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その5

ー/ー



私の名前は田中健二。今年で45才。いわゆるアラフィフだ。
Star☆Dreamのセカンドシングルのリリースイベントまで、あと数日のある日。
プシュ!
グビグビ
プハー!
「この一口の為に生きてるな。」
今夜のビールも美味い!妻が絶妙な温度で出してくれる缶ビールは格別だ。まぁ、ビールではなく発泡酒なのだが。美味しいツマミもあるし、近くには愛しい娘と、愛犬のタロウ(ミニチュアダックス、短い足が可愛いのだ)がいる。至極の幸せだ。。。
いかん。幸せ過ぎて、大事なことを後回しにしていた。今度の土曜日の話だ。「今度の土曜日なんだが、」
「何?何か予定あったかしら?」
「いや、予定はない、、、なかったんだけど。」
「家族で、どこかに出掛ける?」
「いや、、会社に行かないといけなくなって。」
か細い声を何とか捻り出す。

「今まで、そんなこと無かったのに、最近、随分忙しいのね。」
「そうなんだよ!最近、会社が忙しくて。暫く続きそうなんだ。」
「忙しいのは良い事だけど、体には気をつけてね。」
「わかった。ありがとう。」
よし!土曜日はOKだ!

「これから、当分、忙しくなるから、残業や休日出勤が増えると思う。すまんな。」
「わかったわ。あなた。」
「お父さん、体大丈夫?年なんだから無理しないで。」
本当にユイは優しい子だ。涙が出てくる。

次の日。
・・・土曜日、OKです。送信っと。
アヤ師匠たちにグループメールを送った。
次々に返事が来る。仲間って、良いもんだ。
なになに、明葉原駅の電気街口に10時集合か。よし、忘れないようにしなければ。
土曜日。迷ってしまった!!!明葉原駅に行けば、すぐに分かるだろうと鷹を括っていたが、広いし、出口は幾つもあるし、完全に道を見失った!どれくらいの時間、彷徨っていただろうか、、、力尽きそうになった、その時。
「ケンジくん!ケンジくん!」
救いの女神の声がっ!?
声のする方を振り向くと、ミドリさんが手を振っていた。
助かったっ。
私はヨタヨタと、ミドリさんの方に向かって歩いた。「もう、ケンジくん、全然来ないんだもん。心配したよ。」
「申し訳ない。慣れない駅で迷ってしまった。」
「でも、見つかって良かったよ。」
ミドリさんは、笑うと意外に子供みたいだ。

改札口を出ると、アヤ師匠とマサさんが待っていた。
「ケンジくん、遅いよ!」
マサさんの私服は、年よりも若く見える。
「でも、ケンジくんは、何でスーツなの?」
アヤ師匠が不思議そうに訊ねる。
「一応、休日出勤ってことになってるので・・・。」
「家庭があると色々大変なんだよ。」
マサさんがため息混じりに呟く。
「マサさん独身じゃん。」
ミドリさんが笑いながらいう。
「それはさぁ、まあ、人生50年生きてれば、色々あるんだよ。」
マサさん、私より年上なのか。マサ先輩と呼ばなくては。
「さて、立ち話は、この辺にして、まだ少し時間あるから、お茶しようか。」
流石、アヤ師匠。仕切るのが上手い。
そして、レオックスの近くのコーヒー店に入る。コーヒーを飲みながら、それぞれのスタドリのファン歴の話になった。
アヤ師匠が口火を切る。「私は、音楽雑誌かな。もうすぐデビューするアイドルグループを取り上げてて、そこに、スタドリがいたの。もう、ユウくんに一目惚れ❤️
マサくんは?」
「僕は、テレビだな。歌番組のピックアップアーティストのコーナーで観て。やっぱり、センターのユウくんに一目惚れだった。ミドリちゃんは?」
「私は、明葉原のCDショップで偶然に。イベントでデビューシングルを手売りしてたの。それで気付いたらCD買ってた。」
手売り!と言うことは、直接触れ合ったと言うことか!う、羨ましい。

「ケンジくんは?」
「私は、偶然テレビで観て。」
そう、初めて観たユウくんは、本当に眩しかった。
「みんな、スタドリ歴は、そんなに変わらないよね。まあ、デビューしてそんなに経ってないし。」
アヤ師匠は、みんなのまとめ役に相応しいな。言葉が優しいし的確だ。「さあ、リリイベの時間だね。行こうか。」
もう、そんな時間か。会場は、目の前だ。レオックスの8階、イベントスペースが、今日のリリイベの会場だ。
エスカレーターで上がって行くと、スタドリのポスターがあちらこちらに貼ってある。・・・1枚くらい頂いても・・・いや、泥棒はダメだ。私は首を振る。
8階が見えて来た。いよいよだ。エスカレーターを登りきると、目の前に広いスペースが広がる。奥には一段高くなった場所が。あそこがステージか。ステージの周りには、ポスターが所狭しと貼ってある。

「ついに、来たね。」
アヤ師匠が、私の背中をポンッと叩く。
まだ、それほど人は集まっていないようだ。私達は、ステージ正面の最前列に陣取って、イベントの開始を待った。「ケンジくん、興奮して、スタドリに触らないでよ。」
「さ、触りませんよっ!」
ドキドキして来た。いよいよ、セカンドシングルのリリースイベントが始まる。


