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第2話 青年は超レトロなアクションRPGを楽しむ(ただし、どうも現実·)

ー/ー



 レイトの意識が戻った時、最初に出た言葉は

「はぁ!?」

 だった。
 無理もない。
 目が覚めた時、自分が平面だったら他にどう言いようがあるだろう?
 「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかない。
 百歩譲ってただの平面なら我慢もしよう。

「いやぁ、ぴょん吉になっちゃったよ」

 とか、冗談にできたかもしれない。
 レイトの思考を停止させたのは自分が16×16ドットだったからだ。
 しかもどうやら8色構成だ。

「いつの時代のパソコンだよ!」

 と突っ込んでしまったとして、誰が責められよう。
 ご丁寧に三重和音のBGMまで流れている。

「いやいや、そもそも8bitパソコンのゲームに吸い込まれたんだっけ」

 などとノリツッコミをしたのは、冷静になろうと努めた結果だったのか。

「ところで、なんで平面なのにこんなに状況が理解できるんだ?」

 などと理系大学生らしく考察を始めようとしたレイトだったが、すぐにそれを放棄する。
 そもそもテレビモニタに吸い込まれたこと自体、物理的に説明が難しい。
 多分、頭ん中でゲーム画面を見ているように認識しているんだろうということで納得する。
 誠に主人公の鑑である。
 重度のゲームオタクでRPGマニアの彼は、よく判らないこの状況を楽しむと決めた。
 画面(視界)は非常にシンプルだ。
 洞窟風の迷宮に寝そべったように自分がいる。
 で、なぜか自分の周りは視界が効く。
 視界の距離は大体三キャラ半ってとこだ。
 装備は青とシアンを基調としたフルアーマーでソードとシールドを持っている。

「最初からフル装備ということは、ハイドライドのジムみたいなもんか。ところでコレ、どうやって移動するんだ?」

 思った途端、どうすれば移動できるかが理解できた。
 原理はよく判らないものの便利だなぁで済ませるレイトも大概だ。
 動くたびに足を交互にバタつかせて半キャラずつ移動するらしい。
 横向きのキャラクターはないようだ。
 心持ちもっさりしているが、今はそれがちょうど良く感じる。
 やがて視界にモンスターが入ってきた。

「コウモリ? いや、バットだな」

 モンスターを確認すると、これも突然どうすれば戦闘できるのかが判った。

「いやいや、そりゃあジムの操作はそうだったけどさ……」

 嫌がっていても向こうが勝手に近づいてくるのだから仕方ない。
 レイトは意を決して体当たりをする。
 ピコピコとSEが鳴り、最弱モンスターはこちらにダメージを与えることなく破裂するように消える。
 そんな戦闘を五回ほど繰り返すと、ピロリロリンというSEとともになんか強くなった気がした。

「あ、レベルが上がった」

 レベルが上がると、バットなど触れただけで倒せてしまう。
 もちろん、こちらから体当たりしないと攻撃にならないようだったけれど。
 相手からの攻撃はチクチクとくすぐったい感じだ。
 それでもダメージなのでたまると疲労感や痛みが強くなる。
 ダメージは黙っていても自動回復するわけではなかったけれど、移動していれば回復するようなので、モンスターに遭わずに動いていればよかった。
 洞窟の奥に進むとモンスターの種類が増えてくる。
 スライムは緑色でグミみたいだったし、ゾンビにスケルトンと、ゲームではおなじみのモンスターだった。

「荒いドット絵のアンデットは気持ち悪くなくて助かるけど、バットと違ってダメージがでかい」

 なんて言いながらレイトはホクホクしながらモンスターに体当たり攻撃を続ける。
 衝撃や痛みがあるので自分自身が戦っているという感覚はちゃんと意識していたが、視覚情報(絵面)がレトロゲームなのでついついプレイ感覚で無茶をしてしまい、やがて歪んだBGMとともにこらえきれない激しい痛みが彼を襲った。

「やっべ。レッドゾーンだ」

 いわゆるヒットポイントのレッドゾーン、瀕死の状態に陥ってしまったようだ。
 黙っていてもヒットポイントは回復しない。
 彼は痛みを必死にこらえ、モンスターが襲ってくる恐怖に怯えながらその場をクルクルと回るように移動する。

「ゾンビ来ませんように、スケルトン来ませんように……」

 バットならもういくら攻撃されようが毛ほどもダメージを受けない。
 スライムでも先手を取れればノーダメージで勝てる。
 けれどアンデッド系はまだ一回の戦闘で大ダメージを食らうことがあったのだ。
 ビクビクしながら回復に努めること数分、ようやくイエローゾーンまでヒットポイントが回復したレイトは、またソロソロと洞窟迷宮を前進し始めた。
 最初のうち数匹敵を倒せばアップしていたレベルも5レベルを過ぎたあたりからなかなか上がらなくなってきた。
 バットでは経験点がもらえなくなったようで、何匹倒しても手応えがない。
 そうなるとバットが近づいてくるのも鬱陶しい。

