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19話

ー/ー





 第3現場は犯行前、第2現場は犯行現場から2キロメートル・車で5分圏内、犯行後9:20~9:50の間には立ち寄っていると思われる。


 ナミたちは第2現場で待ち伏せしていた。しかし犯人は一向に現れなかった。9:50分には警察がセドリックを的にした緊急配備を行っている。何かおかしい……デンちゃんは犯人が捕まっていない理由も考えると違和感を覚える。


 


(単独犯説が有力と言われる犯人はやっぱり複数犯?)


 第1カローラがあった『現場3』、犯行後乗り換えられた『第2現場』そしてこの『第4現場』。セドリックが残されていた『第2』、第2カローラが乗り捨てられていた『第4』、このことで時間軸の先入観に囚われていたのではないだろうか?


 


(犯人は複数犯でこの『第4』現場に着て現金を抜いた後、セドリックを第2現場へ、第2カローラを再びこの第4現場へ移動させたのなら? だからいつまでたっても第2現場に現れないのでは?)


 辿り着いた第4現場はすでにジェラルミンケースが3つある。ナンバー『多摩5ろ3519』の第2カローラ、そして現金輸送車のセドリックは見当たらない。単独犯か複数犯かは知見者の中でも意見が分かれるところだ。


 


「やっぱり! 急いで戻ろう、ナミちゃん……ってナミちゃん? 何してんの?」


 ナミは車の下に手を伸ばしている、何か落したのであろうか? テーラードジャケットとパンツを組み合わせた普段着スタイルのナミ。突き出したお尻に見惚れてしまう。


「ナミちゃん車に指紋とか残さないように注意して」


 デンちゃんの言葉が終わらない内に起きあがったナミが走り寄る。そうしたのなら2人はバイクに跨り、第2と第4現場を往復する。


 


「デンちゃんちょっと止まって」


「どうしたのナミちゃん」


「ね、昨日下見に来たときにはなかったあそこのレトロ服屋さんのウィンドウに、ツイッギーのAラインワンピが飾ってあったの!」


 1967年10月18日。イギリスモデルのツイッギーが来日し、膝上30センチのミニスカートから小枝(ツイッギー)のような脚を魅せつけ、日本に、いいや全世界にミニを流行らせた。


 


「分かったちょっと見て行こう」


 デンちゃんはクエスト途中にも拘らず、困ったそぶりも見せずにバイクを止め、19世紀感溢れるお店に立ち寄る。


 


「わぁ~かわいい~」


「ナミちゃんごめん、プレゼントしてあげたいけど、この時代のお金なんて持ってるはずもなくって……」


 ガラスに両手を付けて張り付くナミと飾られているワンピースを交互に見て、ナミがその服を着ている姿を想像したデンが俯いて言う。


 


「じゃーん!!」


 そう言ってナミが見せたのは聖徳太子の一万円札。当然に驚きのリアクションのデン。


 


「え? ナミちゃんそれ、どうしたの?」


「さっきの第四現場で拾っちゃった」


「それって、重要な物証じゃ?!」


 周囲の騒がしさがこっちへ近づいて来る気配を感じる。それはそのはず、近くで未解決事件として歴史に名を記するほどの大事件が発生したのだ。しかしデンちゃんの勘はデンちゃんたちへ警鐘を鳴らしている、デンちゃんのこういう勘は当たる。


 それはバイク盗難……郵便配達をしていたエリア内を徘徊し、持ち主に発見してくれと言わんばかりの行為に他ならない。


 


「あれ、ください」


 店の扉を荒々しく開けるとデンちゃんは、中で座っているおばちゃんに大声で指さす。


 


「はい?」


「あれ、そこのショーケースに在るワンピース、買います」


「あれは高級品であんたみたいな若いもんには買え……」


 おばちゃんの言葉が終わる前にナミからひったくった一万円札をレジ台に叩きつける。


 おばちゃんは一万円札をまじまじと見つめる……透かしてみたり紙質を確かめたり……偽札を疑っている??


