第23話:ついに掴んだ撃破のヒント!私たちなら絶対に!

ー/ー



「よし、今日も調査開始です!」

振り返ると、木漏れ日がみんなの頬を優しく照らしている。
調査4日目、私たちは今日も森を歩く。
キャヴィの弱点を、見つけるために。

「ファイトです、打倒魔王パーティ!私たち最強!今日もキャヴィの痕跡、見つけちゃいますよ!ほらほらユートさん、背筋伸ばす!!!視線を上げると心も上がりますよ!!!」

「うるさ……」
「俺は姿勢いいもんね」
「……フフッ、趣味からは想像できない……」

うんうん、皆さん盛り上がってますね!
ユートさんは無表情のまま手をポケットに突っ込み、マチルはフードを深くかぶって、兄さんは空を見ながら、歩いてる。
ちゃんと歩幅が揃ってます!

「なあ、そういえばさ……昨日の夜の魚、何だったの?すげえうまかったんだけど!」

「ああ、昨日の夕飯の!おいしかったですよね~!皮がパリっとしていて、でも身はふっくらで!ちょっと苦いのが、また最高でした!!頭までおいしかったですよ!」

「……下ごしらえ、わたしがしました……フイさんと」

「ええっ!マチル!さすがです!!!」

「うるさ……」

そんな会話をしながら、木々の奥へと足を進める。
村のはずれから続く細道を抜け、森の中へと――。

***

森の中、斜面を下ると。

――そこには、あった。

引き裂かれた毛皮。飛び散る臓器。地面を変色させる血痕。
もう何体目になるだろう。ここ数日、毎日見ている。

「昨日には、無かったですよね。昨晩か今朝――」

あの晩と同じ、キャヴィの魔力(エイデア)の残渣を感じる。
キャヴィの仕業に間違いない。

鹿の死骸と目が合った気がした。
何も映さない、虚ろな瞳。
私は、キッと唇をかむ。やはり、キャヴィは――倒さなければならない。

「見て……足跡。逃げてない……立ってるところを、襲われて……死んだ」

マチルさんが、地面を指さす。
たしかに。走ったり、驚いたような足跡が、無い。
たぶん、後ろから一発で――。

「やっぱり根っからの中~長距離タイプってことか」

兄さんが真面目な顔で分析する。
でも、だとすると――有効打が、思いつかない。

いや!そんなことない!何か、何かが絶対にあるはず!!!
私は頭をひねる。

「……なあ、キャヴィってさ……普段、どこにいるんだろうな」

ユートさんが、ぽつりとこぼす。

「普段……森を、さ迷っているんですかね?」

たしかに、わからない。
森は広いから、どこかをさ迷っていて、ふらりと出会った動物を襲っているものだと思っていた。

「……なあ、その、エイデア?とかの跡が見えるってさ、もっと正確な時間ってわからねえの?」

「……!なるほど、行動パターン把握の第一歩ですね!でも私、そこまで正確な時間は……」

「わたし……わかるかも……」

マチルが、さっきの鹿の躰をなでる。

「これは……たぶん、14時間くらい……前だから……夜の10時くらい、だと思う」

「マチル、すごい!じゃあ、キャヴィの残した痕をすべて見ていけば――!」

「行動パターンがつかめるかもな……」

「すげえ地道だな!でもそれが分かればこっちから罠仕掛けられるかもだぜ!」

「まあ……やる……」

マチルがゆっくりと立ち上がる。
風が木の葉を揺らす。

近づいています。確実に、キャヴィへと――!

