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VSラメル 4

ー/ー



 勇者サツキパーティは王の間に居た。

「して、サツキよ。報告とは何だ?」

 サツキは片膝を付いて、頭を下げたまま言う。

「はっ、勇者アシノの能力で私の元へ情報が届きました。先程、魔人と戦いになったと」

「ルマで現れたという空を飛ぶ者か?」

「はっ、そのようでございます」

 王はサツキを見据えて言う。

「詳しく話せ」

 貴族の城が占領され、魔人が居ること。アシノづてに聞いた事を、裏の道具に関わること以外、サツキは全て話した。

「アシノとイタヤが苦戦するとはな。勇者として情けない」

 ふんっと王が言って、サツキはイラついたが、態度には出さない。

「そなたは魔人を倒した実績がある。だが……」

 王は渋い顔をして言った。

「そなたは王都を守れ」

「しかし、王!! ここで攻め込んで魔人を倒さねば王都も危険に晒されます」

「それは魔人が王都に攻め込んできた時に戦えばよかろう。王都は魔人の驚異と裏切り者のトチノハの件もある。王都を出ることは認めぬ。下がれサツキ」

 サツキは更に反論をしたかったが、横に居たクサギに目で制されて、王の間を後にした。




 城の一室でサツキは悔しそうに机を叩いた。

「クソッ!! あの王めっ!! 王都さえ良ければ、自分さえ助かれば他の街はどうでも良いのか!?」

「サツキ……」

 クサギは心配そうにサツキを見つめた。カミクガも珍しく笑っていない。

 そんなサツキの前に窓が開いたかのように景色が映し出された。

 あの例の赤い玉を使った時の現象だ。アシノ先輩になんて言おうかと考えていたが。

「こんにちは、勇者サツキ」

 そこに映し出されたのは、元勇者のトチノハだった。

「なっ、勇者トチノハ!?」

「元、だけどね」

「何故あなたがその赤い玉を持っているのですか!?」

「まぁ、ちょっとね」

「使うタイミングも良すぎるし、城のどこかに内通者でもいるって感じ? ストーカーとかヘンタイじゃん」

 クサギは軽口を言っていたが、目は笑っていなかった。

「そんなところだね。ところで勇者サツキ、僕と取り引きをしないか?」

「どういう事ですか?」

 サツキは一応話を聞いてみることにした。何かトチノハの情報を引き出せるかもしれない。

「我々の狙いは愚かなる王の首だ。首がなければ、勝手に魔人を倒しに出た勇者サツキを咎める言葉も話せないだろ?」

「大体わかりました。私達は魔人と戦い、その間にアナタは王の暗殺をすると」

「ご明察。お互いにメリットがあるだろう?」

 にっこりと微笑むトチノハにサツキは言葉を投げつける。

「断ります。バカバカしい」

「どうしてだ? あの王の愚かさ、身勝手さは分かっているだろう?」

「アナタがしようとしている事は、魔人のそれと変わりません」

 そう言われてトチノハは笑う。

「確かに、だが俺はこの国を変えるためだったら魔人にでも何でもなってやるよ」

「話にならない」

「これ以上は無駄かな、まぁ、いずれ分かるさ」

 トチノハの顔が薄く消えていく。クソッとまたテーブルを叩くサツキをクサギとカミクガの2人は見つめる事しか出来なかった。

 サツキから遠距離用の連絡石で通信が入り、アシノは赤い石を壁にぶつけた。

「よう、どうだった?」

「それが……」

 浮かない顔をしてサツキは先程起きたことを話す。

「王は王都を守ることに必死か……、それでトチノハも、この赤い玉を持ってやがったのか」

「はい……」

 サツキは珍しく、暗い顔をし続けている。

「わかった。私達はなるべく人目につかない場所まで逃げ続けようと思う。相手はどこまでも追ってくるだろうしな」

「わかりました、アシノ先輩!! どうかご武運を……」

 話が終わり、出発の時間が来た。今の所追ってきては居ないようだが、時間の問題だろう。

