3 クジラ編
ー/ー
翌週の火曜日になった。
今日も晴れで温かく、ぽわぽわと所々に雲が浮かんでいる。
空飛ぶくじらを探しに予定で午前十時に駅のホームで待ち合わせだった。
電車がホームに着くと窓の外に、メイド服じゃない普通の格好の菜帆さんがいた。
白いブラウスに黒のミニスカートとニーソックスだ。
ブラウスには黒くて細いリボンが付いている。
菜帆と目が合うと手を振ってくる。
直樹は恥ずかしいので、手を上げるだけにした。
ドアが開くと、菜帆が電車に乗り込んでくる。
「直樹さん、おはようございます」
「おはようございます」
先週火曜日に話し合った結果、最初は上野公園に行くことになった。
「まずは、上野なので乗り換えですね」
「はい」
運よく空いていたので並んで横向きの座席に座る。
「今日は普段着なんだね」
「はい」
「ネコのポシェットもかわいいね」
「はい! ちなみに三原さんです」
そう言うと、持ち上げて見せてくれる。
「ミハラさん?」
「はい。ネコさんポシェットの三原さんです。オスです」
色は白いで、猫の顔の形をしており上に耳が出っ張っている。
外側の側面に青い目とピンクの鼻、ωになっている口、三本ずつ髭が付いてる。
「下の名前は?」
「ありません。商店街の鞄屋さんで買いました」
「面白いの売ってるね」
「はい。他にもカピバラさんとうさぎさん等が売ってました」
「若い人向け?だよね。若い人来るのかな」
「おばあちゃんたちが買ってるみたいだよ。近くの高校生も来るみたい」
「はあ」
「商店街では、若い人カムバック作戦をしているのです。死活問題なんです」
喋りつつ電車を乗り換えて上野まで移動した。
「クジラはどこでしょうか」
「博物館の前だったはず」
博物館のほうへ移動する。
「離れてても見えますね」
「そうですね」
「真下まで行ってみましょう」
ここまで並んでて歩いてきたが、クジラが見えるようになると菜帆は早歩きで行ってしまう。
「待ってくれ」
「着きました。早く、こっちです」
菜帆はクジラのすぐ傍まで行き、また手を振ってくる。
「元気だね」
「はい。この子はシロナガスクジラですね」
二人して、下からクジラを見上げた。
「とっても大きいです。浮いてますけど、飛んでるって感じではないです」
「そうだね」
「残念です」
しばらくいろいろな方向から眺めつつ、菜帆は数枚スマホで写真を撮った。
「ついでにパンダとかも見てく?」
「パ、パンダ」
菜帆はちょっと惹かれたのか考えている。
「とっても魅力的ですが、次、行きましょう」
「小さな公園に、クジラの滑り台とか遊具があるらしいんですがどうする?」
「空を飛んでなさそうなので」
「では、水族館だね。神奈川なのでちょっと遠いけど、行く?」
「はい。案内よろしくです」
「お任せください。お嬢様」
「よしなにです」
二人は再び電車に乗って横浜方面へと移動した。
「お昼はどうする?」
「ちょっと早いですけど、先に食べちゃいますか」
途中で一度降りて、駅周辺の喫茶店に入る。
「たまには他の喫茶店もいいですね。研究しなきゃ」
「仕事熱心だね」
二人はアイスコーヒーとサンドイッチ類を頼んだ。
立ったまま受け取って席に着く。ファーストフード的なシステムだ。
「同じ喫茶店でも結構違いますね。人がいっぱいです。うちの店はこんなにお客さん入らないわ」
「隠れ家的なのがいいんじゃない?」
「まあそうですね。ここでゆっくりは、できそうにないです」
「モモンガにはずっといる人いますもんね」
「今の所一人だけね」
「三人位に増えたら困るね」
「ええ」
サンドイッチを早々に食べ、また電車に乗って目的地に移動する。
平日なのでそれほど混んでいないようだ。
「チケット買ってきますね」
「電車賃も貰ってるのに悪いよ」
「これもリサーチの必要経費だからいいんです」
菜帆はそうそうにチケット売り場に向かって行った。
「はい。おまたせしました。まずは、魚を見ましょう」