***

森の奥、私たちはさらに歩を進めていた。
足元には折れた枝と、湿った葉の絨毯。風が静かに木々を揺らし、時折、朝露が堕ちてくる。
その、風の中。

「……っ」

生臭い。腐った卵と酸を混ぜたような臭い。そして、重く甘ったるい。

――死臭だ。

どんどん強くなっていく。
キャヴィの犠牲となった動物たちのものか、それともキャヴィ自身のものか。

風が木々の間を通り抜ける。
兄さんが鼻をひくつかせる。
私も顔をしかめた。

「……これ。まただ。見ろ」

ユートさんが、木の幹を指さす。
ひっかいたような跡。
不規則な高さに、毛がこすりつけられている。
そして、魔力(エイデア)の残渣――キャヴィの、ものだ。

「これは……たぶん、昨日の――夜、8時くらい」

マチルが木の幹に手をかざす。

私はそれを、地図に記していく。
場所、時間、残された痕跡の種類。
手がかりが、どんどん集まっていく。
ユートさんが地図をのぞき込む。

「夜に活発だな、日中は静かで――」

一瞬、口を閉じ、それから声を発する。

「昼11時から12時の間には痕跡が全くない。しかも、何日もずっと。これは……」

「……眠っている、のかも。魔物にそんな欲求があるかなんて……知らないけどね、フフ……」

なるほど。魔物も、動物と同じように眠る必要があるのかもしれない。
だとすると、それは。

――隙だ。

「行きましょう。どこで眠っているかを、突き止めるんです」

「あれ見ろ!あそこの木!あれにも、ひっかいた跡がある!」

兄さんが向こうにある木を指さす。

「……すげえ目いいじゃん……」

ユートさんが目を細める。

私たちは進む。
”ひっかいたような跡”を追って、森の奥へ。

「今キャヴィに見つかったら……笑いものね……」

「笑えませんよ、マチル!慎重に行きましょう!!!」

***

木の幹のひっかき傷を追って、私たちはぐんぐんと森の奥へと進んだ。
そこに、それはあった。

獣道から、少し外れたところ。
むき出しの木の根が絡むちょっとした傾斜の、浅く窪んだ穴。
そこに。

強い、キャヴィの魔力(エイデア)の残渣を感じた。

「……巣」

私の推測、いや、確信が、口をついて言葉になった。
すえた臭いがする。
黒い、キャヴィの毛が、ところどころに落ちている。

「……木のひっかき傷は、縄張りの主張――だったのかも……しれない」

マチルが、ぼそりとつぶやく。

「だったらキャヴィがここに戻る前に逃げないとヤバくね?」

「……今は夕方の4時……行動パターンからすると、たぶん森の入り口付近にいる……が、長居は……ダルい結果になるだろうな……」

ユートさんが首に手を置いてあたりを見渡す。

私は、そっと穴に近づく。
わずかに差し込む日差し。
穴の中に見えたのは、大小さまざまな骨と、数個のカラフルなボール。
戦利品、ということだろうか。

「おい、早く行こう……。キャヴィが来たらダルい……」

後ろから、ユートさんが急かす。

「はい!戻りましょう、巣は掴みました」

私は振り返り、みんなのところへ走る。

「帰ったらすぐに考えましょう――キャヴィに絶対勝てる、最強の罠を!」

***

フイさんの家に戻る、帰り道。
私は立てた作戦をもう一度復唱した。

「キャヴィが眠る時間、昼の11時から12時の間。あの穴に――ユートさんの爆炎を、ぶち込む」

「……ダル」

ユートさんが横を向く。

「またまた~っ!そんなこと言っちゃって!ユートさんならできますよ!大丈夫、何があっても絶対に私たちが勝ちます!なんてったって、打倒魔王パーティですからね!」

「どうせこの世なんて……終わってるけど……倒せば……フイさんが……安全になる、と思えば……わたしも、フフフ、呪う……」