 人目につかず、街や人を巻き込むことのない平原を目指して一行は馬車を走らせる。

 やがて日が暮れて、野営をした。

 空は澄み渡り、満天の星空が見える。

「ロマンチックな星空の下、焚き火を囲んで美女と飯。いやー、最高だね」

 イタヤは現状への皮肉交じりに言って軽く笑った。

「馬鹿言ってんじゃないよ」

「いいえ、イタヤさんの言う通りよ!! 気を張ってばかりじゃ疲れるわ!」

 ルーは蒸留酒を片手にくるくる回ってから空を見上げた。

 その瞬間流れ星がスッと空に線を描く。

「ほら、流れ星!! 星に願いを!!」

 ルーが指さして言うと、ムツヤはハッとする。

「ハーレムが作れますように!! ハーレムが作れますように!! ハーレムが作れますように!!」

 ムツヤは両手を合わせて祈った。アシノはムツヤを引っ叩く。この展開、前も見たなぁとモモは思う。

「ねぇ、みんなの願いって何かしら?」

 突然ルーに聞かれ、皆はうーんと考えた。

「私は、ムツヤ殿の幸せを祈っています」

「モモさん……」

 少しいい感じになった2人に酔っ払っているルーは爆弾発言をする。

「ムツヤっちと結婚じゃなくて?」

 モモは飲んでいた酒を吹き出した。

「な、なにをいってるんでしゅかルーどのぉ!?」

「そうですよルーさん。亜人の人と人間は結婚しないんですよ?」

 ムツヤに言われ、モモはスゥっと真顔になる。全員がムツヤをアホだと思った瞬間だった。

「ぼ、僕は世界中色んな場所を見てみたいです!!」

 気まずくなりかけたのでユモトが言う。

「おっ、良いねぇ。冒険者はそうでなくっちゃな」

 ハッハッハとイタヤは笑う。

「イタヤさん達は?」

 ルーが聞くとそうだなぁとイタヤは考える。

「今の所は、魔人を倒して世界平和って所かな?」

 勇者らしい答えだった。





 本当に、本当に何でも叶うなら、故郷がそのまま戻ってくる事だったが。

 死んだ人間が蘇ることも、失った場所が返ることも無い。無理な願いだ。

 それならば、今生きている人、今ある場所を守りたい。

 そう、考えていた。


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 勇者サツキパーティは王の間に居た。
「して、サツキよ。報告とは何だ?」
 サツキは片膝を付いて、頭を下げたまま言う。
「はっ、勇者アシノの能力で私の元へ情報が届きました。先程、魔人と戦いになったと」
「ルマで現れたという空を飛ぶ者か?」
「はっ、そのようでございます」
 王はサツキを見据えて言う。
「詳しく話せ」
 貴族の城が占領され、魔人が居ること。アシノづてに聞いた事を、裏の道具に関わること以外、サツキは全て話した。
「アシノとイタヤが苦戦するとはな。勇者として情けない」
 ふんっと王が言って、サツキはイラついたが、態度には出さない。
「そなたは魔人を倒した実績がある。だが……」
 王は渋い顔をして言った。
「そなたは王都を守れ」
「しかし、王!! ここで攻め込んで魔人を倒さねば王都も危険に晒されます」
「それは魔人が王都に攻め込んできた時に戦えばよかろう。王都は魔人の驚異と裏切り者のトチノハの件もある。王都を出ることは認めぬ。下がれサツキ」
 サツキは更に反論をしたかったが、横に居たクサギに目で制されて、王の間を後にした。
 城の一室でサツキは悔しそうに机を叩いた。
「クソッ!! あの王めっ!! 王都さえ良ければ、自分さえ助かれば他の街はどうでも良いのか!?」
「サツキ……」
 クサギは心配そうにサツキを見つめた。カミクガも珍しく笑っていない。
 そんなサツキの前に窓が開いたかのように景色が映し出された。
 あの例の赤い玉を使った時の現象だ。アシノ先輩になんて言おうかと考えていたが。
「こんにちは、勇者サツキ」
 そこに映し出されたのは、元勇者のトチノハだった。
「なっ、勇者トチノハ!?」
「元、だけどね」
「何故あなたがその赤い玉を持っているのですか!?」
