「フォークダンスの基本は左回り……必ず反時計回りに回る……そして我が県立的山高等学校では『藁の中の七面鳥』は2周する!」
「だから……え? でもそうしたら28番以内なら良くない?」
再び会議室(生徒会室)が暑くなってきた。多分それは恭吾がまた立ち上がったからだろう。
恋実は少しだけ窓を開ける。
「ふふふ……俺は文化委員だからな……フォークダンスで優香ちゃんと手を繋ぐだけではダメなんだよ……曲が終わって次に行こうと思ったら『あ、終わっちゃった』って笑う優香ちゃんの最後の笑顔を俺のものにしたかった……」
「……バカじゃないの……でもそうしたら28番目じゃないの? あ、分かった保険掛けたんでしょ、最悪近くで見れるように」
やっぱり窓を閉めた。
「バカって言うな、このバカチンが。俺がそんな失敗をすると思うか? 言ったろ『文化委員』だって!」
こぶしを握り締めて天に突きあげる! 何をそんなに興奮できるのであろうか!?
やっぱり窓を開けた。
もはや恭吾には恋実の挙動など、いいや、その姿さえも映していない。彼の目には自身を称える群衆が見えていた。
彼は愚鈍な聴者たちに訴え続ける。
「できるなら本当は優香ちゃんの手を握らせるのはできる限り少なくしたい、しかしそれを我が校の伝統が邪魔をする……そこで俺は考えた『最後を1クールだけ短くしても気付かない』ってことさ」
もはや群衆の中のサクラと化した恋実の声が聞こえる。
「!! まさか! 恭吾君……あなたって人は……」
「そう、2曲目は2、分36秒で、お、終わるよう細工をし、て、おい、おいたのさ」
恭吾の声が寒さで震えていたので窓を閉めた。
多分それでも彼の目は覚めることはないだろう。