■ ■ ■
フィニーは近くにいたらしく、宿舎の裏口から、泣べそをかきながら出てきた。
「殴られてない? 乱闘になってない? リンチされてない!?」
「大丈夫だった」
プラグは微笑んだ。心配してくれて、純粋に嬉しい。先日、フィニーがプラグに言った『君が嫌がる事はしない』と言う言葉を律儀に守ってくれたのだ。本当にありがたいし、もう友人だと思う。プラグは彼に何かあったら、きっと力になるだろう。
プラグの言葉にフィニーは天を仰いだ。
「よかったぁああ……! 神様! あれ、でも殴られた?」
フィニーがプラグの目を見て言った。大した強さで無かったし、自分で頰に触れても腫れている気はしないので、フィニーはプラグの目が潤んでいるのを見てそう思ったらしい。そうじゃない、ありがとうと言いたかったのだが、言うより先にフィニーがすがりついてきた。
「うぁああ! ごめん!」
「大丈夫だって、これくらい」
プラグは少しなだめる事になった。
フィニーが落ち着いた後、ウォレスが少し頰を膨らませた。
「っていうか喧嘩は基本、一対一だろ。もう」
ウォレスもいいやつだ。プラグは微笑んだ。
「それで、質問だけど何があるんだ?」
アルスに尋ねると、アルスが近づいて来て、紙束を確かめ、色々あるわ、と言った。
「――アドニスも皆も手伝ってくれて、だいたいは授業に関する事だけど、好きな食べ物は、とか、なんか違うのも混ざっているのよ。後は、どこで誰に剣を教わったのとか。順番でいい?」
「まあいいけど……食べ物は無しで……あ。隊長、何か聞きたいことがあるんじゃ?」
プラグがリズに尋ねると、リズは「はぁ。がっかりだ」と言う、退屈そうな返事をした。
「乱闘にならなくてすみません」
リズは乱闘をさぞ楽しみにしていたのだろう。
「まー、いい。クラリーナから聞いたんだが、お前、『分解(ラヘナ)』がしっかりできるんだって? あれってどういう感じなんだ? 仕組みが理解できれば役に立つから、教えてくれ」
クラリーナはさすがで、プラグの様子に気付いたらしい。
「クラリーナさんはどうしてそう思ったんですか?」
プラグは逆に問いかけた。
「シオウは火の精霊と相性がいいから、熱に強いのは分かると。自分は水の精霊の力を貰ったから、熱に強くてよく走れる。でもお前はそうじゃないのに、長距離を、襲歩で走ってそこまでのぼせてない。周囲も全く被害無し。つまりこれは『分解(ラヘナ)』が上手いって事だろうって。ちょうどこいつ等もその辺に来たから、説明してくれ。――誰に聞いたかをしっかり添えてな?」
最後にリズが意地悪で言ってきた。またいつもの、気色の悪い微笑みだ。
プラグがどう言い訳するか楽しみにしているらしい。
「んー。これはカルタにいた、古い精霊に聞いたんですけど」
プラグはまあもう、これでいいだろう、と言う設定を持ち出した。嘘は言っていない。
リズが『うわ』という顔をした。
「霊力は、物事を作り出すのは簡単だけど、それを無くす事はとても難しいらしくて。元々、人が持っている霊力には個人差があって、プレートの力を借りて、そこからこうしたい、っていう結果を思い描いて霊力を消費して、効果を作り出す感じで……基本は『霊力は一度引き出したら、必ず何かの形で、使い切らないといけない』んだそうです」
「ほお?」
「自分の、使おうと思った分が自分の霊力が、プレートによって引き出される。みたいな? 霊力調整は過不足無く、使う分だけ取り出す方がいい、って聞きましたが、でも丁度引き出すのが意外と難しくて、どうしても余ってしまうそうです。それで、余った霊力はどうなるかというと、体内を巡って熱になったり、周囲に光とか、風とか、熱とかで現れたり、とにかく何かの形として発現するそうです。見せた方が早いかな」
プラグは座ったまま『飛翔』のプレートを取り出した。
リズに「立て」と言われたのでその場に立つ。
「例えばこの『飛翔』の場合。いっぱい走ると、凄く体が熱くなります。これは霊力を使っているとき、感じた事があると思うけど――霊力が流れると、温かいんです。霊脈を霊力が伝う感覚を『熱』で覚える事が多いし、実際に体温も上がっています」
プラグは「ル・フィーラ」と唱えて『飛翔』のプレートを起動させた。
「ただこれは、熱では無い、他の物に変える事も出来ます。これを『霊力転属(フィカアーケ)』と言います。文章で書く場合は『霊力の転属(ラ・フィーラ・ミ・アーケ)』と書きますが、どちらも意味は同じです。発動はちょっと難しいんですけど、例えば霊力を――光に転属(アーケ)」
プラグは霊力を集中して、熱を光に変えた。
