第二十話 前編 面頬の武者
ー/ー
「ガアアアァァァアッ!!」
悲鳴に近い叫び声を上げながら、ガンリョウの身体が崩壊していく。
水流の圧力で身体は上下でふたつに別れ、足下を固定していた氷が崩壊する。
支えを失くした体はそのまま水の流れに乗り、瓦礫を押し流すように部屋の壁へガンリョウの身体を叩きつけた。
水流が止み、様子を窺う。
ガンリョウに動く様子はない。というよりも、動けないのか。
「やったかっ!?」
「勇魚。それ言っちゃうと復活してきそうだからよそう」
「お、そうか?じゃあ……やっつけたな!でどうだ」
「まあ、それなら多分……大丈夫かなぁ?」
ともあれまずは近づいて相手の状態を慎重に確認するべきだ。
普通の人間ならば間違いなく命は無い傷だが、最後の最後まで叫び声を上げていたほどだ。
相手は妖怪。
常識にとらわれてはいけない。
「……うぅ……」
全員で様子を確認しに行けば、やはりというか、想像した通り、ガンリョウには未だ息があった。
呻き声を上げて僅かに此方へ視線を送るその目は、変わらず此方への敵意を孕んでいる。
「こんな状態になっても息があるなんてな。大した奴だ」
「まさか負けるとはね……。この体では動きたくても……暫く動けん。煮るなり焼くなり好きにすると良い……」
ガンリョウが特別頑丈なのか、そもそも妖怪であるが故かわからない。
少なくとも死にかけているわけではなさそうだ。
とはいえさすがにこの状態では動けない様子だし、そもそも今の言葉を最後に気絶してしまった。
このまま中蘇芳へ連絡の馬をよこして連行することになるだろう。
「ハヌマンと狛もお疲れ。二人ともよく戦ってくれたよ」
「桃様もお疲れ様です。ご無事で本当に良かった」
「まったくだ。二人とも俺らが来る前から戦ってたんだろ?こいつの身体を踏ん縛ったりは俺らがやるから、少し休んでろよ」
「そうさせてもらうよ。狛、俺達は先に戻……」
周りに目を向けて、桃は違和感に気が付く。
具体的に何が、という訳ではない。
言ってしまえばそんな感覚がするというだけ。
この世界に来て戦場へ出るようになってから何度も経験してきた、肌がざわつくような感覚。
勇魚達も気付いている。
桃と勇魚、狛とハヌマンがそれぞれ背中合わせになるような形で四方に陣を組んで武器を構え、警戒を強める。
されど激しい戦いの後でそれぞれ大なり小なり疲労が溜まっている。
解放されたと思ったところで再度長い事緊張状態を保つのはなかなかに辛いものがあった。
「いやな感じだ……この休みたい時に空気読めないな全く」
「同感だ……。桃、連戦だがやれそうか?」
「やるしかない。ハヌマン、狛も、すまないがもうひと踏ん張り頼む」
「乗り掛かった舟だもん、任せて」
「私もまだまだやれます」
周囲に変わらず注意を払いながら、二人の言葉に頷く。
「成程。警戒を解かずすぐに体制を整えるか。良い勘だ」
辺りに満ちていた静寂を割いたのは、聞きなれない声だった。
その在りかは、全員の背後。
即ち四方に陣を構えたそのど真ん中。
「!?」
気が付いたのは全員ほぼ同時だった。
蜘蛛の子を散らすようにそれぞれがその声の主から距離を取る。
「なんだ、あいつは……」
勇魚の言葉が桃の気持ちを代弁してくれた。
突然現れた声の主は一振りの大太刀を背にした、白磁のように美しい鎧姿の武者。
大鎧で完全武装したその人物は兜を被り、面頬を付けている為に顔は分からない。
背丈は桃より小さい。幹久と同じくらいだ。
声は籠っていて判別がつかないが、中性的な印象を受ける。
しかし面頬に覆われた顔は表情も読めず、桃達四人を前にたった一人で出てきた目的も分からない。
「あんたは何者だ?何が目的だ?」
「何者か、か。答える義理は無い。目的は……元々ここの様子を見に来ただけだったが、今はそうだな。そこに転がっている敗北者を回収しなければならなくなった」
「それは困る。こいつにも聞きたいことは色々あるんだ」
「そうか。だがこちらも聞かれたくないことはある。連れ帰らせてもらおう」
そう言った鎧武者は、背にした大太刀の柄に手をかける。
実力行使で来るという事らしい。
(さてどう動く……)
その一挙手一投足を、桃は見逃さないようつぶさに観察する。
相手の武器があの大太刀とすれば、動き始めてから武器を抜いて攻撃する一連の動きはさほど早くないはず。
体感した時間は酷く長く感じたが、恐らくは実際の時間は長くても数秒。
そして目の前の武者は、手にかけた大太刀をゆっくりと抜いていく。
(来たっ……!)
