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ー/ー匂いがしないってどういうこと? 俺はこいつに聞いてみた。
「ちょっとぐらいでも……ほんの少しくらいは故郷の匂いがするはずだ。それなのにお前は人間そのものの匂いしかしねえ」
いやそりゃそうだろうが、俺はずっと人間なんだし。
「あと俺にだって名前はあるぞ、ここのババアがつけてくれたジンってカッコいいのがな」
「俺はタケル。よろしくなジン」
その言葉にまた驚いてた。ほんとに人間みてえな名前だなって。悪かったな。けど人間でもジンって名前いるぞ。
もうちょっと話を聞きたかったんだけど、食われた焼き鳥また買わなきゃならないしでとりあえずまた今度ねってことにした。
家は分かったし、それに……
仲間がいると知って、ちょっと心強かったから。
……くっそ、ジンのやつ、よりによっていちばん高いぼんじりとつくねだけ食べやがったし!
⭐︎⭐︎⭐︎
「大丈夫、スマホで全てできちゃうから」
待ち合わせ場所に、トモキは塾帰りでそのまま来たみたいだ。リュックの中には勉強道具がいっぱい。その中からタブレットPCを取り出して、ペンで何かを書いていた。
「いちばんやりたいのはね、撮影なんだ。もしかしたら野犬じゃなくて未知の生物の可能性もあるから」
UMAだったっけ、ネッシーとか雪男みたいな実際に発見されていない怪物みたいなの。まあ俺もある意味UMAなんだろうな。ワーウルフなんだし。
「それに、絶滅したオオカミの可能性も捨てがたいよね」いやその考察はやめてくれ……
「うん、だから僕らはあくまで観察だけに留めたい。間違っても餌付けとか接触、捕獲なんて考えちゃダメだからね。それは大人の仕事」
さて、トモキの持つGPSに従って俺たちが来た場所は……
学校の裏にある、鬱蒼とした林だった。
え、俺こんな場所来たことなんてないぞ? なんでまたこんな所に?
スマホのライトと月明かりだけが照らし出す、草木の茂った、はっきり言って薄気味悪い所だ。
「最新の目撃情報だと、ここに現れたんだって」
トモキは意気揚々としながら俺たちに解説してくれてるけど、俺……車とか狭い場所がダメなのは前に教えた通りなんだけど、幽霊とかお化けの類も全然ダメなんだ。
え、じゃあなんで真夜中にあんだけはしゃぎ回れたのかって?
そう、つまりはワーウルフになる時って気分も高揚するから、深夜でも全然怖さって感じないんだ。
だから今はとにかくムリ。怖いもの知らずのトモキがうらやましいくらいだ。
数分ばかり進んだかな。トモキが前にある丘を指し示した。
「あそこで遠吠えをする獣を見たって人が何人もいたんだ。絶好のポイントかもね」
いやいやいやいや! 俺こんな場所で吠えてねーから! ビルのてっぺんでやらかしたことはあるけどね、吠えるとすごく気持ちよかったから、もう。
まあとにかく持参してきたレジャーシートを敷き、俺たちは観察体制に入った。
光度を落としたスマホの時刻を確認。今は夜9時だ……ちょっと、眠い。
おまけにここ寒いから、その……トイレも近くなってきたし。
俺はトモキに断って、ちょっと離れた場所で用を済ませることにした。とはいえ怖い、一人で歩いてると余計に。
大丈夫だ、やばくなったら大声を上げれば誰かしらそばにいる……と俺はズボンのチャックを下ろそ……
「おい」
「!!!!!」ビビった、背後から突然声がした! つーかちょっと漏れそうになった!
恐る恐る振り向くと、そこにはジンが。
「首輪のことか? あんなモン簡単に外せる」
いやそれより、なんでここにきたのさ?
「決まってるだろ、お前の姿をいま一度見ておきたかったんだ」
なるほどな、そういやこいつは俺が神社の廃屋へ逃げ込んだところしか見てなかったもんね。
それに……とジンは続けた。
「お前の友達が探してる獣、俺も気になるんだ」
月夜に照らされて、ジンの右目が金色に輝いていた。
「もしも俺たちと同じオオカミだったらな……と思うと」
可能性は限りなく低いにしても、その姿は見ておきたいんだって。
あ、そうそう。
どうやって俺たちの後をつけてきたのかな?
「そりゃあ決まってんだろ、お前のその頼りねえ匂いさ」
気のせいか、ジンがドヤ顔で俺に言ってるように見えた。つーか頼りない匂いっていったいなんなのさ。
「あと……タケル。お前すげえ足が臭くねえか?」
え。匂いってそこまでいうか!?
「お前まだガキだろ? ババアと一緒に散歩してていろんな人間に会ってきたが、お前みたいに足の臭いガキは誰ひとりとして存在しなかった。だからこそ逆に気になるんだ」
「いや気にしなくてもいいから!」
「きちんと風呂してるのか? 着替えてるのか? 正直に話せ!」
「やめてええええ!」
……って、あれ?
パンツのチャックを戻そうとした俺の爪が、鋭く伸びていた。
それだけじゃない、風が木々を抜ける音、虫の音。
全てがくっきりと耳に入ってきた。解像度ってやつ? 研ぎ澄まされてきたってやつ?
それに暗闇でもジンの姿が、俺が通ってきた真っ暗な道もだんだんはっきりと目に見えてきたんだ。
ヤバい……今度は俺の方がヤバくなってきた!
