第8話 青年は装備を失って魔法を獲得した
ー/ー
コマンド選択は今まで通り
「たたかう」
「ぼうぎょ」
「どうぐ」
「にげる」
の四択だが、どう考えても「たたかう」以外の選択肢はない。
レイトは「たたかう」を選択する。
イニシアチブはどうやらレイトにあったようだ。
剣を振り、斬りつけるSEが鳴る。
メイジのくせにHPが高いようだ。
メイジのターン。
呪文を唱えるとスライムが召喚された。
グラフィックイメージが違うのは、第一階層とは違う種のためだろうか?
次のターン、またもやイニシアチブをとったレイトはメイジを攻撃する。
まだメイジは倒れない。
敵側のターン。
メイジがファイヤーボールを放ってくる。
レイトは体が焼けるように熱くなったのを感じる。
「いや、実際焼かれてるのか」
あ・確かに。
それにしても冷静すぎやしないかね? レイトくん。
スライムの攻撃は、なんと体にまとわりつくだった。
「あ・やば。これD&D系のスライムだ」
レイトが焦るのも無理はない。
CG特に二十世紀のRPGにおけるスライムは多少物理攻撃が効きにくい特性を持っていたとしても、基本的には殴り倒せるタイプのモンスターであった。
彼がこれまで倒してきたスライムも、そのスタイルを踏襲したようなスライムだった。
ところが、今彼の体にまとわりついているらしい(レイトの視覚情報的には突然消えて、感覚情報的にはまとわりつかれている)スライムは、これまでのものとはどう考えても違う挙動を見せている。
3ターン目、レイトは試しに攻撃対象としてスライムを選択する。
SEは鳴ったが手応えがない。
(あ、やっぱり)
やはりどうやら物理攻撃が効かないタイプのスライムのようだ。
(困ったな……どうやって戦えばいいんだ?)
敵のターン。
メイジはまたファイヤーボールを放つ。
全身を焼かれるレイトの嗅覚が、おそらくスライムが焼けたのだろう匂いを嗅ぎ分けた。
(えー。あー……このためなのかぁ)
4ターン目、レイトは「ぼうぎょ」を選択する。
その後、レイトは全身を焼かれる痛みに耐え、時折回復薬でHPを回復しながらひたすらスライムが燃え尽きるのを待った。
10ターンを超えた頃、装備していた鋭利な鉄の剣、鋼鉄の鎧、鉄の盾、青銅の兜が次々とスライムに溶かされ、後半はずっと「どうぐ」から「つかう」「回復薬」を選択し続け、14ターン目にようやくスライムが焼け尽きた。
15ターン目、武器のなくなったレイトは「どうぐ」から「そうび」「鉄の剣」を選ぶ。
16ターン目は再び回復。
17ターン目にようやく「たたかう」が選択できる状況になった。
「これで倒れろ!」
イニシアチブが取れたレイトの攻撃は会心の一撃だったのか、それとももともと瀕死レベルのダメージだったのか? メイジを倒すことに成功した。
「大丈夫ですか?」
戦闘が終わったあと、王女クリスティーンが声をかけてくれた。
「大丈夫じゃない」
実際、装備品は予備の剣以外全てをスライムに溶かされてしまったし、回復薬は残り6つしかない。
「『ちゆのまほう』をかけましょうか?」
「え? 魔法使えるの?」
「はい。多少は」
それを早く言って欲しかったと思わなくもないレイトであった。
メイジの倒れたあと、目の前には宝箱が現れた。
もともとそこにあったのだろうか?
レイトの視覚情報はワイヤーフレームの3Dダンジョンで、敵と出会うと、そこに敵キャラが現れるという現在の状況である。
「もうここまでくればどうでもいいか」と、融通無碍な主人公らしい割り切り方で宝箱を開ける。
中には魔法の巻物と回復薬が3つ、魔法のランタンが入っていた。
(「宝箱に入っていた」は正しいのだろうか?)
視覚情報と肌感覚が微妙にずれている感じにもやもやするレイトだったが、こちらもそういうもんだと割り切ることにする。
さて、戦利品であるスクロールを「つかう」ことができるようだと判ったレイトは、物の試しと使ってみることにした。
するとスクロールがなくなって、突如ファイヤーボールの魔法が使える気になった。
「あー……うん。使えるんだろうね、きっと」
レイトは、第三階層に上がることにした。
メイジのいた部屋の奥にドアがあり、その先の通路の突き当たりが階段になっていた。
三層目のダンジョンは二層目よりさらに表現力が上がっていた。
のぺっと塗りつぶされただけだったダンジョンは、小口積みのレンガ造りに、ドアは木製で鉄枠、ドアノブまでついている。
防具もなく、鉄の剣一本で第三層を歩く心細さの中、レイトが最初に出会ったモンスターはゾンビだった。
256色表示のなかなかにリアルなゾンビである。
(うげぇ……せめてさっきまでみたいにスケルトンがよかったんだけどなぁ)
階調が上がったことで表現力に幅ができたから白ベースのスケルトンではなく、中間色を生かしたゾンビが出てきたんだろう。グラフィックが二枚用意されているのか、交互の手足を動かしている。
(そんなところ凝らなくてもいいのに)
ホントだよ。
戦闘にはいると、こちらでも新しい変化があった。
「私も戦います」
と、クリスティーンが戦闘に参加するようになったのだ。
(第二階層ボスとの戦闘の後の魔法を使ったのがフラグイベントか何かだったのかな?)
