セッカ、異世界を実感する
ー/ー
この地域で(と言っても召喚されたばかりのセッカには、ここがどこなのか土地勘がないので全く判らないのだが)狩人をしているというトキが頼もしい旅の仲間となり、ミサゴを救う旅をする事になったセッカたちは、冒険になるだろう旅の準備をするために一番近くの町へ行く事にした。
「さて、何から説明しようか?」
その三日間の道程の間、この世界の事についてトキが知っている限りを教えてくれる事になった。
「ここがどんな世界なのか、教えてくれる?」
「いいだろう」
この世界は、オーウェンと呼ばれている。
セッカの生まれ育った世界とは、別の次元にあるそうだ。
「もっとも、次元というものがどういうものなのか俺には判らない。とにかくまったく違う世界らしい」
「それで?」
「世界は大きく三つの人間の国に統治されている。東西に長く広がる世界の中心コルバート大陸の西側、俺たちがいるのがリチャード王が統べるスターンバー王国。東に魔法国家共和国マンテル。そして、国土は大きくないけれど北の地に君臨するバーナム皇帝の新興国家ギデオン帝国。他にも小国や自治区、少数民族の集落なんかもあるけど…」
「ごめん。覚え切れないから先を続けて」
「判った」
トキの話によると、この世界は俗にいう「剣と魔法」によって支配されているそうだ。
簡単に言うと力の強い者、強力な魔法の使える者が支配者となって国を治めているのだ。
例えば、スターンバー王国の建国王エドワードⅠ世は先頭に立って剣を振るい小国の一兵卒からその国を掌握し、一代でコルバート大陸の半分近くを領有する大国の支配者になった。マンテル共和国は現在、八人の魔法使いで運営される評議会によって支配されている。
「選挙で選ぶんじゃないの?」
「選挙って何? オーラにも判るように教えて」
「えーと…よく判んない」
「それじゃしょーがないぞ」
セッカは、ノスリに言われるとなんだか癪に障った。それはちょうど、自分の嫌だなぁと思っているところを他の人に指摘された時のような感じである。
「魔法って、この世界では誰でも使えるって訳じゃないの?」
「うん、種族にもよる。例えば妖精エルフ族は生まれた時から精霊と交信する能力を持っていて、精霊の力を借りる形で全員が魔法を使えるそうだ」
「精霊?」
「目に見えないけど生きているって言う存在だお。妖精は精霊ととても近い種族だってことだ」
ノスリは得意そうにセッカの周りを飛んでから、トキの肩に乗っかった。
「フェアリーも高い確率で精霊と交信出来るそうだけど…」
「オーラは出来ないけどね」
いつしか日が沈みかけ、三人は野宿の準備をする。
川のほとりのちょっと開けた場所で草の原っぱになっているところを選んでトキが露よけのシートを敷くと、その側に焚き火を熾す。その間にセッカとノスリは薪を拾い集め、魚釣り。魚は日が沈むまでのわずかな時間でも面白いように次から次と釣れた。夕食はその川魚だ。セッカにはちょっとヘンな格好に見えた魚だったけど、塩をまぶして焼いただけのその魚は、食べてみるととてもおいしかった。
なんか、RPGを本当に体験しているんだなぁ…っていう感動が込み上げてきて、妙に嬉しくなったセッカだった。
食事の後、トキは魔法についてもう少し詳しく説明してくれた。
それによると、この世界の魔法には大きく分けて三種類の魔法があるそうだ。
一つはエルフたちが使うような精霊に代表される不可視の存在に働き掛けて発動するもので、召喚魔法という。
これに対して自然界に存在する根源的エネルギー「マナ」を利用する魔法がある。マナを呪文によって魔法力に転換して発動させるものと、呪文によってマナそれ自体に働き掛けて活性化させたり停滞させる事で現象を起こすものがあって、それぞれの魔法の性格から「攻撃魔法」「防衛魔法」と呼んでいるらしい。
