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第17話:到着しましたオロシ村!誰もいない……って、そんなわけありませんよね!

ー/ー



昼過ぎの抜けるように青い空の下。私たちは、森を歩いていた。
足元の土道は緩く傾斜を続け、一歩を踏み出すたび背中の荷物の裏にじんわりと汗がにじむ。
ときどき吹く乾いた風が、すごく心地いい。

「なあレリィ~まだ着かねえの?俺もう歩きたくねえよ……」

「兄さん、元気出してください!ほら、小鳥も応援してくれてますよ!」

「……あのゴミみてぇなバイトのあとで何でこんなに歩かなきゃいけないんだよ……ゆっくり寝かせろ……」

「人間は……闇の中にいるべき……」

あの食堂から解放されて歩くこと3日間。
皆さん、そろそろ疲れてきているようです。

たしかに、そろそろお布団でゆっくり寝たいものです。
私は地図を広げ、目を落とす。

「うーん、オロシ村はここらへんにあると思うのですが……」

地図を見ながら首をひねっていると。
まぶしい……!

ふいに道が開けた。
小さな谷間に、ぽつりぽつりと建物が見える。

「村です!到着しました、オロシ村!」

私は地図を畳み、顔を上げる。
しかし、後ろからは文句の声が。

「なんだよ……すげえ小せえ村。何の店もなさそうだな」
「宿屋すらなさそうじゃね……?」
「もう何もかもどうでもいい……」

「皆さん!着いたんだから、もっと元気出していきましょう!」

私は前に向き直し、息を吸って声を出す。

「すみませ~ん!!!私たち、打倒魔王パーティです!!!お困りごとはありませんか~!」

「嘘だろ?着いて早々それかよ……ダル……」

でも、村の人の返事はなかった。

「おかしいですね?」

「レリィさん……突然知らない人に話しかけられても……人は答えない……」

「いや、でも……この村、なんか変だぜ。――人の気配がなさすぎる」

たしかに。この村は、あまりに静かすぎる。
畑は雑草に覆われ、柵はところどころ崩れている。民家の屋根には枯れ葉が積もり、雨戸は閉じられたままだ。

「でも、廃村――というほどでも、無いような気もするのですが……。ほら、この井戸も水が溜まっていますし……ロープもそんなに古くは見えません」

私はもう一度、村の人たちに呼びかける。

「すみませーん!!!誰かいますかーっ!!!」

返事は、無い。

いくつかの家のドアをノックしてみる。
やはり、返事は無い。

「静かな村……。時間が、止まっているみたい」

マチルが道端の枯れた花にそっと触れていた。

そのとき。私はふと、遠くの家の屋根に目を留める。

「煙……?」

ひときわ奥にある木造の家。その煙突から、細く白い煙が立ち上っていた。風に揺れながら空へと昇っていくそれは、確かに――誰かが火を焚いている証拠。

「誰か、います!」

私は、ドキドキしながら煙の出ている家へ向かって駆け出した。

***

その家は、村の端にぽつんと立つ、朽ちかけた木造の一軒家だった。
外壁は灰色に色褪せ、軒先には干された薪が並んでいる。
けれど、玄関の前は掃き清められ、履き物がきれいに並べられていた。

私は扉の前に立ち、小さくノックした。

――コン、コン。

返事は、ない。もう一度、今度は少し強く。

――コン、コンコン。

しばらくして、ゆっくりと――本当にゆっくりと、軋む音と共に、扉が開いた。

その隙間から顔を出したのは――。

「あっ……!こんにちは!あの、私たち打倒魔王パーティで、旅人で、この村に来て、でも誰もいなくて!」

中から出てきたのは――小さな、背が大きく曲がった、しわだらけのおばあちゃん。
深いしわの奥にあるかすかに濁った眼は、けれどどこか澄んでいて、柔らかかった。


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昼過ぎの抜けるように青い空の下。私たちは、森を歩いていた。
足元の土道は緩く傾斜を続け、一歩を踏み出すたび背中の荷物の裏にじんわりと汗がにじむ。
ときどき吹く乾いた風が、すごく心地いい。
「なあレリィ~まだ着かねえの?俺もう歩きたくねえよ……」
「兄さん、元気出してください!ほら、小鳥も応援してくれてますよ!」
「……あのゴミみてぇなバイトのあとで何でこんなに歩かなきゃいけないんだよ……ゆっくり寝かせろ……」
「人間は……闇の中にいるべき……」
あの食堂から解放されて歩くこと3日間。
皆さん、そろそろ疲れてきているようです。
たしかに、そろそろお布団でゆっくり寝たいものです。
私は地図を広げ、目を落とす。
「うーん、オロシ村はここらへんにあると思うのですが……」
地図を見ながら首をひねっていると。
まぶしい……!
ふいに道が開けた。
小さな谷間に、ぽつりぽつりと建物が見える。
「村です!到着しました、オロシ村!」
私は地図を畳み、顔を上げる。
しかし、後ろからは文句の声が。
「なんだよ……すげえ小せえ村。何の店もなさそうだな」
「宿屋すらなさそうじゃね……?」
「もう何もかもどうでもいい……」
「皆さん!着いたんだから、もっと元気出していきましょう!」
私は前に向き直し、息を吸って声を出す。
「すみませ~ん!!!私たち、打倒魔王パーティです!!!お困りごとはありませんか~!」
「嘘だろ?着いて早々それかよ……ダル……」
でも、村の人の返事はなかった。
「おかしいですね?」
「レリィさん……突然知らない人に話しかけられても……人は答えない……」
「いや、でも……この村、なんか変だぜ。――人の気配がなさすぎる」
たしかに。この村は、あまりに静かすぎる。
畑は雑草に覆われ、柵はところどころ崩れている。民家の屋根には枯れ葉が積もり、雨戸は閉じられたままだ。
「でも、廃村――というほどでも、無いような気もするのですが……。ほら、この井戸も水が溜まっていますし……ロープもそんなに古くは見えません」
私はもう一度、村の人たちに呼びかける。
「すみませーん!!!誰かいますかーっ!!!」
返事は、無い。
いくつかの家のドアをノックしてみる。
やはり、返事は無い。
「静かな村……。時間が、止まっているみたい」
マチルが道端の枯れた花にそっと触れていた。
そのとき。私はふと、遠くの家の屋根に目を留める。
「煙……?」
ひときわ奥にある木造の家。その煙突から、細く白い煙が立ち上っていた。風に揺れながら空へと昇っていくそれは、確かに――誰かが火を焚いている証拠。
「誰か、います!」
私は、ドキドキしながら煙の出ている家へ向かって駆け出した。
***
その家は、村の端にぽつんと立つ、朽ちかけた木造の一軒家だった。
外壁は灰色に色褪せ、軒先には干された薪が並んでいる。
けれど、玄関の前は掃き清められ、履き物がきれいに並べられていた。
私は扉の前に立ち、小さくノックした。
――コン、コン。
返事は、ない。もう一度、今度は少し強く。
――コン、コンコン。
しばらくして、ゆっくりと――本当にゆっくりと、軋む音と共に、扉が開いた。
その隙間から顔を出したのは――。
「あっ……!こんにちは!あの、私たち打倒魔王パーティで、旅人で、この村に来て、でも誰もいなくて!」
中から出てきたのは――小さな、背が大きく曲がった、しわだらけのおばあちゃん。
深いしわの奥にあるかすかに濁った眼は、けれどどこか澄んでいて、柔らかかった。