表示設定
表示設定
目次 目次




@ 54話

ー/ー



 雪花は『どうしたの?』『まーくんと何かあったの?』としきりに聞くが、小夜香は何も応えない。答えられるわけがない。そして雪花が『まーくん』と呼ぶのも耳に障り出す、その天然っぷりが気に障る。
 しかしそれが八つ当たりで妬みであることも同時に理解して、自分をどうにもできない。


 勝人の方はというと、どうしようもなくって勉己に相談する。勉己は先日の小夜香とのこともあるので凡そを理解して、勝人を励ます。
 しかし……。


◆◇◆◇


 小夜香は翌日勝人に別れを告げた。


「ごめんね、私の方から『付き合って』って言ったのに。自分勝手でごめんなさい」


 勝人は呆然とした。でもそれは自身が蒔いた種だ。小夜香にそれを言わせてしまった自分を情けなく思う。


「小夜香、ごめん。あの時のことは謝る。決して雪花を好きで見たんじゃない」
「もういいの。嫉妬した私が、私自身を嫌になっちゃったの。勝人くんと居ると辛いの……」
「…………」
 自分と居ると辛い……そう言われてしまって返す言葉もない勝人。


(もう引き返せない……)
 小夜香の言葉を受け、勝人はそう決意したのだった。引き返せないのは小夜香との仲ではない、それは母という過去、雪花という幻想……小夜香と前に進む決意だ。しかし勝人はそれを言葉に出せない。


「ごめんね、ありがとう。そしてさようなら……」
 小夜香は振り返らなかった。逃げていく……またしても勝人の『好き』は空に霧散して何にもぶつからない。『嫌だ』勝人はそう思ったに違いない。最後の想いを小夜香の背中に投げつける。


「俺は待ってる! だから大会、見に来て欲しい! 俺のカーリングを」
(だから……あたしのウィンターカップの方が先だって……)
 小夜香は泣きながら自身にツッコミを入れて励ますしかなかった。


* * *


 年末に行われるバスケ、全国高等学校バスケットボール選手権大会に全国から60校集まった。全国ベスト8 チームである常ノ呂高校の学佳は、トーナメント表・第一シード⦅優勝校『1』⦆山の対抗『15』に配置される⦅* ベスト8まで当たらない。準優勝校は優勝校の対角に配置され決勝まで当たらない⦆。明星高校は抽選で、神様のイタズラは『14』を引かせて小夜香vs学佳の初戦となる。
 その試合前。


「大晴くん、応援に来てたね」
「……そうね」
「なんか……大丈夫?」
 体育館裏手に向かう学佳を見つけた小夜香は、雑踏に掻き消されて気付かない学佳の後を追った。そこで見たのは大晴を拒む学佳だった。


「……勝人と別れたんだって?」
 学佳は質問には応えず質問で返す。


「やっぱり知ってた?……ちょっと後悔……」
「……勝人のことが気になっちゃって……今更ズルいよね?!」
「……でもあたしにはもう何も言う権利なんてない……」
「大晴にも申し訳ない」
「どうするの?」
「気持ちにはっきりさせるわ。この試合が終わるまでには……」
 そう言って学佳は観客席を指さす。小夜香がその方向を見ると、そこには誰が試合のことを教えたのであろうか? 大晴の横に座る勝人の姿があった。


「誰の……応援に来たのかしらね?」
 学佳が挑発的に小夜香を見る。勝人に教えたのは学佳? 小夜香にそんな考えが過る。


「せめて試合の方は……負けてくれないかな?」
 小夜香は自信なく、それだけ言うのが精一杯の強がりだ。


「誰かを貶めることによって得たり、奪ったものなんてきっとそれは長くは続かない。それは恋愛も勝負も同じでしょ?」
「確かに……勝人ならきっとそう言いうわね」
「大晴にも試合が終わったら、答えを伝えるって言っておいたわ」


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む @ 55話 ウィンターカップ


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 雪花は『どうしたの?』『まーくんと何かあったの?』としきりに聞くが、小夜香は何も応えない。答えられるわけがない。そして雪花が『まーくん』と呼ぶのも耳に障り出す、その天然っぷりが気に障る。
 しかしそれが八つ当たりで妬みであることも同時に理解して、自分をどうにもできない。
 勝人の方はというと、どうしようもなくって勉己に相談する。勉己は先日の小夜香とのこともあるので凡そを理解して、勝人を励ます。
 しかし……。
◆◇◆◇
 小夜香は翌日勝人に別れを告げた。
「ごめんね、私の方から『付き合って』って言ったのに。自分勝手でごめんなさい」
 勝人は呆然とした。でもそれは自身が蒔いた種だ。小夜香にそれを言わせてしまった自分を情けなく思う。
「小夜香、ごめん。あの時のことは謝る。決して雪花を好きで見たんじゃない」
「もういいの。嫉妬した私が、私自身を嫌になっちゃったの。勝人くんと居ると辛いの……」
「…………」
 自分と居ると辛い……そう言われてしまって返す言葉もない勝人。
(もう引き返せない……)
 小夜香の言葉を受け、勝人はそう決意したのだった。引き返せないのは小夜香との仲ではない、それは母という過去、雪花という幻想……小夜香と前に進む決意だ。しかし勝人はそれを言葉に出せない。
「ごめんね、ありがとう。そしてさようなら……」
 小夜香は振り返らなかった。逃げていく……またしても勝人の『好き』は空に霧散して何にもぶつからない。『嫌だ』勝人はそう思ったに違いない。最後の想いを小夜香の背中に投げつける。
「俺は待ってる! だから大会、見に来て欲しい! 俺のカーリングを」
(だから……あたしのウィンターカップの方が先だって……)
 小夜香は泣きながら自身にツッコミを入れて励ますしかなかった。
* * *
 年末に行われるバスケ、全国高等学校バスケットボール選手権大会に全国から60校集まった。全国ベスト8 チームである常ノ呂高校の学佳は、トーナメント表・第一シード⦅優勝校『1』⦆山の対抗『15』に配置される⦅* ベスト8まで当たらない。準優勝校は優勝校の対角に配置され決勝まで当たらない⦆。明星高校は抽選で、神様のイタズラは『14』を引かせて小夜香vs学佳の初戦となる。
 その試合前。
「大晴くん、応援に来てたね」
「……そうね」
「なんか……大丈夫?」
 体育館裏手に向かう学佳を見つけた小夜香は、雑踏に掻き消されて気付かない学佳の後を追った。そこで見たのは大晴を拒む学佳だった。
「……勝人と別れたんだって?」
 学佳は質問には応えず質問で返す。
「やっぱり知ってた?……ちょっと後悔……」
「……勝人のことが気になっちゃって……今更ズルいよね?!」
「……でもあたしにはもう何も言う権利なんてない……」
「大晴にも申し訳ない」
「どうするの?」
「気持ちにはっきりさせるわ。この試合が終わるまでには……」
 そう言って学佳は観客席を指さす。小夜香がその方向を見ると、そこには誰が試合のことを教えたのであろうか? 大晴の横に座る勝人の姿があった。
「誰の……応援に来たのかしらね?」
 学佳が挑発的に小夜香を見る。勝人に教えたのは学佳? 小夜香にそんな考えが過る。
「せめて試合の方は……負けてくれないかな?」
 小夜香は自信なく、それだけ言うのが精一杯の強がりだ。
「誰かを貶めることによって得たり、奪ったものなんてきっとそれは長くは続かない。それは恋愛も勝負も同じでしょ?」
「確かに……勝人ならきっとそう言いうわね」
「大晴にも試合が終わったら、答えを伝えるって言っておいたわ」