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山本タクミ(20)/配信者⑥

ー/ー



「はいこんばんはー、今日は寝すぎちゃって気がついたら夜でした。なんだか久しぶりの感覚でしたよ、起きたら部屋暗いっていうの。まあそれもこれも、昼間隣の頭のおかしいやつらと話して疲れたせいなんですけどね」

『こんばんは』

『今日なんか部屋の雰囲気違くないですか?』

『いつもより暗い?』

『いつも通りだろ』

『相変わらず目の下のクマすごい』

「昨日だって一昨日だって夜中に作業音がうるさかったじゃないすか。それを注意したんすけど認めなくって。ね、みんなも聞いてたじゃないすか」

『そんな音してたか?』

『うるさいですよね』

『アーカイブに音入ってなかったですよ』

『ついに精神やられた主?』

『今日のゲーム何』

「今日のゲームはまたテキストゲーム探してきたんで、これやっていきます。探してきたっていうか、これ、うちにあったんすよね。こんなのあったの知らなくて、だからやるの初めてなんすよ。初見でどこまでやれるか、応援よろしくお願いしますね」

『???』

『何言ってんだ主』

『ああ、そのゲームもホラーじゃないですか』

「おおー、タイトル画面から怖い感じすね。これ、実は隠れた傑作的な感じなんじゃないすか? 良作の匂いがぷんぷんですよ、良いゲームまた見つけちゃったかな」

『ふざけてんのか?』

『ずっと砂嵐じゃん』

『女の顔がずっとこっちを睨んでますね』

『主、本当に大丈夫か?』

『どうせフリだろ』

『ついにこんなことするようになっちまったか』

「たまにはテキスト読み上げますか。えーっと、『男は部屋に居た。昭和の気配が多分に残る日に焼けた畳に座り込み、テレビを一心に見つめていた。ぶつぶつと独り言を呟きながら、チカチカ光る画面以外には視線を動かさぬよう細心の注意を払っていた』」

『自分で作ったのか?』

『しかもそれ暗記なんかしちゃって』

『主様と同じ状況ですね、怖いです』

『検索かけたけどどこにもそんなテキストないぞ』

『いいじゃん、自作自演どこまでもつか見守ってやろうぜw』

「『なぜ視線を動かしてはいけないのか。それはひしめき合うように歪んだ顔が部屋の空間を埋めており、その者達が男を取り殺そうと狙っているからだ。口々に何かを話しかけており、その言葉がわかってはいけない、と、男は本能でわかっていた』」

『語呂が悪い文章だな』

『まあがんばってんじゃね』

『砂嵐って不安になるよな』

「『言葉がわかってはいけない。目が合ってはいけない。認識してはいけない。つまり男は何もすることができない。そもそもこの状況に陥った時点で終わりなのだ。その前段階でなら、回避する道もあったかもしれないが、男はそのチャンスを全て逃していた』」

『じゃあどうしろっていうんだよ』

『選択肢いつ』

『こんなゲームほんとにあるのか?』

「『救いの手を差し伸べられても自らそれを払いのけ、やめるという選択肢さえ、男は選べなかった。もう男は魅入られていたのだ。この家で過ごすうちに、少しずつ少しずつ心を蝕まれ、正常な思考ができぬよう絡め取られていった』」

『よく暗記できたな』

『主さんがんばって』

『もうおそい』

『なんか段々部屋暗くなってね?』

「『ぶつぶつと言う声は徐々に小さくなっていった』。……あのー、ちょっと、もう読むの怠くなったんで、一旦休憩していいすか? 音読なんて小学生ぶり? 煙草吸いたくなっちゃったすよ」