「じゃあ、呪文を覚えれば、誰でも魔法が使えるの?」
いわゆるファンタジーの世界を実体験しているんだという感動と興奮で目をらんらんと輝かせているセッカは、自分にも使えるかも知れないという期待を込めてトキを見た。
「そういう訳にはいかないんだ。例えばさっき言った通り呪文を唱える魔法にはマナが必要になるんだけど、まずマナを感じる事が出来ないと使えない」
すると今度は食べ過ぎでおなかがポッコリとふくれて仰向けに寝ていたノスリが、そのままの格好でこう言った。
「マナは万物のエネルギーだから、そこいらじゅうにあるんだな」
「目に見えたりするの?」
「そういう感じ方をする人もいるらしい」
トキは、焚き火に新しい薪と石のヤジリがついた矢を一本入れる。
「そういう人も?」
セッカは夜になって少し寒くなったのか大きな毛布にくるまって、お尻で歩いてちょっとだけ火に近付いた。
「俺は残念ながらマナを感じることができないから聞いた話だけど、寒いとか暑いって感じる人もいるようだ」
「人によって感じ方が違うんだね」
「他にも、マナが集中している所は苦しいと感じる人もいれば、逆に少ないと苦しく感じる人もいる」
「ふーん、不思議だね」
「そうだね…」
トキはそう言いながら、そっと弓を引き寄せた。
セッカはそんな様子に気も付かず、少し甘くてあったかい飲み物を一口飲んでノスリに聞いた。
「ノスリはマナを感じるの?」
ノスリは横になったまま、胸を張ってこういった。
「オーラ、そんなこと出来ないよ」
「精霊とも交信出来ないんでしょ? 才能ないんだね」
「なぬ? 失礼だよ、セッカ。マナを感じる事が出来る人って、そんなに多くないんだからに」
「そうなの?」
セッカはトキを見る。トキは弓弦の張りを確かめながらうなずく。
「うん。マナそのものを感じる事が出来る人は、ごくわずかしかいない」
「マナそのもの…?」
「マナは万物の根源的エネルギーだからね。魔法の才能に恵まれた人でなくても別の形でなら感じる事は出来る。例えば火」
トキは、たき火の中から石のヤジリが真っ赤に焼けた矢を取り出す。
「例えば風…」
そして、その矢をつがえる。
それを見たノスリが、慌てて起き上がった。
「あるいは生き物の気配」
ひょうと放たれた火矢は、忍び寄っていたらしい怪物に命中する。真っ赤に焼けたヤジリの突き刺さった怪物は、悲鳴を上げて逃げ去って行く。
「敵だぁ!」
こちらも小さな体で負けないくらい大きな声を出したノスリは、さっとセッカの後ろに隠れる。セッカには、驚いているヒマもなかった。
「…遅いって。もう逃げて行ったろ?」
「あ・そっか…はぁ、助かった」
「今のは?」
弓を置いたトキは、何事もなかったように座り直し、焚き火に少し多めに薪をくべる。そして、やっぱり何事もなかったように穏やかにこう答えた。
「食人鬼の一種だよ」
「しょくじんき?」
ノスリがセッカの背中をよじ登り、彼の耳元で得意げに話してくれた。
「人を食べる鬼だお」
「いいっ!? そんな怪物もいるの?」
セッカはそのときようやく驚き、怖い目に遭った事を知った。トキは、怯えた表情で心配そうに辺りを見回すセッカがホッとする気持ちになれるように優しく笑いかけてくれた。
「大丈夫。食人鬼は何種類かいるけど、みんな低能な種族だからめったな事で食われる事はない。彼らは常に殺気を放っているから、近付いた事がすぐ判るからね」
「殺気…全然判らなかった」
するとノスリが仕返しとばかりに、さっきのセッカの真似をする。
「セッカ、才能ないんじゃない?」
「君に言われたくない」
二人のやり取りを笑いながら見ていたトキはカップに残っていた飲み物を一息に飲み干すと、マントにくるまった。