並んで、大きい水槽から小さい水槽まで、一つ一つ丁寧に見ていく。
「クマノミです。かわいいです」
「タコです」
「大水槽に魚がいっぱいです」
菜帆はかなり楽しそうだ。
直樹のほうは、そんな菜帆を見ているのが楽しかった。
次にクジラ・イルカゾーンに向かった。
水槽の中には、何頭か小さめのクジラがいた。
大水槽のトンネルの上を優雅に2頭泳いでいった。
下から見上げると、空を泳いでいるようにも見える。
太陽の光が上から降り注いで、周りの水が輝いてみえる、クジラはほぼシルエットのみ見える。
菜帆はトンネルの真ん中で立ち止まって上を見ている。
「クジラさんが空を泳いでます。魔法みたいです」
「そうだね」
直樹は魔法じゃないとは言えなかった。
しばらく見た後、携帯を取り出して上を泳いでいるクジラの写真を撮った。
直樹も同じように携帯で写真を撮った。
菜帆とクジラが写っている写真も撮ったし二人とクジラの写真も撮ってもらった。
水族館を出て外を歩いていると、空を飛行船が横切って行った。
なんと飛行船はクジラのペイントがされていた。
「外でもクジラさんが空を泳いでます」
「ほんとだ」
「あ、写真、写真」
ネコさんポシェットの中の携帯を漁っている。上を見たり、手元をみたり忙しい。
「行っちゃうよ」
「待って!」
飛行船は結構速度が出ているのか、どんどん進んでいく。
飛行機よりかなり低い高さを飛んでいく。
なんとか、飛行船が見えなくなる前に携帯を取りだして写真に撮る事ができた。
「撮れました。後姿だけど」
「どれどれ」
「外でも見れたのは誰かの魔法ですよね」
「さあ」
「きっと日本に一機しかないと思うのです。それが目の前を飛んでいくなんて魔法です」
「そう言われると、そうかもね」
「はい」
帰りの電車で、二人並んで座れたので直樹はウトウトしていた。
「お休みですか? いいですよ。私が着いたら起こします」
お言葉に甘えて直樹は居眠りをする……
なぜかまた、二人は水族館の外を歩いていた。
空には、ぽつぽつと雲があり流れていく。
さっき飛行船が通った位の高さの位置に、半透明のクジラが現れてだんだんはっきり見えてくる。シロナガスクジラだ。
それは一頭、また一頭と増え、大人五頭、子供二頭の群れになった。
ヒレを上下に動かして、大空を優雅に泳いでいく。
いつのまにか菜帆がイルカの背中に乗っている。
格好がいつものピンクのメイド服になっていて、なぜか白い猫耳と尻尾を付けていた。
「クジラさんのところまで行きたいです」
と言って空を登って行ってしまう。
直樹もイルカの背中に乗って、その後を追う。
二頭のイルカは「キューキュー」と交互に鳴き、体を上下させながら登って行く。
もう少しでクジラの傍まで来たと思ったら、先頭を行くクジラが潮を吹き、次々と他のクジラも潮を吹いた。
すると、クジラが再び半透明になりだんだん薄くなっていった。
「クジラさん待って」
菜帆がお願いするが、クジラは完全に消えてしまった。
空には、二頭のイルカに乗った二人だけが残された。
直樹はそこで目が覚めた。
「直樹さん、お目覚めですかもう少し掛かります」
菜帆に寄りかかって寝ていたようだ。
「なんか、クジラが空を飛んでる夢を見たよ」
直樹は、なぜかはっきり覚えており、クジラの夢を菜帆に語った。
「ずるいです。私も見たかったです」
そう言うと菜帆は、両手で直樹の頭の左右を挟むと自分のほうに向けさせて、目をつぶって近づいてくる。
直樹は、急に鼓動が速くなる。
「あ、ちょっと菜帆さん?」
「目をつぶって」
「はい」
「こう、頭をくっ付けたら魔法的な何かでイメージが転送されてこないかな」
菜帆はおでことおでこをくっつけた。
「無理でしょう」
「駄目でした。でもなんかイメージできそうです」
菜帆はおでこを離して元の位置に戻った。二人は目を開ける。
目と目が合ってしまった。
すぐ直樹は目線を外のほうへずらした。
菜帆はそれを見てにこにこしていた。
