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#4

ー/ー



 バンは言われるがままにアクセルを踏むマイクにより物凄いスピードで進んで行く。

「えっと、こっち裏ルートでしたっけ⁈」

「合ってるからもっとスピード出せ!」

 前に乗り出して来るプロも明らかに焦っている。
 追手などと言っていた。

「やべぇ来たぞ!」

 その声と共にサイドミラーを確認するマイク。
 そこには明らかに追って来ている車が写っていた。

「はぁ、はぁ……っ」

 その車から天窓を開けて一人のビヨンドが姿を現す。
 髪の長い女のようだが左腕をこちらに向けていた。

「何を……?」

 正直マイクはビヨンドの事を何も知らない。
 ただ自分たちの住む場所を奪った存在という認識しか無かった。
 だからこそ何をして来るのか、その得体の知れぬ恐ろしさに全身が包まれていた。
 そして遂にビヨンドの女は行動に出る。

「なっ⁈」

 なんとこちらに向けた左腕から赤黒い弾丸のようなものを発射したのだ。
 その弾丸は一直線にマイクが運転するバンへ向かって来る。

「避けろ避けろっ!」

「どうやって……!」

 そして次の瞬間、弾丸はバンの下の方に思い切り着弾してしまい大爆発を起こした。
 宙を舞い凹転するバン、窓から見える景色が変わって行く様子を見たマイクは衝撃を受けるまで反応が出来なかった。

