表示設定
表示設定
目次 目次




第二部・第1章〜幼なじみは絶対に勝てないラブコメ〜⑥

ー/ー



〜黒田竜司の見解〜

 放送室のドアをあけ、廊下に出ると、生徒昇降口や階段がある方向の四〜五メートル先に、シロの姿が見えた。
 周囲に生徒がいないことを確かめて、彼女と二人でいる時にしか呼ばない名前で

「シロ……!」

と、声をかける。
 しかし、彼女は、こちらの方を振り向くと、あろうことか、急に廊下を駆け出した。

「えぇっ!? なんで、逃げるんだ? ちょっと、待てよ!」

 声に出しながら、すぐに彼女のあとを追う。
 駆け出したシロは、校舎の玄関である昇降口の前で、階上に続く階段の方に曲がろうとする時、あやうく女子生徒とぶつかりかけた。

「わっ……」

 掃除用のバケツを抱えた女生徒とは、すんでのところで接触をまぬがれたシロだったが、たっぷりと水量たたえていたバケツから溢れた水は、少量とはいえ彼女のハイソックスに降り掛かったようだ。

「あっ……スマないべ」

「ごめんなさい……!」

 お互いに謝罪の言葉を掛け合いながらも、シロが再び駆け出し、階段を駆け上がって行ったため、バケツを床に置いた少女は、走り去っていく生徒を呆然と見上げていた。

「なあ、大丈夫か……?」

 オレは、遠のくシロの姿を目で追いながら、彼女と衝突しかけた女子生徒に声をかける。制服のタイの色から、目の前の生徒が桃華と同じ一年生であることがわかった。

「は、はい……わたすは大丈夫でス。それより――――――」

 小声で返答する下級生は、こちらの問いかけに答えたあと、逆に質問を返してきた。

「いまのは、ヨツバちゃん……いんや、二年生の白草さんですか?」

「あぁ、たしかに、いま、君とぶつかりそうになったのは、二年の白草だけど……」

 オレが返答すると少女は見間違いではなかった、と自分を納得させるようにうなずき、続いて、

「やっぱり……じゃあ、ヨツバちゃんと話す機会があったら、『わたすなんかが、ぶつかりそうになって、本当に申し訳ないべ……ケガしなかったか?』と伝えてほしいべ」

と、伝言を頼まれた。
 
「わかった……」

 オレは、簡潔に答えつつ、

(ずいぶんと自分を卑下することをいう女子だな)

と、彼女の言葉が気になった。
 言葉を選ぶように語る女子生徒は、一見、素朴な印象を与えるものの、セミロングの長さに切り揃えられた栗色の髪と色白の顔立ちが印象的だ。
 なにより、スッキリと整った目鼻立ちは、美少女と讃えられて良いくらい十分に際立っている。

「白草には、廊下を走らないように注意するのといっしょに、ぶつかりかけた下級生が心配してたぞ、と伝えておく」

 目の前で、慎ましやかに立つ少女にそう伝えると、彼女は、少しはにかんだような笑みを浮かべながら、感謝とねぎらいの言葉を伝えてきた。

「おおきに……ありがとがんす……あなたは黒田さんでしたか? あなたもヨツバちゃんにフラレても、あんます落ち込まねように……ヨツバちゃんは、そんじょそこらの男子が付き合えるようなヒトじゃないべ……」

(やっぱり、あの告白は下級生にまで伝わっているのか……)

 また、心臓にチクリとした痛みを感じつつ、表情がひきつるのをなんとか抑えて返答する。

「あ、あぁ……ありがとな……」

「じゃあ、オレは白草と話しをしないといけないから……」
 
 そう言って、立ち去ろうとすると、下級生はオレの背後から、

「わかりますた……あなたも、あんまりしつこくして、ヨツバちゃんを困らせないようにするべ」

と、胸にこたえるアドバイスを返してきたのだった。


スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



〜黒田竜司の見解〜
 放送室のドアをあけ、廊下に出ると、生徒昇降口や階段がある方向の四〜五メートル先に、シロの姿が見えた。
 周囲に生徒がいないことを確かめて、彼女と二人でいる時にしか呼ばない名前で
「シロ……!」
と、声をかける。
 しかし、彼女は、こちらの方を振り向くと、あろうことか、急に廊下を駆け出した。
「えぇっ!? なんで、逃げるんだ? ちょっと、待てよ!」
 声に出しながら、すぐに彼女のあとを追う。
 駆け出したシロは、校舎の玄関である昇降口の前で、階上に続く階段の方に曲がろうとする時、あやうく女子生徒とぶつかりかけた。
「わっ……」
 掃除用のバケツを抱えた女生徒とは、すんでのところで接触をまぬがれたシロだったが、たっぷりと水量たたえていたバケツから溢れた水は、少量とはいえ彼女のハイソックスに降り掛かったようだ。
「あっ……スマないべ」
「ごめんなさい……!」
 お互いに謝罪の言葉を掛け合いながらも、シロが再び駆け出し、階段を駆け上がって行ったため、バケツを床に置いた少女は、走り去っていく生徒を呆然と見上げていた。
「なあ、大丈夫か……?」
 オレは、遠のくシロの姿を目で追いながら、彼女と衝突しかけた女子生徒に声をかける。制服のタイの色から、目の前の生徒が桃華と同じ一年生であることがわかった。
「は、はい……わたすは大丈夫でス。それより――――――」
 小声で返答する下級生は、こちらの問いかけに答えたあと、逆に質問を返してきた。
「いまのは、ヨツバちゃん……いんや、二年生の白草さんですか?」
「あぁ、たしかに、いま、君とぶつかりそうになったのは、二年の白草だけど……」
 オレが返答すると少女は見間違いではなかった、と自分を納得させるようにうなずき、続いて、
「やっぱり……じゃあ、ヨツバちゃんと話す機会があったら、『わたすなんかが、ぶつかりそうになって、本当に申し訳ないべ……ケガしなかったか?』と伝えてほしいべ」
と、伝言を頼まれた。
「わかった……」
 オレは、簡潔に答えつつ、
(ずいぶんと自分を卑下することをいう女子だな)
と、彼女の言葉が気になった。
 言葉を選ぶように語る女子生徒は、一見、素朴な印象を与えるものの、セミロングの長さに切り揃えられた栗色の髪と色白の顔立ちが印象的だ。
 なにより、スッキリと整った目鼻立ちは、美少女と讃えられて良いくらい十分に際立っている。
「白草には、廊下を走らないように注意するのといっしょに、ぶつかりかけた下級生が心配してたぞ、と伝えておく」
 目の前で、慎ましやかに立つ少女にそう伝えると、彼女は、少しはにかんだような笑みを浮かべながら、感謝とねぎらいの言葉を伝えてきた。
「おおきに……ありがとがんす……あなたは黒田さんでしたか? あなたもヨツバちゃんにフラレても、あんます落ち込まねように……ヨツバちゃんは、そんじょそこらの男子が付き合えるようなヒトじゃないべ……」
(やっぱり、あの告白は下級生にまで伝わっているのか……)
 また、心臓にチクリとした痛みを感じつつ、表情がひきつるのをなんとか抑えて返答する。
「あ、あぁ……ありがとな……」
「じゃあ、オレは白草と話しをしないといけないから……」
 そう言って、立ち去ろうとすると、下級生はオレの背後から、
「わかりますた……あなたも、あんまりしつこくして、ヨツバちゃんを困らせないようにするべ」
と、胸にこたえるアドバイスを返してきたのだった。