取材陣を抜けて学校に駆け込んだのち、先生方のご厚意でユイの事務所に送ってもらえることになった。
「ここが、ユイの事務所―。」
《ファイナルスター・プロダクション》
芸能系最王手。多くの大人気グループがここに所属している。
「さ、入って」
ユイに手を引かれ中に入ると、多くの有名人とすれ違った。
「お、ユイその子が言ってた――」
何人かの人に話しかけられる。
そして俺が一番気になったのは
、だった。
《ファイナルスター》の警備員はそれぞれがかなりの練度で鍛えられ、超難関就職の一つとして数えられている。そしてアイドルを警護する兵士のような姿から、ファンの間からは《ソルジャー》と呼ばれ、恐れられている。
「やあ、ユイ――そして、新城シン君。」
「あなたは――。」
「社長!」
「私は神楽木。この事務所の代表よ。」
そして社長室に呼ばれ――。
「今日の朝は大変だったようね。」
「ホントだよ~逃げるのに苦労したんだからね~」
ユイもかなりラフなしゃべり方だな。
「まあ、自業自得な点もあるが――。本題に入るとしよう。新城君、ソルジャーにならないか?」
「えっ」
「うちの警備員だよ」
ソルジャーとはファンが名付けた別称のはずだが、いつの間に正式名称になっていたのか――。
「ユイを守ってくれないだろうか?」
「やります」
「即答。いいね。」
「君はまだ高校生だ。バイトという形で階級2ndに所属してもらうことになる。」
「分かりました」
「しかし無条件ではいかない。うちの稼ぎ頭を任せるんだ。ある程度のテストを受けてもらうよ。」
「テスト?」
「来たまえ。」
行った先は、訓練所。
「ここで日々、ソルジャーは訓練を行っている。」
そこで待っていたのは、大剣を持ったとげとげしい髪形をした男性。
「彼は《ブレイン・ストライク》。ソルジャーの最高階級1stのうちの守護神だ。」
「――。」
男は無言でこっちを見ている。
「試験は彼と模擬戦闘を行ってもらう。なに、死ぬわけじゃないんだ。遠慮なく、ね。」
「頑張ってシン君!」
壁には多くの武器が飾ってある。
その中から片手剣と円盾を手に取る。
「準備はできたかい?」
「はい――。」
「それでは、試験開始!」
ソルジャー1st《ブレイン・ストライク》。
大剣を持ったその男は、無表情のまま、突進を始めた。
(速ッ!?)
大剣を避けて、後ろに下がる。
『ソルジャーの武器は刃が潰してある。けど受けたら――。やばいよ。』
社長の言葉を聞き流し、反撃を打ち込む。
(大剣のまえでは盾が邪魔か!)
盾を投擲し、握りしめた剣を振り下ろす。
剣なんて持ったことないのに――使い方が分かる。
「セアッ!」
鍔迫り合い――。しかし。
「ファイア」
男が呟き、剣のトリガーを引く。すると大剣から衝撃が発せられ、俺は吹き飛ばされる。
「なんだ……!?」
『AZ-78《ストライクブレイカー》。1stに与えられる《専用武器》の一つ。その機能はトリガーを引くことで内部にある強化爆竹の衝撃を刃に伝える――。」
折れた剣を捨てて、壁にある刀を手に取る。
(もっと速く――!)
上からの振り下ろし――と思わせての水平。
フェイントの一撃も防がれる。どう見ても重そうなのに――…どうなってるんだソルジャーは。
「一式―――。」
衝撃により大剣の加速。それによる回し斬り。
それをバックステップで合わせ、回避する。
「三式、」
衝撃が直接飛んでくる――。
横に回避――。からの――脇腹を狙った刺突。
(避けられた!?)
反応速度、どうなって――。
『ソルジャーの資格を得るため最も重要な要素――。』
「それが、強さだ」
『人間の生命の根源、それを爆発的に放出することで、ソルジャーは超人的な身体能力を誇っている。そしてそれを一般兵で学ぶのが普通なのだが――。ユイ、彼は――。』
「ええ、使えます。」
(なんだ――。この感覚――…威圧感が跳ね上がった――?)
「これは……死ぬ気でやらなきゃ死ぬな。」
俺は壁にある二本の忍刀を見る。それはソルジャーの奥――。
(あそこまで抜ける!)