「がはぁっ……!」

 凹転したバンはそのまま坂を転がってしまい何もない所に着地してしまう。
 あまりの激痛に動けないマイク。
 ガスマスクが外れなかったのは不幸中の幸いだろうか。

「ヤバい、早くズラかるぞ……!」

 怪我の少なかったジョンおじさんがマイクを外に引っ張り出す。
 そして外の現状を見たマイクは衝撃を受けていた。

「おぉぉぉっ!」

 プロ二人が拳銃を持ち追手のビヨンドが乗っている車を撃っているのだ。
 そしてマイク達に告げる。

「この女は任せた、持って先に裏ルートから出ろ!」

 そう言われたジョンおじさんは慌てて少女を抱えマイクと共に歩き出す。
 しかしマイクは怪我が酷くマトモに歩けない。

 ***

 ひとまず近くの裏路地に逃げた二人と少女。
 ジョンおじさんはマイクの心配をする。

「おい大丈夫か⁈」

「何とか生きてますけど……っ」

 その様子を見ている少女。
 彼女のある違和感にマイクは気付いた。

「あれ、君……怪我は?」

 なんと少女は全く怪我をしていないのだ。
 運転手であるマイクの怪我が大きいのはもちろん、少女と共に後部にいたプロたちもある程度の血は流していた。

「んんっ……」

 何か言いたげな少女。
 マイクはこのような事態になるとは思ってもいなかったため彼女に謝った。

「ごめん、俺こんな事になるなんて思わなかったんだ……巻き込んじゃってごめん……」

 そして少女の口に貼られていたガムテープを剥がす。

「おい何やってんだ……⁈」

 ジョンおじさんも焦るがマイクを止められなかった。

「っ……⁈」

 少女も驚いているがマイクの表情を見て状況を察した。
 彼らに悪気はないのだ。

「あなた、もしかして……」

「……っ?」

 すると少女はマイクを見て何かに気付いたらしい。
 マイクは彼女が何を言うのか少し気になった、しかしそのタイミングで追手がここに現れるのだ。

「はぁっ、追い付いたぞ……!」

 短い茶髪をした背の高い男性ビヨンドが路地裏に現れる。
 そして少女を見てマイク達に告げた。

「大人しくテレサを返せ、そうすりゃ今回は警告だけで済ましてやる」

 その少女はテレサと呼ばれた。
 マイク達を脅すように右腕に赤黒いエネルギーを纏わせる。
 そしてテレサと呼ばれた少女はその男に伝える。

「待ってサムエル、この人は……」

 マイクを指して言ったようだが最後まで言い切る前にジョンおじさんが恐れてしまう。

「うわぁぁぁっ!」

 慌ててその場から走って逃げようとしたジョンおじさん。
 それを見たサムエルと呼ばれた男はビヨンド特有の能力、エレメントを発動する。

「待てよっ……!」

 右手を赤黒い触手のように変形させジョンおじさんに向かって伸ばす。
 それを見たマイクは危機を察した。

「ダメだ……っ!」

 その瞬間、脳裏に浮かんだのはダスト・ショックの時に見知らぬ子供を助けた父親の姿。
 その影響で彼は死んだ、しかしDNAは抗えなかった。

「〜っ!」

 慌ててマイクは触手とジョンおじさんの間に割り込んだ。
 それを見たサムエルは驚いた表情をしていたがもう遅い。

「がはっ……!」

 マイクはその触手に背中を思い切り貫かれてしまったのだ、更にその衝撃でガスマスクも外れてしまう。

「やべっ……」

「ちょっとサムエル!」

 焦るサムエルと彼を咎めるテレサ。

「脅しだけのつもりだったんだ……っ、あぁ待てっ!」

 その隙にジョンおじさんには逃げられてしまう。
 その場に残されたのは傷だらけのマイクだけだった。

「かっ、かはぁっ……!」

 汚染物質が大量に馴染んだ空気を吸い込んでしまうマイク。
 その体はどんどん侵食されてしまっていた。

「ヤバい、これ助からないぞ……事件になっちまうっ」

 焦るサムエル。
 しかし彼を他所にテレサは冷静だった。

「いや、急げばまだ助かる」

「何言ってんだ、この状態じゃ人間はもう……!」

 それでもテレサは倒れるマイクの頭を優しく撫でて伝えるのだった。

「あなたは大丈夫、だって私と……」

 その言葉を最後にマイクの意識は途絶えてしまった。
 もう死ぬのだろうか、その覚悟だった。





 次の瞬間、意識に記憶のようなものが流れて来る。
 それは確かにマイクにも覚えのある記憶だった。

『はい、チクっとするよ〜』

 幼い頃の記憶だ。
 よく病院に行って採血など検査をされていた。

「確か小さい頃は体が弱くて……定期的に検査してたっけ、でも何で今……?」

 しかし何故今その記憶を思い出すのだろうか。
 走馬灯のようなものなのなだろうか。

『マイク、もうこれで貴方は好きに生きられるから……』

 そして病院での長い検査が終わり元気になった頃、母親が最後の検診の後に言った事も思い出す。

「母さん……? 何その顔?」

 あの時は回復した嬉しさでよく分かっていなかったが母親の表情が単なる嬉しさだけではない、罪悪感も覚えられるような複雑な表情だったのだ。

「え、え……っ⁈」

 すると次の瞬間、知らない記憶が流れ込んで来た。
 赤黒い空間と蒼い空間が入り混じり世界が汚染されて行く様子。
 これはダスト・ショックなのだろうか。
 いや、それとも。