プレートが一瞬、まばゆく光り、候補生達がざわめき、目を細めた。
「それか、風にアーケ」
プラグは周囲に風を起こした。プラグの髪が、ぶわりとなびいて、候補生達の前髪が揺れた。候補生達が目を丸くする。
「これが『転属(アーケ)』です。これを利用して、体の熱を発散させる事もできますが、この方法には問題があって――」
するとリズが盛大に文句を言った。
「おめー! 『霊力転属(フィカアーケ)』ができるやつ、すげー少ねぇんだぞ? さらっとやるな!」
プラグは今はそうなのか、と思いつつ、苦笑で誤魔化した。
「飛翔は風のプレートなので、『風』への転属と相性が良いから、熱を熱とせず、風として発散するのが、楽でいいんですが……そうすると、周囲が荒野になってしまいます。強い衝撃波が発生して、木々が吹っ飛ぶみたいな……」
「あ。それ、やったわ……」
アルスが項垂れた。
プラグは思わず笑った。
「やったんだ? 普通の衝撃波じゃなくて?」
呟きをプラグに拾われて、アルスが焦った。
「あっ、いえ。わからないけど、見た人から、違うって言われたわ。勘違いかも」
するとリズがアルスを見た。
「あ、それ聞いてる。それが『霊力転属(フィカアーケ)』だ。何か無意識にできるやつもいるんだってよー。たしか」
リズが棒読みで言った。
「そうだったんですね。後で、木が倒れてたって聞いてびっくりしました。あ、ごめん続けて」
アルスがほっとした様子で促した。
プラグは頷いて続けた。
「うん。最初から無駄なく使えれば、別に良いんですが。あんまり速いとそれが難しい場合があって。でも熱いからと言って『転属(アーケ)』で延々光るのも、木を倒すのもちょっと、って言うときに、『霊力の分解(ラヘナ)』を使うそうです。で、やり方ですが。簡単な方法だと、呼吸を落ち着けて『分解しろ』って念じるのが多分、一般的かと……隊長はどうやっています? できますか?」
「……いや私もできるっちゃできるというか。それだな。深呼吸したら、ちょっと体温が下がって落ち着く程度で。理論がワカラン。精霊達もそうじゃないか、って言ってたけど、お前、知ってんのか?」
リズの言い分は正しい。
――深呼吸。落ち着かせる。つまり無意識に分解をやっていると言う事だ。
「これは俺が会った精霊が言っていたんですけど。『分解(ラヘナ)』は、自分の霊力に、自分の霊力をぶつけて、打ち消す動きなんだそうです」
プラグは右手と左手をぶつける動きをした。
ちなみにプレートは起動したままだが、手を放しても勝手に浮くので問題ない。
『飛翔』のプレートはプラグの前方、目線の高さに浮いている。手を伸ばせばすぐ届く距離だ。
「ほぉ?」
「ただ、この霊力に霊力をぶつける。と言うのが、結構量を使うようで。しかもそれが個人の霊力の総量に応じているとかなんとかで、だいたい、熱を発生させるのに使った、自分の霊力の、二十倍くらいだそうです。分解の考え方は簡単で『熱いなら水を思い浮かべて、自分を水で冷ます感覚』です。熱冷ましの場合は、風でもいいです。ただ風だと、もう少し効率が悪くなります。三十倍くらい必要とかなんとか。風の場合は、周りに出す感じじゃ無くて、分解なので、体内と自分周辺で収める感じで、霊力をそれぞれの物質に変化させる感じを思い描いて、後は深呼吸です」
するとリズが腕を組んで、首を深く傾げた。
「結局、深呼吸か。……仕組みは、何となく分かった気がするが……二十倍か……そんなに使ってるかぁ?」
「気付かないだけで、使っているはずですよ。元々霊力が多くて、戦い慣れていると、『分解』は深呼吸して、回復を意識するだけで無意識にできますから」
「ふーん、案外簡単だったな。そんなことか。お前もそれやったのか」
「いえ、もうちょっと違う方法です。実は、転属(アーケ)よりは簡単な」
プラグは苦笑した。
「んん?」
プラグは――もう少し、深く話そうと思った。どうやら精霊達は……プレート理論をあまり伝えていないらしい。確かに知っている精霊が少ないのだが。この位は話しても問題ない。
「隊長は『霊力変換(フィカアルド)』って聞いた事がありますか? アルドとか」
「んんん……? あッ! あるにはある。確か『アルド』ってのは、霊力自体をなんかに変えるやつだよな? 巫女がやってるやつ!」
リズの言葉に、プラグは頷いた。
「そうです。隊長には見えると思いますが。プレートを持たずに「ル・フィーラ」と唱えても実は霊力は発生しています。まずは『ル・レーナ』――でしまって……」
プラグはまず、飛翔のプレートを停止させ、プレートケースにしまった。
