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覚醒する少女 2

ー/ー



「打破できる道具か……」

 アシノはサズァンを見据えた。

「えぇ。ムツヤ、この紫色の杖を四本出して」

「わがりまじだ!」

 サズァンが手に持つ杖を見て、ムツヤは同じものを取り出す。

「これを一斉に地面に突き刺すと、囲まれた範囲の人達は眠りにつくわ。街一つなら囲めるはずよ」

「なるほど……。住民ごと敵も眠らせる作戦ですか」

 モモが杖を見て呟いた。

「だが、眠らせた後で敵か住民か見分ける方法はあるのか?」

 アシノの言葉にルーが案を出す。

「まー、眠っている間に一人ひとり武器を持ってないか確認することねー」

「面倒だが、それしかないか」

 二人の会話に、それよりもとユモトが発言した。

「ムツヤさんはあの魔人になった子と戦うんですよね? 大丈夫でしょうか」

「えぇ、カバンを持っていったら逆上して何をするか分からないわ。住民に被害が及ぶかもしれない」

 サズァンの最もな意見にユモトは生唾を飲み込む。

「だからムツヤに戦って貰っている間、誰かがカバンを持ち、その他の人が杖を設置するのが得策かと思って連絡したのよ」

 確かに今考えうる中で一番の策に思えた。

「ですが、ムツヤ殿一人で……。カバンも無しの状態で魔人と戦って大丈夫なのでしょうか」

「あら、モモ。ムツヤを信用していないの?」

「い、いえ。そういう訳では……」

 サズァンは意地悪っぽく笑ってみせる。

「ムツヤ。あなたにはまた鎧を着てもらって正体を隠し、持てるだけ回復薬を持って魔人と戦ってもらうわ」

「はい!」

 ムツヤはサズァンの言葉に元気よく返事した。

「それじゃ、私はこの辺で失礼するわ。皆、頑張ってね」

 そう言い残してサズァンの幻影はスーッと消えていってしまう。

「さて、邪神様の作戦通りに行くならば、配役をどうするかだが」

 腕を組んで目を瞑り、アシノは考える。

「カバンはヨーリィに持って貰うべきだと私は思う。すばしっこいし、強いからな」

「わかりました」

 ヨーリィは無表情のまま返事をした。皆には言えないが、アシノがヨーリィにカバンを託すのは別の意図もある。

 それは、ヨーリィであれば、仮に眼の前で人質を取られてもカバンを渡さないだろうからだ。

 アシノはそのまま作戦を話し続ける。

「作戦つっても、邪神様が言った通りだな。ムツヤにはまた『青い鎧の冒険者』になってもらい、回復薬を持ってミシロと戦ってもらう」

「はい!わがりまじだ!」

 元気よく返事するムツヤ。それを見てアシノは頷く。

「でもさーアシノ、これってミシロって子や黎明の呼び手の罠なんじゃないの? 陽動させて他の街を襲ったり、既に街の人を人質に取っててカバンを寄越せって言ったり」

 ルーの意見は最もだった。それに対してアシノは答える。

「なんて言うか、それは無いと思う。これは私の感だが、ミシロはムツヤを殺すことじゃなくて、自分でムツヤに勝つことに固執している気がするんだ」

「ふーん。まぁ、信仰していた魔人ラメルの仇だもんね」

 ルーは納得したのかしていないのか、そんな事を言った。アシノはルーの態度には触れないで杖を手に持って言う。

「それで、私達はこの杖とやらを持って街を包囲してぶっ刺す。邪神様は一斉に刺すって言ってたな。だから、手分けしてって感じだな」

「ヨーリィちゃん以外が一人一本で、街を囲むのね」

 ルーが神妙な顔をして話すと、アシノは続けた。

「そうだな。ムツヤの戦闘が始まると同時にこっそりとやる」

「オッケー任せて!」

 ウィンクをしながらルーは返事をする。

「僕も、頑張ります!」

「私も、出来る限りの事をします」

「あぁ、頼んだぞ。私は他の勇者達にこの件を伝える。悪いが、明日のいつ魔人の襲撃があるか分からない。話が終わったら出発するぞ」

 それを聞いてルーはため息を付いた。

「出発って、今は夜だし、夜行性の私も流石に寝ようと思っていたのに……。雪の降る中、野宿かしら」




 勇者への情報の共有が終わる。イタヤと元勇者トチノハは急いでこちらまで向かうと言ってくれた。

 アシノは考えたくなかったが、万が一の事があった場合心強い。

「うー、冷える冷える……」

 ムツヤ達は厚着をして馬車に乗り、運転席のモモ以外は毛布を身にまとい縮こまっていた。

「さ、寒いですね」

 ユモトも凍えながらそう言葉を返す。

「モモさん、いつでも交代しますんで!」

 ムツヤが声をかけると、モモは「ありがとうございます」と返事をした。

 まぁ、言葉ではそう言ったが、不測の事態や、それが無くても明日戦うムツヤ殿には体力を温存しておいてもらおうと、目的地まで自分で運転するつもりだ。

「やー、もう駄目ムツヤっち温めて!!」

 ルーは隣りにいたムツヤを毛布の中に誘拐した。

「あ、ムツヤっちあったかーい!」

 ムツヤはルーの柔らかい感触を体中で感じ、何故か香るいい匂いにデレデレとした顔になっていった。

「ルーさんもあったかいです!!」

「ムツヤ殿、ちょっと交代して頂けませんか?」