 


「おばちゃん、包まなくていいからあれ、貰っていくね!」


 そういうとデンちゃんはウィンドウのワンピースを手に取る。『おばちゃんはお釣りだよ』とナミの手に札を握らせた。急いでバイクに飛び乗る。


 警官に追われた2人は、フルアクセルのバイクで走り抜ける。ナミの視界には子供たちが、足場のあるバネ付きの棒の先にあるハンドルを握って、ピョンピョン跳ねているのが映る……。一心不乱に跳ねているだけなのに、女の子がとても笑顔なのが印象的だった。


 


「ナミちゃん、お釣りの500円札は持って帰ると時代法で裁かれる。残念だけど捨てて行こう」


「そうだね……お金だから捨ててもきっと誰かがすぐ拾ってくれる……」


 そう言ってポケットから取り出した岩倉具視の500円札は、風に引っ張られてナミの手から離れて行った……。


 そのままクエストギブアップのゲートを潜る。早速イイネ様から教わったギブアップ方法が役に立ってしまった。彼女らの上から目線のクエスト失敗を笑う顔が目に浮かぶ……。


 


「このバイク、時代法の『密輸』とかにならないよね?!」


 こうしてこのクエストは失敗に終わった。


 


 家に帰ったデンちゃんは、時代法でのお咎めの無かったこの郵便レトロバイクを整備し、タンデムシートに乗せ換えた。以後デンちゃんとナミの愛機となるのだった。


 クエスト終了後報告……三億円事件において2,000枚分の500円札について番号が公表されている。その番号は『XF227001A~XF229000A』と在った。


 その内の1枚、使用された『XF227278A』の500円札。それは洋服屋のお釣り500円を持ち帰ることができずに捨てたナミの500円札に思えて仕方がない。




 後になって数字が斜めに印字されていたことで、警察が偽札と断定した『XF227278A』の500円札があのお釣りで渡されていたとしたら?


 そしてこの当時の大卒の初任給が3万円だったという中で、あのAラインのワンピースは9500円(税なし)……超高級品があの郊外の小さな個人店で……?