次にプラグは「ル・フィーラ」と唱えて、風を思い描き、自分の周辺に霊力を引き出し、その後――集中して、起こしたい現象を思い描き、ゆっくりと、息を吐いた。
唐突に、無数の水の粒がプラグの周りに浮く。
「これが霊力を水に変換した状態です。実際はもっと少なくても大丈夫です」
これにはさすがに、候補生達が大きくどよめいた。
「ええっ!?」「なにそれ」「そんなことできるの!?」「どうやるの……?」
と言う声が聞こえる。
「これを飛翔時に出る霊力熱の『分解』に使います。実際、見ても分かりにくいですが――水が消えて、自分の体温が下がります。体に水をかけたからではなく、分解されたから、分解した霊力自体が跡形もなくなって消えるという感じです。実際に『飛翔』でやります」
「ル・フィーラ!」
プラグは再び『飛翔』を起動させた。これだけでは何も起こらない。
「プレートを起動すると、霊力が流れ、体が熱くなります。今は跳んで、消費はしていないので、霊力は俺の周囲に集まって、熱は体内に留まっています。で、これを周囲に浮かべた水で打ち消します」
プラグは周囲の『水』を使って、自分の霊力からくる、体内の『熱』を分解した。
すると周囲の水が消える。
「見た目はとても、地味ですけど。これが『霊力変換(フィカアルド)』による『分解(ラヘナ)』です。呼び方は同じく『分解(ラヘナ)』とか『変換からの分解(アルド・ラッカ・ラヘナ)』とか何でもで良いらしいです。変換ができれば、後は打ち消す様子を思い描いて、分解したいと念じるだけです。少し練習がいるのかな? 上手く行ったので、熱が消え、俺は涼しくなりました。手も少し冷たいです。えっと――シオウでいいか。頰を触るぞ?」
プラグは振り返って、右手袋を取ってシオウの左頰に触れた。
「あ。確かに、冷たい」
シオウはそう言って片目を細めた後、プラグの手を掴んで「へぇー、すげぇな」と言った。
ただ水が消えたように見えるはずだが、目がいい者にはもう少し違って見える。
リズが溜息を吐いた。
「なるほど、蒸発とは違って見えるな……霊力が、体の中に吸い込まれた感じで」
リズが言った。やはり見えているようだ。
プラグは頷いた。
「隊長は目がいいから、霊力が目に見えるんですね?」
……正直、リズは訳ありだが、とりあえず今は、目がいいと言う事にしておく。
リズが同意する。
「まあそんなところだ。でも普通の『分解(ラヘナ)』とどう違うんだ? わざわざ『変換(アルド)』を覚える必要があるのか? 深呼吸で良くないか?」
リズの言葉は最もだった。『分解(ラヘナ)』が深呼吸でいいなら、別に覚える必要はない。しかし――。
「霊力を『変換(アルド)』してからだと、分解の効率がとてもいいんです。打ち消しの霊力消費が、水を創る分と、打ち消す分だけで――深呼吸による分解が引き出した量の二十倍なら、アルドラヘナは、一割、二割程度で済みます。元々の霊力量が多ければ良いんですが、霊力が少ない場合はもしかしたら、こちらの方がいいかもしれない。慣れれば疲れませんし」
「お前……そんな事言うけど、難しいんだろそれ……」
リズが溜息を吐いた。
しかしプラグは首を振った。
「いいえ『変換(アルド)』自体は、できる人も多いらしいです、例えば巫女もよく使っていますから、皆にもできる……かもしれません。修得は少々手間ですが、これができれば、長距離を落ち着いて走れます。霊力を使って、熱が発生しても自分で解決できるわけですから、涼しいし、汗もそんなに掻きません。ただ、精神統一が必要で、気持ちを落ち着けて、集中した方がいいので、森を速く走っている時にやるのは結構大変です。飛翔駆けは前方注意ですから。この前は結局、速くて汗を掻きました」
「なるほど……水への『霊力変換(フィカアルド)』のコツは? 『ル・フィーラ』だけで、霊力を出せば出来るもんじゃないだろ? かといって、『転属(アーケ)』は難しい。お前はできるみたいだが、私はアーケが苦手だ」
リズが言った。
「ええ。でも俺はアーケが得意です。アルスもそうらしい。個人差がありますよね」
プラグは頷いた。
『転属(アーケ)』はできる、できないの個人差が激しい。できたところで何か良いことがあるかと言えば、周囲の小石を弾いたり――例えば氷の欠片を自分が怪我しなように風や光に変えたり、熱を風にして威力を上げたり、方向を変えやすくしたり、と微妙に地味で便利ではあるが、必須では無い。
「ちなみに、それは何故だ?」
「……これは巫女に聞いたんですけれど、血筋の由来に関係するようです。力が精霊由来の人の場合、わりと簡単に使えて、戦士由来の人の場合、難しかったりとか? 地域の特性とかもあるらしいです」