 モモが真顔でそう言うと、ムツヤが「わがりまじだ!」と返事する。


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「打破できる道具か……」
 アシノはサズァンを見据えた。
「えぇ。ムツヤ、この紫色の杖を四本出して」
「わがりまじだ!」
 サズァンが手に持つ杖を見て、ムツヤは同じものを取り出す。
「これを一斉に地面に突き刺すと、囲まれた範囲の人達は眠りにつくわ。街一つなら囲めるはずよ」
「なるほど……。住民ごと敵も眠らせる作戦ですか」
 モモが杖を見て呟いた。
「だが、眠らせた後で敵か住民か見分ける方法はあるのか?」
 アシノの言葉にルーが案を出す。
「まー、眠っている間に一人ひとり武器を持ってないか確認することねー」
「面倒だが、それしかないか」
 二人の会話に、それよりもとユモトが発言した。
「ムツヤさんはあの魔人になった子と戦うんですよね? 大丈夫でしょうか」
「えぇ、カバンを持っていったら逆上して何をするか分からないわ。住民に被害が及ぶかもしれない」
 サズァンの最もな意見にユモトは生唾を飲み込む。
「だからムツヤに戦って貰っている間、誰かがカバンを持ち、その他の人が杖を設置するのが得策かと思って連絡したのよ」
 確かに今考えうる中で一番の策に思えた。
「ですが、ムツヤ殿一人で……。カバンも無しの状態で魔人と戦って大丈夫なのでしょうか」
「あら、モモ。ムツヤを信用していないの?」
「い、いえ。そういう訳では……」
 サズァンは意地悪っぽく笑ってみせる。
「ムツヤ。あなたにはまた鎧を着てもらって正体を隠し、持てるだけ回復薬を持って魔人と戦ってもらうわ」
「はい!」
 ムツヤはサズァンの言葉に元気よく返事した。
「それじゃ、私はこの辺で失礼するわ。皆、頑張ってね」
 そう言い残してサズァンの幻影はスーッと消えていってしまう。
「さて、邪神様の作戦通りに行くならば、配役をどうするかだが」
 腕を組んで目を瞑り、アシノは考える。
「カバンはヨーリィに持って貰うべきだと私は思う。すばしっこいし、強いからな」
「わかりました」
 ヨーリィは無表情のまま返事をした。皆には言えないが、アシノがヨーリィにカバンを託すのは別の意図もある。
 それは、ヨーリィであれば、仮に眼の前で人質を取られてもカバンを渡さないだろうからだ。
 アシノはそのまま作戦を話し続ける。
「作戦つっても、邪神様が言った通りだな。ムツヤにはまた『青い鎧の冒険者』になってもらい、回復薬を持ってミシロと戦ってもらう」
「はい!わがりまじだ!」
 元気よく返事するムツヤ。それを見てアシノは頷く。
「でもさーアシノ、これってミシロって子や黎明の呼び手の罠なんじゃないの? 陽動させて他の街を襲ったり、既に街の人を人質に取っててカバンを寄越せって言ったり」
 ルーの意見は最もだった。それに対してアシノは答える。
「なんて言うか、それは無いと思う。これは私の感だが、ミシロはムツヤを殺すことじゃなくて、自分でムツヤに勝つことに固執している気がするんだ」
「ふーん。まぁ、信仰していた魔人ラメルの仇だもんね」
 ルーは納得したのかしていないのか、そんな事を言った。アシノはルーの態度には触れないで杖を手に持って言う。
「それで、私達はこの杖とやらを持って街を包囲してぶっ刺す。邪神様は一斉に刺すって言ってたな。だから、手分けしてって感じだな」
「ヨーリィちゃん以外が一人一本で、街を囲むのね」
 ルーが神妙な顔をして話すと、アシノは続けた。
「そうだな。ムツヤの戦闘が始まると同時にこっそりとやる」
「オッケー任せて!」
 ウィンクをしながらルーは返事をする。
「僕も、頑張ります!」
「私も、出来る限りの事をします」
「あぁ、頼んだぞ。私は他の勇者達にこの件を伝える。悪いが、明日のいつ魔人の襲撃があるか分からない。話が終わったら出発するぞ」
 それを聞いてルーはため息を付いた。
「出発って、今は夜だし、夜行性の私も流石に寝ようと思っていたのに……。雪の降る中、野宿かしら」
 勇者への情報の共有が終わる。イタヤと元勇者トチノハは急いでこちらまで向かうと言ってくれた。
 アシノは考えたくなかったが、万が一の事があった場合心強い。
「うー、冷える冷える……」
 ムツヤ達は厚着をして馬車に乗り、運転席のモモ以外は毛布を身にまとい縮こまっていた。
「さ、寒いですね」
 ユモトも凍えながらそう言葉を返す。
「モモさん、いつでも交代しますんで!」
 ムツヤが声をかけると、モモは「ありがとうございます」と返事をした。
 まぁ、言葉ではそう言ったが、不測の事態や、それが無くても明日戦うムツヤ殿には体力を温存しておいてもらおうと、目的地まで自分で運転するつもりだ。
「やー、もう駄目ムツヤっち温めて!!」
 ルーは隣りにいたムツヤを毛布の中に誘拐した。
「あ、ムツヤっちあったかーい!」
 ムツヤはルーの柔らかい感触を体中で感じ、何故か香るいい匂いにデレデレとした顔になっていった。
「ルーさんもあったかいです!!」
「ムツヤ殿、ちょっと交代して頂けませんか?」
 モモが真顔でそう言うと、ムツヤが「わがりまじだ!」と返事する。