『忍耐力なっ』

『先を忘れたか』

『読むのをやめてはダメです』

『主はゲームしてない時間が長い配信者ですし』

『今日は何が起きるんかね』

『?』

『どうした主』

『タバコ咥えたままで固まってる』

『パントマイムの練習?』

『目でか』

「お、俺の、肩に、手、手が」

『何言ってんのw』

『必死の演技なんだからのってあげようよ』

『どんな手?』

『女性の手ですね』

『爪真っ黒』

「つ、冷たい。ぐっ、て、掴まれてる」

『お祓いに行かないからぁ』

『砂嵐以外になんか音が聞こえる』

『さっっっむ』

「い、嫌だ、なんで、俺が何したって言うんだよ。髪の毛、嫌だ、見たくない」

『恨みの強い女性が主さんに覆いかぶさってます』

『鏡にはなんにも映ってないぞ』

『砂嵐、顔に見えるんだが』

『なにこれ悲鳴のSE? 怖すぎ』

『主のマヌケな顔しか見えない俺は』

「あ、ああ、やめてくれ、いやだ、助けてくれ。誰でも良いから、助けて」

『主、迫真の演技』

『そっちの線で食っていけるんじゃね?』

『怖すぎます』

『今女性を筆頭にたくさんの怨霊が主様に群がっています』

『鏡に顔がたくさん映ってるじゃん! 見えないの!?』

『それより砂嵐の顔だろ。段々立体になってる』

『砂嵐とか何言ってんの?』

「ごめ、ごめんなさい、助けて、いやだ、やめて、あああああああ」

『ブレイクダンスのなりそこない』

『明らかに足掴まれてるじゃん、どうやってんの』

『フレームアウト』

『ああ、なんと恐ろしい』

『やまもとはくわれた』

『なんの音もしない』

『その辺のB級映画より面白かった』

『怖さのリアリティが違うよな』

『主さん、大丈夫ですか?』

『もういいぞ』

『砂嵐の音うるせえな』

『キーンって高い金属音が聞こえるんですけど私だけですか?』

『もう主さんに会うことはないでしょう』

『強い念を感じます。このまま見続けてるとあなたのもとにも』

『今日はもうゲームやんないの?』

『!?』

『うおっ』

『何!?』

『びっくりした』

『停電?』

『演出凝ってんな』

『さむすぎ』

『だいたい幽霊映るとかありえないっしょ』

『早く種明かしした方がいいよ』

『炎上さえも嬉しいってか』

『前のゲーム配信の頃は好きだったけどこんなふうになっちまうなんて』

『あ』

『切れた』

『これで終わりかー』

『まあまあ面白かった』

『今度からこんな感じで配信するならファンやめようかな』

『なんだよ釣り宣言しろよ』

『つまんね』

『自作自演乙』

『さようなら』

『画面から女の顔が』

『おつかれ』


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「はいこんばんはー、今日は寝すぎちゃって気がついたら夜でした。なんだか久しぶりの感覚でしたよ、起きたら部屋暗いっていうの。まあそれもこれも、昼間隣の頭のおかしいやつらと話して疲れたせいなんですけどね」
『こんばんは』
『今日なんか部屋の雰囲気違くないですか?』
『いつもより暗い?』
『いつも通りだろ』
『相変わらず目の下のクマすごい』
「昨日だって一昨日だって夜中に作業音がうるさかったじゃないすか。それを注意したんすけど認めなくって。ね、みんなも聞いてたじゃないすか」
『そんな音してたか?』
『うるさいですよね』
『アーカイブに音入ってなかったですよ』
『ついに精神やられた主?』
『今日のゲーム何』
「今日のゲームはまたテキストゲーム探してきたんで、これやっていきます。探してきたっていうか、これ、うちにあったんすよね。こんなのあったの知らなくて、だからやるの初めてなんすよ。初見でどこまでやれるか、応援よろしくお願いしますね」
『???』
『何言ってんだ主』
『ああ、そのゲームもホラーじゃないですか』
「おおー、タイトル画面から怖い感じすね。これ、実は隠れた傑作的な感じなんじゃないすか? 良作の匂いがぷんぷんですよ、良いゲームまた見つけちゃったかな」
『ふざけてんのか?』
『ずっと砂嵐じゃん』
『女の顔がずっとこっちを睨んでますね』
『主、本当に大丈夫か?』
『どうせフリだろ』
『ついにこんなことするようになっちまったか』