「だからレベル上げ嫌いなんだよなぁ」

 と、ブツブツ言いながらゾンビ・スケルトンを探して洞窟内をさまよう。
 どうやらモンスターは配置型じゃなく湧いて出てくるタイプのようだったけれど、マップ上で一定の距離離れないと湧かないし、湧くモンスターはランダムなようで、せっかく戻ってきてもバットだったりするとげんなりする。
 やがて洞窟は脇道のある場所に出くわした。

「こういうのは配置型モンスターがいると相場が決まってるんだよな」

 数えてきたレベルアップは七回、8レベルになっている。
 レトロゲームだし、雰囲気的に10レベルで打ち止めなんじゃないかと思っていたレイトだったが、まだ二回レベルアップが残っている(と考えられる)この段階でボス系モンスターと戦って勝てるのかどうか、ちょっと心配だったが、たるいレベル上げにも飽きてきていたので、洞窟脇に入ってみることにした。

「その前に……」

 彼は軽く洞窟内を移動してバットをおびき寄せ、洞窟の脇道に半身を隠して移動する。
 おっと、移動というのは正確な表現じゃない。
 実際には壁に阻まれて移動できないからだ。
 そこにバットが吸い寄せられるように近づいてきて体当たり。
 判定的にはレイトの攻撃の扱いになったようで、バットが破裂する。

「あ・やっぱり半キャラずらし有効だ」

 テクニックをひとつ習得したレイトは脇道に入っていく。
 中には大きなコウモリがいた。

「なるほど、ジャイアントバットだな」

 たくみに移動して半キャラずらしで攻撃する。
 8レベル現在、アンデッド系は三回攻撃すれば倒せていたのだけれど、ジャイアントバットは七回も攻撃しないと倒れてくれなかった。
 ジャイアントバットが破裂すると、宝箱が現れる。

「これも体当たりだろ」

 思った通り、体当たりすると宝箱が開いて「力の(パワー)(ストーン)」が手に入った。
 もっとも、パワーストーンというのがどんなものかは判らない。
 多分ゲーム画面ならステータスのところに表示されているんだろうなと思いながら先に進む。
 その後二度の脇道でのジャイアントバット戦をこなし、「知恵の(ウィズダム)(ストーン)」と「守りの(ディフェンス)(ストーン)」を手に入れ、レベルが10になった頃、ゴールが見えてきた。
 洞窟の出口の穴があって、階段があるように見える。
 レイトがその中に入っていくと、視界がブラックアウトして意識が遠のいた。


