6 男の嫉妬はNG

ー/ー



 ジェイが大剣を鞘から出して机に置いた。続いてアニーもベルトのバックルからナイフを取り出して机に置く。最後にエリオットもセプターをスノードロップの目の前に置いた。
 
 三つの武器はその刀身と宝珠が青く澄んだ光を放っており、それぞれがそれぞれに呼応するように煌めいていた。

「ほほぉ……」

 その青い光を眺めたスノードロップは感嘆の声を上げて、目をまるくしていた。

「こりゃ……すげえな」

 同じように目を丸くしているエリオットに、ジェイがいつもの朴念仁的に尋ねる。

「何がだ?」

「……おい、言葉遣いに気をつけろ」

「む?」

 エリオットはムッとしてそう言ったが、ジェイは相変わらずの顔を崩さずにその顔を見ていた。

「オウジサマ、そんなことより何がすごいんだよ?」

 空気が読める男、アニーはわざと棒読みでエリオットを呼ぶ。空気は読めても尊称で呼ぶ気はないようだ。

「お前らなあ……」

 エリオットはフルフルと拳を震わせて怒りを表した。

「ウオッホン!」

 が、スノードロップの咳払いでその拳を振り上げることはせず、我慢に我慢を重ねて歯を食いしばりエリオットは二人に説明する。

「だからァ! この三つの武器、全く同じように青く光ってるだろ? てことは、魔力パターンが完全一致してるってことだよ」

「へえー、さすがエリオットは魔法の国の王子様だねえ」

 ミチルが武器を代わる代わる見比べて褒める。するとエリオットはにまぁと笑ってふんぞり返った。

「まあな! これくらいは朝メシ前よ!」

「これくらいは寝起きでもわかれ。調子に乗るでない」

 スノードロップに一蹴されたエリオットは、途端にブスったれる。やはり、精神年齢は15歳で確定か。

「それで、その、まりょくぱたぁん、が同じとはどう言うことなのだ?」

 ちょっとジェイ。その言い方はものすごくあほっぽいけど大丈夫?
 ファンタジーの知識がミチルより乏しい、ファンタジー世界の住人だなんてジェイくらいかもしれない。
 そう言えばこいつはケルベロスも知らなかったな、とミチルは思い出して不安になった。


 
「……ったく、原始人め。いいか、よく聞けよ。お前(ジェイ)の大剣と、金髪(アニー)のナイフ、それからおれのセプターにはな、同じ人間由来の魔力が流れてるってことなんだよ」

「まさか……ミチル?」

 アニーがハッとして聞くと、エリオットは少し満足そうに頷いた。

「そ。この三つの武器は元の製造過程から出身国から全てバラバラ。それなのに、同一の魔力が流れてる。武器達(こいつら)の共通点は何だ? ミチルが触ったこと、ただひとつだ。ゆえに、武器達(こいつら)が青く光って強力になったのはミチルが原因って事だろ」

「……? だから最初からそう言っているではないか。私の剣はミチルが再生してくれたのだと」

 ──やべ! このぽんこつはなんてK・Y(空気読めない)なことを言ってくれたんだ!
 お前がそう思ってんのは感覚的なことでしょうが!
 
 ミチルはハラハラして言われた先のエリオットを窺う。
 イケメン王子様の顔は、美しく歪んでいた。

 ぷっちーん!

「だあぁあ、かぁあ、るぁああッ!! おめーが理由もなくそう思ってたことを、このおれが論理的に説明してやったんだろうがああああッ!!」

「エリオットぉ! 落ち着いてえ!」

 こんな小さな荒屋(あばらや)で暴れたら崩れる!
 ミチルはとっさにエリオットに抱きついて暴力沙汰になるのを止めようとした。


 
「どうどう! エリオットは良い子!」

「キューン♡」

 するとエリオットは途端に大人しくなって頬を染め、ミチルを抱きしめ返す。

「ウン、ワカッタ。おれ、イイコ……♡」

 すりすりいぃ♡

「にゃあああ……!」

 エリオットの柔らかい髪と頬がミチルを直撃!