桃がそう警戒した直後に感じたのは鈍く重い衝撃。
それが横なぎの斬撃を剣で無意識にギリギリで防いだことによる衝撃であった事に、吹っ飛ばされながら気が付く。
空中で身体を捻って体制を立て直し、一緒に吹っ飛ばされた狛の身体を受け止める。
「ごめん、手間かけさせて。ありがとう」
「お互い人の形を保てていて何よりだ」
彼女もぎりぎりで受け止めることが出来たらしい。
というよりも、人の形を保っている時点でそれは分かっていた。
あれは防げていなければ身体が両断されている威力だ。
再度桃が武者の方を見やれば、勇魚が大太刀を振るった武者へ槍を突き出すのが見えた。
「でかい武器振ってる割には早いな!」
「そちらも、なかなかの膂力を持っているようだ」
「へっ、褒めてくれるのは嬉しいが、こうも簡単に防がれるといっそ嫌味に聞こえるな!」
互いに鍔ぜり合ってから距離を取り、再度打ち合う。
お互いに長い間合いを持つ武器だ。
突き、払い、叩きつけるを巧みに使い分けてどうにか鎧武者と渡り合っているが、はっきりいって押されている。
体格に見合わない大太刀を振るう姿にはぶれや揺らぎはなく、まるで舞でも踊るかの様に軽やかな動きだ。
しかしその軽やかさからは考えられない程に、勇魚を襲う刃には確かな殺意が乗っていた。
そしてその動きから繰り出される一撃は勇魚と打ち合っても押し返されることは無い。
「大鎧だけでも相当な重量があるはずなのに、なんて奴だ……」
思わず愚痴のように言葉が零れる。
直ぐにでも助けに入らなければならなかったが、最初の一撃を防御したときに痛めたのか、腕にずきりと痛みが走る。
やがて懐に入る隙を伺いながら二人の打ち合いを観察するうちに、辛うじて保たれていた均衡が崩れ去ってしまった。
「うおぉ!?」
勇魚が槍を叩き下ろした直後、その槍を数歩下がることで躱した鎧武者が槍を踏みつける。
そしてそのまま大太刀で刈り取る様に、槍の柄を切断してしまった。
「勇魚!」
「させません!」
そのまま大太刀が勇魚の首を刈り取ろうとした刹那、それを救ったのはハヌマンだった。
ハヌマンは両手の硬鞭で挟み込むようにその攻撃を防御して勇魚を逃がすと、そのまま硬鞭を大太刀に滑らせる様に懐に飛び込んだ。
ハヌマンの硬鞭が鎧武者の横っ腹に迫る。
「甘い」
しかし鎧武者は懐に跳びこんだハヌマンを前蹴りで押し出すように蹴り飛ばし、接近を許さない。
その後桃と狛が再度接近して背後から斬りかかったが大太刀と鎧で防がれてしまう。
それでも引き続き二人で攻めるが、今の桃と狛では悲しいことにパワー不足だ。
大太刀の攻撃は体の回転での遠心力を活かしたものだが、軌道は読みやすい。
しかしその間合いの長さゆえに懐へ飛び込むまでに一度は躱すなり防御するなりが求められる。
躱せれば一番だが、大太刀との戦闘経験がない桃にとってそれはまだ難しく、かといって防御すれば押し戻されてしまう。
(魔法……使わせてくれるか……?こいつが)
魔法であれば、大太刀の間合いの外から攻撃も可能だろう。
しかし初撃でみせた攻撃の速さを思えば、へたに魔法の発動で隙を作るのも危険だ。
いくら自分が魔法の発動にかかる時間が短いとしても、隙は出来てしまう。
(くそっ、なんだって今こんなのが出てくるんだ……!)
