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第4話 あんな可愛い子と別れるって、どういうことなんだろう?

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20

 もうすぐ夏休みというある日の金曜日、その時も私と明彦が部室で二人っきりになった。もう夕方になっていて、陽も暮れかかっていた。

「ベラスケスの『宮廷の侍女たち』を見にプラド美術館に行きたいわね」と彼に言う。
「ぼくも行きたいですよ、プラド。バイトで旅費を貯めて来年ぐらいに行こうかなあ」

 私はニコッと笑って「あら、うちも来年の夏ぐらいに行きたいなって思ってて、貯金してるんや」と彼の顔を見た。「ねえねえ、明彦、うちと一緒にプラド行こう?どう?私と一緒じゃダメ?」私たちはベンチシートに隣同士で座っていた。私は明彦に顔を寄せてボソッとたずねてみた。ドキドキした。

「いいですよ、雅子さんとヨーロッパ旅行なんて楽しそうだ。でも、ぼくで良いんですか?旅のお供が?」
「明彦とやさかい一緒に行きたいねん」
「ぼくとだからスペインに?」
「そう。明彦とだから行きたいのよ。あ、もう日ぃ暮れてるわぁ。遅くなちゃったね。明彦、この後予定ある?」と言った。今日は特別サービス、いつにもまして京都弁の出現頻度を多くした。

「なあ、これから、明彦、居酒屋に飲みに行こ」
「いいですよ、雅子さん」
「そのさんづけ、止めて。雅子でええわ。じゃあ、決まりね。神楽坂、上がったとこにええ居酒屋があるのよ。うちのマンションの近くなんだけど」私のマンションの近くよ?誘い方、際どいかしら?
「わかりました。行きましょう。じゃあ、雅子って呼びますよ。実は、雅子、その雅子の京都弁、ゾクゾクしちゃうんですよ」

「感づいとったわ。うちが方言で喋るとうちの顔を見てモジモジするんやもの。キミは標準語しか話さへんものね。物珍しいのかしらね?それで、どうゾクゾクしとったん?性的にゾクゾクしたん?」と大胆なことを私は言ってしまう。
「そ、そうです、実は・・・」
「エッチな男の子ねぇ?」
「だって、雅子、可愛い顔してるし、ボイッシュだし」
「あら、おおきに。キミのタイプなん?うち?」
「ハッキリいってそうです」

「私、年上よ?」
「学年が一つ違うだけでしょう?それに同じ年生まれで、数ヶ月しか生まれた月は違わないでしょう?じゃあ、雅子はどうなんです?ぼくのことどう思っているんです?」
「直球で聞くわね。うちもキミのこと、タイプよ」
「うれしいです。じゃあ、ぼくたち、付き合っちゃいませんか?」

 え?ええええ?「もっとすごい直球でくるわね。ええよ、初めてあってから、明彦が好きやってん。って、私、すごいこといってるね?」自分で言っていて恥ずかしい。顔が火照る。
「うれしいです。ぼくは最初に会ってから雅子が好きでした」
「今度は私がゾクゾクするわ。ああ、もっと言って」
「ぼくは雅子が好きです」

「ちょっと待って。明彦、キミ、付き合っている子がいるんじゃないの?」あの子はどうしたのよ?私、二股かけられるような女じゃないわよ?
「実は、高校三年の時から高校の同期の友人の1歳年下の妹と付き合ってました。でも、別れちゃって。今は、付き合っている女性はいません」え~、ウソついてない?あの合格発表の時の可愛い子とは別れちゃったの?あの子は友達の妹だったの?本当に?

「本当?今は誰とも付き合ってないの?」
「ええ、いろいろあって、今年の2月に別れちゃったんですよ。その話は・・・その内します」あら?結構深刻そうなことなのかな?立ち入って聞いて良いような感じじゃないわ。
「ええわ。今はその話を聞かんとおくわ」
「雅子、ありがとう。ちょっと込み入っているんですよ」
「了解!ほな、神楽坂のうちの知ってる居酒屋に行きまひょ」

 だけど、気になる。あんな可愛い子と別れるってどういうことなんだろう?気になるなあ。

 気になる、気になる、気になる、気になる、気になる、気になるぅ!