「さて、そろそろ寝よう。この辺りは、食人鬼を除けば、後はせいぜい狼くらいのものだから、火さえ絶やさなければ襲われる心配もない」
それを聞いたノスリはひらりとトキのマントの中に飛び込んで、顔だけをセッカに向けた。
「その食人鬼も、さっきトキが追い払ったから多分もう襲ってこないど」
「そうだね。セッカ。悪いけど、最初の見張りをお願い出来るかい?」
「え? あ、うん」
うなずいたセッカを確認すると、トキは星空の一点を指差した。
「あそこに大きな星が見えるだろう?」
「あれ?」
セッカも指を差して見せる。
「そう。あの星が、森の向こうに隠れる頃に俺を起こして交代だ。いいね」
「判った」
ノスリが、もぐり込んだトキのマントの奥からこういった。
「じゃ、よろひくぅ」
「うん」
トキが天幕に入って行くのを確認したセッカは、改めて毛布を頭からかけて満天の星空を見上げた。星座を探してみようとしたけれど、星の位置が全然違うらしくて一つも自分の知っている意味のある形につながらない。改めて異世界に来てしまったんだという思いに少し寂しさを感じた。
そして、こうつぶやく。
「…みんな、心配してるかな? お父さん、お母さん、僕が家出したとでも思っているかも知れない。……元の世界に本当に帰れるんだろうか? …どうして僕が、呼ばれたんだろう?」
トキとノスリが眠りにつき辺りを静寂が包むと、あの泣き声が遠く、小さく聞こえてきた。
「助けて…セッカ」
「ヒバリ…いや、ミサゴ」
声は、とぎれとぎれに聞こえてくる。
「セッカ…ブルーを…」
「ミサゴ…まだなんだかよく判らないけど、とにかく僕はミサゴを助けてブルーってのを守るためにこの世界に召喚されてきたんだね? だったらやるさ、必ずミサゴを助ける。そしてブルーを守る。そうすれば、元の世界に帰れるんだろ? 待ってて、ミサゴ」
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「さて、何から説明しようか?」
その三日間の道程《どうてい》の間、この世界の事についてトキが知っている限りを教えてくれる事になった。
「ここがどんな世界なのか、教えてくれる?」
「いいだろう」
この世界は、オーウェンと呼ばれている。
セッカの生まれ育った世界とは、別の次元にあるそうだ。
「もっとも、次元というものがどういうものなのか俺には判らない。とにかくまったく違う世界らしい」
「それで?」
「世界は大きく三つの人間の国に統治《とうち》されている。東西に長く広がる世界の中心コルバート大陸の西側、俺たちがいるのがリチャード王が統《す》べるスターンバー王国。東に魔法国家共和国マンテル。そして、国土は大きくないけれど北の地に君臨《くんりん》するバーナム皇帝の新興《しんこう》国家ギデオン帝国。他にも小国や自治区、少数民族の集落なんかもあるけど…」
「ごめん。覚え切れないから先を続けて」
「判った」
トキの話によると、この世界は俗にいう「剣と魔法」によって支配されているそうだ。
簡単に言うと力の強い者、強力な魔法の使える者が支配者となって国を治めているのだ。
例えば、スターンバー王国の建国王エドワードⅠ世は先頭に立って剣を振るい小国の一兵卒からその国を掌握《しょうあく》し、一代でコルバート大陸の半分近くを領有する大国の支配者になった。マンテル共和国は現在、八人の魔法使いで運営される評議会《ひょうぎかい》によって支配されている。
「選挙で選ぶんじゃないの?」
「選挙って何? オーラにも判るように教えて」
「えーと…よく判んない」
「それじゃしょーがないぞ」
セッカは、ノスリに言われるとなんだか癪《しゃく》に障《さわ》った。それはちょうど、自分の嫌だなぁと思っているところを他の人に指摘された時のような感じである。