こんな時にワーウルフ化なんてやめてくれよ!
「ちょっとぐらいでも……ほんの少しくらいは故郷の匂いがするはずだ。それなのにお前は人間そのものの匂いしかしねえ」
いやそりゃそうだろうが、俺はずっと人間なんだし。
「あと俺にだって名前はあるぞ、ここのババアがつけてくれたジンってカッコいいのがな」
「俺はタケル。よろしくなジン」
その言葉にまた驚いてた。ほんとに人間みてえな名前だなって。悪かったな。けど人間でもジンって名前いるぞ。
もうちょっと話を聞きたかったんだけど、食われた焼き鳥また買わなきゃならないしでとりあえずまた今度ねってことにした。
家は分かったし、それに……
仲間がいると知って、ちょっと心強かったから。
……くっそ、ジンのやつ、よりによっていちばん高いぼんじりとつくねだけ食べやがったし!
⭐︎⭐︎⭐︎
「大丈夫、スマホで全てできちゃうから」
待ち合わせ場所に、トモキは塾帰りでそのまま来たみたいだ。リュックの中には勉強道具がいっぱい。その中からタブレットPCを取り出して、ペンで何かを書いていた。
「いちばんやりたいのはね、撮影なんだ。もしかしたら野犬じゃなくて未知の生物の可能性もあるから」
UMAだったっけ、ネッシーとか雪男みたいな実際に発見されていない怪物みたいなの。まあ俺もある意味UMAなんだろうな。ワーウルフなんだし。
「それに、絶滅したオオカミの可能性も捨てがたいよね」いやその考察はやめてくれ……
「うん、だから僕らはあくまで観察だけに留めたい。間違っても餌付けとか接触、捕獲なんて考えちゃダメだからね。それは大人の仕事」
さて、トモキの持つGPSに従って俺たちが来た場所は……
学校の裏にある、鬱蒼とした林だった。
え、俺こんな場所来たことなんてないぞ? なんでまたこんな所に?
スマホのライトと月明かりだけが照らし出す、草木の茂った、はっきり言って薄気味悪い所だ。
「最新の目撃情報だと、ここに現れたんだって」
トモキは意気揚々としながら俺たちに解説してくれてるけど、俺……車とか狭い場所がダメなのは前に教えた通りなんだけど、幽霊とかお化けの類も全然ダメなんだ。
え、じゃあなんで真夜中にあんだけはしゃぎ回れたのかって?
そう、つまりはワーウルフになる時って気分も高揚するから、深夜でも全然怖さって感じないんだ。
だから今はとにかくムリ。怖いもの知らずのトモキがうらやましいくらいだ。
数分ばかり進んだかな。トモキが前にある丘を指し示した。
「あそこで遠吠えをする獣を見たって人が何人もいたんだ。絶好のポイントかもね」
いやいやいやいや! 俺こんな場所で吠えてねーから! ビルのてっぺんでやらかしたことはあるけどね、吠えるとすごく気持ちよかったから、もう。
まあとにかく持参してきたレジャーシートを敷き、俺たちは観察体制に入った。
光度を落としたスマホの時刻を確認。今は夜9時だ……ちょっと、眠い。
おまけにここ寒いから、その……トイレも近くなってきたし。
俺はトモキに断って、ちょっと離れた場所で用を済ませることにした。とはいえ怖い、一人で歩いてると余計に。
大丈夫だ、やばくなったら大声を上げれば誰かしらそばにいる……と俺はズボンのチャックを下ろそ……
「おい」
「!!!!!」ビビった、背後から突然声がした! つーかちょっと漏れそうになった!
恐る恐る振り向くと、そこにはジンが。
「首輪のことか? あんなモン簡単に外せる」
いやそれより、なんでここにきたのさ?
「決まってるだろ、お前の姿をいま一度見ておきたかったんだ」
なるほどな、そういやこいつは俺が神社の廃屋へ逃げ込んだところしか見てなかったもんね。
それに……とジンは続けた。
「お前の友達が探してる獣、俺も気になるんだ」
月夜に照らされて、ジンの右目が金色に輝いていた。
「もしも俺たちと同じオオカミだったらな……と思うと」
可能性は限りなく低いにしても、その姿は見ておきたいんだって。
あ、そうそう。
どうやって俺たちの後をつけてきたのかな?
「そりゃあ決まってんだろ、お前のその頼りねえ匂いさ」
気のせいか、ジンがドヤ顔で俺に言ってるように見えた。つーか頼りない匂いっていったいなんなのさ。
「あと……タケル。お前すげえ足が臭くねえか?」
え。匂いってそこまでいうか!?
「お前まだガキだろ? ババアと一緒に散歩してていろんな人間に会ってきたが、お前みたいに足の臭いガキは誰ひとりとして存在しなかった。だからこそ逆に気になるんだ」
「いや気にしなくてもいいから!」
「きちんと風呂してるのか? 着替えてるのか? 正直に話せ!」
「やめてええええ!」
……って、あれ?
パンツのチャックを戻そうとした俺の爪が、鋭く伸びていた。
それだけじゃない、風が木々を抜ける音、虫の音。
全てがくっきりと耳に入ってきた。解像度ってやつ? 研ぎ澄まされてきたってやつ?
それに暗闇でもジンの姿が、俺が通ってきた真っ暗な道もだんだんはっきりと目に見えてきたんだ。
ヤバい……今度は俺の方がヤバくなってきた!
こんな時にワーウルフ化なんてやめてくれよ!
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