これはプラシーボ効果(患者が有効な薬と思ってこれを服用すると症状が緩和する、いわゆる思い込み効果)を狙って恭吾が夕夏を騙したのだ。
案の定、単細胞の夕夏は『症状が治った』ようで、気に入った夕夏は今でも服用を続けている、らしい。
草井夕夏は根に持つタイプだと言われている。一年生の時から生徒会に立候補しているが落選落選。
会長の座への未練があるらしく、授業中『会長になりたい』と寝言を言っていたらしい。
そんなこともあり恭吾は怖くなって後で種明かしをし、しっかりと事実を伝えた。誰もいなくなった放課後、その時の記憶は恭吾の脳裏に今でも残っている。
未だに蛍光灯を使用している教室の明かりが薄気味悪く不安定に揺れ、2本一組の内の1本が今にも消えそうで、『ジジッ、ジジッ』と空気の振動が小さな音を降らしていた。
その時に微笑んでいた夕夏の顔と香り……忘れられないでいる。
(以前より5キロは太ったな……恐らく糖尿病にでもなるだろう)
恭吾の見立てである。