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私の名前は田中健二。今年で45才。いわゆるアラフィフだ。
Star☆Dreamのセカンドシングルのリリースイベントまで、あと数日のある日。
プシュ!
グビグビ
プハー!
「この一口の為に生きてるな。」
今夜のビールも美味い!妻が絶妙な温度で出してくれる缶ビールは格別だ。まぁ、ビールではなく発泡酒なのだが。美味しいツマミもあるし、近くには愛しい娘と、愛犬のタロウ(ミニチュアダックス、短い足が可愛いのだ)がいる。至極の幸せだ。。。
いかん。幸せ過ぎて、大事なことを後回しにしていた。今度の土曜日の話だ。「今度の土曜日なんだが、」
「何?何か予定あったかしら?」
「いや、予定はない、、、なかったんだけど。」
「家族で、どこかに出掛ける?」
「いや、、会社に行かないといけなくなって。」
か細い声を何とか捻り出す。
「今まで、そんなこと無かったのに、最近、随分忙しいのね。」
「そうなんだよ!最近、会社が忙しくて。暫く続きそうなんだ。」
「忙しいのは良い事だけど、体には気をつけてね。」
「わかった。ありがとう。」
よし!土曜日はOKだ!
「これから、当分、忙しくなるから、残業や休日出勤が増えると思う。すまんな。」
「わかったわ。あなた。」
「お父さん、体大丈夫?年なんだから無理しないで。」
本当にユイは優しい子だ。涙が出てくる。
次の日。
・・・土曜日、OKです。送信っと。
アヤ師匠たちにグループメールを送った。
次々に返事が来る。仲間って、良いもんだ。
なになに、明葉原駅の電気街口に10時集合か。よし、忘れないようにしなければ。
土曜日。迷ってしまった!!!明葉原駅に行けば、すぐに分かるだろうと鷹を括っていたが、広いし、出口は幾つもあるし、完全に道を見失った!どれくらいの時間、彷徨っていただろうか、、、力尽きそうになった、その時。
「ケンジくん!ケンジくん!」
救いの女神の声がっ!?
声のする方を振り向くと、ミドリさんが手を振っていた。
助かったっ。
私はヨタヨタと、ミドリさんの方に向かって歩いた。「もう、ケンジくん、全然来ないんだもん。心配したよ。」
「申し訳ない。慣れない駅で迷ってしまった。」
「でも、見つかって良かったよ。」
ミドリさんは、笑うと意外に子供みたいだ。
改札口を出ると、アヤ師匠とマサさんが待っていた。
「ケンジくん、遅いよ!」
マサさんの私服は、年よりも若く見える。
「でも、ケンジくんは、何でスーツなの?」
アヤ師匠が不思議そうに訊ねる。
「一応、休日出勤ってことになってるので・・・。」
「家庭があると色々大変なんだよ。」
マサさんがため息混じりに呟く。
「マサさん独身じゃん。」
ミドリさんが笑いながらいう。
「それはさぁ、まあ、人生50年生きてれば、色々あるんだよ。」
マサさん、私より年上なのか。マサ先輩と呼ばなくては。
「さて、立ち話は、この辺にして、まだ少し時間あるから、お茶しようか。」
流石、アヤ師匠。仕切るのが上手い。
そして、レオックスの近くのコーヒー店に入る。コーヒーを飲みながら、それぞれのスタドリのファン歴の話になった。
アヤ師匠が口火を切る。「私は、音楽雑誌かな。もうすぐデビューするアイドルグループを取り上げてて、そこに、スタドリがいたの。もう、ユウくんに一目惚れ❤️
マサくんは?」
「僕は、テレビだな。歌番組のピックアップアーティストのコーナーで観て。やっぱり、センターのユウくんに一目惚れだった。ミドリちゃんは?」
「私は、明葉原のCDショップで偶然に。イベントでデビューシングルを手売りしてたの。それで気付いたらCD買ってた。」
手売り!と言うことは、直接触れ合ったと言うことか!う、羨ましい。
「ケンジくんは?」
「私は、偶然テレビで観て。」
そう、初めて観たユウくんは、本当に眩しかった。
「みんな、スタドリ歴は、そんなに変わらないよね。まあ、デビューしてそんなに経ってないし。」
アヤ師匠は、みんなのまとめ役に相応しいな。言葉が優しいし的確だ。「さあ、リリイベの時間だね。行こうか。」
もう、そんな時間か。会場は、目の前だ。レオックスの8階、イベントスペースが、今日のリリイベの会場だ。
エスカレーターで上がって行くと、スタドリのポスターがあちらこちらに貼ってある。・・・1枚くらい頂いても・・・いや、泥棒はダメだ。私は首を振る。
8階が見えて来た。いよいよだ。エスカレーターを登りきると、目の前に広いスペースが広がる。奥には一段高くなった場所が。あそこがステージか。ステージの周りには、ポスターが所狭しと貼ってある。
「ついに、来たね。」
アヤ師匠が、私の背中をポンッと叩く。
まだ、それほど人は集まっていないようだ。私達は、ステージ正面の最前列に陣取って、イベントの開始を待った。「ケンジくん、興奮して、スタドリに触らないでよ。」
「さ、触りませんよっ!」
ドキドキして来た。いよいよ、セカンドシングルのリリースイベントが始まる。