「ああ、すげー納得。霊力にも種類があるからな」
リズが頷いて、候補生に向けて補足した。
「まあ、霊力の種類つっても、そう気にしないでいい。混血が進んでるからな……霊力つーのは、一概にこれだって言えないモンだし、先祖の事なんて大抵は分かんねぇ。それで? 『霊力変換(フィカアルド)』の方法は?」
「頭で思い描く練習、後は祝詞ですね。別に落ち着いて無言でもいいんですが『ゼ・フィーラ・アルド・メ・エルタ・シス』または『ル・フィーラ・アルド・メ・エルタ・セス』――つまり『水に霊力変換せよ』または『水に霊力変換して下さい』で、変換の補助ができます。エルタは水の場合。つまり炎にするならナーダです」
「げぇ……祝詞があったのかよ……! しかも超簡単! 精霊達もなんか適当だからな……。でもそれ、『人を選ぶ祝詞』だろ! お前、さっき何も言ってなかったもんな!」
リズの言葉にプラグは満面の笑みを浮かべた。
リズはさすがに凄い。百点の回答だ。
「大当たりです。祝詞は唱えなくてもどちらでも構いません。巫女が結界を張るのと同じ感じです。慣れれば気合いでなんとかなります。これは巫女の妹に教わって、練習したらできました。さすがに長時間は無理で、『変換(アルド)』した霊力の維持も狭い範囲で、一瞬が限界です」
「さっき、もうちょい長かったと思うけどな。お前やべぇな」
「そんなことはないです。だいぶ頑張ってゆっくりやったんです。巫女向けなので、女性の方ができやすいかも……、後は……何か……あ! そうだ!」
プラグは思い出して手を打った。
「確か精霊が『分解(ラヘナ)』にも祝詞があると言っていました! 忘れてた」
使わないのでプラグ自身もすっかり忘れていたが、『分解(ラヘナ)』も祝詞で補助ができる。
「え――何っ!?」
リズが身を乗り出した。
「精霊は人と成り立ちが違うので、そもそも霊力の熱が溜まらず『分解(ラヘナ)』が必要ない、らしいんです。精霊が普段使っている、例えば、いきなり炎を出したり、水を出したりと言う力は、全て『変換(アルド)』によるものです」
「あー、なるほど! そっかあいつら、分解は使わないって言ってたな、で、何て祝詞だ?」
――リズが聞いてきたが、プラグはすぐに思い出せなかった。
「えーっと……ちょっと待って下さいね。本当に使わないらしいから……ちょっと聞いただけですけど……何だっけ……」
プラグは記憶を掘り起こした。確か、四千五百年以上前……ラ=サミルから一度聞いただけの祝詞だ。精霊には必要ないので、人はこうするんだよ、と口伝でさらっと流されていた。
プラグはしばらく額を押さえ、目を閉じて思い出した。
確か――。
「あ。そうだ! 『ルム・ルラ・アーヤ・ラカ・サ・ヌ・シーオ・スラン・ロデ・スラク・ス・ラへーナ』です」
プラグの祝詞に、リズが目を丸くした。
「お前、それ『精霊術』か?」
リズの言葉にプラグは、はっとした。
(しまった……!)
――プラグにとっては同じ物なのだが、今は、そう言えば違っている。
プラグはどうやって言い訳しようかと考えた。
「えーっと、ああ……そう言えば、そんな事を言っていたような。ええと確か……何だったっけ、その精霊よりもっと古い精霊が、誰かから聞いたとか……分解は精霊には必要ないので、人が使う、よくある形式の祝詞が、そもそも無いんだそうです」
カド=ククナは精霊なので、プレートを作った際『分解(ラヘナ)』の事をすっかり忘れていて……要するに、祝詞を作り忘れたのだ。
シオウも驚いた表情でこちらを見ている。
「精霊術って、古代の?」
「うん……たぶん『古代精霊術』。俺もこれくらいしか知らないんだけど」
プラグは頷いて答えた。
するとリズが盛大なに息を吐き、頭を押さえた。
「古代精霊術か……ううん。凄ぇ精霊と会ったんだな。分かった、それはもういいが、その祝詞、安全なやつか? ルム・ルラの祝詞なら、大丈夫だと思うが……」
リズの言葉にプラグは頷いた。
リズは驚くべき事に『精霊術』の知識もあるらしい。
「あ、はい。ルム・ルラは確か精霊の系統? だとかで。これは唱えても大丈夫です。巫女も使っている、アーヤという神の祝詞で、『分解(ラヘナ)』の祝詞は唱えるだけで、霊力があれば誰でも簡単に使えるとか……そもそも、深呼吸の代用ですから簡単みたいです」
プラグは深呼吸の代わりに、この祝詞を唱えるのだと皆に説明した。
「でも祝詞が長いので、わざわざ言うなら、深呼吸でいいか、ってなりますよね? その程度です。でも、深呼吸より、霊力消費は少なく済むはず、と言っていました。どの程度補助できるかは、やってみなければ分かりませんが」
