19 偶然の一致
ー/ー
天から降り立った聖なるお方。それこそがルークの呪いを消す、運命の伴侶。
つまり、ミ・チ・ル! ってこと!
「ええっと、ええっとぉ、そう……なんですかね? どうでしょうねえ?」
ミチルはマグノリアとルークから向けられる期待の眼差しに狼狽え続けていた。
「もちろん! ミチル、ぼくのプルクラ!」
ルークゥ、気持ちは嬉しいけど、重いよぅ! 責任が重いっ!
「いやあ、まさか本当に現れるとは。奴らもたまには良い事を言う」
「都合の良いことだけ信じるのっていかがなものデスカネ!?」
ニコニコしているマグノリアに、ミチルはあわあわしながら言った。
だがそんな言い方では有頂天おじさんには届かない。
「それはその通りだ! だからルークにはそう言って誤魔化していたものの、私はそんな話信じていなかった」
「えっ……」
父の言葉にショックを受けるルーク。ミチルは慌ててつっこんだ。
「おい、おっさん! ルークの夢を壊すんじゃねえ!」
「ハーッハッハッハ! だがこうして現に君がやって来たのだから、そこだけは信じざるを得ないという事だ!」
浮かれまくる父親に、何を言っても無駄のようだ。
「もうすでに呪いは消えてるかもしれんな? 何せ昨夜は二人で×××の×××……♡」
「ヤッてねえって言ってんだろぉ! 破廉恥ジジイ!!」
怒髪天を衝く勢いで叫ぶミチルであった。
「まあ待ちなさい。私の話は半分しか終わっていない」
「……へっ?」
真っ赤になって照れながら怒っている(とマグノリアは思っている)ミチルに、手で制止のポーズを作ってマグノリアはまた真面目な顔をしていた。
「君のことは、こう言っては悪いがイレギュラーな事態だ。ルークの呪いが解けようと解けなかろうと、私達はすでに魔教会と帝国をぶっ潰すと決めたのだ」
「なんでまた、急に?」
ミチルが聞くと、マグノリアは少し考えてから答える。
「ざっくり言うと、積もり積もった不信感だな。先に動いたのはルードの方だから、あいつには私とは違う理由があるかもしれない。だが、私は十年前から反乱活動で各地を飛び回るルードに、ベスティアの事を聞いたのがきっかけだ」
「ベスティアですか!?」
途端に身を乗り出したミチルに少し驚きながら、マグノリアは続けた。
「うむ。ルークが変化した黒い獣の姿……君も見ているだろうが、ベスティアという魔物にそっくりなのだろう?」
「まあ……はい。最初は見間違えたくらいだから」
「私はかつて魔教会に聞いたことがある。ルークが変化する獣は何なのだと。すると奴らはこう言ったのだ。『あれはベスティアと言って、チルクサンダー魔教では聖なる獣。しかし、チルチル神教ではあれを忌み嫌っている。御子息はチルチル神教のカミに呪われているので、忌み嫌うその獣の姿になるのだ』とな」
「……なるほど。という事はラーウスにはベスティアはあまりいないんですか?」
ミチルがそう聞くと、マグノリアはミチルを指差して言った。
「うむ、そこだ。この辺りでは全く見かけない。だからこそチルクサンダー魔教は聖なる獣と崇めても問題ないのだ。なにしろ誰も見たことがないのだから」
「はあ。それでベスティアがどう関係するんです?」
「ルードがな、ここより西へ行ったそうだ。はるばる遠いカエルレウムまで」
「カエルレウム!?」
見知った単語に、ミチルは思わず声がうわずってしまった。その反応はマグノリアの予想通りだったようで、膝を打ちながら話を続ける。
「うむ。聞けばカエルレウムではベスティアとはしばしば現れる影の魔物。これまでの犠牲者は数知れず。更にその国では、騎士によってベスティアを倒す手段がきちんとマニュアル化されていると言うではないか」
「ああ、まあ……そうですね」
ミチルがそう相槌を打つと、それに、と言ってマグノリアは更に続けた。
「ルードの調査では、ベスティアが多く現れる国は他にもある。カエルレウム周辺の国々や魔法大国のアルブスにも出現例があると言う」
「そのようですねえ」
呑気に頷くミチルは、次の言葉で姿勢を正すことになる。
「ベスティアが現れる国々には共通点がある。チルチル神教の教えが盛んで、帝国とぶっちゃけ仲が悪い」
「!!」
「ルードは言ったよ。ベスティアがラーウスに現れないのは、ここが帝国の傘下だからではないか、とな」
「そ、それって……」
ミチルは震えていた。恐怖からではない、偶然の一致を目の前に提示されたからだ。
ここにも、別のルートで自分達と同じ結論に至った者がいたのだ。
「アーテル帝国はベスティアを敵対国に放っている。何が聖なる獣だ。ベスティアの実態は魔物兵器。そこに辿り着いた時、帝国が掲げるチルクサンダー魔教は、もはや宗教にあらず。人心を惑わす邪教である!」
拍手、喝采!!