※未成年の飲酒シーンが書かれてあります。
※この物語は性描写や飲酒、喫煙シーンを含みます。
※この物語は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。


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《《20世紀のいつか、雅子大学3、明彦大学2、良子大学1》》
 もうすぐ夏休みというある日の金曜日、その時も私と明彦が部室で二人っきりになった。もう夕方になっていて、陽も暮れかかっていた。
「ベラスケスの『宮廷の侍女たち』を見にプラド美術館に行きたいわね」と彼に言う。
「ぼくも行きたいですよ、プラド。バイトで旅費を貯めて来年ぐらいに行こうかなあ」
 私はニコッと笑って「あら、うちも来年の夏ぐらいに行きたいなって思ってて、貯金してるんや」と彼の顔を見た。「ねえねえ、明彦、うちと一緒にプラド行こう?どう?私と一緒じゃダメ?」私たちはベンチシートに隣同士で座っていた。私は明彦に顔を寄せてボソッとたずねてみた。ドキドキした。
「いいですよ、雅子さんとヨーロッパ旅行なんて楽しそうだ。でも、ぼくで良いんですか?旅のお供が?」
「明彦とやさかい一緒に行きたいねん」
「ぼくとだからスペインに?」
「そう。明彦とだから行きたいのよ。あ、もう日ぃ暮れてるわぁ。遅くなちゃったね。明彦、この後予定ある?」と言った。今日は特別サービス、いつにもまして京都弁の出現頻度を多くした。
「なあ、これから、明彦、居酒屋に飲みに行こ」
「いいですよ、雅子さん」
「そのさんづけ、止めて。雅子でええわ。じゃあ、決まりね。神楽坂、上がったとこにええ居酒屋があるのよ。うちのマンションの近くなんだけど」私のマンションの近くよ?誘い方、際どいかしら?
「わかりました。行きましょう。じゃあ、雅子って呼びますよ。実は、雅子、その雅子の京都弁、ゾクゾクしちゃうんですよ」
「感づいとったわ。うちが方言で喋るとうちの顔を見てモジモジするんやもの。キミは標準語しか話さへんものね。物珍しいのかしらね?それで、どうゾクゾクしとったん?性的にゾクゾクしたん?」と大胆なことを私は言ってしまう。
「そ、そうです、実は・・・」
「エッチな男の子ねぇ?」
「だって、雅子、可愛い顔してるし、ボイッシュだし」
「あら、おおきに。キミのタイプなん?うち?」
「ハッキリいってそうです」
「私、年上よ?」
「学年が一つ違うだけでしょう?それに同じ年生まれで、数ヶ月しか生まれた月は違わないでしょう?じゃあ、雅子はどうなんです?ぼくのことどう思っているんです?」
「直球で聞くわね。うちもキミのこと、タイプよ」
「うれしいです。じゃあ、ぼくたち、付き合っちゃいませんか?」
 え?ええええ?「もっとすごい直球でくるわね。ええよ、初めてあってから、明彦が好きやってん。って、私、すごいこといってるね?」自分で言っていて恥ずかしい。顔が火照る。
「うれしいです。ぼくは最初に会ってから雅子が好きでした」
「今度は私がゾクゾクするわ。ああ、もっと言って」
「ぼくは雅子が好きです」
「ちょっと待って。明彦、キミ、付き合っている子がいるんじゃないの?」あの子はどうしたのよ?私、二股かけられるような女じゃないわよ?
「実は、高校三年の時から高校の同期の友人の1歳年下の妹と付き合ってました。でも、別れちゃって。今は、付き合っている女性はいません」え~、ウソついてない?あの合格発表の時の可愛い子とは別れちゃったの?あの子は友達の妹だったの?本当に?
「本当?今は誰とも付き合ってないの?」
「ええ、いろいろあって、今年の2月に別れちゃったんですよ。その話は・・・その内します」あら?結構深刻そうなことなのかな?立ち入って聞いて良いような感じじゃないわ。
「ええわ。今はその話を聞かんとおくわ」
「雅子、ありがとう。ちょっと込み入っているんですよ」
「了解!ほな、神楽坂のうちの知ってる居酒屋に行きまひょ」
 だけど、気になる。あんな可愛い子と別れるってどういうことなんだろう?気になるなあ。
 気になる、気になる、気になる、気になる、気になる、気になるぅ!
※未成年の飲酒シーンが書かれてあります。
※この物語は性描写や飲酒、喫煙シーンを含みます。
※この物語は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。