祝詞の多くは精霊術の発動を助ける物で、助けているのは『カド=ククナ』や様々な精霊、神々だ。
実はプレートを使う時、術者は『カド=ククナ』と無意識に契約をして、様々な現象を引き起こしている。
――例えば赤プレートで『水』を呼び出す場合。
『その水をどこから持ってくる?』『持って来た水はどうやってその場に発生する?』『成分は?』『飲めるのか?』などの人知を越えた調整を、カド=ククナが、他の神々に依頼している。
もちろん、その都度では無く、かつて頼んでそれきりだ。
これは六柱の優しい神々で、それぞれカイサ、ズニア、シルミ、ホレス、ウエラ、バンサと言う。彼等は元々『原理』や『真理』の神で、調整の役割を与えられているので『こう言う仕組みを考えたのですが、協力し頂けますか?』と頼んだら許された。
これはカド=ククナでなくても、然るべき手順を知り、きちんと踏めばできる。
実際に、ラ=サミルは手順を使って、精霊が物を食べられるようにした結果、功績が認められ、大祭司(ネフスティア)になったらしい。
彼曰く、精霊が食べた物はどこかへ消える――の『どこか』の先を六柱が決めているそうだ。六柱は出かけている場合もあるので、全員探すのに七百年かかったと言っていた。
カド=ククナの時はラ=サミルが六柱への『路』を作ってくれていたので、同じ路を辿って、途中で二回迷子になり、三回死にかけつつ、五十四年で済んだ。ラ=サミルは偉大だ。
こうした『契約』に『代償』を求める者もいるが『カド=ククナ』は人にも精霊にも好意的な存在なので、代償は緩く、霊力があればいい。
……この『霊力』というのは、実は『調整用』の代償なのだ。
と言っても――カド=ククナも、六神も霊力を沢山もらっても困るので、余った霊力は持ち主に戻して、適当に発散してもらう。という雑な仕組みになっている。
霊力を、霊力調整(フィカルテ)で『ちょうど使えばいい』と言っても、術者もどのくらい必要なのか、良く分かっていない。
例えば『炎を一回、三十秒使いたい』ならまだいいのだが『対象が燃え尽きるまで』『逃げる対象に合わせて数回』となると、どの程度霊力を使うのか。慣れればできるが、全て合わせる事は難しい。
……『ラヘナの祝詞』の軽減量は、人で試した事は無いので分からない。
これは実際にやるしかない。
――リズは知識が豊富なので、こういう話もしたいと思ってしまう。
プラグは、それは駄目だと自分を戒めた。
人が『世界』を知りすぎた結果、精霊狩りが起きたのだ。同じ轍は踏みたくないが、人は知恵を持つ、優れた存在だ。いつか精霊が滅ぶのは……仕方のない事だろう。
その時は、せめて苦しまず、自然に消えて行って欲しい。『カド=ククナ』は、戦いに負けた場合、精霊は全て人になる……と言う条件を悪く無いと思っているのだ。
するとリズが頷いた。
「なるほど。ちょっと楽、って感じか。アーヤ系の代償は霊力だけだからな。うん、……使ってみるか……?」
「隊長は『精霊術』に詳しいんですか?」
プラグは尋ねた。
「いや昔、ちょっと囓っただけで、もうやってない。危ねぇんだよなアレ」
リズの言葉にプラグは二回頷いた。
「それが正解です――たぶん。どうします? 使ってみます?」
「私がやって、いけそうなら、だな。お前は使ったのか?」
「いえ、深呼吸でいけるので……聞いた事も忘れていました」
「だよな。うーん。精霊術か……うちでも、ちゃんと使えるのはリゼラくらいだな」
「え? リゼラさんが?」
プラグは少し驚いた。
「ああ、まあな。その辺は本人次第ってとこか。知りたいなら聞けば良いが、血筋だなあれは」
リズが答えた。
――『精霊術』には種類があって、プレートを使う術の他に、『古代精霊術』と呼ばれる、古い術式が存在する。
元々、この世界には古くから『精霊術』と言う仕組みがあり……そのうち、『古代の精霊術』が廃れ……今では精霊やプレートを使う術が主に『精霊術』と呼ばれている。
と言うか、カド=ククナは『古代精霊術』を応用して、霊力があれば誰でも使える、お手軽な『プレート』を作ったのだ。
『古代精霊術』自体は今でも使える仕組みだが、祝詞が長く『代償』があるので危険が伴う。
例えば、カド=ククナが『カ=トゥーワ』と『カ=ルーミー』を呼び出して、『羽』を代償に浄化の祝詞『エル=エミド』を授けてもらったのも精霊術だ。
呼び出す対象は魔神、神……よく分からない何かなど、精霊に限らない。
