
これは太古の記憶
フタゴヤシの葉っぱのような大きな手足を命一杯に動かして
流線型の体でダイナミックに動き回る海獣
欲しいものを周りの青と共に爽快に飲み込んで
不用なものはあっさり捨てる
そこにある自由の全てを独占し
明るい世界と闇の世界を行き来する
これは太古の記憶
光の届かない暗闇で
ある者は蜘蛛の巣アンテナを揺らしながら儀式じみた踊りを踊る
名前を忘れさられた透明体は
闇黒のキャンバスに蛍光の幾何学模様を描いている
まだ名前もないそれは
岩の上に立って退屈そうに間抜けな口を開けている
頭上では眩しく差し込む光芒の中で
幼く小さいもの達があんなに忙しそうに生の悦びを表現しようとしているというのに
これは太古の記憶
決まりごとのない世界の出来事を
海獣は群青色の瞳に映し出す
やがて群青色の水晶は
白く濁って映した世界を閉じ込めて
ついには溶けてなくなった
いくつもの時代が重なった
その狭間に生まれた小川の中で
その痕跡が
カロカロと静かなせせらぎを聴いている