ミチルは思わず盛大に手を叩いていた。
「そして、そういう風に見ていくと、ルークにはめられたお守りが、いっそう胡散臭い」
「ええ……っ」
父の言葉に、ルークは首を抑えて不安な表情を見せた。
「どんな意図があるかは知らんが、おそらくろくでもない陰謀だろう。いや、もっと言えばルークの呪いは魔教会がかけたものかもしれない。私の息子をそんなものに巻き込んだチルクサンダー魔教はもはや生かしておけんっ!」
「なるほど。よくわかりました!」
ミチルはすっかり興奮していた。自分とイケメン達の予想が他の人とも合致したのだから、こんなに心強いことはない。
目的に大きく前進だ!!
「あの憎き魔教をぶっ潰して、ルークにかけられた呪いと首輪を解くのだ! ついでに帝国もぶっ潰す!!」
「うわーい、ざっくり過ぎる反乱計画!」
父親の思いはわかるが、ちょっと勢いが過ぎないか。ノせてしまったミチルは後悔して不安になった。
「という訳だ。何か異論はあるか!?」
「……まあ、方向性に異論はありません」
手段を講じる必要がかなりありそうだけど、とミチルは愛想笑いでマグノリアにそう答えた。
「ミチルが言うなら、ぼくも、ありません」
ルークの良い子のお返事に、父はさらに意気揚々として立ち上がった。
「ハッハッハ! 心配するな、反乱計画はラーウスの頭脳と呼ばれた、我が誇れる長男がバッチリ考えているだろう!」
意気揚々と推測を述べる呑気なおじさん!
ミチルはやはり不安になったが、もう遅い。
「我が愛する息子に自由とプルクラを! ついでに我が国にも自由と主権を取り戻すのだ!!」
国の方はついでなんだ……
でも、そういう考え、オレは嫌いじゃない。
ミチルはもう一度、ふつふつと高揚していた。
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つまり、ミ・チ・ル! ってこと!
「ええっと、ええっとぉ、そう……なんですかね? どうでしょうねえ?」
ミチルはマグノリアとルークから向けられる期待の眼差しに狼狽え続けていた。
「もちろん! ミチル、ぼくのプルクラ!」
ルークゥ、気持ちは嬉しいけど、重いよぅ! 責任が重いっ!
「いやあ、まさか本当に現れるとは。奴らもたまには良い事を言う」
「都合の良いことだけ信じるのっていかがなものデスカネ!?」
ニコニコしているマグノリアに、ミチルはあわあわしながら言った。
だがそんな言い方では有頂天おじさんには届かない。
「それはその通りだ! だからルークにはそう言って誤魔化していたものの、私はそんな話信じていなかった」
「えっ……」
父の言葉にショックを受けるルーク。ミチルは慌ててつっこんだ。
「おい、おっさん! ルークの夢を壊すんじゃねえ!」
「ハーッハッハッハ! だがこうして現に君がやって来たのだから、そこだけは信じざるを得ないという事だ!」
浮かれまくる父親に、何を言っても無駄のようだ。
「もうすでに呪いは消えてるかもしれんな? 何せ昨夜は二人で×××の×××……♡」
「ヤッてねえって言ってんだろぉ! 破廉恥ジジイ!!」
怒髪天を衝く勢いで叫ぶミチルであった。
「まあ待ちなさい。私の話は半分しか終わっていない」
「……へっ?」
真っ赤になって照れながら怒っている(とマグノリアは思っている)ミチルに、手で制止のポーズを作ってマグノリアはまた真面目な顔をしていた。
「君のことは、こう言っては悪いがイレギュラーな事態だ。ルークの呪いが解けようと解けなかろうと、私達はすでに魔教会と帝国をぶっ潰すと決めたのだ」
「なんでまた、急に?」
ミチルが聞くと、マグノリアは少し考えてから答える。
「ざっくり言うと、積もり積もった不信感だな。先に動いたのはルードの方だから、あいつには私とは違う理由があるかもしれない。だが、私は十年前から反乱活動で各地を飛び回るルードに、ベスティアの事を聞いたのがきっかけだ」
「ベスティアですか!?」
途端に身を乗り出したミチルに少し驚きながら、マグノリアは続けた。
「うむ。ルークが変化した黒い獣の姿……君も見ているだろうが、ベスティアという魔物にそっくりなのだろう?」