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空飛ぶくじらを探しに予定で午前十時に駅のホームで待ち合わせだった。
電車がホームに着くと窓の外に、メイド服じゃない普通の格好の菜帆さんがいた。
白いブラウスに黒のミニスカートとニーソックスだ。
ブラウスには黒くて細いリボンが付いている。
菜帆と目が合うと手を振ってくる。
直樹は恥ずかしいので、手を上げるだけにした。
ドアが開くと、菜帆が電車に乗り込んでくる。
「直樹さん、おはようございます」
「おはようございます」
先週火曜日に話し合った結果、最初は上野公園に行くことになった。
「まずは、上野なので乗り換えですね」
「はい」
運よく空いていたので並んで横向きの座席に座る。
「今日は普段着なんだね」
「はい」
「ネコのポシェットもかわいいね」
「はい! ちなみに三原さんです」
そう言うと、持ち上げて見せてくれる。
「ミハラさん?」
「はい。ネコさんポシェットの三原さんです。オスです」
色は白いで、猫の顔の形をしており上に耳が出っ張っている。
外側の側面に青い目とピンクの鼻、ωになっている口、三本ずつ髭が付いてる。
「下の名前は?」
「ありません。商店街の鞄屋さんで買いました」
「面白いの売ってるね」
「はい。他にもカピバラさんとうさぎさん等が売ってました」
「若い人向け?だよね。若い人来るのかな」
「おばあちゃんたちが買ってるみたいだよ。近くの高校生も来るみたい」
「はあ」
「商店街では、若い人カムバック作戦をしているのです。死活問題なんです」
喋りつつ電車を乗り換えて上野まで移動した。
「クジラはどこでしょうか」
「博物館の前だったはず」
博物館のほうへ移動する。
「離れてても見えますね」
「そうですね」
「真下まで行ってみましょう」
ここまで並んでて歩いてきたが、クジラが見えるようになると菜帆は早歩きで行ってしまう。
「待ってくれ」
「着きました。早く、こっちです」
菜帆はクジラのすぐ傍まで行き、また手を振ってくる。
「元気だね」
「はい。この子はシロナガスクジラですね」
二人して、下からクジラを見上げた。
「とっても大きいです。浮いてますけど、飛んでるって感じではないです」
「そうだね」
「残念です」
しばらくいろいろな方向から眺めつつ、菜帆は数枚スマホで写真を撮った。
「ついでにパンダとかも見てく?」
「パ、パンダ」
菜帆はちょっと惹かれたのか考えている。
「とっても魅力的ですが、次、行きましょう」
「小さな公園に、クジラの滑り台とか遊具があるらしいんですがどうする?」
「空を飛んでなさそうなので」
「では、水族館だね。神奈川なのでちょっと遠いけど、行く?」
「はい。案内よろしくです」
「お任せください。お嬢様」
「よしなにです」
二人は再び電車に乗って横浜方面へと移動した。
「お昼はどうする?」
「ちょっと早いですけど、先に食べちゃいますか」
途中で一度降りて、駅周辺の喫茶店に入る。
「たまには他の喫茶店もいいですね。研究しなきゃ」
「仕事熱心だね」
二人はアイスコーヒーとサンドイッチ類を頼んだ。
立ったまま受け取って席に着く。ファーストフード的なシステムだ。
「同じ喫茶店でも結構違いますね。人がいっぱいです。うちの店はこんなにお客さん入らないわ」
「隠れ家的なのがいいんじゃない?」
「まあそうですね。ここでゆっくりは、できそうにないです」
「モモンガにはずっといる人いますもんね」
「今の所一人だけね」
「三人位に増えたら困るね」
「ええ」
サンドイッチを早々に食べ、また電車に乗って目的地に移動する。
平日なのでそれほど混んでいないようだ。
「チケット買ってきますね」
「電車賃も貰ってるのに悪いよ」
「これもリサーチの必要経費だからいいんです」
菜帆はそうそうにチケット売り場に向かって行った。
「はい。おまたせしました。まずは、魚を見ましょう」
