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第七話:至高の血族(ロイヤルブラット)

ー/ー



 白雷ジムの休憩ルームは、Jクラスでの勝利から数日経っても祝福ムードが続いていた。
 しかし、フリアノンは相変わらず控えめで、浮かれることなくトレーニング機材を整えている。

 

 「ノンちゃん、休憩しよ!」

 

 スレイプニルが明るい笑顔で声をかけてきた。
 いつもと変わらない、その無邪気な笑顔に癒される。

 

 「う、うん……。でも、あと少しだけやったら……。」

 

 そんなやり取りをしていると、ピット入り口の自動ドアが音を立てて開いた。

 

 「…………あら?」

 

 響いたのは高く澄んだ、しかし棘のある少女の声だった。

 

 フリアノンが顔を上げると、そこに立っていたのは長い銀髪をなびかせたサイドールだった。
 透き通るような白肌に、ルビーのような赤い瞳。
 そして、その立ち振る舞いは誰もが彼女を特別な存在と認識させるほどの気高さを帯びていた。

 

 「メル……!」

 

 スレイプニルが少し緊張した声を出す。

 

 「スレイプニル。今日はアンタに用事はないのよ。」

 

 冷たく言い放つと、その赤い瞳がフリアノンを真っ直ぐ射抜いた。

 

 「…………あんたが、噂の新人ね?」

 

 「えっ……?」

 

 フリアノンは思わず一歩退いた。

 

 「マーメルス。Sクラスでスレイとトップ争いしてる、至高の血族だよ。」

 

 スレイが小声で教えてくれた。
 (至高の血族……あの、伝説の血統……)

 

 

 ◇

 

 「ふーん……アンタがフリアノン?ノンちゃん、とか呼ばれてるんでしょ?」

 

 マーメルスは細い腰に手を当て、軽く顎を上げる。

 

 「ま、いいけど。アンタ、思ったよりも華奢で弱そうじゃない。」

 

 「う……。」

 

 フリアノンは視線を逸らして俯いてしまった。

 

 「ちょ、ちょっとメル!ノンちゃんはまだJクラスだけど、この前すごい走りを――」

 

 「うるさいわねスレイプニル。」
 マーメルスは鋭い目でスレイを制し、再びフリアノンを見つめた。
 「……でも、走りは見させてもらったわ。」

 

 「え……?」

 

 「悪くはないんじゃない? ま、あたしの足元にも及ばないけど。」

 

 (……すごく……きつい……でも……)

 

 フリアノンは小さな声で呟いた。

 

 「……あの……マーちゃん……。」

 

 「……マーちゃん……?」

 

 その呼び方に、マーメルスの頬がかすかに赤くなる。

 

 「だ、誰がマーちゃんよ!勝手に呼ばないで!」

 

 プリプリと怒りながらも、その顔はどこか嬉しそうだった。
 スレイはくすりと笑う。

 

 「ほら、やっぱりノンちゃんは天才だね。」

 

 「何がよっ……!スレイプニル、あんたも変なこと言わないで!」

 

 

 ◇

 

 マーメルスは髪をかきあげ、ふんと鼻を鳴らした。

 

 「……ま、別にいいわ。呼びたければ呼べば?」

 

 「えっ……いいの……?」

 

 「そ、その代わり、あたしに恥をかかせるような走りはしないこと。いいわね、ノンちゃん。」

 

 「……うん。」

 

 その言葉は冷たいようで、でも優しさを含んでいた。
 至高の血族、マーメルス――マーちゃん。
 彼女との出会いは、フリアノンにとって新たな刺激となった。

 

 

 ◇

 

 ピットを出ていくマーメルスの背中を見送りながら、スレイプニルが呟く。

 

 「ふふ、マーちゃんもノンちゃんも、負けず嫌いだもんね。」

 

 フリアノンは少し不安げに笑った。
 でも、その胸の奥には小さな炎が灯り始めていた。

 

