表示設定
表示設定
目次 目次




2話

ー/ー





***


 


 


 柏手高校13対14平常安寧学園高等学校、通称『平安学園』、マッチポイント。サーブは平安学園。


 夏なのに体育館の窓が曇るのではないかと言うほどの熱戦。外気をはるかに上回る熱量。応援とプレー、どちらも白熱している。


 私も大きな声を出して自校を応援する。それは周囲にそれを知らしめるような大きな声。


 


「レシーブしっかり!!」


 


 私の声を叩き落すかのように相手平安学園がしっかり声を被せてくる。


 


ナイッサー(ナイスサーブ)!」


 


 味方の声掛けは当たり前のコミュニケーション。この普段通りがパフォーマンスの質を上げる。つまりは普段の練習でしっかり声を出しているか、が問われている、試合とはそういうものである。しかし残念なことに柏手高はコート外の声援に掻き消える程の声しか掛け合えていないコート内の6人。


 


 


 後衛だった柏手高セッター、ヨーコ先輩がアタックラインを越えてネット際へと移動する。リベロの八千が丁寧にサーブレシーブ(レセプション)。さすがのAパス(* セッターのトスしやすい位置へ返球するレシーブ)だ。


 


「八千ナイスレシーブ!」


 


 私は音量ボタンを上限いっぱいまで上げて盛り立てる。追い詰められて疲れているせいなのでしょうか? 八千の好レシーブを味方全員の力に変える熱量が足りていない。いいえ、この場面だからこそ上げて行かなければならないはず。


 


 アタックは前衛3枚のカードがある。セッター、ヨーコ先輩がほぼ定位置で落下地点に入る。


 


 


 誰を使う? セッター後衛時はツーアタックの選択肢はない。(* 後衛はアタックラインより前でネットより高い位置から返球してはならない)センターの動きと入りが良い。相手両翼が真ん中(センター)速攻(クイック)を意識したように思われた。


 


 ヨーコ先輩の選択は平行トス。トスの技術的にはピカイチだ。速い球筋がネットに沿って走る。囮となったセンターを通り越し、レフト、トーコ先輩が相手コートへとボールを叩く。


 トーコ先輩も柏手高の誇るエースである。ボールはエースに託された。


 


 


 ダダァーン! 打ったレフトのトーコ先輩が着地の瞬間振り向きながら視界に捉えたであろうシーンは、手を目一杯伸ばしながら飛び込んできた八千(リベロ)の先に無情に落ちるボールだったに違いない。


 音が弾けて刹那に返されたボールはコートの柏手高(こちら)側、サイドラインの内側に落ちた。


 


 


 見事に誘い出したと思われたライトを押し切ってブロックしたのは平安学園(あいて)ミドルブロッカーの開三咲(かいみさき)、私の姉です。


 


 


 ピピィー。審判の長い笛が吹かれる。試合終了……ここに柏手高校の夏の総合体育大会は幕を閉じた。


 


 


***


 


 


 一学期の成績表も返され夏休みに入る。県内でも強豪の部類に入る柏手高校女子バレーボール部の中で、春高バレー(* 1月開催)まで残る先輩はおらず、少し前に3年生たちは引退した。


 


 


 


 部室には先輩たちが最後に残したメッセージがホワイトボードに残されたままだ。


 


 


【私たちは受験を絶対に落とさない。落としたら負け、それをみんな知っている。落とすなよ! ありがとう】


 


 


 本日の部活動も終わって、いつものように最後に部室を出るのは私たち3人だ。夏の太陽でさえ先に帰った。


 


 学校指定のジャージを脱ぐとスカートに足を通して腰で止める。横目でみた睦美は細く、くびれたウエスト、上を向いたヒップはたった今スカートに隠された。


 黒の下着が肌の白さを引き立ててます、うーん、色っぽい。


 


 まっすぐ伸びた脚はしなやかで、バレー部のくせに膝がキレイ……最高打点320センチを繰り出すとは思えないほど細く、蚊に刺され掻いた跡が残念に赤く際立っている、……なんだかもったいない。


 ブラに制服のスカート姿は何とも生々しい。


 


 


 


//////ミニ解説コーナー//////


 