「魔法って、この世界では誰でも使えるって訳じゃないの?」
「うん、種族にもよる。例えば妖精エルフ族は生まれた時から精霊《せいれい》と交信する能力を持っていて、精霊の力を借りる形で全員が魔法を使えるそうだ」
「精霊?」
「目に見えないけど生きているって言う存在だお。妖精は精霊ととても近い種族だってことだ」
ノスリは得意そうにセッカの周りを飛んでから、トキの肩に乗っかった。
「フェアリーも高い確率で精霊と交信出来るそうだけど…」
「オーラは出来ないけどね」
いつしか日が沈みかけ、三人は野宿の準備をする。
川のほとりのちょっと開けた場所で草の原っぱになっているところを選んでトキが露《つゆ》よけのシートを敷《し》くと、その側に焚《た》き火を熾《おこ》す。その間にセッカとノスリは薪《たきぎ》を拾い集め、魚釣り。魚は日が沈むまでのわずかな時間でも面白いように次から次と釣れた。夕食はその川魚だ。セッカにはちょっとヘンな格好に見えた魚だったけど、塩をまぶして焼いただけのその魚は、食べてみるととてもおいしかった。
なんか、|RPG《ロールプレイングゲーム》を本当に体験しているんだなぁ…っていう感動が込み上げてきて、妙に嬉しくなったセッカだった。
食事の後、トキは魔法についてもう少し詳しく説明してくれた。
それによると、この世界の魔法には大きく分けて三種類の魔法があるそうだ。
一つはエルフたちが使うような精霊に代表される不可視の存在に働き掛けて発動するもので、召喚魔法という。
これに対して自然界に存在する根源的エネルギー「マナ」を利用する魔法がある。マナを呪文によって魔法力に転換して発動させるものと、呪文によってマナそれ自体に働き掛けて活性化させたり停滞させる事で現象を起こすものがあって、それぞれの魔法の性格から「攻撃魔法」「防衛魔法」と呼んでいるらしい。
「じゃあ、呪文を覚えれば、誰でも魔法が使えるの?」
いわゆるファンタジーの世界を実体験しているんだという感動と興奮で目をらんらんと輝かせているセッカは、自分にも使えるかも知れないという期待を込めてトキを見た。
「そういう訳にはいかないんだ。例えばさっき言った通り呪文を唱える魔法にはマナが必要になるんだけど、まずマナを感じる事が出来ないと使えない」
すると今度は食べ過ぎでおなかがポッコリとふくれて仰向《あおむ》けに寝ていたノスリが、そのままの格好でこう言った。
「マナは万物のエネルギーだから、そこいらじゅうにあるんだな」
「目に見えたりするの?」
「そういう感じ方をする人もいるらしい」
トキは、焚き火に新しい薪と石のヤジリがついた矢を一本入れる。
「そういう人も?」
セッカは夜になって少し寒くなったのか大きな毛布にくるまって、お尻で歩いてちょっとだけ火に近付いた。
「俺は残念ながらマナを感じることができないから聞いた話だけど、寒いとか暑いって感じる人もいるようだ」
「人によって感じ方が違うんだね」
「他にも、マナが集中している所は苦しいと感じる人もいれば、逆に少ないと苦しく感じる人もいる」
「ふーん、不思議だね」
「そうだね…」
トキはそう言いながら、そっと弓を引き寄せた。
セッカはそんな様子に気も付かず、少し甘くてあったかい飲み物を一口飲んでノスリに聞いた。
「ノスリはマナを感じるの?」
ノスリは横になったまま、胸を張ってこういった。
「オーラ、そんなこと出来ないよ」
「精霊とも交信出来ないんでしょ? 才能ないんだね」
「なぬ? 失礼だよ、セッカ。マナを感じる事が出来る人って、そんなに多くないんだからに」
「そうなの?」
セッカはトキを見る。トキは弓弦《ゆづる》の張りを確かめながらうなずく。
