第二話 彼女は寝取られた

ー/ー



 ※瑞樹視点

 十月の初め頃に結城瑞樹は水樹夏彦という男性とであった。無理なダイエットがたたり、貧血気味でうずくまっていたら、夏彦が声をかけてきた。
「大丈夫ですか?」
 心配そうな顔で夏彦は水樹の顔をのぞき込む。
 瑞樹はすいません、急に貧血でと答える。
 差し出された手をつかみ、どうにかして立ち上がるが体勢を崩してしまう。それを夏彦に支えられる。
 瑞樹は夏彦に支えられながら医務室に案内された。そこで一時間ほど眠ると自宅に戻れるほどには回復した。
 驚いたことに夏彦はずっとそばにいてくれた。
 頼りになる人だと瑞樹は思った。
 お礼をしたいと瑞樹は言い、ラインを交換する。

 ラインで数回やりとりしているうちに中学生のときの同級生だということを夏彦に告げられた。
 こんな偶然があるんだとほんの少しだけ運命的なものを感じた。
 お礼に食事でもとメッセージを送ると夏彦はサイゼリアを提案してきた。
 それにはうーんと瑞樹は頭を悩ませた。
 瑞樹は自分の容姿に自信がある。学生時代には読者モデルも数回ではあるが、経験したこともある。
 そんな自分をサイゼリアに誘うなんてと瑞樹は思ったが、まあリーズナブルなのでいいかなと考えて彼女はOKをだした。

 心斎橋のサイゼリアで瑞樹は夏彦と食事をした。料理自体は美味しかったので、それなりに良かったけど明らかに緊張しきっている夏彦を見てつまらないと感じた。
 こっちから誘ったのにおごってくれたのはちょっとだけ見直した。
 まあ、サイゼリアなのでたいした金額ではなかったけど。

 それから夏彦からしょっちゅうラインのメッセージが来るようになった。
 既読スルーするのも気が引けたので事務的に返信をしておいた。ただ積極的に誘われるのは悪い気がしない。
 どうやら夏彦は中学生のときから自分のことが好きだったようで、何度も付き合ってほしいと頭を下げられた。
 夏彦のような分かりやすいほどの陰キャオタクであっても百パーセントの好意をむけられるとそう悪い気がしない。
 ほだされるように瑞樹は夏彦と交際した。

 しかし、いざ交際したはいいがどうにも彼からはそれほどの魅力を感じられない。
 どこかの食品工場で働いているようだけどそんな底辺の職業に将来性をまったく感じられない。
 それにデートをしてもやはり面白くないのだ。
 アニメや漫画の話をされてもよくわからない。
 名探偵コナンやジブリなら知っているが深夜アニメとなるとまったく理解の外だ。

 助けてもらったのは本当に感謝するがつきあうのはやはりやめておいたほうがよかったかな。瑞樹はそんな風に思うようになっていた。
 そのように後悔していたところに友人からのラインのメッセージが届いた。
 読者モデル時代の先輩で今はプロとして活躍している篠原美穂からであった。
 篠原美穂は二つ年上で瑞樹の相談に何かとよくのってくれていた。

 12月の初めの土曜日にパーティーがあるんだけど瑞樹もくる?
 美穂からのメッセージはそういうものだった。
 夏彦との約束があったような気がするが、そっちは断り美穂の誘いに乗ることにした。
 美穂の話では梅田のとあるタワーマンションでホームパーティーが行われるという。
 主催者の家には実業家や起業家、俳優やモデルに売り出し中のお笑い芸人も来るというのだ。
 久しぶりに瑞樹はおしゃれをして美穂とそのタワーマンションに向かった。
 
 地上三十階建ての最上階、ワンフロアすべてが主催者の持ち物だという。
 豪華な料理が並べられ、キラキラした人たちが大勢いる。そこにいたら自分も輝いているような気がした。
 そこで瑞樹は田崎優志郎(たざきゆうしろう)という青年に声をかけられた。
 優志郎はすらりと背が高くて、このパーティーにいる俳優たちに負けないほどの美青年であった。最初、彼のことを俳優かタレントだと思っていたがコンサルタント会社の社長だということだ。
 優志郎の口からでる企業のほとんどは瑞樹でも知っている有名な企業ばかりだった。彼はそれらの企業の社長たちと深い付き合いがあり、経営の相談にのっているのだという。