「俺もなんか燃えてるぜ、いつもに増してな!勝った後に食う飯が楽しみだ!」

「……外しても文句言うなよ」

みんなの声が、揺れる葉の音と重なって心地よく響く。
木々の間を縫う夕日が私たちをほんのりオレンジ色に照らす。

明日の11時すぎ、あの巣穴で。
私たちは、キャヴィを――。

――倒す。



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「よし、今日も調査開始です!」
振り返ると、木漏れ日がみんなの頬を優しく照らしている。
調査4日目、私たちは今日も森を歩く。
キャヴィの弱点を、見つけるために。
「ファイトです、打倒魔王パーティ!私たち最強!今日もキャヴィの痕跡、見つけちゃいますよ!ほらほらユートさん、背筋伸ばす!!!視線を上げると心も上がりますよ!!!」
「うるさ……」
「俺は姿勢いいもんね」
「……フフッ、趣味からは想像できない……」
うんうん、皆さん盛り上がってますね!
ユートさんは無表情のまま手をポケットに突っ込み、マチルはフードを深くかぶって、兄さんは空を見ながら、歩いてる。
ちゃんと歩幅が揃ってます!
「なあ、そういえばさ……昨日の夜の魚、何だったの?すげえうまかったんだけど!」
「ああ、昨日の夕飯の!おいしかったですよね~!皮がパリっとしていて、でも身はふっくらで!ちょっと苦いのが、また最高でした!!頭までおいしかったですよ!」
「……下ごしらえ、わたしがしました……フイさんと」
「ええっ!マチル!さすがです!!!」
「うるさ……」
そんな会話をしながら、木々の奥へと足を進める。
村のはずれから続く細道を抜け、森の中へと――。
***
森の中、斜面を下ると。
――そこには、あった。
引き裂かれた毛皮。飛び散る臓器。地面を変色させる血痕。
もう何体目になるだろう。ここ数日、毎日見ている。
「昨日には、無かったですよね。昨晩か今朝――」
あの晩と同じ、キャヴィの|魔力《エイデア》の残渣を感じる。
キャヴィの仕業に間違いない。
鹿の死骸と目が合った気がした。
何も映さない、虚ろな瞳。
私は、キッと唇をかむ。やはり、キャヴィは――倒さなければならない。
「見て……足跡。逃げてない……立ってるところを、襲われて……死んだ」
マチルさんが、地面を指さす。
たしかに。走ったり、驚いたような足跡が、無い。
たぶん、後ろから一発で――。
「やっぱり根っからの中~長距離タイプってことか」
兄さんが真面目な顔で分析する。
でも、だとすると――有効打が、思いつかない。
いや!そんなことない!何か、何かが絶対にあるはず!!!
私は頭をひねる。
「……なあ、キャヴィってさ……普段、どこにいるんだろうな」
ユートさんが、ぽつりとこぼす。
「普段……森を、さ迷っているんですかね?」
たしかに、わからない。
森は広いから、どこかをさ迷っていて、ふらりと出会った動物を襲っているものだと思っていた。
「……なあ、その、エイデア?とかの跡が見えるってさ、もっと正確な時間ってわからねえの?」
「……!なるほど、行動パターン把握の第一歩ですね!でも私、そこまで正確な時間は……」
「わたし……わかるかも……」
マチルが、さっきの鹿の躰をなでる。
「これは……たぶん、14時間くらい……前だから……夜の10時くらい、だと思う」
「マチル、すごい!じゃあ、キャヴィの残した痕をすべて見ていけば――!」
「行動パターンがつかめるかもな……」
「すげえ地道だな!でもそれが分かればこっちから罠仕掛けられるかもだぜ!」
「まあ……やる……」
マチルがゆっくりと立ち上がる。
風が木の葉を揺らす。
近づいています。確実に、キャヴィへと――!
***
森の奥、私たちはさらに歩を進めていた。
足元には折れた枝と、湿った葉の絨毯。風が静かに木々を揺らし、時折、朝露が堕ちてくる。
その、風の中。