「まあ……はい。最初は見間違えたくらいだから」
「私はかつて魔教会に聞いたことがある。ルークが変化する獣は何なのだと。すると奴らはこう言ったのだ。『あれはベスティアと言って、チルクサンダー魔教では聖なる獣。しかし、チルチル神教ではあれを忌み嫌っている。御子息はチルチル神教のカミに呪われているので、忌み嫌うその獣の姿になるのだ』とな」
「……なるほど。という事はラーウスにはベスティアはあまりいないんですか?」
ミチルがそう聞くと、マグノリアはミチルを指差して言った。
「うむ、そこだ。この辺りでは全く見かけない。だからこそチルクサンダー魔教は聖なる獣と崇めても問題ないのだ。なにしろ誰も見たことがないのだから」
「はあ。それでベスティアがどう関係するんです?」
「ルードがな、ここより西へ行ったそうだ。はるばる遠いカエルレウムまで」
「カエルレウム!?」
見知った単語に、ミチルは思わず声がうわずってしまった。その反応はマグノリアの予想通りだったようで、膝を打ちながら話を続ける。
「うむ。聞けばカエルレウムではベスティアとはしばしば現れる影の魔物。これまでの犠牲者は数知れず。更にその国では、騎士によってベスティアを倒す手段がきちんとマニュアル化されていると言うではないか」
「ああ、まあ……そうですね」
ミチルがそう相槌を打つと、それに、と言ってマグノリアは更に続けた。
「ルードの調査では、ベスティアが多く現れる国は他にもある。カエルレウム周辺の国々や魔法大国のアルブスにも出現例があると言う」
「そのようですねえ」
呑気に頷くミチルは、次の言葉で姿勢を正すことになる。
「ベスティアが現れる国々には共通点がある。チルチル神教の教えが盛んで、帝国とぶっちゃけ仲が悪い」
「!!」
「ルードは言ったよ。ベスティアがラーウスに現れないのは、ここが帝国の傘下だからではないか、とな」
「そ、それって……」
ミチルは震えていた。恐怖からではない、偶然の一致を目の前に提示されたからだ。
ここにも、別のルートで自分達と同じ結論に至った者がいたのだ。
「アーテル帝国はベスティアを敵対国に放っている。何が聖なる獣だ。ベスティアの実態は魔物兵器。そこに辿り着いた時、帝国が掲げるチルクサンダー魔教は、もはや宗教にあらず。人心を惑わす邪教である!」
拍手、喝采!!
ミチルは思わず盛大に手を叩いていた。
「そして、そういう風に見ていくと、ルークにはめられたお守りが、いっそう胡散臭い」
「ええ……っ」
父の言葉に、ルークは首を抑えて不安な表情を見せた。
「どんな意図があるかは知らんが、おそらくろくでもない陰謀だろう。いや、もっと言えばルークの呪いは魔教会がかけたものかもしれない。私の息子をそんなものに巻き込んだチルクサンダー魔教はもはや生かしておけんっ!」
「なるほど。よくわかりました!」
ミチルはすっかり興奮していた。自分とイケメン達の予想が他の人とも合致したのだから、こんなに心強いことはない。
目的に大きく前進だ!!
「あの憎き魔教をぶっ潰して、ルークにかけられた呪いと首輪を解くのだ! ついでに帝国もぶっ潰す!!」
「うわーい、ざっくり過ぎる反乱計画!」
父親の思いはわかるが、ちょっと勢いが過ぎないか。ノせてしまったミチルは後悔して不安になった。
「という訳だ。何か異論はあるか!?」
「……まあ、方向性に異論はありません」
手段を講じる必要がかなりありそうだけど、とミチルは愛想笑いでマグノリアにそう答えた。
「ミチルが言うなら、ぼくも、ありません」
ルークの良い子のお返事に、父はさらに意気揚々として立ち上がった。
「ハッハッハ! 心配するな、反乱計画はラーウスの頭脳と呼ばれた、我が誇れる長男がバッチリ考えているだろう!」
意気揚々と推測を述べる呑気なおじさん!
ミチルはやはり不安になったが、もう遅い。
「我が愛する息子に自由とプルクラを! ついでに我が国にも自由と主権を取り戻すのだ!!」
国の方はついでなんだ……
でも、そういう考え、オレは嫌いじゃない。
ミチルはもう一度、ふつふつと高揚していた。