並んで、大きい水槽から小さい水槽まで、一つ一つ丁寧に見ていく。
「クマノミです。かわいいです」
「タコです」
「大水槽に魚がいっぱいです」
菜帆はかなり楽しそうだ。
直樹のほうは、そんな菜帆を見ているのが楽しかった。
次にクジラ・イルカゾーンに向かった。
水槽の中には、何頭か小さめのクジラがいた。
大水槽のトンネルの上を優雅に2頭泳いでいった。
下から見上げると、空を泳いでいるようにも見える。
太陽の光が上から降り注いで、周りの水が輝いてみえる、クジラはほぼシルエットのみ見える。
菜帆はトンネルの真ん中で立ち止まって上を見ている。
「クジラさんが空を泳いでます。魔法みたいです」
「そうだね」
直樹は魔法じゃないとは言えなかった。
しばらく見た後、携帯を取り出して上を泳いでいるクジラの写真を撮った。
直樹も同じように携帯で写真を撮った。
菜帆とクジラが写っている写真も撮ったし二人とクジラの写真も撮ってもらった。
水族館を出て外を歩いていると、空を飛行船が横切って行った。
なんと飛行船はクジラのペイントがされていた。
「外でもクジラさんが空を泳いでます」
「ほんとだ」
「あ、写真、写真」
ネコさんポシェットの中の携帯を漁っている。上を見たり、手元をみたり忙しい。
「行っちゃうよ」
「待って!」
飛行船は結構速度が出ているのか、どんどん進んでいく。
飛行機よりかなり低い高さを飛んでいく。
なんとか、飛行船が見えなくなる前に携帯を取りだして写真に撮る事ができた。
「撮れました。後姿だけど」
「どれどれ」
「外でも見れたのは誰かの魔法ですよね」
「さあ」
「きっと日本に一機しかないと思うのです。それが目の前を飛んでいくなんて魔法です」
「そう言われると、そうかもね」
「はい」
帰りの電車で、二人並んで座れたので直樹はウトウトしていた。
「お休みですか? いいですよ。私が着いたら起こします」
お言葉に甘えて直樹は居眠りをする……
なぜかまた、二人は水族館の外を歩いていた。
空には、ぽつぽつと雲があり流れていく。
さっき飛行船が通った位の高さの位置に、半透明のクジラが現れてだんだんはっきり見えてくる。シロナガスクジラだ。
それは一頭、また一頭と増え、大人五頭、子供二頭の群れになった。
ヒレを上下に動かして、大空を優雅に泳いでいく。
いつのまにか菜帆がイルカの背中に乗っている。
格好がいつものピンクのメイド服になっていて、なぜか白い猫耳と尻尾を付けていた。
「クジラさんのところまで行きたいです」
と言って空を登って行ってしまう。
直樹もイルカの背中に乗って、その後を追う。
二頭のイルカは「キューキュー」と交互に鳴き、体を上下させながら登って行く。
もう少しでクジラの傍まで来たと思ったら、先頭を行くクジラが潮を吹き、次々と他のクジラも潮を吹いた。
すると、クジラが再び半透明になりだんだん薄くなっていった。
「クジラさん待って」
菜帆がお願いするが、クジラは完全に消えてしまった。
空には、二頭のイルカに乗った二人だけが残された。
直樹はそこで目が覚めた。
「直樹さん、お目覚めですかもう少し掛かります」
菜帆に寄りかかって寝ていたようだ。
「なんか、クジラが空を飛んでる夢を見たよ」
直樹は、なぜかはっきり覚えており、クジラの夢を菜帆に語った。
「ずるいです。私も見たかったです」
そう言うと菜帆は、両手で直樹の頭の左右を挟むと自分のほうに向けさせて、目をつぶって近づいてくる。
直樹は、急に鼓動が速くなる。
「あ、ちょっと菜帆さん?」
「目をつぶって」
「はい」
「こう、頭をくっ付けたら魔法的な何かでイメージが転送されてこないかな」
菜帆はおでことおでこをくっつけた。
「無理でしょう」
「駄目でした。でもなんかイメージできそうです」
菜帆はおでこを離して元の位置に戻った。二人は目を開ける。
目と目が合ってしまった。
すぐ直樹は目線を外のほうへずらした。
菜帆はそれを見てにこにこしていた。