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 レイトの意識が戻った時、最初に出た言葉は
「はぁ!?」
 だった。
 無理もない。
 目が覚めた時、自分が平面だったら他にどう言いようがあるだろう?
 「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかない。
 百歩譲ってただの平面なら我慢もしよう。
「いやぁ、ぴょん吉になっちゃったよ」
 とか、冗談にできたかもしれない。
 レイトの思考を停止させたのは自分が16×16ドットだったからだ。
 しかもどうやら8色構成だ。
「いつの時代のパソコンだよ!」
 と突っ込んでしまったとして、誰が責められよう。
 ご丁寧に三重和音のBGMまで流れている。
「いやいや、そもそも8bitパソコンのゲームに吸い込まれたんだっけ」
 などとノリツッコミをしたのは、冷静になろうと努めた結果だったのか。
「ところで、なんで平面なのにこんなに状況が理解できるんだ?」
 などと理系大学生らしく考察を始めようとしたレイトだったが、すぐにそれを放棄する。
 そもそもテレビモニタに吸い込まれたこと自体、物理的に説明が難しい。
 多分、頭ん中でゲーム画面を見ているように認識しているんだろうということで納得する。
 誠に主人公の鑑である。
 重度のゲームオタクでRPGマニアの彼は、よく判らないこの状況を楽しむと決めた。
 |画面《視界》は非常にシンプルだ。
 洞窟風の迷宮に寝そべったように自分がいる。
 で、なぜか自分の周りは視界が効く。
 視界の距離は大体三キャラ半ってとこだ。
 装備は青とシアンを基調としたフルアーマーでソードとシールドを持っている。
「最初からフル装備ということは、ハイドライドのジムみたいなもんか。ところでコレ、どうやって移動するんだ?」
 思った途端、どうすれば移動できるかが理解できた。
 原理はよく判らないものの便利だなぁで済ませるレイトも大概だ。
 動くたびに足を交互にバタつかせて半キャラずつ移動するらしい。
 横向きのキャラクターはないようだ。
 心持ちもっさりしているが、今はそれがちょうど良く感じる。
 やがて視界にモンスターが入ってきた。
「コウモリ? いや、バットだな」
 モンスターを確認すると、これも突然どうすれば戦闘できるのかが判った。
「いやいや、そりゃあジムの操作はそうだったけどさ……」
 嫌がっていても向こうが勝手に近づいてくるのだから仕方ない。
 レイトは意を決して体当たりをする。
 ピコピコとSEが鳴り、最弱モンスターはこちらにダメージを与えることなく破裂するように消える。
 そんな戦闘を五回ほど繰り返すと、ピロリロリンというSEとともになんか強くなった気がした。
「あ、レベルが上がった」
 レベルが上がると、バットなど触れただけで倒せてしまう。
 もちろん、こちらから体当たりしないと攻撃にならないようだったけれど。
 相手からの攻撃はチクチクとくすぐったい感じだ。
 それでもダメージなのでたまると疲労感や痛みが強くなる。
 ダメージは黙っていても自動回復するわけではなかったけれど、移動していれば回復するようなので、モンスターに遭わずに動いていればよかった。
 洞窟の奥に進むとモンスターの種類が増えてくる。
 スライムは緑色でグミみたいだったし、ゾンビにスケルトンと、ゲームではおなじみのモンスターだった。
「荒いドット絵のアンデットは気持ち悪くなくて助かるけど、バットと違ってダメージがでかい」
 なんて言いながらレイトはホクホクしながらモンスターに体当たり攻撃を続ける。
 衝撃や痛みがあるので自分自身が戦っているという感覚はちゃんと意識していたが、|視覚情報《絵面》がレトロゲームなのでついついプレイ感覚で無茶をしてしまい、やがて歪んだBGMとともにこらえきれない激しい痛みが彼を襲った。
「やっべ。レッドゾーンだ」
 いわゆるヒットポイントのレッドゾーン、瀕死の状態に陥ってしまったようだ。
 黙っていてもヒットポイントは回復しない。
 彼は痛みを必死にこらえ、モンスターが襲ってくる恐怖に怯えながらその場をクルクルと回るように移動する。
「ゾンビ来ませんように、スケルトン来ませんように……」
 バットならもういくら攻撃されようが毛ほどもダメージを受けない。
 スライムでも先手を取れればノーダメージで勝てる。
 けれどアンデッド系はまだ一回の戦闘で大ダメージを食らうことがあったのだ。
 ビクビクしながら回復に努めること数分、ようやくイエローゾーンまでヒットポイントが回復したレイトは、またソロソロと洞窟迷宮を前進し始めた。
 最初のうち数匹敵を倒せばアップしていたレベルも5レベルを過ぎたあたりからなかなか上がらなくなってきた。
 バットでは経験点がもらえなくなったようで、何匹倒しても手応えがない。
 そうなるとバットが近づいてくるのも鬱陶しい。
「だからレベル上げ嫌いなんだよなぁ」
 と、ブツブツ言いながらゾンビ・スケルトンを探して洞窟内をさまよう。
 どうやらモンスターは配置型じゃなく湧いて出てくるタイプのようだったけれど、マップ上で一定の距離離れないと湧かないし、湧くモンスターはランダムなようで、せっかく戻ってきてもバットだったりするとげんなりする。
 やがて洞窟は脇道のある場所に出くわした。
「こういうのは配置型モンスターがいると相場が決まってるんだよな」
 数えてきたレベルアップは七回、8レベルになっている。
 レトロゲームだし、雰囲気的に10レベルで打ち止めなんじゃないかと思っていたレイトだったが、まだ二回レベルアップが残っている(と考えられる)この段階でボス系モンスターと戦って勝てるのかどうか、ちょっと心配だったが、たるいレベル上げにも飽きてきていたので、洞窟脇に入ってみることにした。
「その前に……」
 彼は軽く洞窟内を移動してバットをおびき寄せ、洞窟の脇道に半身を隠して移動する。
 おっと、移動というのは正確な表現じゃない。
 実際には壁に阻まれて移動できないからだ。
 そこにバットが吸い寄せられるように近づいてきて体当たり。
 判定的にはレイトの攻撃の扱いになったようで、バットが破裂する。
「あ・やっぱり半キャラずらし有効だ」
 テクニックをひとつ習得したレイトは脇道に入っていく。
 中には大きなコウモリがいた。
「なるほど、ジャイアントバットだな」
 たくみに移動して半キャラずらしで攻撃する。
 8レベル現在、アンデッド系は三回攻撃すれば倒せていたのだけれど、ジャイアントバットは七回も攻撃しないと倒れてくれなかった。
 ジャイアントバットが破裂すると、宝箱が現れる。
「これも体当たりだろ」
 思った通り、体当たりすると宝箱が開いて「|力の《パワー》石《ストーン》」が手に入った。
 もっとも、パワーストーンというのがどんなものかは判らない。
 多分ゲーム画面ならステータスのところに表示されているんだろうなと思いながら先に進む。
 その後二度の脇道でのジャイアントバット戦をこなし、「|知恵の《ウィズダム》石《ストーン》」と「|守りの《ディフェンス》石《ストーン》」を手に入れ、レベルが10になった頃、ゴールが見えてきた。
 洞窟の出口の穴があって、階段があるように見える。
 レイトがその中に入っていくと、視界がブラックアウトして意識が遠のいた。