「たまにはテキスト読み上げますか。えーっと、『男は部屋に居た。昭和の気配が多分に残る日に焼けた畳に座り込み、テレビを一心に見つめていた。ぶつぶつと独り言を呟きながら、チカチカ光る画面以外には視線を動かさぬよう細心の注意を払っていた』」
『自分で作ったのか?』
『しかもそれ暗記なんかしちゃって』
『主様と同じ状況ですね、怖いです』
『検索かけたけどどこにもそんなテキストないぞ』
『いいじゃん、自作自演どこまでもつか見守ってやろうぜw』
「『なぜ視線を動かしてはいけないのか。それはひしめき合うように歪んだ顔が部屋の空間を埋めており、その者達が男を取り殺そうと狙っているからだ。口々に何かを話しかけており、その言葉がわかってはいけない、と、男は本能でわかっていた』」
『語呂が悪い文章だな』
『まあがんばってんじゃね』
『砂嵐って不安になるよな』
「『言葉がわかってはいけない。目が合ってはいけない。認識してはいけない。つまり男は何もすることができない。そもそもこの状況に陥った時点で終わりなのだ。その前段階でなら、回避する道もあったかもしれないが、男はそのチャンスを全て逃していた』」
『じゃあどうしろっていうんだよ』
『選択肢いつ』
『こんなゲームほんとにあるのか?』
「『救いの手を差し伸べられても自らそれを払いのけ、やめるという選択肢さえ、男は選べなかった。もう男は魅入られていたのだ。この家で過ごすうちに、少しずつ少しずつ心を蝕まれ、正常な思考ができぬよう絡め取られていった』」
『よく暗記できたな』
『主さんがんばって』
『もうおそい』
『なんか段々部屋暗くなってね?』
「『ぶつぶつと言う声は徐々に小さくなっていった』。……あのー、ちょっと、もう読むの怠くなったんで、一旦休憩していいすか? 音読なんて小学生ぶり? 煙草吸いたくなっちゃったすよ」
『忍耐力なっ』
『先を忘れたか』
『読むのをやめてはダメです』
『主はゲームしてない時間が長い配信者ですし』
『今日は何が起きるんかね』
『?』
『どうした主』
『タバコ咥えたままで固まってる』
『パントマイムの練習?』
『目でか』
「お、俺の、肩に、手、手が」
『何言ってんのw』
『必死の演技なんだからのってあげようよ』
『どんな手?』
『女性の手ですね』
『爪真っ黒』
「つ、冷たい。ぐっ、て、掴まれてる」
『お祓いに行かないからぁ』
『砂嵐以外になんか音が聞こえる』
『さっっっむ』
「い、嫌だ、なんで、俺が何したって言うんだよ。髪の毛、嫌だ、見たくない」
『恨みの強い女性が主さんに覆いかぶさってます』
『鏡にはなんにも映ってないぞ』
『砂嵐、顔に見えるんだが』
『なにこれ悲鳴のSE? 怖すぎ』
『主のマヌケな顔しか見えない俺は』
「あ、ああ、やめてくれ、いやだ、助けてくれ。誰でも良いから、助けて」
『主、迫真の演技』
『そっちの線で食っていけるんじゃね?』
『怖すぎます』
『今女性を筆頭にたくさんの怨霊が主様に群がっています』
『鏡に顔がたくさん映ってるじゃん! 見えないの!?』
『それより砂嵐の顔だろ。段々立体になってる』
『砂嵐とか何言ってんの?』
「ごめ、ごめんなさい、助けて、いやだ、やめて、あああああああ」
『ブレイクダンスのなりそこない』
『明らかに足掴まれてるじゃん、どうやってんの』
『フレームアウト』
『ああ、なんと恐ろしい』
『やまもとはくわれた』
『なんの音もしない』
『その辺のB級映画より面白かった』
『怖さのリアリティが違うよな』
『主さん、大丈夫ですか?』
『もういいぞ』
『砂嵐の音うるせえな』
『キーンって高い金属音が聞こえるんですけど私だけですか?』
『もう主さんに会うことはないでしょう』
『強い念を感じます。このまま見続けてるとあなたのもとにも』
『今日はもうゲームやんないの?』
『!?』
『うおっ』
『何!?』
『びっくりした』
『停電?』
『演出凝ってんな』
『さむすぎ』
『だいたい幽霊映るとかありえないっしょ』
『早く種明かしした方がいいよ』
『炎上さえも嬉しいってか』
『前のゲーム配信の頃は好きだったけどこんなふうになっちまうなんて』
『あ』
『切れた』
『これで終わりかー』
『まあまあ面白かった』
『今度からこんな感じで配信するならファンやめようかな』
『なんだよ釣り宣言しろよ』
『つまんね』
『自作自演乙』
『さようなら』
『画面から女の顔が』
『おつかれ』