「うん。マナそのものを感じる事が出来る人は、ごくわずかしかいない」
「マナそのもの…?」
「マナは万物の根源的エネルギーだからね。魔法の才能に恵まれた人でなくても別の形でなら感じる事は出来る。例えば火」
トキは、たき火の中から石のヤジリが真っ赤に焼けた矢を取り出す。
「例えば風…」
そして、その矢をつがえる。
それを見たノスリが、慌てて起き上がった。
「あるいは生き物の気配」
ひょうと放たれた火矢は、忍び寄っていたらしい怪物に命中する。真っ赤に焼けたヤジリの突き刺さった怪物は、悲鳴を上げて逃げ去って行く。
「敵だぁ!」
こちらも小さな体で負けないくらい大きな声を出したノスリは、さっとセッカの後ろに隠れる。セッカには、驚いているヒマもなかった。
「…遅いって。もう逃げて行ったろ?」
「あ・そっか…はぁ、助かった」
「今のは?」
弓を置いたトキは、何事もなかったように座り直し、焚き火に少し多めに薪をくべる。そして、やっぱり何事もなかったように穏やかにこう答えた。
「食人鬼の一種だよ」
「しょくじんき?」
ノスリがセッカの背中をよじ登り、彼の耳元で得意げに話してくれた。
「人を食べる鬼だお」
「いいっ!? そんな怪物もいるの?」
セッカはそのときようやく驚き、怖い目に遭《あ》った事を知った。トキは、怯《おび》えた表情で心配そうに辺りを見回すセッカがホッとする気持ちになれるように優しく笑いかけてくれた。
「大丈夫。食人鬼は何種類かいるけど、みんな低能な種族だからめったな事で食われる事はない。彼らは常に殺気を放っているから、近付いた事がすぐ判るからね」
「殺気…全然判らなかった」
するとノスリが仕返しとばかりに、さっきのセッカの真似をする。
「セッカ、才能ないんじゃない?」
「君に言われたくない」
二人のやり取りを笑いながら見ていたトキはカップに残っていた飲み物を一息に飲み干すと、マントにくるまった。
「さて、そろそろ寝よう。この辺りは、食人鬼を除けば、後はせいぜい狼くらいのものだから、火さえ絶やさなければ襲われる心配もない」
それを聞いたノスリはひらりとトキのマントの中に飛び込んで、顔だけをセッカに向けた。
「その食人鬼も、さっきトキが追い払ったから多分もう襲ってこないど」
「そうだね。セッカ。悪いけど、最初の見張りをお願い出来るかい?」
「え? あ、うん」
うなずいたセッカを確認すると、トキは星空の一点を指差した。
「あそこに大きな星が見えるだろう?」
「あれ?」
セッカも指を差して見せる。
「そう。あの星が、森の向こうに隠れる頃に俺を起こして交代だ。いいね」
「判った」
ノスリが、もぐり込んだトキのマントの奥からこういった。
「じゃ、よろひくぅ」
「うん」
トキが天幕に入って行くのを確認したセッカは、改めて毛布を頭からかけて満天の星空を見上げた。星座を探してみようとしたけれど、星の位置が全然違うらしくて一つも自分の知っている意味のある形につながらない。改めて異世界に来てしまったんだという思いに少し寂しさを感じた。
そして、こうつぶやく。
「…みんな、心配してるかな? お父さん、お母さん、僕が家出したとでも思っているかも知れない。……元の世界に本当に帰れるんだろうか? …どうして僕が、呼ばれたんだろう?」
トキとノスリが眠りにつき辺りを静寂《せいじゃく》が包むと、あの泣き声が遠く、小さく聞こえてきた。
「助けて…セッカ」
「ヒバリ…いや、ミサゴ」
声は、とぎれとぎれに聞こえてくる。
「セッカ…ブルーを…」
「ミサゴ…まだなんだかよく判らないけど、とにかく僕はミサゴを助けてブルーってのを守るためにこの世界に召喚されてきたんだね? だったらやるさ、必ずミサゴを助ける。そしてブルーを守る。そうすれば、元の世界に帰れるんだろ? 待ってて、ミサゴ」