「……っ」
生臭い。腐った卵と酸を混ぜたような臭い。そして、重く甘ったるい。
――死臭だ。
どんどん強くなっていく。
キャヴィの犠牲となった動物たちのものか、それともキャヴィ自身のものか。
風が木々の間を通り抜ける。
兄さんが鼻をひくつかせる。
私も顔をしかめた。
「……これ。まただ。見ろ」
ユートさんが、木の幹を指さす。
ひっかいたような跡。
不規則な高さに、毛がこすりつけられている。
そして、|魔力《エイデア》の残渣――キャヴィの、ものだ。
「これは……たぶん、昨日の――夜、8時くらい」
マチルが木の幹に手をかざす。
私はそれを、地図に記していく。
場所、時間、残された痕跡の種類。
手がかりが、どんどん集まっていく。
ユートさんが地図をのぞき込む。
「夜に活発だな、日中は静かで――」
一瞬、口を閉じ、それから声を発する。
「昼11時から12時の間には痕跡が全くない。しかも、何日もずっと。これは……」
「……眠っている、のかも。魔物にそんな欲求があるかなんて……知らないけどね、フフ……」
なるほど。魔物も、動物と同じように眠る必要があるのかもしれない。
だとすると、それは。
――隙だ。
「行きましょう。どこで眠っているかを、突き止めるんです」
「あれ見ろ!あそこの木!あれにも、ひっかいた跡がある!」
兄さんが向こうにある木を指さす。
「……すげえ目いいじゃん……」
ユートさんが目を細める。
私たちは進む。
”ひっかいたような跡”を追って、森の奥へ。
「今キャヴィに見つかったら……笑いものね……」
「笑えませんよ、マチル!慎重に行きましょう!!!」
***
木の幹のひっかき傷を追って、私たちはぐんぐんと森の奥へと進んだ。
そこに、それはあった。
獣道から、少し外れたところ。
むき出しの木の根が絡むちょっとした傾斜の、浅く窪んだ穴。
そこに。
強い、キャヴィの|魔力《エイデア》の残渣を感じた。
「……巣」
私の推測、いや、確信が、口をついて言葉になった。
すえた臭いがする。
黒い、キャヴィの毛が、ところどころに落ちている。
「……木のひっかき傷は、縄張りの主張――だったのかも……しれない」
マチルが、ぼそりとつぶやく。
「だったらキャヴィがここに戻る前に逃げないとヤバくね?」
「……今は夕方の4時……行動パターンからすると、たぶん森の入り口付近にいる……が、長居は……ダルい結果になるだろうな……」
ユートさんが首に手を置いてあたりを見渡す。
私は、そっと穴に近づく。
わずかに差し込む日差し。
穴の中に見えたのは、大小さまざまな骨と、数個のカラフルなボール。
戦利品、ということだろうか。
「おい、早く行こう……。キャヴィが来たらダルい……」
後ろから、ユートさんが急かす。
「はい!戻りましょう、巣は掴みました」
私は振り返り、みんなのところへ走る。
「帰ったらすぐに考えましょう――キャヴィに絶対勝てる、最強の罠を!」
***
フイさんの家に戻る、帰り道。
私は立てた作戦をもう一度復唱した。
「キャヴィが眠る時間、昼の11時から12時の間。あの穴に――ユートさんの爆炎を、ぶち込む」
「……ダル」
ユートさんが横を向く。
「またまた~っ!そんなこと言っちゃって!ユートさんならできますよ!大丈夫、何があっても絶対に私たちが勝ちます!なんてったって、打倒魔王パーティですからね!」
「どうせこの世なんて……終わってるけど……倒せば……フイさんが……安全になる、と思えば……わたしも、フフフ、呪う……」
「俺もなんか燃えてるぜ、いつもに増してな!勝った後に食う飯が楽しみだ!」
「……外しても文句言うなよ」
みんなの声が、揺れる葉の音と重なって心地よく響く。
木々の間を縫う夕日が私たちをほんのりオレンジ色に照らす。
明日の11時すぎ、あの巣穴で。
私たちは、キャヴィを――。
――倒す。