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第1章〜広報部のある企画について〜④

ー/ー



「なかなか、面白そうな企画ね。今回、私は、基本的に企画に関わるつもりはつもりは無いから、貴方たちの好きなようにように進めてみて。ただ、オカルトのことに関して言えば、知り合いに、その方面の専門家がいるから、良ければ、彼女を訪ねてみて」

 それまで、だまって壮馬のプレゼンテーションを聞いていた鳳花先輩は、そうそう言ったあと、スマホを操作して、放送室の大型ディスプレイに、ブラウザのアプリを投影させる。

 モニターには、市内にある古美術品を扱う店舗のホームページが表示された。

亜慈夢(あじむ)古美術堂」

 と店舗名が記されたページには、店で取り扱いをしているしている骨董品と思われる品々と並んで、古文書のような巻き物などの画像も掲載されていた。

 ホームページには、「古い書物の鑑定もお引き受けします」と書かれている。

「ここの店主の女性は、まだお若いけれど、古文書や地域に古くから伝わる伝承などにも詳しいから、協力してもらうと良いわ。必要なら、私から『後輩がお世話になります』と伝えておくから」

 さすがは、鳳花部長だ。彼女がオカルト関係に詳しいというイメージは無かったが、そうした方面に伝手(つて)があるという事実が、この先輩の人脈の広さを示している。

 学外にも協力者を得られるということに心強さを覚えながら、なにかあれば、鳳花先輩の人脈に頼ることも考えておこうと胸に刻む。

 そんなことを考えていると、「あの〜、確認しておきたいことがあるんですけど……」と、発言を求めるメンバーがいた。

「なにかな、佐倉さん?」

 プレゼンを行っていた壮馬が、司会者のように質問者にたずね返す。

「今回は、ホラースポットを巡る企画になると思いますし、実際に、夜間に現場で撮影することもありますよね? その時は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と思って……部外者のヒトたちを夜間の撮影に参加してもらうのは、危険ですし……他にも、ホラースポットであるのをいいことに、撮影の目的を無視して、『キャ〜、こわ〜い!』なんて、甘えた声で、()()()()()に抱き着こうと考えていそうなヒトにも心当たりがあるので」

 小さく手を上げていた桃華は、冷静な口調ながらも、やや皮肉っぽさを感じさせる言い方で、()()()()()に視線を送りながら発言する。

「キャ〜、こわ〜い!」の部分は、声帯模写(モノマネ)が得意な桃華らしく、四月に転校してきたカリスマ女子の声色に似せたモノになっていた。

 その下級生部員の発言にただならぬものを感じ取ったのは、オレだけでは無かったようで、壮馬も苦笑しながら、

「その点は、協力者の人に意見を尊重したいと思っているんだけど……どうだろう、蒸し暑い夜間の撮影になることも多いと思うけど、白草さんは、やっぱり、現場での臨場感を大事にしたい? それとも、情報発信に撤する方が良い?」

と、シロにたずねる。

 広報部の部外者ということであれば、文芸部のメンバーも該当するわけだが、誰も、桃華が指摘した相手がシロ以外のメンバーだとは思っていないようだ。

 プレゼンターにたずねられたシロは、「そうだな〜」と、つぶやいたあと、

「配信者として言わせてもらえば、現場でのリアリティにこだわった方が、再生数が伸びることは間違いないから、自宅で撮影されたものを見てるだけなんてことはあり得ないかな〜」

と、桃華に視線を送りながら答える。
 
 そして、「そ・れ・に……」と言いながら、座っていたパイプ椅子から立ち上がったかと思うと、

「『キャ〜、こわ〜い!』なんて言って抱きつかなくても、優しくて頼りになる男子が、わたしのことを守ってくれるもんね?」

と言いながら、オレの背中から抱きついてきた。

 いまは、夏休み前で男女ともに、とっくに夏服に衣替えしている。
 見た目にも涼しさを感じさせる夏服の生地をとおして、彼女の胸部がオレの肩あたりに触れて……。

 しかし、その至福の感触を十分に堪能しきる前に、

「いい加減にして下さい! なんで、いきなり抱きついてるんですか? 昼間から、はしたない! すぐに離れてください!」

と、桃華の非難の声が飛ぶ。

「え〜、こうやって、ワイワイと楽しく撮影する方が、視聴者のみんなも楽しんでくれると思うんだけどな〜。ねぇ、クロもそう思うよね?」

「いや、オレは、そんな……」

 と、急な話しの展開について行けず、言葉を濁していると、他のメンバーから、「あの〜」と、声が上がる。

「ラブコメ漫画みたいなノリは、もう良いですから、そろそろ本題に戻ってもらって良いですか? せっかくメンバーが集まっているんだし、ホラースポットや怪談の情報収集をしませんか?」