「うわぁぁぁっ!」

 その禍々しい空間の中にマイクは吸い込まれて行ってしまった。

 ***

「……はっ」

 そして目を覚ましたマイク。
 見知らぬ部屋の中でボロいベッドに寝かされていた。

「え、どこ……?」

 ふと右腕を見ると点滴の注射が刺されていた。
 管の先を見ると血液パックのようなものが。
 輸血をされている事が分かる。

「えっ、えっ……⁈」

 訳が分からない。
 あれからどうなったのだろうか。
 背中から胸まで貫かれた記憶もある、しかしそのような穴は確認できない。

「あ、起きた?」

 するとそこへテレサがやって来る。
 マイクの様子を見た彼女は少し気怠そうな目をして少しだけ嬉しさを表した。

「何で……?」

 テレサの顔を見たマイクは衝撃を受ける。
 彼女はビヨンドのはずだ、という事はあれから自分はまさか。

「まぁ慌てるのも無理ないよね、だって汚染区域にガスマスク無しで居るんだもん」

 その言葉を聞いたマイクは更に慌ててしまう。
 顔を手で触ってみるがガスマスクはない。
 そしてテレサも居るという事はここは汚染区域。

「何で俺、ガスマスク無しで……?」

「ショックだと思うけど貴方は……」

 そして次のテレサの言葉を聞いたマイクはショックのあまりに部屋から飛び出してしまう。
 その際に輸血の途中であった注射針を外し慌てて外に出たのだ。

「っ……!」

 廊下に出た所でサムエルと遭遇する。
 しかしマイクは彼の事も無視した。

「うおっ、お前どこに……⁈」

 するとテレサが出て来てサムエルに告げた。

「彼をお願い、現実が受け入れられないみたいなの」

「はぁ、任せろ」

 そしてサムエルはマイクを追いかけて行った。





 汚染区域内を走るマイク。
 向こう側に聳える壁の形を見て実感する、やはりここは内側なのだ。

「あり得ない、あり得ないっ……!」

 そして汚染区域と外界を繋ぐ出入り口を見つけるマイクはそのまま外へ飛び出して行った。

「おい待て!」

 門番とも言える監視員が飛び出して来たマイクを止めようとするが振り切って走る。
 しかしマイクはすぐに違和感に気付いた。

「がはぁっ……⁈」

 外の世界、つまり今まで自分が暮らしていた世界の空気を吸った途端に目眩が起こったのだ。
 立っていられなくなりその場に倒れてしまう。

「ぐっ、はぁっ……!」

 もがき苦しむマイクに近寄る監視員。
 彼はこのような事を口にした。

「何を血迷ったんだガスマスクも着けずに、ビヨンドが外の空気吸ったらこうなるに決まってるだろ」

 彼はマイクを"ビヨンド"だと言った。
 それは先程のテレサと同じ言葉だ。
 そのまま動けないマイクを捕らえようと手を伸ばして来る監視員。

「(そんなっ、ビヨンドになっちまったんなら母さんに……!)」

 母親に何もしてやる事が出来ない、何よりもそれが不安だった。
 脳裏には母親との記憶がフラッシュバックしてしまう、最後まで分かり合えず喧嘩をしてしまっていた事を今更後悔してしまっていた。
 それでも尚、監視員は手を伸ばし自分を化け物のように捕らえようとして来る。
 するとそこへ。