「ふざけんなよ、お前ェ!!」

 咄嗟にアニーがミチルを引っぺがす。エリオットは手持ち無沙汰になった手をワキワキさせてアニーを睨んだ。

「テメエ、何してんだ、コラ!」

「俺の目の前でミチルにセクハラぶちかますとはいい度胸だ、コラァ!」

 ギャル男VS元マフィア!
 このままでは血で血を洗う抗争が起きてしまう!

「アァ!? 最初にミチルに抱きついて押しつけたのはお前らだろうがあ!」

 ナニを押しつけたって言うんだ、このエロガキは!

「うっ……胸が焦げる……ッ!」

 ギャアギャア騒ぐ二人の横で、ジェイが冷や汗をかきながら胸を摩り始めた。


 
ウェルカム(おいで私の)モスロック(まりもちゃん)×3!」

 業を煮やしたスノードロップは自分の杖を一振り二振り三振り。するとどこからか苔の生えた大岩が三つ、イケメン三人の上にドスンと落ちた。

「ふぎゃあ!」
「ぐえぇッ」
「む、む……」

 大岩に体を縫いつけられた男達は、およそイケメンに似つかわしくないヒキガエルのような声を出して潰される。

「騒ぐな! 男の嫉妬など見苦しいものを儂に見せおって! 反省せい!」

「おい、これどけろ! クソ魔ジジイ!」

 魔法で出したものなので耐性があるのか、エリオットだけは口がきけていた。

「しばらくそうしておれ。やれやれこれで静かに武器を眺められるわい」

「にゅー……ッ!!」

 悔しがるエリオットの声を、ミチルはなんだか可哀想になりながら聞いていた。だが、ジェイとアニーが沈黙しているのを見ると、変に抗議して第四のマリモを出されてはたまらないので、ミチルは黙って座って見守る。
 