 瑞樹にはこのパーティーにいる誰よりも優志郎が輝いて見えた。
「このあとどうしますか」
 ていねいな物腰で優志郎は瑞樹の手を握る。
 瑞樹は体が熱くなるのを覚えた。
「さて、どうしましょうか」
 瑞樹は背伸びして大人の女を演じて見せた。
 優志郎の隣にいたいと心の底から思った。
「じゃあ一晩どうですか?」
 そう訊かれてので瑞樹は、はいと答えた。

 この日の夜は瑞樹にとって忘れられない一夜になった。
 優志郎がよく泊まるという一流ホテルに連れていかれ、キングサイズのベッドで体を重ねた。
 そう言えば夏彦とはこんなことはしなかったなと瑞樹は思った。
 
 瑞樹は優志郎の腕の中で何度も絶頂を味わった。優志郎とは初めてのはずなのに彼は自分の身体のことを熟知しているように思えた。
 意識が何度も飛ぶような快感を味わい、最後には気絶するように眠りについた。

 それから瑞樹は優志郎と付き合うことになった。
 夏彦にはラインでただ一言別れてとだけ送った。夏彦のことは瑞樹にとって黒歴史だと彼女は思うことにした。あんな人とつきあっていても優志郎が見せてくれるキラキラした世界を見ることは出来ない。だから、彼とは別れた。もうその存在すら頭にはなかった。
 瑞樹の脳内にあるのはあのパーティーでであった人たちのように自分も輝けるのだと信じて疑わなかった。きっと優志郎がその世界に連れて行ってくれると。だが、この時の瑞樹は気づいていなかった。
 田崎優志郎が持つ輝きは金メッキとたいして差はないということに。
 


