表示設定
表示設定
目次 目次




20.猫だらけの部屋

ー/ー



 店を出て、俺は白砂サンにくっついて、初めてミナミの部屋を訪れた。
 坂の上のマンションは、外観だけでも豪勢だと思っていたが、(ハイ)ってみたら中もシッカリ豪勢だった。
 見栄えだけでなくセキュリティも万全で、エントランスに(ハイ)るにはまず暗証番号を入力して、入口のロックを外さなければならない。
 エントランスを見渡せる大きな窓が付いた管理人室には、警備会社の制服を着た人間が二人も詰めていて、しかもあの様子では24時間常駐しているんだろう。
 あちこちに俺のような素人が見ても判る防犯カメラがあるが、見えないトコロにもついてそうな雰囲気だ。
 白砂サンは管理人室に訪問の理由を申告して、エントランス奥にあるエレベーターに向かう。
 個々の部屋はホテルみたいに、カードキーで解錠する扉だった。

「カード、もらってるんだ?」
「うむ。この部屋は、ミナミの言わば "別宅" のようなものらしい」

 ああ、そういえば以前ホクトが、大手町の部屋がどうのと言っていたっけ? とか思ってる間に、白砂サンが解錠してくれたので俺たちは部屋に(ハイ)ったのだが。
 俺は、コグマの言っていた「猫が100匹いる」が、あながち "嘘でも誇張でもナイ" と言うのを知った。

 白砂サンが玄関扉を開けた途端に、そこにいた数匹の猫が、まるでマイケル・ジャクソンのPVみたいな動きで、バッと一斉にこちらを振り返る。

「多聞君、扉を早く閉めてくれたまえ」
「ああ、はい」

 そして、見知らぬ俺に警戒している猫が、威嚇をしながら俺を回り込もうとしている。
 オートロックでゆっくり閉まりかけていた扉を引いて、俺は猫が外に出ていかないように慌てて閉めた。

「靴のまま、上がって構わないと言われている」
「へ……へえ〜」

 床にはなんかのマットが敷き詰められていて、どうやら猫のために部屋は色々と手が入れられているらしい。
 廊下の壁には、猫が遊ぶための棚がいっぱい取り付けられていて、何匹かは上の(ほう)から俺を威嚇してくる。
 一方の白砂サンは大人気で、そして白砂サン自身も猫が大好きオーラが出まくりで、通りかかりで手の届く個体全部を、一匹残らず撫でながら奥へと進んでいく。
 リビングと思わしき部屋への扉は開け(ハナ)たれていたが、中に(ハイ)るとそこはもう、言葉通り猫だらけだった。

 ギュウギュウってわけじゃないが、どこにもかしこにも猫がいて、視界に猫が(ハイ)らない場所が無い……どころか、視界に猫が二匹以下になることがなく、それらがてんでに動き回っているので、だんだん壁とか床が波打ってるような気がしてくる。
 コグマの言う「座る場所」どころか、警戒心の(うす)いのは既にもう俺の足元にまとわりついているし、平衡感覚がおかしくなってめまいがしたとしても、不用意によろけたら猫を踏みそうで怖い。
 室内の猫密度の高さに、コレってイマドキ流行りの "多頭飼育崩壊" なんじゃないの? と最初は思ったのだが、一匹一匹の毛並みも綺麗だし、猫臭いことは猫臭いが、それだって普通に息が出来る程度に空調も効いているから、手入れは行き届いているんだろう。
 だが、これは正直、そうとうな猫好きでなければ、かなりの苦行部屋と言えた。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 21.白砂サンの気遣い


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 店を出て、俺は白砂サンにくっついて、初めてミナミの部屋を訪れた。
 坂の上のマンションは、外観だけでも豪勢だと思っていたが、|入《ハイ》ってみたら中もシッカリ豪勢だった。
 見栄えだけでなくセキュリティも万全で、エントランスに|入《ハイ》るにはまず暗証番号を入力して、入口のロックを外さなければならない。
 エントランスを見渡せる大きな窓が付いた管理人室には、警備会社の制服を着た人間が二人も詰めていて、しかもあの様子では24時間常駐しているんだろう。
 あちこちに俺のような素人が見ても判る防犯カメラがあるが、見えないトコロにもついてそうな雰囲気だ。
 白砂サンは管理人室に訪問の理由を申告して、エントランス奥にあるエレベーターに向かう。
 個々の部屋はホテルみたいに、カードキーで解錠する扉だった。
「カード、もらってるんだ?」
「うむ。この部屋は、ミナミの言わば "別宅" のようなものらしい」
 ああ、そういえば以前ホクトが、大手町の部屋がどうのと言っていたっけ? とか思ってる間に、白砂サンが解錠してくれたので俺たちは部屋に|入《ハイ》ったのだが。
 俺は、コグマの言っていた「猫が100匹いる」が、あながち "嘘でも誇張でもナイ" と言うのを知った。
 白砂サンが玄関扉を開けた途端に、そこにいた数匹の猫が、まるでマイケル・ジャクソンのPVみたいな動きで、バッと一斉にこちらを振り返る。
「多聞君、扉を早く閉めてくれたまえ」
「ああ、はい」
 そして、見知らぬ俺に警戒している猫が、威嚇をしながら俺を回り込もうとしている。
 オートロックでゆっくり閉まりかけていた扉を引いて、俺は猫が外に出ていかないように慌てて閉めた。
「靴のまま、上がって構わないと言われている」
「へ……へえ〜」
 床にはなんかのマットが敷き詰められていて、どうやら猫のために部屋は色々と手が入れられているらしい。
 廊下の壁には、猫が遊ぶための棚がいっぱい取り付けられていて、何匹かは上の|方《ほう》から俺を威嚇してくる。
 一方の白砂サンは大人気で、そして白砂サン自身も猫が大好きオーラが出まくりで、通りかかりで手の届く個体全部を、一匹残らず撫でながら奥へと進んでいく。
 リビングと思わしき部屋への扉は開け|放《ハナ》たれていたが、中に|入《ハイ》るとそこはもう、言葉通り猫だらけだった。
 ギュウギュウってわけじゃないが、どこにもかしこにも猫がいて、視界に猫が|入《ハイ》らない場所が無い……どころか、視界に猫が二匹以下になることがなく、それらがてんでに動き回っているので、だんだん壁とか床が波打ってるような気がしてくる。
 コグマの言う「座る場所」どころか、警戒心の|薄《うす》いのは既にもう俺の足元にまとわりついているし、平衡感覚がおかしくなってめまいがしたとしても、不用意によろけたら猫を踏みそうで怖い。
 室内の猫密度の高さに、コレってイマドキ流行りの "多頭飼育崩壊" なんじゃないの? と最初は思ったのだが、一匹一匹の毛並みも綺麗だし、猫臭いことは猫臭いが、それだって普通に息が出来る程度に空調も効いているから、手入れは行き届いているんだろう。
 だが、これは正直、そうとうな猫好きでなければ、かなりの苦行部屋と言えた。