込まれて僕の人生はここで終わりなんだ。
 真っ暗な空間の中、恐怖と諦めを感じた僕は、そのまま意識を失ってしまった。