 19世紀感満載のレトロな洋服屋を想わずにはいられない2人だった……。




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 第3現場は犯行前、第2現場は犯行現場から2キロメートル・車で5分圏内、犯行後9:20~9:50の間には立ち寄っていると思われる。
 ナミたちは第2現場で待ち伏せしていた。しかし犯人は一向に現れなかった。9:50分には警察がセドリックを的にした緊急配備を行っている。何かおかしい……デンちゃんは犯人が捕まっていない理由も考えると違和感を覚える。
(単独犯説が有力と言われる犯人はやっぱり複数犯?)
 第1カローラがあった『現場3』、犯行後乗り換えられた『第2現場』そしてこの『第4現場』。セドリックが残されていた『第2』、第2カローラが乗り捨てられていた『第4』、このことで時間軸の先入観に囚われていたのではないだろうか?
(犯人は複数犯でこの『第4』現場に着て現金を抜いた後、セドリックを第2現場へ、第2カローラを再びこの第4現場へ移動させたのなら? だからいつまでたっても第2現場に現れないのでは?)
 辿り着いた第4現場はすでにジェラルミンケースが3つある。ナンバー『多摩5ろ3519』の第2カローラ、そして現金輸送車のセドリックは見当たらない。単独犯か複数犯かは知見者の中でも意見が分かれるところだ。
「やっぱり! 急いで戻ろう、ナミちゃん……ってナミちゃん? 何してんの?」
 ナミは車の下に手を伸ばしている、何か落したのであろうか? テーラードジャケットとパンツを組み合わせた普段着スタイルのナミ。突き出したお尻に見惚れてしまう。
「ナミちゃん車に指紋とか残さないように注意して」
 デンちゃんの言葉が終わらない内に起きあがったナミが走り寄る。そうしたのなら2人はバイクに跨り、第2と第4現場を往復する。
「デンちゃんちょっと止まって」
「どうしたのナミちゃん」
「ね、昨日下見に来たときにはなかったあそこのレトロ服屋さんのウィンドウに、ツイッギーのAラインワンピが飾ってあったの!」
 1967年10月18日。イギリスモデルのツイッギーが来日し、膝上30センチのミニスカートから|小枝《ツイッギー》のような脚を魅せつけ、日本に、いいや全世界にミニを流行らせた。
「分かったちょっと見て行こう」
 デンちゃんはクエスト途中にも拘らず、困ったそぶりも見せずにバイクを止め、19世紀感溢れるお店に立ち寄る。
「わぁ~かわいい~」
「ナミちゃんごめん、プレゼントしてあげたいけど、この時代のお金なんて持ってるはずもなくって……」
 ガラスに両手を付けて張り付くナミと飾られているワンピースを交互に見て、ナミがその服を着ている姿を想像したデンが俯いて言う。
「じゃーん!!」
 そう言ってナミが見せたのは聖徳太子の一万円札。当然に驚きのリアクションのデン。
「え? ナミちゃんそれ、どうしたの?」
「さっきの第四現場で拾っちゃった」
「それって、重要な物証じゃ?!」
 周囲の騒がしさがこっちへ近づいて来る気配を感じる。それはそのはず、近くで未解決事件として歴史に名を記するほどの大事件が発生したのだ。しかしデンちゃんの勘はデンちゃんたちへ警鐘を鳴らしている、デンちゃんのこういう勘は当たる。
 それはバイク盗難……郵便配達をしていたエリア内を徘徊し、持ち主に発見してくれと言わんばかりの行為に他ならない。
「あれ、ください」
 店の扉を荒々しく開けるとデンちゃんは、中で座っているおばちゃんに大声で指さす。
「はい?」
「あれ、そこのショーケースに在るワンピース、買います」
「あれは高級品であんたみたいな若いもんには買え……」
 おばちゃんの言葉が終わる前にナミからひったくった一万円札をレジ台に叩きつける。
 おばちゃんは一万円札をまじまじと見つめる……透かしてみたり紙質を確かめたり……偽札を疑っている??
「おばちゃん、包まなくていいからあれ、貰っていくね!」
 そういうとデンちゃんはウィンドウのワンピースを手に取る。『おばちゃんはお釣りだよ』とナミの手に札を握らせた。急いでバイクに飛び乗る。
 警官に追われた2人は、フルアクセルのバイクで走り抜ける。ナミの視界には子供たちが、足場のあるバネ付きの棒の先にあるハンドルを握って、ピョンピョン跳ねているのが映る……。一心不乱に跳ねているだけなのに、女の子がとても笑顔なのが印象的だった。
「ナミちゃん、お釣りの500円札は持って帰ると時代法で裁かれる。残念だけど捨てて行こう」
「そうだね……お金だから捨ててもきっと誰かがすぐ拾ってくれる……」
 そう言ってポケットから取り出した岩倉具視の500円札は、風に引っ張られてナミの手から離れて行った……。
 そのままクエストギブアップのゲートを潜る。早速イイネ様から教わったギブアップ方法が役に立ってしまった。彼女らの上から目線のクエスト失敗を笑う顔が目に浮かぶ……。
「このバイク、時代法の『密輸』とかにならないよね?!」
 こうしてこのクエストは失敗に終わった。
 家に帰ったデンちゃんは、時代法でのお咎めの無かったこの郵便レトロバイクを整備し、タンデムシートに乗せ換えた。以後デンちゃんとナミの愛機となるのだった。
 クエスト終了後報告……三億円事件において2,000枚分の500円札について番号が公表されている。その番号は『XF227001A~XF229000A』と在った。
 その内の1枚、使用された『XF227278A』の500円札。それは洋服屋のお釣り500円を持ち帰ることができずに捨てたナミの500円札に思えて仕方がない。
 後になって数字が斜めに印字されていたことで、警察が偽札と断定した『XF227278A』の500円札があのお釣りで渡されていたとしたら?
 そしてこの当時の大卒の初任給が3万円だったという中で、あのAラインのワンピースは9500円(税なし)……超高級品があの郊外の小さな個人店で……?
 19世紀感満載のレトロな洋服屋を想わずにはいられない2人だった……。