お陰で特訓の課題が山積みだ。勇魚は武器を失い戦闘不能。
狛に武器を作ってもらおうにもやはり隙が無い。
「そろそろ諦めてもらえないか。今のお前たちでは私に敵わない」
「戯言を!」
「待てハヌマン。落ち着け」
鎧武者がうんざりした様子で、挑発的な言葉を吐く。
桃は反応したハヌマンを手で静止して、思考を巡らせた。
確かに此方に勝ち目は薄い。
命の使いどころは少なくともここではない。
ここは大人しくガンリョウの身柄を渡して無事に戻ることを、命を優先すべきだ。
その言葉を飲んで撤退をしようとしたその時だった。
「なにをしている」
突如つむじ風と共に現れ、そんな一言をもたらした影はハヌマンの丁度背後。
その声の主は片手には抜き身の太刀があって、今まさにハヌマンのわき腹を切り裂こうと構えていた。
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「ガアアアァァァアッ!!」
悲鳴に近い叫び声を上げながら、ガンリョウの身体が崩壊していく。
水流の圧力で身体は上下でふたつに別れ、足下を固定していた氷が崩壊する。
支えを失くした体はそのまま水の流れに乗り、瓦礫を押し流すように部屋の壁へガンリョウの身体を叩きつけた。
水流が止み、様子を|窺《うかが》う。
ガンリョウに動く様子はない。というよりも、動けないのか。
「やったかっ!?」
「|勇魚《いさな》。それ言っちゃうと復活してきそうだからよそう」
「お、そうか?じゃあ……やっつけたな!でどうだ」
「まあ、それなら多分……大丈夫かなぁ?」
ともあれまずは近づいて相手の状態を慎重に確認するべきだ。
普通の人間ならば間違いなく命は無い傷だが、最後の最後まで叫び声を上げていたほどだ。
相手は妖怪。
常識にとらわれてはいけない。
「……うぅ……」
全員で様子を確認しに行けば、やはりというか、想像した通り、ガンリョウには未だ息があった。
呻き声を上げて僅かに此方へ視線を送るその目は、変わらず此方への敵意を孕んでいる。
「こんな状態になっても息があるなんてな。大した奴だ」
「まさか負けるとはね……。この体では動きたくても……暫く動けん。煮るなり焼くなり好きにすると良い……」
ガンリョウが特別頑丈なのか、そもそも妖怪であるが故かわからない。
少なくとも死にかけているわけではなさそうだ。
とはいえさすがにこの状態では動けない様子だし、そもそも今の言葉を最後に気絶してしまった。
このまま中|蘇芳《すおう》へ連絡の馬をよこして連行することになるだろう。
「ハヌマンと狛もお疲れ。二人ともよく戦ってくれたよ」
「桃様もお疲れ様です。ご無事で本当に良かった」
「まったくだ。二人とも俺らが来る前から戦ってたんだろ?こいつの身体を踏ん縛ったりは俺らがやるから、少し休んでろよ」
「そうさせてもらうよ。狛、俺達は先に戻……」
周りに目を向けて、桃は違和感に気が付く。
具体的に何が、という訳ではない。
言ってしまえばそんな感覚がするというだけ。
この世界に来て戦場へ出るようになってから何度も経験してきた、肌がざわつくような感覚。
|勇魚《いさな》達も気付いている。
桃と|勇魚《いさな》、狛とハヌマンがそれぞれ背中合わせになるような形で四方に陣を組んで武器を構え、警戒を強める。
されど激しい戦いの後でそれぞれ大なり小なり疲労が溜まっている。
解放されたと思ったところで再度長い事緊張状態を保つのはなかなかに辛いものがあった。
「いやな感じだ……この休みたい時に空気読めないな全く」
「同感だ……。桃、連戦だがやれそうか?」
「やるしかない。ハヌマン、狛も、すまないがもうひと踏ん張り頼む」
「乗り掛かった舟だもん、任せて」
「私もまだまだやれます」
周囲に変わらず注意を払いながら、二人の言葉に頷く。
「成程。警戒を解かずすぐに体制を整えるか。良い勘だ」
辺りに満ちていた静寂を割いたのは、聞きなれない声だった。
その在りかは、全員の背後。
即ち四方に陣を構えたそのど真ん中。
「!?」
気が付いたのは全員ほぼ同時だった。
蜘蛛の子を散らすようにそれぞれがその声の主から距離を取る。
「なんだ、あいつは……」
|勇魚《いさな》の言葉が桃の気持ちを代弁してくれた。
突然現れた声の主は一振りの大太刀を背にした、白磁のように美しい鎧姿の武者。
大鎧で完全武装したその人物は兜を被り、面頬を付けている為に顔は分からない。
背丈は桃より小さい。幹久と同じくらいだ。
声は籠っていて判別がつかないが、中性的な印象を受ける。
しかし面頬に覆われた顔は表情も読めず、桃達四人を前にたった一人で出てきた目的も分からない。
「あんたは何者だ?何が目的だ?」
「何者か、か。答える義理は無い。目的は……元々ここの様子を見に来ただけだったが、今はそうだな。そこに転がっている敗北者を回収しなければならなくなった」
「それは困る。こいつにも聞きたいことは色々あるんだ」
「そうか。だがこちらも聞かれたくないことはある。連れ帰らせてもらおう」
そう言った鎧武者は、背にした大太刀の柄に手をかける。
実力行使で来るという事らしい。
(さてどう動く……)
その一挙手一投足を、桃は見逃さないようつぶさに観察する。
相手の武器があの大太刀とすれば、動き始めてから武器を抜いて攻撃する一連の動きはさほど早くないはず。
体感した時間は酷く長く感じたが、恐らくは実際の時間は長くても数秒。
そして目の前の武者は、手にかけた大太刀をゆっくりと抜いていく。
(来たっ……!)