呼び方や祝詞も様々で、魔物を呼び出す術は『魔術』、後は『神術』とか『召喚術』とか、皆がそれぞれ好きに呼んでいる。
古代精霊術の特徴は『原本は契約者、読む資格のある者以外には読めない』ことだ。
呼び出された者が意味のない――物忘れ防止の為に意味があることも多いが――文字列を当てて『俺はこの場合にこれをする』と決め、一方的に授ける物になる。
皆にも読めるように、との希望があれば読める文字で記されるが、大抵は、契約者、資格者にしか読めない文字で記される。
その後は契約者の自由だが、祝詞を広めたいと思った場合は、口伝か、音に合わせた『写本』を作成する。
古代精霊術の祝詞は大抵、長いので口伝より『写本』の方が多い。
『写本』と言っても、他人にはかろうじて冒頭で何の系統か判別できる程度で、後はどこかに呼び出された者の名前が入る、とその程度。
巫女の祝詞のように、安全で便利な術もあるが……契約によっては、代償が大きかったり、生贄が必要だったり、祝詞を唱えるだけで出来てしまったり、と危険極まりない。
契約相手や条件、効果も分からないまま使う、という例もあるのだ。
プラグはリゼラの容姿を思い出した。
髪は淡めの金髪だったが、瞳は茶色のような、金色のような、光の加減で見え方が変わる不思議な色をしていた。
「リゼラさんは、そう言えば変わった瞳をされていますが、異国の出身とか?」
「そんな所だな。祝詞を聞いた所で他の奴には使えないから、まあ安全って訳だ。本人は『おまじないの魔法』だって言ってたな。――『精霊術』については、後で私が教えるから、このくらいにしとけ」
「なるほど。分かりました」
プラグは素直に頷いた。
アーヤ系の祝詞は『精霊の神アーヤ』と契約する物で、精霊術の中では最も安全とされている。
『アーヤ』は『風』を示す『=アアヤ』と響きが似ているが神の名前なので、全く別の物になる。
今、精霊術の中で流布しているのは主にこれで、巫女は、教会の聖域を作る際に使っているし、正しい知識があれば、危険、と言う事も無い。リズにどの程度の知識があるか分からないが、今日はこのままリズに任せて、間違っていたら補足でいいだろう。
おそらく候補生課程では『精霊術』は学ばない。
やっても触りで『アーヤ以外の、怪しい祝詞は危ないから使うな』『アーヤであっても、出所の分からない祝詞は使うな』程度だろう。巫女の時も、始めにそれを教わった。
そもそも、アーヤ系以外は知っている者が少ない。精霊狩りの前も使えるのはごく僅かだった。
使用には神との契約や、血統など条件が必要な条件が多いので、採用されるか分からない候補生達に教えても意味がないのだ。
(反省しよう……)
プラグは内心で項垂れた。
精霊術自体は、巫女も使っているし、少し調べれば分かる事だが。言ってはいけない事だった。
――しかし……こうして、知識を限定できるのも、今だけではないだろうか?
リズやルネ、隊士達を見ていると思うが、この騎士団は本当に精鋭揃いだ。
クロスティア騎士団はセラ、ヒュリス、ストラヴェルの中央三国を中心としているが、実は、それ以外の国にも小規模な分団がある。
『精霊の祝詞』は安全な分、『危険な術』への対策となる。
クロスティア騎士団が精霊大戦後、三百年以上続いていると言う事は、脅威があると言うことだ。とすれば……どこかで精霊術や、魔術の研究が進んでいてもおかしくない。
身を守るためにも、リズに協力するのは正解だ。
もはや候補生達は置いてきぼりだが、プラグは咳払いをして続けた。
「という感じで。精霊術については、隊長に聞いて下さい。俺もよく知らないので。あれ、何の話をしていたっけ――」
プラグはすぐに、逸れる前の話を思い出した。
「あ、そうだ。人を選ぶ祝詞について、か――『変換(アルド)』の際の霊力発現にはあらかじめ練習が必要で、つまりこれが『人を選ぶ祝詞』です。祝詞は霊力発現の補助だから、物によっては、覚えたら唱えなくてもできる……分かるかな……? ……シオウはどう? 俺の説明で分かった?」
皆がぽかんとしているので、心配になって、プラグはシオウに尋ねた。アドニスまで『?』と言う顔をしているのだ。アドニスなら十分理解できる内容のはずだから、プラグは説明に失敗しているようだ。
するとシオウが顔を上げ、こちらを見た。
「また、急に飛んだな……使えない祝詞についてか?」
「うん、伝わってる?」
シオウは呆れつつプラグを見て、口を開いた。
「……俺の感じでいいなら。えーと、つまり祝詞は、適当に言っても反応しないって言いたいのか? でも、意味を理解して修練を積んでいないと使えない。だから『使えない祝詞』って事でいいのか? そんくらいなら」
