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第二部・第2章〜黒と黄の詩〜⑪

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 普段は、同年代の男子と同様に、ワイワイ騒ぐタイプなので、同じクラスになって、一ヶ月ほどでは、まったくわからなかったんだけど……。

 彼がここまで、他人の言動に敏感になったことには、なにか理由があるんだろうか――――――?

 そんなことを気にしながら、クラスメートの顔を眺めていると、両手を組んで、伸びの姿勢を取った彼は、

「ふ〜、今日は、ここまでにさせてもらうか〜」

と言ったあと、「それよりさ……」と、それまでとは、まったく違う話題を振ってきた。

「教室で使ってた黄瀬のペンケースのイラストって、デロリアンだよな? 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の……」

 唐突な質問に、一瞬たじろぎながら、

「よく、わかったね……三十年以上前の古い映画なのに……」

そう答えると、

「ウチの(とお)ちゃんが好きな映画らしくてさ……何回も観てるんだよ……」

と、黒田竜司は感慨深げに言う。

「そっか……ボクが、この映画を観たのは、去年が初めてなんだ。あのペンケースは、春休みにユニバに行った時に買ってもらった」

 ボク自身が、この作品に興味を持ったのは、前の年に視聴していた、主人公が記憶のみを過去に送る「タイムリープ」を行うテレビアニメの冒頭で、「1.21ジゴワット」という謎の単位が語られたからだった。

 その謎のキーワードを検索して、この映画にたどりつき、シリーズ三部作を一気に観賞したボクは、すっかり、この映画にハマってしまった。

 映画のパート2で舞台になっているのが、二◯一五年となっていることも、時代的に親近感を持てた(残念ながら、空飛ぶ乗用車や空中浮遊のスケートボードは普及することはなかったけど……)。

 ただ、ボクたちが生まれるよりも、かなり以前に作られた作品なので、まさか、小学校の同級生に、この映画を好きな人間がいるとは思わなかった。

「やっぱり、そうか! ショップで見たことあると思ったんだ! でも、あのライドって、もう少しでなくなっちゃうんだよな……」

 ボクのペンケースについて語った黒田は、春休み中に発表された、この作品をテーマにしたアトラクションが、五月末でサービスを終了するというニュースに触れた。

「――――――らしいね。ボクは、この映画を初めて観てから、そんなに時間が経っていないけど、悲しいなって想う……」

 ボクが、そう言うと、彼も

「ライドがなくなる前に、もう一回、ユニバに行ってみたいな〜」

と、つぶやく。
 自分の両親は、この映画を観たことがなかったそうで、春休みに『バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド』を体験したときは、ボクだけが、はしゃぎ、楽しんでいる感じだったので、正直なところ、モノ足りなさが残った。

(黒田と一緒なら、楽しいかもな……)

 不思議なことに、この日、はじめて親しく話した仲であるにもかかわらず、ボクは、そんな風に感じていた。

 自分の心境の変化に驚きながらも、タブレットの電源を落とし、片付けに入ろうとすると、

「じゃあ、そろそろ帰らせてもらうわ。あんまり遅くなっても、黄瀬の家に迷惑が掛かるしな……」

そう言って、黒田はランドセルと手提げカバンを持って立ち上がる。

(小学四年になったばかりなのに、他人に気をつかいすぎだろ……)

 心のなかで、苦笑しながら、「外まで送るよ……」と言って、ボクも彼に続いて席を立つ。
 二階にある自室から階段を降りて、リビングの前を通りかかる時、夕食を作っている最中の母親に対しても、

「今日は、お邪魔しました」

と、黒田は丁寧にお辞儀をしてから、玄関に向かった。
 そして、玄関のたたきで靴を履き、外に出たあと、こんな提案をしてきた。

「黄瀬、今度はウチに遊びに来ないか? 映画とか見放題だぞ」

「それって、ネ◯フリとかア◯プラってやつだっけ? 月曜日と第一・第三土曜日は、習いごとが無いから、黒田の家が迷惑じゃなければ、考えさせてもらうよ」

 そう返答すると、彼は「おう! いつでも来てくれ!」と応じてニコッと笑ったあと、

「じゃあ、また明日! 黄瀬のお母さんにもお礼を言っといてくれ」

と言って、帰って行く。

(黒田って、イイやつかも……)