 そう提案したのは、文芸部の部員の今村なつみだった。

「文芸部としては、怪談だか都市伝説だかの架空のストーリーを考えるなら、少しでも早くネタを集めたいですけど? そうだよね、部長?」

 発言者の彼女は、そう言って、文芸部の代表者に同意を求める。

「えぇ、たしかに、そうですね」

 苦笑を浮かべながら答える天竹葵(あまたけあおい)の言葉に反応した壮馬は、

「うん、今村さんの言うとおりだ」

と言ってから、

「それじゃ、みんなが知ってる近隣の怪談やホラースポットを教えてくれないかな?」

と、メンバーを見渡して質問を行い、場を仕切り直した。


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「なかなか、面白そうな企画ね。今回、私は、基本的に企画に関わるつもりはつもりは無いから、貴方たちの好きなようにように進めてみて。ただ、オカルトのことに関して言えば、知り合いに、その方面の専門家がいるから、良ければ、彼女を訪ねてみて」
 それまで、だまって壮馬のプレゼンテーションを聞いていた鳳花先輩は、そうそう言ったあと、スマホを操作して、放送室の大型ディスプレイに、ブラウザのアプリを投影させる。
 モニターには、市内にある古美術品を扱う店舗のホームページが表示された。
「|亜慈夢《あじむ》古美術堂」
 と店舗名が記されたページには、店で取り扱いをしているしている骨董品と思われる品々と並んで、古文書のような巻き物などの画像も掲載されていた。
 ホームページには、「古い書物の鑑定もお引き受けします」と書かれている。
「ここの店主の女性は、まだお若いけれど、古文書や地域に古くから伝わる伝承などにも詳しいから、協力してもらうと良いわ。必要なら、私から『後輩がお世話になります』と伝えておくから」
 さすがは、鳳花部長だ。彼女がオカルト関係に詳しいというイメージは無かったが、そうした方面に|伝手《つて》があるという事実が、この先輩の人脈の広さを示している。
 学外にも協力者を得られるということに心強さを覚えながら、なにかあれば、鳳花先輩の人脈に頼ることも考えておこうと胸に刻む。
 そんなことを考えていると、「あの〜、確認しておきたいことがあるんですけど……」と、発言を求めるメンバーがいた。
「なにかな、佐倉さん?」
 プレゼンを行っていた壮馬が、司会者のように質問者にたずね返す。
「今回は、ホラースポットを巡る企画になると思いますし、実際に、夜間に現場で撮影することもありますよね? その時は、|広《・》|報《・》|部《・》|以《・》|外《・》|の《・》|人《・》|た《・》|ち《・》|の《・》|参《・》|加《・》|は《・》、|遠《・》|慮《・》|し《・》|て《・》|も《・》|ら《・》|っ《・》|た《・》|方《・》|が《・》|良《・》|い《・》|ん《・》|じ《・》|ゃ《・》|な《・》|い《・》|か《・》、と思って……部外者のヒトたちを夜間の撮影に参加してもらうのは、危険ですし……他にも、ホラースポットであるのをいいことに、撮影の目的を無視して、『キャ〜、こわ〜い!』なんて、甘えた声で、|特《・》|定《・》|の《・》|男《・》|子《・》に抱き着こうと考えていそうなヒトにも心当たりがあるので」
 小さく手を上げていた桃華は、冷静な口調ながらも、やや皮肉っぽさを感じさせる言い方で、|特《・》|定《・》|の《・》|女《・》|子《・》に視線を送りながら発言する。
「キャ〜、こわ〜い!」の部分は、|声帯模写《モノマネ》が得意な桃華らしく、四月に転校してきたカリスマ女子の声色に似せたモノになっていた。
 その下級生部員の発言にただならぬものを感じ取ったのは、オレだけでは無かったようで、壮馬も苦笑しながら、
「その点は、協力者の人に意見を尊重したいと思っているんだけど……どうだろう、蒸し暑い夜間の撮影になることも多いと思うけど、白草さんは、やっぱり、現場での臨場感を大事にしたい? それとも、情報発信に撤する方が良い?」
と、シロにたずねる。
 広報部の部外者ということであれば、文芸部のメンバーも該当するわけだが、誰も、桃華が指摘した相手がシロ以外のメンバーだとは思っていないようだ。
 プレゼンターにたずねられたシロは、「そうだな〜」と、つぶやいたあと、
「配信者として言わせてもらえば、現場でのリアリティにこだわった方が、再生数が伸びることは間違いないから、自宅で撮影されたものを見てるだけなんてことはあり得ないかな〜」
と、桃華に視線を送りながら答える。
 そして、「そ・れ・に……」と言いながら、座っていたパイプ椅子から立ち上がったかと思うと、
「『キャ〜、こわ〜い!』なんて言って抱きつかなくても、優しくて頼りになる男子が、わたしのことを守ってくれるもんね?」
と言いながら、オレの背中から抱きついてきた。
 いまは、夏休み前で男女ともに、とっくに夏服に衣替えしている。
 見た目にも涼しさを感じさせる夏服の生地をとおして、彼女の胸部がオレの肩あたりに触れて……。
 しかし、その至福の感触を十分に堪能しきる前に、
「いい加減にして下さい! なんで、いきなり抱きついてるんですか? 昼間から、はしたない! すぐに離れてください!」
と、桃華の非難の声が飛ぶ。
「え〜、こうやって、ワイワイと楽しく撮影する方が、視聴者のみんなも楽しんでくれると思うんだけどな〜。ねぇ、クロもそう思うよね?」
「いや、オレは、そんな……」
 と、急な話しの展開について行けず、言葉を濁していると、他のメンバーから、「あの〜」と、声が上がる。
「ラブコメ漫画みたいなノリは、もう良いですから、そろそろ本題に戻ってもらって良いですか? せっかくメンバーが集まっているんだし、ホラースポットや怪談の情報収集をしませんか?」
 そう提案したのは、文芸部の部員の今村なつみだった。
「文芸部としては、怪談だか都市伝説だかの架空のストーリーを考えるなら、少しでも早くネタを集めたいですけど? そうだよね、部長?」
 発言者の彼女は、そう言って、文芸部の代表者に同意を求める。
「えぇ、たしかに、そうですね」
 苦笑を浮かべながら答える|天竹葵《あまたけあおい》の言葉に反応した壮馬は、
「うん、今村さんの言うとおりだ」
と言ってから、
「それじゃ、みんなが知ってる近隣の怪談やホラースポットを教えてくれないかな?」
と、メンバーを見渡して質問を行い、場を仕切り直した。