「! そうそれ。そういうことだ」
「いや、分かったけど。超簡単な祝詞だってリズが言ったから、あと、意味としてはゼクナ語でそのままだし」
「シオウは俺の説明で分かった?」
するとシオウが溜息を吐いた。
「お前の説明、大ざっぱなんだよ」
「大ざっぱ……!?」
プラグは少しショックを受けた。頑張って伝えているのだが。
「頑張って、説明しているんだけど……分かりにくいか?」
シオウに言うと、シオウが呆れた。
「お前、実践派だろ。一回読んだり、聞いたりして、なるほどーやってみようー、あ、できた! ってやつ。理論は後付け。だから、教え方も感覚的なんだって。もっと努力家な感じ出せよ」
プラグにはシオウの言いたいことが何となく分かった。
プラグは人では無いから、習得に掛かる時間や、労力の説明が曖昧なのだ。
「そうかも……どうしたらいいと思う? 教えるのって難しい」
精霊相手なら、同じ事ができるので教えやすい。
しかし人となると。何ができてできないのか、実感が湧かない。
するとシオウが、そーだなーと呟いた。
「んー。お前が今言ってるの、確か、霊力理論教本の百三十九ページ一番下の注釈に、小さく書いてある。『巫女が使用する祝詞には、発現に訓練を要する物がある。また通常の祝詞も唱えるだけでは使えない場合がある。その理由の多くは霊力不足、修練不足であるが、稀に使用権限がなく使えない場合が存在する。例として、巫女には階級ごとの『証』と『祝福』を受けなければ扱えない祝詞が数多くある』って。だからまあ、そうやって書いてあるとこ教えて、読ませたらいいんじゃね?」
シオウはあっさりそらんじた。
プラグの記憶と合わせても、一言一句そのままだ。
「え……いや、うん、確かに、それはあったけど、それで分かるのはシオウとか、アドニスくらいだな……」
「だから本、ってことで。後で読むように、でいいんじゃね。言葉で聞くより、読んだ方が分かりやすいって事もある」
シオウが言った。大変もっともな言い分だ。
シオウに指摘された事で、プラグは、自分が言ったことは大分難しかったのだな、と理解できた。分厚くて詳しい教本にもその程度しか載っていないのだから、実際それはこうなんだよ、と言われても今の候補生達にはさっぱりだろう。
プラグは深く頷いた。
「そうだな、そうかもな……ありがとう。確かその次のページにも書いてあったから、目を通しておいて。細かくは書いていないけど、一四〇、二〇八頁にもちょっとあるから」
プラグは頷いて、言っておいた。候補生達が「後で見なくちゃ」とか「そう言えば、あった気がする……これがそうなんだ……」と呟いた。
するとシオウが溜息を吐いた。
「お前。いきなり応用から入るからな……俺も知らねぇし。隊長のリズでもあやふやな事なんだ。ってことは、もっと初歩からやった方が良いって事だろ。今、はっきりさせたいのは、それがこいつ等にできるかどうかって事だろ。で、お前は出来るって思ったから教えた、別にこの程度、巫女の資格はいらないし楽勝、って事でいいのか? あ、俺にはよく分かんねぇけど」
プラグは深く頷いた。
シオウの賢さは大した物だ――そして、やはり、学科の十番は手抜きだ。
……ここでシオウが知識を披露したのは、自慢ではなく。たぶん違う意図がある。
シオウに聞かなければ本音は分からないが、プラグがおかしいと思われないように庇ってくれたのだろう。自分も前に出されたので一応、と言ったところかもしれない。
――プラグはシオウともっと語り合った方が良いと思った。シオウはプラグに足りない考え方を沢山、持っているようだ。その考えが気になる。
プラグはシオウはやっぱり凄いな、と言う『空気』を出した。
シオウが以前、一緒に走ったときに『むず痒い』と言っていたのはこれだろう。
「だから、その感じやめろ」
シオウは溜息を吐いた。
候補生達に目線を戻すと先程までの『なんかよくわかんない』『正直、眠い』と言う雰囲気が綺麗さっぱり消えていた。
シオウの発言で目的が明確になったので、ちゃんと聞こうと言う姿勢になったのだ。
シオウは珍しい資質の持ち主かもしれない。
プラグは微笑んだ。
「シオウの言ったとおり――この『変換(アルド)』は主に巫女の力だけど、『変換(アルド)』の初歩はたぶん、皆ならできる。と思う。向き不向きもあるけど、精霊剣が作れるなら、時間をかければ習得できる可能性が高い。結局、とりあえずやってみるしかない。で良いかな、シオウ?」
「俺に聞くなよ。ま、やってみなきゃ分かんねぇよな……」
「そうなんだよね……」
プラグは苦笑して、まとめることにした。