 スノードロップは、大剣、ナイフ、セプターを順番にしげしげと見ながら唸った。

「むぅ、これは……」

 ミチルの魔力(?)は果たして解明されるのか──


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 ジェイが大剣を鞘から出して机に置いた。続いてアニーもベルトのバックルからナイフを取り出して机に置く。最後にエリオットもセプターをスノードロップの目の前に置いた。
 三つの武器はその刀身と宝珠が青く澄んだ光を放っており、それぞれがそれぞれに呼応するように煌めいていた。
「ほほぉ……」
 その青い光を眺めたスノードロップは感嘆の声を上げて、目をまるくしていた。
「こりゃ……すげえな」
 同じように目を丸くしているエリオットに、ジェイがいつもの朴念仁的に尋ねる。
「何がだ?」
「……おい、言葉遣いに気をつけろ」
「む?」
 エリオットはムッとしてそう言ったが、ジェイは相変わらずの顔を崩さずにその顔を見ていた。
「オウジサマ、そんなことより何がすごいんだよ?」
 空気が読める男、アニーはわざと棒読みでエリオットを呼ぶ。空気は読めても尊称で呼ぶ気はないようだ。
「お前らなあ……」
 エリオットはフルフルと拳を震わせて怒りを表した。
「ウオッホン!」
 が、スノードロップの咳払いでその拳を振り上げることはせず、我慢に我慢を重ねて歯を食いしばりエリオットは二人に説明する。
「だからァ! この三つの武器、全く同じように青く光ってるだろ? てことは、魔力パターンが完全一致してるってことだよ」
「へえー、さすがエリオットは魔法の国の王子様だねえ」
 ミチルが武器を代わる代わる見比べて褒める。するとエリオットはにまぁと笑ってふんぞり返った。
「まあな! これくらいは朝メシ前よ!」
「これくらいは寝起きでもわかれ。調子に乗るでない」
 スノードロップに一蹴されたエリオットは、途端にブスったれる。やはり、精神年齢は15歳で確定か。
「それで、その、まりょくぱたぁん、が同じとはどう言うことなのだ?」
 ちょっとジェイ。その言い方はものすごくあほっぽいけど大丈夫?
 ファンタジーの知識がミチルより乏しい、ファンタジー世界の住人だなんてジェイくらいかもしれない。
 そう言えばこいつはケルベロスも知らなかったな、とミチルは思い出して不安になった。
「……ったく、原始人め。いいか、よく聞けよ。|お前《ジェイ》の大剣と、|金髪《アニー》のナイフ、それからおれのセプターにはな、同じ人間由来の魔力が流れてるってことなんだよ」
「まさか……ミチル?」
 アニーがハッとして聞くと、エリオットは少し満足そうに頷いた。
「そ。この三つの武器は元の製造過程から出身国から全てバラバラ。それなのに、同一の魔力が流れてる。|武器達《こいつら》の共通点は何だ? ミチルが触ったこと、ただひとつだ。ゆえに、|武器達《こいつら》が青く光って強力になったのはミチルが原因って事だろ」
「……? だから最初からそう言っているではないか。私の剣はミチルが再生してくれたのだと」
 ──やべ! このぽんこつはなんて|K・Y《空気読めない》なことを言ってくれたんだ!
 お前がそう思ってんのは感覚的なことでしょうが!
 ミチルはハラハラして言われた先のエリオットを窺う。
 イケメン王子様の顔は、美しく歪んでいた。
 ぷっちーん!
「だあぁあ、かぁあ、るぁああッ!! おめーが理由もなくそう思ってたことを、このおれが論理的に説明してやったんだろうがああああッ!!」
「エリオットぉ! 落ち着いてえ!」
 こんな小さな|荒屋《あばらや》で暴れたら崩れる!
 ミチルはとっさにエリオットに抱きついて暴力沙汰になるのを止めようとした。
「どうどう! エリオットは良い子!」
「キューン♡」
 するとエリオットは途端に大人しくなって頬を染め、ミチルを抱きしめ返す。
「ウン、ワカッタ。おれ、イイコ……♡」
 すりすりいぃ♡
「にゃあああ……!」
 エリオットの柔らかい髪と頬がミチルを直撃!
「ふざけんなよ、お前ェ!!」
 咄嗟にアニーがミチルを引っぺがす。エリオットは手持ち無沙汰になった手をワキワキさせてアニーを睨んだ。
「テメエ、何してんだ、コラ!」
「俺の目の前でミチルにセクハラぶちかますとはいい度胸だ、コラァ!」
 ギャル男VS元マフィア!
 このままでは血で血を洗う抗争が起きてしまう!
「アァ!? 最初にミチルに抱きついて押しつけたのはお前らだろうがあ!」
 ナニを押しつけたって言うんだ、このエロガキは!
「うっ……胸が焦げる……ッ!」
 ギャアギャア騒ぐ二人の横で、ジェイが冷や汗をかきながら胸を摩り始めた。
「|ウェルカム《おいで私の》・|モスロック《まりもちゃん》×3!」
 業を煮やしたスノードロップは自分の杖を一振り二振り三振り。するとどこからか苔の生えた大岩が三つ、イケメン三人の上にドスンと落ちた。
「ふぎゃあ!」
「ぐえぇッ」
「む、む……」
 大岩に体を縫いつけられた男達は、およそイケメンに似つかわしくないヒキガエルのような声を出して潰される。
「騒ぐな! 男の嫉妬など見苦しいものを儂に見せおって! 反省せい!」
「おい、これどけろ! クソ魔ジジイ!」
 魔法で出したものなので耐性があるのか、エリオットだけは口がきけていた。
「しばらくそうしておれ。やれやれこれで静かに武器を眺められるわい」
「にゅー……ッ!!」
 悔しがるエリオットの声を、ミチルはなんだか可哀想になりながら聞いていた。だが、ジェイとアニーが沈黙しているのを見ると、変に抗議して第四のマリモを出されてはたまらないので、ミチルは黙って座って見守る。
 スノードロップは、大剣、ナイフ、セプターを順番にしげしげと見ながら唸った。
「むぅ、これは……」
 ミチルの魔力(?)は果たして解明されるのか──