もっとも、彼女の選択肢はレイトと違って
「まほう」
「ぼうぎょ」
の二択しかない。
しかも、魔法はさっきの「ちゆのまほう」しかない。
(結局、戦うのは俺だけかよ)
まぁ、愚痴っていても仕方ない。
レイトはクリスティーンに「ぼうぎょ」させてただひたすらに敵を殴り倒す。
ゾンビの戦利品は革の鎧だった。
(あぁ……着たくねぇ。けど、ないよりましか?)
腐った死体が着ていた鎧であるという心理的抵抗感を感じつつも、鎧のない状態でのダメージの大きさに背に腹は変えられず、その後もゾンビ、ゴブリンから武器と防具を剥ぎ取っては少しずつ装備を整えていくレイトであった。
三層目のモンスターはゾンビ、ゴブリンの他にスパイダー、メイジ(二層のメイジより若干弱い)。
それらを倒していくことで、
鋼鉄の剣
鉄の鎧
鋼鉄の盾
鉄の兜
まで装備を充実させることができた。
メイジを倒すことでファイヤーボール以外にアイスニードル(氷の針をたくさん相手にぶつける)とフリーズ(相手を動けなくする)の魔法が使えるようになった。
この階のメイジは氷系魔法が専門のようだ。
魔法が使えるようになったのはいいけれど、魔法を使うためにはどうやらMP的なものが必要になるようで、これが枯渇すると力が入らなくなる。
メイジはこのMP回復のための「魔法回復薬」を持っていた。
大きな背負いカバンの中には、
力の石
知恵の石
守りの石
加護の十字架
回復薬11
魔法回復薬3
解毒薬28
おにぎり8
金貨7,340GP
鉄の剣
が入っている。
「それはそうと……」
レイトは、頭をかきながらクリスティーンに話しかける。
「行けるところがなくなっちゃいましたねぇ」
「そうね。手詰まりってことかしら?」
「いやぁ、たぶん隠し扉を見つけるんだと思
うんですけど、どこにあるものかと……」
「でしたら、あそこではないかしら?」
「あそこ?」
ひ、卑猥なとこじゃないからねっ!!
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コマンド選択は今まで通り
「たたかう」
「ぼうぎょ」
「どうぐ」
「にげる」
の四択だが、どう考えても「たたかう」以外の選択肢はない。
レイトは「たたかう」を選択する。
イニシアチブはどうやらレイトにあったようだ。
剣を振り、斬りつけるSEが鳴る。
メイジのくせにHPが高いようだ。
メイジのターン。
呪文を唱えるとスライムが召喚された。
グラフィックイメージが違うのは、第一階層とは違う種のためだろうか?
次のターン、またもやイニシアチブをとったレイトはメイジを攻撃する。
まだメイジは倒れない。
敵側のターン。
メイジがファイヤーボールを放ってくる。
レイトは体が焼けるように熱くなったのを感じる。
「いや、実際焼かれてるのか」
あ・確かに。
それにしても冷静すぎやしないかね? レイトくん。
スライムの攻撃は、なんと体にまとわりつくだった。
「あ・やば。これ|D《ダンジョンズ》|&《アンド》|D《ドラゴンズ》系のスライムだ」
レイトが焦るのも無理はない。
|C《コンピューター》|G《ゲーム》特に二十世紀の|R《ロール》|P《プレイング》|G《ゲーム》におけるスライムは多少物理攻撃が効きにくい特性を持っていたとしても、基本的には殴り倒せるタイプのモンスターであった。
彼がこれまで倒してきたスライムも、そのスタイルを踏襲したようなスライムだった。
ところが、今彼の体にまとわりついているらしい(レイトの視覚情報的には突然消えて、感覚情報的にはまとわりつかれている)スライムは、これまでのものとはどう考えても違う挙動を見せている。
3ターン目、レイトは試しに攻撃対象としてスライムを選択する。
SEは鳴ったが手応えがない。
(あ、やっぱり)
やはりどうやら物理攻撃が効かないタイプのスライムのようだ。
(困ったな……どうやって戦えばいいんだ?)