桃がそう警戒した直後に感じたのは鈍く重い衝撃。
それが横なぎの斬撃を剣で無意識にギリギリで防いだことによる衝撃であった事に、吹っ飛ばされながら気が付く。
空中で身体を捻って体制を立て直し、一緒に吹っ飛ばされた狛の身体を受け止める。
「ごめん、手間かけさせて。ありがとう」
「お互い人の形を保てていて何よりだ」
彼女もぎりぎりで受け止めることが出来たらしい。
というよりも、人の形を保っている時点でそれは分かっていた。
あれは防げていなければ身体が両断されている威力だ。
再度桃が武者の方を見やれば、|勇魚《いさな》が大太刀を振るった武者へ槍を突き出すのが見えた。
「でかい武器振ってる割には早いな!」
「そちらも、なかなかの|膂力《りょりょく》を持っているようだ」
「へっ、褒めてくれるのは嬉しいが、こうも簡単に防がれるといっそ嫌味に聞こえるな!」
互いに|鍔《つば》ぜり合ってから距離を取り、再度打ち合う。
お互いに長い間合いを持つ武器だ。
突き、払い、叩きつけるを巧みに使い分けてどうにか鎧武者と渡り合っているが、はっきりいって押されている。
体格に見合わない大太刀を振るう姿にはぶれや揺らぎはなく、まるで舞でも踊るかの様に軽やかな動きだ。
しかしその軽やかさからは考えられない程に、|勇魚《いさな》を襲う刃には確かな殺意が乗っていた。
そしてその動きから繰り出される一撃は|勇魚《いさな》と打ち合っても押し返されることは無い。
「大鎧だけでも相当な重量があるはずなのに、なんて奴だ……」
思わず愚痴のように言葉が零れる。
直ぐにでも助けに入らなければならなかったが、最初の一撃を防御したときに痛めたのか、腕にずきりと痛みが走る。
やがて懐に入る隙を伺いながら二人の打ち合いを観察するうちに、辛うじて保たれていた均衡が崩れ去ってしまった。
「うおぉ!?」
|勇魚《いさな》が槍を叩き下ろした直後、その槍を数歩下がることで躱した鎧武者が槍を踏みつける。
そしてそのまま大太刀で刈り取る様に、槍の柄を切断してしまった。
「|勇魚《いさな》!」
「させません!」
そのまま大太刀が|勇魚《いさな》の首を刈り取ろうとした刹那、それを救ったのはハヌマンだった。
ハヌマンは両手の硬鞭で挟み込むようにその攻撃を防御して|勇魚《いさな》を逃がすと、そのまま硬鞭を大太刀に滑らせる様に懐に飛び込んだ。
ハヌマンの硬鞭が鎧武者の横っ腹に迫る。
「甘い」
しかし鎧武者は懐に跳びこんだハヌマンを前蹴りで押し出すように蹴り飛ばし、接近を許さない。
その後桃と狛が再度接近して背後から斬りかかったが大太刀と鎧で防がれてしまう。
それでも引き続き二人で攻めるが、今の桃と狛では悲しいことにパワー不足だ。
大太刀の攻撃は体の回転での遠心力を活かしたものだが、軌道は読みやすい。
しかしその間合いの長さゆえに懐へ飛び込むまでに一度は躱すなり防御するなりが求められる。
躱せれば一番だが、大太刀との戦闘経験がない桃にとってそれはまだ難しく、かといって防御すれば押し戻されてしまう。
(魔法……使わせてくれるか……?こいつが)
魔法であれば、大太刀の間合いの外から攻撃も可能だろう。
しかし初撃でみせた攻撃の速さを思えば、へたに魔法の発動で隙を作るのも危険だ。
いくら自分が魔法の発動にかかる時間が短いとしても、隙は出来てしまう。
(くそっ、なんだって今こんなのが出てくるんだ……!)
お陰で特訓の課題が山積みだ。|勇魚《いさな》は武器を失い戦闘不能。
狛に武器を作ってもらおうにもやはり隙が無い。
「そろそろ諦めてもらえないか。今のお前たちでは私に敵わない」
「戯言を!」
「待てハヌマン。落ち着け」
鎧武者がうんざりした様子で、挑発的な言葉を吐く。
桃は反応したハヌマンを手で静止して、思考を巡らせた。
確かに此方に勝ち目は薄い。
命の使いどころは少なくともここではない。
ここは大人しくガンリョウの身柄を渡して無事に戻ることを、命を優先すべきだ。
その言葉を飲んで撤退をしようとしたその時だった。
「なにをしている」
突如つむじ風と共に現れ、そんな一言をもたらした影はハヌマンの丁度背後。
その声の主は片手には抜き身の太刀があって、今まさにハヌマンのわき腹を切り裂こうと構えていた。