「よし。じゃあ、まとめると……『分解(ラヘナ)』の祝詞はまず隊長がやってみる。アルドは結構難しい。でも覚えれば使える、アーケは血統的な要素がからむので放置。――『変換(アルド)』の難易度だけど……まだ二十倍使って、深呼吸の方が簡単で実用的かな。でもこの二十倍というのが、とても疲れる原因でもあるので、注意するといいかな、って思います。つまり、長距離の飛翔駆けは、のぼせる前に深呼吸で『分解(ラヘナ)』して、やりすぎないように適度に調整して、定期的に体温を落ち着かせて走る、いっそ速度を落とすか、休憩を挟んで体温を下げる、で、後は霊力切れと戦いつつ、呼吸や熱、靴にも注意して、なんとか走りきる。もし『変換(アルド)』を覚えて、体温を下げる事ができれば、もう少し、霊力が楽になるかも……と、そんな感じだと教わりました」
「あ、あと、『分解(ラヘナ)』は人間特有の機能で、精霊は呼吸しているけど人間とは少し違うらしいので、分解はできないと言うか、必要ない……らしいです。あと『変換(アルド)』は精霊の場合は無意識に、通常の攻撃で使っているそうです。火を出したり、氷を出したり。あれがそうみたいです。――このくらいかな」
――他には、『分解(ラヘナ)』の更に上、『循環(シャルド)』ができると永遠に霊力を使える『完全循環(ラ=シャルド)』状態になるが……そんなのは古代十二神か、カド=ククナ級でなければできないので割愛する。
そもそも『循環(シャルド)』は備わる物で、覚えられる物では無い。
言いたいことが多いというのも、プラグの説明が分かりにくい原因かもしれない。
本当は全部、まるごと教えてあげたいのだ。
「以上が、ちょっと楽かもしれない、飛翔駆けの方法です。終わります」
プラグは説明を終えて、頭を下げた。
「いやーおもしろかったー」
とシオウが無邪気に拍手してくれたので、候補生達も拍手をしてくれた。
「すげー……」「いやすげー」「難しそうだけど……」「わかんない」
「霊力が少なくても、頑張れば出来るかも、ってこと?」「祝詞って便利?」
「え、つまり深呼吸するなって事? それで前、倒れたのかな」「いや、それだけ?」
「……結局、休み休み走るってこと……?」
最終的に『またよく分からない』と言う顔をしているのには苦笑するしかないが、後は実践だ。
リズが盛大に嘆いた。
「お前もう精霊学者になれよ。……で、なんてやつに教わったんだ? 名前、経歴詳細に」
リズは、投げやりになっている。
「名前は分かりません。怪我をしていたのを助けて、二年くらい一緒にいて、そのまま、別れました」
「ふうん。あ。お前、今日から勉強、五倍な。鍛練も慣れて来たみたいだから、五倍でいいか?」
リズがにやりと笑った。
「え……五倍……?」
プラグは、なぜ、という気分になった。正直言って、今日は散々だ。五倍は厳しい。
しかし――プラグは慎重にリズの反応を待った。
「後、ついでに論文追加で。今言った『分解(ラヘナ)』の祝詞について書いて提出。軽減量の比較つけて。それ以外にも後、三つくらいなんか役に立つこと書いて出せ。そっちは論文じゃなくてもいいが、その変な精霊? に教わったことまだ何かあるだろ。ズルしてんだから、それくらいやれ」
思った通り、リズは難題をふっかけてきた。
リズの良い所は、難題っぽくても、きつくても、こなせない事はふっかけない所だ。
プラグは項垂れて、頷いた。
「分かりました。ただし条件があります。確かに、俺は狡いです。……俺はもともと、精霊の血が入ってるのか、なんか体も丈夫ですし。霊力も強いみたいですし。と言う事で――採用枠の追加を検討して貰えませんか? 人手不足なんでしょう? じゃなきゃ五倍はできません」
するとリズは「んー、んんんん?」と言った。
そして、とても悪い顔でにやつき、よし、と膝を叩いた。
「――まあ、今年はお前とシオウのせいで、他が割を食ってるからな。だが、確約はできない。隊士の基準に満たない奴を入れても、殉職するのが関の山。隊士になった後はこき使う前提だし、いきなり前線に出す予定だし? こいつ等次第だな……」
そこでリズは立ち上がって候補生達を見た。
「乱闘が起きると期待してきたんだが、拍子抜けだ。お前等もっと派手に暴れろ。全く、ちなみに去年の卒業者は十八名。これは仲間割れとイジメでそうなった。な、馬鹿馬鹿しいだろ? 使えるモンは使って、強くなれ阿呆ども! 以上、あー! 無駄な事しちまった! 阿呆くさいので、今から、皆で湖一周! いいな! 治療の制限は無し! 時間制限も無し! 全員死ぬ気で完走しろ!」