敵のターン。
メイジはまたファイヤーボールを放つ。
全身を焼かれるレイトの嗅覚が、おそらくスライムが焼けたのだろう匂いを嗅ぎ分けた。
(えー。あー……このためなのかぁ)
4ターン目、レイトは「ぼうぎょ」を選択する。
その後、レイトは全身を焼かれる痛みに耐え、時折回復薬でHPを回復しながらひたすらスライムが燃え尽きるのを待った。
10ターンを超えた頃、装備していた鋭利な鉄の剣、鋼鉄の鎧、鉄の盾、青銅の兜が次々とスライムに溶かされ、後半はずっと「どうぐ」から「つかう」「回復薬」を選択し続け、14ターン目にようやくスライムが焼け尽きた。
15ターン目、武器のなくなったレイトは「どうぐ」から「そうび」「鉄の剣」を選ぶ。
16ターン目は再び回復。
17ターン目にようやく「たたかう」が選択できる状況になった。
「これで倒れろ!」
イニシアチブが取れたレイトの攻撃は会心の一撃だったのか、それとももともと瀕死レベルのダメージだったのか? メイジを倒すことに成功した。
「大丈夫ですか?」
戦闘が終わったあと、王女クリスティーンが声をかけてくれた。
「大丈夫じゃない」
実際、装備品は予備の剣以外全てをスライムに溶かされてしまったし、回復薬は残り6つしかない。
「『ちゆのまほう』をかけましょうか?」
「え? 魔法使えるの?」
「はい。多少は」
それを早く言って欲しかったと思わなくもないレイトであった。
メイジの倒れたあと、目の前には宝箱が現れた。
もともとそこにあったのだろうか?
レイトの視覚情報はワイヤーフレームの3Dダンジョンで、敵と出会うと、そこに敵キャラが現れるという現在の状況である。
「もうここまでくればどうでもいいか」と、融通《ゆうづう》無碍《むげ》な主人公らしい割り切り方で宝箱を開ける。
中には|魔法の巻物《スクロール》と回復薬が3つ、魔法のランタンが入っていた。
(「宝箱に入っていた」は正しいのだろうか?)
視覚情報と肌感覚が微妙にずれている感じにもやもやするレイトだったが、こちらもそういうもんだと割り切ることにする。
さて、戦利品であるスクロールを「つかう」ことができるようだと判ったレイトは、物の試しと使ってみることにした。
するとスクロールがなくなって、突如ファイヤーボールの魔法が使える気になった。
「あー……うん。使えるんだろうね、きっと」
レイトは、第三階層に上がることにした。
メイジのいた部屋の奥にドアがあり、その先の通路の突き当たりが階段になっていた。
三層目のダンジョンは二層目よりさらに表現力が上がっていた。
のぺっと塗りつぶされただけだったダンジョンは、小口積みのレンガ造りに、ドアは木製で鉄枠、ドアノブまでついている。
防具もなく、鉄の剣一本で第三層を歩く心細さの中、レイトが最初に出会ったモンスターはゾンビだった。
256色表示のなかなかにリアルなゾンビである。
(うげぇ……せめてさっきまでみたいにスケルトンがよかったんだけどなぁ)
階調が上がったことで表現力に幅ができたから白ベースのスケルトンではなく、中間色を生かしたゾンビが出てきたんだろう。グラフィックが二枚用意されているのか、交互の手足を動かしている。
(そんなところ凝らなくてもいいのに)
ホントだよ。
戦闘にはいると、こちらでも新しい変化があった。
「私も戦います」
と、クリスティーンが戦闘に参加するようになったのだ。
(第二階層ボスとの戦闘の後の魔法を使ったのがフラグイベントか何かだったのかな?)
もっとも、彼女の選択肢はレイトと違って
「まほう」
「ぼうぎょ」
の二択しかない。
しかも、魔法はさっきの「ちゆのまほう」しかない。
(結局、戦うのは俺だけかよ)
まぁ、愚痴っていても仕方ない。
レイトはクリスティーンに「ぼうぎょ」させてただひたすらに敵を殴り倒す。
ゾンビの戦利品は革の鎧だった。
(あぁ……着たくねぇ。けど、ないよりましか?)
|腐った死体《ゾンビ》が着ていた鎧であるという心理的抵抗感を感じつつも、鎧のない状態でのダメージの大きさに背に腹は変えられず、その後もゾンビ、ゴブリンから武器と防具を剥ぎ取っては少しずつ装備を整えていくレイトであった。
三層目のモンスターはゾンビ、ゴブリンの他にスパイダー、メイジ(二層のメイジより若干弱い)。
それらを倒していくことで、
鋼鉄の剣
鉄の鎧
鋼鉄の盾
鉄の兜
まで装備を充実させることができた。
メイジを倒すことでファイヤーボール以外にアイスニードル(氷の針をたくさん相手にぶつける)とフリーズ(相手を動けなくする)の魔法が使えるようになった。
この階のメイジは氷系魔法が専門のようだ。
魔法が使えるようになったのはいいけれど、魔法を使うためにはどうやらMP的なものが必要になるようで、これが枯渇すると力が入らなくなる。
メイジはこのMP回復のための「魔法回復薬」を持っていた。
大きな背負いカバンの中には、
力の石
知恵の石
守りの石
加護の十字架
回復薬11
魔法回復薬3
解毒薬28
おにぎり8
金貨7,340GP
鉄の剣
が入っている。
「それはそうと……」
レイトは、頭をかきながらクリスティーンに話しかける。
「行けるところがなくなっちゃいましたねぇ」
「そうね。手詰まりってことかしら?」
「いやぁ、たぶん|隠し《シークレット》扉《ドア》を見つけるんだと思
うんですけど、どこにあるものかと……」
「でしたら、あそこではないかしら?」
「あそこ?」
ひ、卑猥なとこじゃないからねっ!!