回想~20年前~
ー/ー 二十年前のある夏の日。
小学四年生だった僕は鈴虫を探していた。
友達の家で飼われていた鈴虫の『リーン、リーン』という涼しげな鳴き声に魅せられ、是非自分の部屋で聞きたいと思っていたのだ。
まず夏休みの小学校の花壇を探した。
生い茂る草を手で払い、飛び出す虫を捕まえた。バッタやコオロギなどは飛び出したが、大きな羽で綺麗な音色を奏でる鈴虫はいなかった。
次に小学校の近くにあるガレージや公園で同じように探した。
夏の日差しが照りつける中、大抵の同級生は家でテレビゲームをしていたが、僕はひたすら鈴虫を探し続けた。
時間の経過を忘れて探し続けるうちに、夏の日差しがオレンジ色の夕陽へ変わっていった。僕は諦め、帰路につこうとした。
その時だった。
「リーン、リーン」
探し求めていた涼しげな鳴き声が聞こえてきたのだ。
僕は、耳をすましてその音の聞こえる方へ向かった。ある庭の草むらの一角から音は聞こえた。
その一角へそっと近づいてしゃがみこみ目を凝らすと、
「リーン、リーン」
小さな鈴虫が大きな羽を広げて震わせ、音色を奏でていた。僕は、小さな体で懸命に周囲に音を響かせているその鈴虫をそっと両手ですくい虫カゴに入れた。
「やった!」
これからは、虫カゴを机の上に置き、涼しい音色を聞きながら宿題をすることができる!
探し求めていたものに出会えた僕は、胸を弾ませながら帰ろうとした。
小学四年生だった僕は鈴虫を探していた。
友達の家で飼われていた鈴虫の『リーン、リーン』という涼しげな鳴き声に魅せられ、是非自分の部屋で聞きたいと思っていたのだ。
まず夏休みの小学校の花壇を探した。
生い茂る草を手で払い、飛び出す虫を捕まえた。バッタやコオロギなどは飛び出したが、大きな羽で綺麗な音色を奏でる鈴虫はいなかった。
次に小学校の近くにあるガレージや公園で同じように探した。
夏の日差しが照りつける中、大抵の同級生は家でテレビゲームをしていたが、僕はひたすら鈴虫を探し続けた。
時間の経過を忘れて探し続けるうちに、夏の日差しがオレンジ色の夕陽へ変わっていった。僕は諦め、帰路につこうとした。
その時だった。
「リーン、リーン」
探し求めていた涼しげな鳴き声が聞こえてきたのだ。
僕は、耳をすましてその音の聞こえる方へ向かった。ある庭の草むらの一角から音は聞こえた。
その一角へそっと近づいてしゃがみこみ目を凝らすと、
「リーン、リーン」
小さな鈴虫が大きな羽を広げて震わせ、音色を奏でていた。僕は、小さな体で懸命に周囲に音を響かせているその鈴虫をそっと両手ですくい虫カゴに入れた。
「やった!」
これからは、虫カゴを机の上に置き、涼しい音色を聞きながら宿題をすることができる!
探し求めていたものに出会えた僕は、胸を弾ませながら帰ろうとした。
庭を出ようとした、まさにその時だった。
「私の家の庭で、何してるの?」
突如、背後から掛けられた声に振り返った。
振り向いた僕は、長い睫毛をした瞳を不思議そうに細めている、クラスメイトの千衣ちゃんと目が合った。彼女は教室ではいつも静かに本を読んでいるおとなしい子だ。
「ごめん、千衣ちゃんの家だと知らなくて。鈴虫を採っていたんだ」
虫カゴを見せると、千衣ちゃんは悲しそうに眉をぐっと下げた。
「鈴虫の命は短いんだよ。そんな小さいカゴの中に入れられて、可哀想。逃がしてあげて」
予想外の反応にびっくりして虫カゴを見ると、鈴虫は小さな手で必死に虫カゴの壁をさすっていた。
僕は、すぐに鈴虫を青々とした草の茂る庭に逃がした。
「ごめん、僕、ただ綺麗な鳴き声が聞きたくて。鈴虫のこと、全然考えてなかった」
すると、千衣ちゃんの眉はふんわりと柔らかくなって、にっこりと優しく笑った。
「私こそ、ごめんね。鈴虫なんて、なかなかいないから、捕まえるの大変なのに」
そして、
「ちょっと待ってて」
と言い、家の中へ入って行った。
しばらくして戻ってきた千衣ちゃんは、手に風鈴を持っていた。
「鈴虫の代わりになるかどうか分からないけど、あげる。私の宝物の一つだったから大事にしてね」
それは、水色の小さな風鈴で、風に揺れるごとに『チリーン』と涼しい音色を奏でた。それ以来、その風鈴は僕の部屋で音色を奏で続けたのだった。
「私の家の庭で、何してるの?」
突如、背後から掛けられた声に振り返った。
振り向いた僕は、長い睫毛をした瞳を不思議そうに細めている、クラスメイトの千衣ちゃんと目が合った。彼女は教室ではいつも静かに本を読んでいるおとなしい子だ。
「ごめん、千衣ちゃんの家だと知らなくて。鈴虫を採っていたんだ」
虫カゴを見せると、千衣ちゃんは悲しそうに眉をぐっと下げた。
「鈴虫の命は短いんだよ。そんな小さいカゴの中に入れられて、可哀想。逃がしてあげて」
予想外の反応にびっくりして虫カゴを見ると、鈴虫は小さな手で必死に虫カゴの壁をさすっていた。
僕は、すぐに鈴虫を青々とした草の茂る庭に逃がした。
「ごめん、僕、ただ綺麗な鳴き声が聞きたくて。鈴虫のこと、全然考えてなかった」
すると、千衣ちゃんの眉はふんわりと柔らかくなって、にっこりと優しく笑った。
「私こそ、ごめんね。鈴虫なんて、なかなかいないから、捕まえるの大変なのに」
そして、
「ちょっと待ってて」
と言い、家の中へ入って行った。
しばらくして戻ってきた千衣ちゃんは、手に風鈴を持っていた。
「鈴虫の代わりになるかどうか分からないけど、あげる。私の宝物の一つだったから大事にしてね」
それは、水色の小さな風鈴で、風に揺れるごとに『チリーン』と涼しい音色を奏でた。それ以来、その風鈴は僕の部屋で音色を奏で続けたのだった。
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