睦美  「レセプションと~ディグって~、な~に?」


八千  「レセプションはサーブレシーブ=サーブカットのこと」


菜々巳 「ディグは英語で『掘る』。アンダーハンドパスの格好から連想された


    言葉よ」


菜々巳 「因みにセッターやオポジットは基本、サーブカット=レセプション


    には参加しないわ」


八千  「サーブカットは任せて! 睦美は後衛でもバックアタックに備えて


    おいて」


菜々巳 「アタックラインはネットより自陣(9×9メートル)3メートルのフ


    ロントゾーン(前衛)、後ろのエンドラインから6メートルのバックゾ


    ーン(後衛)に分けるラインのこと」


八千  「後衛の選手はこのラインを越えてのフロントゾーンでのプレーに制


    限があるの(前衛には後衛でのプレーに制限はない)」




スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 3話


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



***
 柏手高校13対14平常安寧学園高等学校、通称『平安学園』、マッチポイント。サーブは平安学園。
 夏なのに体育館の窓が曇るのではないかと言うほどの熱戦。外気をはるかに上回る熱量。応援とプレー、どちらも白熱している。
 私も大きな声を出して自校を応援する。それは周囲にそれを知らしめるような大きな声。
「レシーブしっかり!!」
 私の声を叩き落すかのように相手平安学園がしっかり声を被せてくる。
「|ナイッサー《ナイスサーブ》!」
 味方の声掛けは当たり前のコミュニケーション。この普段通りがパフォーマンスの質を上げる。つまりは普段の練習でしっかり声を出しているか、が問われている、試合とはそういうものである。しかし残念なことに柏手高はコート外の声援に掻き消える程の声しか掛け合えていないコート内の6人。
 後衛だった柏手高セッター、ヨーコ先輩がアタックラインを越えてネット際へと移動する。リベロの八千が丁寧に|サーブレシーブ《レセプション》。さすがのAパス(* セッターのトスしやすい位置へ返球するレシーブ)だ。
「八千ナイスレシーブ!」
 私は音量ボタンを上限いっぱいまで上げて盛り立てる。追い詰められて疲れているせいなのでしょうか? 八千の好レシーブを味方全員の力に変える熱量が足りていない。いいえ、この場面だからこそ上げて行かなければならないはず。
 アタックは前衛3枚のカードがある。セッター、ヨーコ先輩がほぼ定位置で落下地点に入る。
 誰を使う? セッター後衛時はツーアタックの選択肢はない。(* 後衛はアタックラインより前でネットより高い位置から返球してはならない)センターの動きと入りが良い。相手両翼が|真ん中《センター》の|速攻《クイック》を意識したように思われた。
 ヨーコ先輩の選択は平行トス。トスの技術的にはピカイチだ。速い球筋がネットに沿って走る。囮となったセンターを通り越し、レフト、トーコ先輩が相手コートへとボールを叩く。
 トーコ先輩も柏手高の誇るエースである。ボールはエースに託された。
 ダダァーン! 打ったレフトのトーコ先輩が着地の瞬間振り向きながら視界に捉えたであろうシーンは、手を目一杯伸ばしながら飛び込んできた|八千《リベロ》の先に無情に落ちるボールだったに違いない。
 音が弾けて刹那に返されたボールはコートの|柏手高《こちら》側、サイドラインの内側に落ちた。
 見事に誘い出したと思われたライトを押し切ってブロックしたのは|平安学園《あいて》ミドルブロッカーの|開三咲《かいみさき》、私の姉です。
 ピピィー。審判の長い笛が吹かれる。試合終了……ここに柏手高校の夏の総合体育大会は幕を閉じた。
***
 一学期の成績表も返され夏休みに入る。県内でも強豪の部類に入る柏手高校女子バレーボール部の中で、春高バレー(* 1月開催)まで残る先輩はおらず、少し前に3年生たちは引退した。
 部室には先輩たちが最後に残したメッセージがホワイトボードに残されたままだ。
【私たちは受験を絶対に落とさない。落としたら負け、それをみんな知っている。落とすなよ! ありがとう】
 本日の部活動も終わって、いつものように最後に部室を出るのは私たち3人だ。夏の太陽でさえ先に帰った。
 学校指定のジャージを脱ぐとスカートに足を通して腰で止める。横目でみた睦美は細く、くびれたウエスト、上を向いたヒップはたった今スカートに隠された。
 黒の下着が肌の白さを引き立ててます、うーん、色っぽい。
 まっすぐ伸びた脚はしなやかで、バレー部のくせに膝がキレイ……最高打点320センチを繰り出すとは思えないほど細く、蚊に刺され掻いた跡が残念に赤く際立っている、……なんだかもったいない。
 ブラに制服のスカート姿は何とも生々しい。
//////ミニ解説コーナー//////
睦美  「レセプションと~ディグって~、な~に?」
八千  「レセプションはサーブレシーブ=サーブカットのこと」
菜々巳 「ディグは英語で『掘る』。アンダーハンドパスの格好から連想された
    言葉よ」
菜々巳 「因みにセッターやオポジットは基本、サーブカット=レセプション
    には参加しないわ」
八千  「サーブカットは任せて! 睦美は後衛でもバックアタックに備えて
    おいて」
菜々巳 「アタックラインはネットより自陣(9×9メートル)3メートルのフ
    ロントゾーン(前衛)、後ろのエンドラインから6メートルのバックゾ
    ーン(後衛)に分けるラインのこと」
八千  「後衛の選手はこのラインを越えてのフロントゾーンでのプレーに制
    限があるの(前衛には後衛でのプレーに制限はない)」