天文流抜刀術――。
「〝龍撃閃〟」
抜刀の瞬間を速く――。そして、大剣とぶつかる瞬間は遅く――。
そして流水のように大剣を躱し、加速――。
その時、空間に電気が迸った。
「なっ―……」
生体電気。人間の身体の内部、外部には、少なからず電気が走っている。冬にドアを開けようとしたら静電気が走る――。静電気。それの出力を強化。
「」
男の髪が更に逆立ち、全身に電気を纏っている。
「五式〝爆雷〟」
電撃と衝撃の同時攻撃――。
剣と刀のぶつかり合い――。
しかし俺は刀から手を離し、男の後ろに抜ける。
そして壁の忍者刀を手に取り二刀流の構えを取る。
「銀河天文流・一式〝双剣閃撃〟!」
同じ向きに薙ぎ払い――。
「爆散」
衝撃波――。
「二式・〝対雷双撃〟!」
上からの振り下ろし――。
「四式・〝連突〟」
「五式・〝奪命〟」
全てが同時に防がれる――。
「クソッ……」
(ここで、こんなところで――。)
――止まれないんだ!
イメージが――、流れ込んでくる――。
二本の剣と、刀を持った――《黒き剣士》の姿が――。
「うぉおおおおお!!!!」
《赤い眼》、覚醒。
「次元狂い――。〝飛天〟」
ブレインが何かを感じ取る。それは、おとぎ話にいるような存在の気配――。
空間を抉り、その空間そのものを纏う―――。
「あの剣――!」
〝飛天〟
空間を抉り、斬撃に乗せて放つ。それはソルジャーの身体を大きく吹き飛ばした。
「社長?」
「ああ、ユイ……やばいの好きになったねー…まあ、実力は見せてもらったし合格だよ。」
「ふふっ」
「合格――」
「最後に……」
1stの男が呟く。
「最後に一つ、試させてもらう……」
「ブレイン、何を――。」
「この子が死んで悲しむのはユイだ。それなら――力を示してもらおう。」
「なにをすれば――」
「俺の一撃を、破ってもらう。」
「――分かりました。」
1stは大剣を上段に構える。
そして俺も、今出せる最高の剣技を――。
推進兵剣術・七式――。
銀河天文流・六式――。
〝須佐能〟
全身を電気で刺激し、肉体の限界を超える。そこに衝撃波による加撃と加速。
――一撃で止めるんじゃない――。連撃で、手数で止める!―――あの人の言うことは確かにそうだ。俺が弱くて、ユイが悲しむのは、一番嫌だ!
限界を超えろ!剣に乗せろ!全てを込めろ!
《赤眼》の光が強まり、筋肉が隆起し、血管が浮き出る。
同時に切り開き、同時上段、同時下段、――逆手に持ち替え、四連撃。
最後に右手の会心の一撃。
六式・〝激烈閃撃〟
まだだ、止まるな――。動き続けろ――この、極限の瞬間を!
神約八連撃・剣技《メテオストライク》
右手の剣の八連撃。
左の剣でソルジャーの剣を捌き切る。
半ば勝手に動く両手を更に意志の力、自力でブーストする。
脊髄反射、脳を通さない圧倒的直感の動作。
しかし左手には盾が欲しかったと途中思う。
(躱せない――!)
ソルジャーの気迫――。
「……ぉぉぉぉおおおおおお!」
「……ぁぁぁあああああああ!」
剣と剣のぶつかり合い。衝撃を、電撃を、超えろ。
「ああああああああ!!!!」
生命の限界を、一閃に。
衝突、その瞬間三つの剣は、粉々に砕けた。
「武器が耐えられなかったか――」
「ハア、ハア……」
全身に――力が入らない……倒れ――
俺が倒れた先は、ユイの胸の中だった。
「お疲れ様、シンくん」
「それで、ブレイン、彼は――」
「合格、それでいいでしょう――ですが、2ndではなく、1stとして」
「そうだねぇ……2ndにしては強すぎる――。訓練兵以上の強さだとは思っていたけど、これほどとは――」
「最後の連撃、この男は未来が見えているのかというような動きをしていた。それに彼の眼が赤く光ったとき、に変わった……一体何者なんだ――」
「まったくユイ、君はなんて子を魅了したんだ――いや、好きになったんだ。」
「えへへ……」