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 ※瑞樹視点
 十月の初め頃に結城瑞樹は水樹夏彦という男性とであった。無理なダイエットがたたり、貧血気味でうずくまっていたら、夏彦が声をかけてきた。
「大丈夫ですか?」
 心配そうな顔で夏彦は水樹の顔をのぞき込む。
 瑞樹はすいません、急に貧血でと答える。
 差し出された手をつかみ、どうにかして立ち上がるが体勢を崩してしまう。それを夏彦に支えられる。
 瑞樹は夏彦に支えられながら医務室に案内された。そこで一時間ほど眠ると自宅に戻れるほどには回復した。
 驚いたことに夏彦はずっとそばにいてくれた。
 頼りになる人だと瑞樹は思った。
 お礼をしたいと瑞樹は言い、ラインを交換する。
 ラインで数回やりとりしているうちに中学生のときの同級生だということを夏彦に告げられた。
 こんな偶然があるんだとほんの少しだけ運命的なものを感じた。
 お礼に食事でもとメッセージを送ると夏彦はサイゼリアを提案してきた。
 それにはうーんと瑞樹は頭を悩ませた。
 瑞樹は自分の容姿に自信がある。学生時代には読者モデルも数回ではあるが、経験したこともある。
 そんな自分をサイゼリアに誘うなんてと瑞樹は思ったが、まあリーズナブルなのでいいかなと考えて彼女はOKをだした。
 心斎橋のサイゼリアで瑞樹は夏彦と食事をした。料理自体は美味しかったので、それなりに良かったけど明らかに緊張しきっている夏彦を見てつまらないと感じた。
 こっちから誘ったのにおごってくれたのはちょっとだけ見直した。
 まあ、サイゼリアなのでたいした金額ではなかったけど。
 それから夏彦からしょっちゅうラインのメッセージが来るようになった。
 既読スルーするのも気が引けたので事務的に返信をしておいた。ただ積極的に誘われるのは悪い気がしない。
 どうやら夏彦は中学生のときから自分のことが好きだったようで、何度も付き合ってほしいと頭を下げられた。
 夏彦のような分かりやすいほどの陰キャオタクであっても百パーセントの好意をむけられるとそう悪い気がしない。
 ほだされるように瑞樹は夏彦と交際した。
 しかし、いざ交際したはいいがどうにも彼からはそれほどの魅力を感じられない。
 どこかの食品工場で働いているようだけどそんな底辺の職業に将来性をまったく感じられない。
 それにデートをしてもやはり面白くないのだ。
 アニメや漫画の話をされてもよくわからない。
 名探偵コナンやジブリなら知っているが深夜アニメとなるとまったく理解の外だ。
 助けてもらったのは本当に感謝するがつきあうのはやはりやめておいたほうがよかったかな。瑞樹はそんな風に思うようになっていた。
 そのように後悔していたところに友人からのラインのメッセージが届いた。
 読者モデル時代の先輩で今はプロとして活躍している篠原美穂からであった。
 篠原美穂は二つ年上で瑞樹の相談に何かとよくのってくれていた。
 12月の初めの土曜日にパーティーがあるんだけど瑞樹もくる?
 美穂からのメッセージはそういうものだった。
 夏彦との約束があったような気がするが、そっちは断り美穂の誘いに乗ることにした。
 美穂の話では梅田のとあるタワーマンションでホームパーティーが行われるという。
 主催者の家には実業家や起業家、俳優やモデルに売り出し中のお笑い芸人も来るというのだ。
 久しぶりに瑞樹はおしゃれをして美穂とそのタワーマンションに向かった。
 地上三十階建ての最上階、ワンフロアすべてが主催者の持ち物だという。
 豪華な料理が並べられ、キラキラした人たちが大勢いる。そこにいたら自分も輝いているような気がした。
 そこで瑞樹は|田崎優志郎《たざきゆうしろう》という青年に声をかけられた。
 優志郎はすらりと背が高くて、このパーティーにいる俳優たちに負けないほどの美青年であった。最初、彼のことを俳優かタレントだと思っていたがコンサルタント会社の社長だということだ。
 優志郎の口からでる企業のほとんどは瑞樹でも知っている有名な企業ばかりだった。彼はそれらの企業の社長たちと深い付き合いがあり、経営の相談にのっているのだという。
 瑞樹にはこのパーティーにいる誰よりも優志郎が輝いて見えた。
「このあとどうしますか」
 ていねいな物腰で優志郎は瑞樹の手を握る。
 瑞樹は体が熱くなるのを覚えた。
「さて、どうしましょうか」
 瑞樹は背伸びして大人の女を演じて見せた。
 優志郎の隣にいたいと心の底から思った。
「じゃあ一晩どうですか?」
 そう訊かれてので瑞樹は、はいと答えた。
 この日の夜は瑞樹にとって忘れられない一夜になった。
 優志郎がよく泊まるという一流ホテルに連れていかれ、キングサイズのベッドで体を重ねた。
 そう言えば夏彦とはこんなことはしなかったなと瑞樹は思った。
 瑞樹は優志郎の腕の中で何度も絶頂を味わった。優志郎とは初めてのはずなのに彼は自分の身体のことを熟知しているように思えた。
 意識が何度も飛ぶような快感を味わい、最後には気絶するように眠りについた。
 それから瑞樹は優志郎と付き合うことになった。
 夏彦にはラインでただ一言別れてとだけ送った。夏彦のことは瑞樹にとって黒歴史だと彼女は思うことにした。あんな人とつきあっていても優志郎が見せてくれるキラキラした世界を見ることは出来ない。だから、彼とは別れた。もうその存在すら頭にはなかった。
 瑞樹の脳内にあるのはあのパーティーでであった人たちのように自分も輝けるのだと信じて疑わなかった。きっと優志郎がその世界に連れて行ってくれると。だが、この時の瑞樹は気づいていなかった。
 田崎優志郎が持つ輝きは金メッキとたいして差はないということに。