 (……マーちゃん……いつか、あの人に勝てるくらい……強くなれるかな……。)

 

 宇宙を駆けるサイドールたちの戦いは、ますます熱を帯びようとしていた。


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 白雷ジムの休憩ルームは、Jクラスでの勝利から数日経っても祝福ムードが続いていた。
 しかし、フリアノンは相変わらず控えめで、浮かれることなくトレーニング機材を整えている。
 「ノンちゃん、休憩しよ!」
 スレイプニルが明るい笑顔で声をかけてきた。
 いつもと変わらない、その無邪気な笑顔に癒される。
 「う、うん……。でも、あと少しだけやったら……。」
 そんなやり取りをしていると、ピット入り口の自動ドアが音を立てて開いた。
 「…………あら?」
 響いたのは高く澄んだ、しかし棘のある少女の声だった。
 フリアノンが顔を上げると、そこに立っていたのは長い銀髪をなびかせたサイドールだった。
 透き通るような白肌に、ルビーのような赤い瞳。
 そして、その立ち振る舞いは誰もが彼女を特別な存在と認識させるほどの気高さを帯びていた。
 「メル……!」
 スレイプニルが少し緊張した声を出す。
 「スレイプニル。今日はアンタに用事はないのよ。」
 冷たく言い放つと、その赤い瞳がフリアノンを真っ直ぐ射抜いた。
 「…………あんたが、噂の新人ね?」
 「えっ……?」
 フリアノンは思わず一歩退いた。
 「マーメルス。Sクラスでスレイとトップ争いしてる、至高の血族だよ。」
 スレイが小声で教えてくれた。
 (至高の血族……あの、伝説の血統……)
 ◇
 「ふーん……アンタがフリアノン?ノンちゃん、とか呼ばれてるんでしょ?」
 マーメルスは細い腰に手を当て、軽く顎を上げる。
 「ま、いいけど。アンタ、思ったよりも華奢で弱そうじゃない。」
 「う……。」
 フリアノンは視線を逸らして俯いてしまった。
 「ちょ、ちょっとメル!ノンちゃんはまだJクラスだけど、この前すごい走りを――」
 「うるさいわねスレイプニル。」
 マーメルスは鋭い目でスレイを制し、再びフリアノンを見つめた。
 「……でも、走りは見させてもらったわ。」
 「え……?」
 「悪くはないんじゃない? ま、あたしの足元にも及ばないけど。」
 (……すごく……きつい……でも……)
 フリアノンは小さな声で呟いた。
 「……あの……マーちゃん……。」
 「……マーちゃん……?」
 その呼び方に、マーメルスの頬がかすかに赤くなる。
 「だ、誰がマーちゃんよ!勝手に呼ばないで!」
 プリプリと怒りながらも、その顔はどこか嬉しそうだった。
 スレイはくすりと笑う。
 「ほら、やっぱりノンちゃんは天才だね。」
 「何がよっ……!スレイプニル、あんたも変なこと言わないで!」
 ◇
 マーメルスは髪をかきあげ、ふんと鼻を鳴らした。
 「……ま、別にいいわ。呼びたければ呼べば?」
 「えっ……いいの……?」
 「そ、その代わり、あたしに恥をかかせるような走りはしないこと。いいわね、ノンちゃん。」
 「……うん。」
 その言葉は冷たいようで、でも優しさを含んでいた。
 至高の血族、マーメルス――マーちゃん。
 彼女との出会いは、フリアノンにとって新たな刺激となった。
 ◇
 ピットを出ていくマーメルスの背中を見送りながら、スレイプニルが呟く。
 「ふふ、マーちゃんもノンちゃんも、負けず嫌いだもんね。」
 フリアノンは少し不安げに笑った。
 でも、その胸の奥には小さな炎が灯り始めていた。
 (……マーちゃん……いつか、あの人に勝てるくらい……強くなれるかな……。)
 宇宙を駆けるサイドールたちの戦いは、ますます熱を帯びようとしていた。