 そんな風に感じながら、洗面所で手を洗ってリビングに入ると、母親が声をかけてきた。

「今日、来てたのは、新しいお友だち?」

「うん! 四年で同じクラスになった黒田だよ」

「そうなの? 初めて同じクラスになる子ね。アレ……? でも、たしか、春休みの前にお父さんが亡くなったのって、黒田さんのお宅じゃなかったっけ?」

 何気なく口にしたのであろう母親の一言に、ボクは、言葉を失ってしまった。


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 彼がここまで、他人の言動に敏感になったことには、なにか理由があるんだろうか――――――?
 そんなことを気にしながら、クラスメートの顔を眺めていると、両手を組んで、伸びの姿勢を取った彼は、
「ふ〜、今日は、ここまでにさせてもらうか〜」
と言ったあと、「それよりさ……」と、それまでとは、まったく違う話題を振ってきた。
「教室で使ってた黄瀬のペンケースのイラストって、デロリアンだよな? 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の……」
 唐突な質問に、一瞬たじろぎながら、
「よく、わかったね……三十年以上前の古い映画なのに……」
そう答えると、
「ウチの|父《とお》ちゃんが好きな映画らしくてさ……何回も観てるんだよ……」
と、黒田竜司は感慨深げに言う。
「そっか……ボクが、この映画を観たのは、去年が初めてなんだ。あのペンケースは、春休みにユニバに行った時に買ってもらった」
 ボク自身が、この作品に興味を持ったのは、前の年に視聴していた、主人公が記憶のみを過去に送る「タイムリープ」を行うテレビアニメの冒頭で、「1.21ジゴワット」という謎の単位が語られたからだった。
 その謎のキーワードを検索して、この映画にたどりつき、シリーズ三部作を一気に観賞したボクは、すっかり、この映画にハマってしまった。
 映画のパート2で舞台になっているのが、二◯一五年となっていることも、時代的に親近感を持てた(残念ながら、空飛ぶ乗用車や空中浮遊のスケートボードは普及することはなかったけど……)。
 ただ、ボクたちが生まれるよりも、かなり以前に作られた作品なので、まさか、小学校の同級生に、この映画を好きな人間がいるとは思わなかった。
「やっぱり、そうか! ショップで見たことあると思ったんだ! でも、あのライドって、もう少しでなくなっちゃうんだよな……」
 ボクのペンケースについて語った黒田は、春休み中に発表された、この作品をテーマにしたアトラクションが、五月末でサービスを終了するというニュースに触れた。
「――――――らしいね。ボクは、この映画を初めて観てから、そんなに時間が経っていないけど、悲しいなって想う……」
 ボクが、そう言うと、彼も
「ライドがなくなる前に、もう一回、ユニバに行ってみたいな〜」
と、つぶやく。
 自分の両親は、この映画を観たことがなかったそうで、春休みに『バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド』を体験したときは、ボクだけが、はしゃぎ、楽しんでいる感じだったので、正直なところ、モノ足りなさが残った。
(黒田と一緒なら、楽しいかもな……)
 不思議なことに、この日、はじめて親しく話した仲であるにもかかわらず、ボクは、そんな風に感じていた。
 自分の心境の変化に驚きながらも、タブレットの電源を落とし、片付けに入ろうとすると、
「じゃあ、そろそろ帰らせてもらうわ。あんまり遅くなっても、黄瀬の家に迷惑が掛かるしな……」
そう言って、黒田はランドセルと手提げカバンを持って立ち上がる。
(小学四年になったばかりなのに、他人に気をつかいすぎだろ……)
 心のなかで、苦笑しながら、「外まで送るよ……」と言って、ボクも彼に続いて席を立つ。
 二階にある自室から階段を降りて、リビングの前を通りかかる時、夕食を作っている最中の母親に対しても、
「今日は、お邪魔しました」
と、黒田は丁寧にお辞儀をしてから、玄関に向かった。
 そして、玄関のたたきで靴を履き、外に出たあと、こんな提案をしてきた。
「黄瀬、今度はウチに遊びに来ないか? 映画とか見放題だぞ」
「それって、ネ◯フリとかア◯プラってやつだっけ? 月曜日と第一・第三土曜日は、習いごとが無いから、黒田の家が迷惑じゃなければ、考えさせてもらうよ」
 そう返答すると、彼は「おう! いつでも来てくれ!」と応じてニコッと笑ったあと、
「じゃあ、また明日! 黄瀬のお母さんにもお礼を言っといてくれ」
と言って、帰って行く。
(黒田って、イイやつかも……)
 そんな風に感じながら、洗面所で手を洗ってリビングに入ると、母親が声をかけてきた。
「今日、来てたのは、新しいお友だち?」
「うん! 四年で同じクラスになった黒田だよ」
「そうなの? 初めて同じクラスになる子ね。アレ……? でも、たしか、春休みの前にお父さんが亡くなったのって、黒田さんのお宅じゃなかったっけ?」
 何気なく口にしたのであろう母親の一言に、ボクは、言葉を失ってしまった。