「まぁ、ちょっとね」
「使うタイミングも良すぎるし、城のどこかに内通者でもいるって感じ? ストーカーとかヘンタイじゃん」
 クサギは軽口を言っていたが、目は笑っていなかった。
「そんなところだね。ところで勇者サツキ、僕と取り引きをしないか?」
「どういう事ですか?」
 サツキは一応話を聞いてみることにした。何かトチノハの情報を引き出せるかもしれない。
「我々の狙いは愚かなる王の首だ。首がなければ、勝手に魔人を倒しに出た勇者サツキを咎める言葉も話せないだろ?」
「大体わかりました。私達は魔人と戦い、その間にアナタは王の暗殺をすると」
「ご明察。お互いにメリットがあるだろう?」
 にっこりと微笑むトチノハにサツキは言葉を投げつける。
「断ります。バカバカしい」
「どうしてだ? あの王の愚かさ、身勝手さは分かっているだろう?」
「アナタがしようとしている事は、魔人のそれと変わりません」
 そう言われてトチノハは笑う。
「確かに、だが俺はこの国を変えるためだったら魔人にでも何でもなってやるよ」
「話にならない」
「これ以上は無駄かな、まぁ、いずれ分かるさ」
 トチノハの顔が薄く消えていく。クソッとまたテーブルを叩くサツキをクサギとカミクガの2人は見つめる事しか出来なかった。
 サツキから遠距離用の連絡石で通信が入り、アシノは赤い石を壁にぶつけた。
「よう、どうだった?」
「それが……」
 浮かない顔をしてサツキは先程起きたことを話す。
「王は王都を守ることに必死か……、それでトチノハも、この赤い玉を持ってやがったのか」
「はい……」
 サツキは珍しく、暗い顔をし続けている。
「わかった。私達はなるべく人目につかない場所まで逃げ続けようと思う。相手はどこまでも追ってくるだろうしな」
「わかりました、アシノ先輩!! どうかご武運を……」
 話が終わり、出発の時間が来た。今の所追ってきては居ないようだが、時間の問題だろう。
 人目につかず、街や人を巻き込むことのない平原を目指して一行は馬車を走らせる。
 やがて日が暮れて、野営をした。
 空は澄み渡り、満天の星空が見える。
「ロマンチックな星空の下、焚き火を囲んで美女と飯。いやー、最高だね」
 イタヤは現状への皮肉交じりに言って軽く笑った。
「馬鹿言ってんじゃないよ」
「いいえ、イタヤさんの言う通りよ!! 気を張ってばかりじゃ疲れるわ!」
 ルーは蒸留酒を片手にくるくる回ってから空を見上げた。
 その瞬間流れ星がスッと空に線を描く。
「ほら、流れ星!! 星に願いを!!」
 ルーが指さして言うと、ムツヤはハッとする。
「ハーレムが作れますように!! ハーレムが作れますように!! ハーレムが作れますように!!」
 ムツヤは両手を合わせて祈った。アシノはムツヤを引っ叩く。この展開、前も見たなぁとモモは思う。
「ねぇ、みんなの願いって何かしら?」
 突然ルーに聞かれ、皆はうーんと考えた。
「私は、ムツヤ殿の幸せを祈っています」
「モモさん……」
 少しいい感じになった2人に酔っ払っているルーは爆弾発言をする。
「ムツヤっちと結婚じゃなくて?」
 モモは飲んでいた酒を吹き出した。
「な、なにをいってるんでしゅかルーどのぉ!?」
「そうですよルーさん。亜人の人と人間は結婚しないんですよ?」
 ムツヤに言われ、モモはスゥっと真顔になる。全員がムツヤをアホだと思った瞬間だった。
「ぼ、僕は世界中色んな場所を見てみたいです!!」
 気まずくなりかけたのでユモトが言う。
「おっ、良いねぇ。冒険者はそうでなくっちゃな」
 ハッハッハとイタヤは笑う。
「イタヤさん達は?」
 ルーが聞くとそうだなぁとイタヤは考える。
「今の所は、魔人を倒して世界平和って所かな?」
 勇者らしい答えだった。
 本当に、本当に何でも叶うなら、故郷がそのまま戻ってくる事だったが。
 死んだ人間が蘇ることも、失った場所が返ることも無い。無理な願いだ。
 それならば、今生きている人、今ある場所を守りたい。
 そう、考えていた。