@ 5話 カッちゃん
ー/ー
「俺、お前と同じ自然科学研究同好会に入るわ」
理科準備室の前、そこは自然科学研究同好会が集まる部屋だ。隣の理科実験室は化学部の部室となっている。物理部は存在しない。
「え? まーくん、運動部じゃないの?」
「まーくんは止めろ。そもそもお前だろ、『二人ともカッちゃんだね』って言ってきたのは、それを……」
「……ごめん」
「すぐしょんぼりしやがって、男ならシャキッとしろよ」
「そうだよ、まーくんはもっとシャキッとした所の方が……」
「まーくん止めろ!」
勉己を遮り、そのままの勢いで勝人は言葉を続ける。
「スポーツは止めた! 最近やっとオリンピックにセパタクローが種目にあるわけじゃないことを知った! これからは、勉強の時代だ!」
中学一年春、勝人は勉己と共に自然科学研究同好会へ入会した。
* * *
「カッちゃん」
反射的に勝人は顔を緩ませて振り向く。隣のクラスの学佳が入口から勉己を呼んでいる、組が違う人間には、その入り口に見えない壁が存在し容易に入ってこれない。
教室が騒めく。学佳の視線の先に注目が集まる。『カッちゃん』と呼ばれた男は、クラスでも地味でクラス委員長なんかやっている教川。同じ小学校ではない者たちには信じられなかった。
何故なら学佳は可愛かった。
(おい、汚ねぇ目で見んなよ、学佳のことを見るな、学佳のことを考えるな)
勉己の元へと教室に入ってくる学佳の姿を目で追いながら、周りの男子たちの視線が気になる。
ささくれ立つの心を勝人は必死に隠した。
「何、勝人。自然科学部に入ったの?」
勉己と話していた学佳は、前触れもなく振り向いて勝人へ話しかける。
「自然科学研究同好会、な」
「頭でも打った?」
「まーくんはスポーツ止めるんだって」
「まーくんは止めろ!」
「正気? 勝人からスポーツ取ったら何が残るのよ」
「ヘン! 俺が本気になったらな……」
「なったら……?」
「……なったら……な、すげぇーんだ……ぞ」
「……でね、カッちゃん……」
学佳は勉己に体を向ける。
「……なら勝負だ」
「え?」
「おい、勉己。今度の中間テストとやらで『カッちゃん』の名をかけて勝負しろ」
「勝人、何バカなこと言ってんのよ? カッちゃんに敵うわけないじゃない」
その言葉が余計に勝人を熱くする。
「学佳は黙ってろ。どうだ? 勉己」
「あ、僕は……呼び名なんて……どっちでも良くって……」
「相変わらずシャキッとしねぇーな。ならお前が負けたら『べんき』って呼ぶからな」
「ちょっと、それは酷いじゃない」
勝人の暴走に、黙ってろと言われても学佳が口を挟む。
「ま、ビビっても仕方ないけどな……」
勝人は一先ず言葉に区切りをつけると、『カッ!』っと目を見開き啖呵を切る。
「俺は今までに『勝負』で負けたことは一度も無ぇ! 勝つ人と書いて勝人だ!」
(今まで『テスト』で勝負しなかっただけじゃない)
学佳はバカが飛散してきそうで、思わず後退りする。
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理科準備室の前、そこは自然科学研究同好会が集まる部屋だ。隣の理科実験室は化学部の部室となっている。物理部は存在しない。
「え? まーくん、運動部じゃないの?」
「まーくんは止めろ。そもそもお前だろ、『二人ともカッちゃんだね』って言ってきたのは、それを……」
「……ごめん」
「すぐしょんぼりしやがって、男ならシャキッとしろよ」
「そうだよ、まーくんはもっとシャキッとした所の方が……」
「まーくん止めろ!」
勉己を遮り、そのままの勢いで勝人は言葉を続ける。
「スポーツは止めた! 最近やっとオリンピックにセパタクローが種目にあるわけじゃないことを知った! これからは、勉強の時代だ!」
中学一年春、勝人は勉己と共に自然科学研究同好会へ入会した。
* * *
「カッちゃん」
反射的に勝人は顔を緩ませて振り向く。隣のクラスの学佳が入口から勉己を呼んでいる、組が違う人間には、その入り口に見えない壁が存在し容易に入ってこれない。
教室が騒めく。学佳の視線の先に注目が集まる。『カッちゃん』と呼ばれた男は、クラスでも地味でクラス委員長なんかやっている教川。同じ小学校ではない者たちには信じられなかった。
何故なら学佳は可愛かった。
(おい、汚ねぇ目で見んなよ、学佳のことを見るな、学佳のことを考えるな)
勉己の元へと教室に入ってくる学佳の姿を目で追いながら、周りの男子たちの視線が気になる。
ささくれ立つの心を勝人は必死に隠した。
「何、勝人。自然科学部に入ったの?」
勉己と話していた学佳は、前触れもなく振り向いて勝人へ話しかける。
「自然科学研究同好会、な」
「頭でも打った?」
「まーくんはスポーツ止めるんだって」
「まーくんは止めろ!」
「正気? 勝人からスポーツ取ったら何が残るのよ」
「ヘン! 俺が本気になったらな……」
「なったら……?」
「……なったら……な、すげぇーんだ……ぞ」
「……でね、カッちゃん……」
学佳は勉己に体を向ける。
「……なら勝負だ」
「え?」
「おい、勉己。今度の中間テストとやらで『カッちゃん』の名をかけて勝負しろ」
「勝人、何バカなこと言ってんのよ? カッちゃんに敵うわけないじゃない」
その言葉が余計に勝人を熱くする。
「学佳は黙ってろ。どうだ? 勉己」
「あ、僕は……呼び名なんて……どっちでも良くって……」
「相変わらずシャキッとしねぇーな。ならお前が負けたら『べんき』って呼ぶからな」
「ちょっと、それは酷いじゃない」
勝人の暴走に、黙ってろと言われても学佳が口を挟む。
「ま、ビビっても仕方ないけどな……」
勝人は一先ず言葉に区切りをつけると、『カッ!』っと目を見開き啖呵を切る。
「俺は今までに『勝負』で負けたことは一度も無ぇ! 勝つ人と書いて勝人だ!」
(今まで『テスト』で勝負しなかっただけじゃない)
学佳はバカが飛散してきそうで、思わず後退りする。