「おぉっ!」

 赤黒い触手が間に割り込んで来た。
 そのまま監視員が怯んだ隙にマイクを抱える人物。
 彼は急いで汚染区域に戻って行った。

「えっ、誰っ……⁈」

 逆に汚染区域の空気を吸った事で回復してきたマイクはようやく喋れるようになった。
 そしてマイクを助けた人物、サムエルはガスマスクを外して言った。

「ごめんな、ガスマスク取りに行ってて遅くなった」

 そしてマイクは改めて現状を理解してしまう。
 自分がここにいる理由、こうなってしまった原因を。

「ウソだ、本当に俺……?」

 絶望するマイクを抱えたままサムエルは告げる。
 同情するような様子でマイクを憐れんだ。

「気の毒だが、お前は極めて珍しいパターンだ」

 そして彼の陥っている状況を改めて口にした。

「人間からビヨンドに変わったっていうな……」

 テレサもそう言った。
 何故そうなってしまったのか分からない。
 しかし今のマイクの脳裏にはもう二度と会えないかも知れない母親の姿だけが映っていた。

「そんな、母さん……っ!」

 そして二人はそのままビヨンド達が暮らす汚染区域に進んで行くのである。
 母親のためとは言え犯罪に手を染めこうなってしまった事を後悔するマイクだけが在った。





TO BE CONTINUED……


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「えっと、こっち裏ルートでしたっけ⁈」
「合ってるからもっとスピード出せ!」
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「やべぇ来たぞ!」
 その声と共にサイドミラーを確認するマイク。
 そこには明らかに追って来ている車が写っていた。
「はぁ、はぁ……っ」
 その車から天窓を開けて一人のビヨンドが姿を現す。
 髪の長い女のようだが左腕をこちらに向けていた。
「何を……?」
 正直マイクはビヨンドの事を何も知らない。
 ただ自分たちの住む場所を奪った存在という認識しか無かった。
 だからこそ何をして来るのか、その得体の知れぬ恐ろしさに全身が包まれていた。
 そして遂にビヨンドの女は行動に出る。
「なっ⁈」
 なんとこちらに向けた左腕から赤黒い弾丸のようなものを発射したのだ。
 その弾丸は一直線にマイクが運転するバンへ向かって来る。
「避けろ避けろっ!」
「どうやって……!」
 そして次の瞬間、弾丸はバンの下の方に思い切り着弾してしまい大爆発を起こした。
 宙を舞い凹転するバン、窓から見える景色が変わって行く様子を見たマイクは衝撃を受けるまで反応が出来なかった。
「がはぁっ……!」
 凹転したバンはそのまま坂を転がってしまい何もない所に着地してしまう。
 あまりの激痛に動けないマイク。
 ガスマスクが外れなかったのは不幸中の幸いだろうか。
「ヤバい、早くズラかるぞ……!」
 怪我の少なかったジョンおじさんがマイクを外に引っ張り出す。
 そして外の現状を見たマイクは衝撃を受けていた。
「おぉぉぉっ!」
 プロ二人が拳銃を持ち追手のビヨンドが乗っている車を撃っているのだ。
 そしてマイク達に告げる。
「この女は任せた、持って先に裏ルートから出ろ!」
 そう言われたジョンおじさんは慌てて少女を抱えマイクと共に歩き出す。
 しかしマイクは怪我が酷くマトモに歩けない。
 ***
 ひとまず近くの裏路地に逃げた二人と少女。
 ジョンおじさんはマイクの心配をする。
「おい大丈夫か⁈」
「何とか生きてますけど……っ」
 その様子を見ている少女。
 彼女のある違和感にマイクは気付いた。
「あれ、君……怪我は?」
 なんと少女は全く怪我をしていないのだ。
 運転手であるマイクの怪我が大きいのはもちろん、少女と共に後部にいたプロたちもある程度の血は流していた。
「んんっ……」
 何か言いたげな少女。
 マイクはこのような事態になるとは思ってもいなかったため彼女に謝った。
「ごめん、俺こんな事になるなんて思わなかったんだ……巻き込んじゃってごめん……」
 そして少女の口に貼られていたガムテープを剥がす。
「おい何やってんだ……⁈」
 ジョンおじさんも焦るがマイクを止められなかった。
「っ……⁈」
 少女も驚いているがマイクの表情を見て状況を察した。
 彼らに悪気はないのだ。
「あなた、もしかして……」
「……っ?」
 すると少女はマイクを見て何かに気付いたらしい。
 マイクは彼女が何を言うのか少し気になった、しかしそのタイミングで追手がここに現れるのだ。
「はぁっ、追い付いたぞ……!」
 短い茶髪をした背の高い男性ビヨンドが路地裏に現れる。
 そして少女を見てマイク達に告げた。
「大人しくテレサを返せ、そうすりゃ今回は警告だけで済ましてやる」
 その少女はテレサと呼ばれた。
 マイク達を脅すように右腕に赤黒いエネルギーを纏わせる。
 そしてテレサと呼ばれた少女はその男に伝える。
「待ってサムエル、この人は……」
 マイクを指して言ったようだが最後まで言い切る前にジョンおじさんが恐れてしまう。
「うわぁぁぁっ!」
 慌ててその場から走って逃げようとしたジョンおじさん。
 それを見たサムエルと呼ばれた男はビヨンド特有の能力、エレメントを発動する。
「待てよっ……!」
 右手を赤黒い触手のように変形させジョンおじさんに向かって伸ばす。
 それを見たマイクは危機を察した。
「ダメだ……っ!」
 その瞬間、脳裏に浮かんだのはダスト・ショックの時に見知らぬ子供を助けた父親の姿。
 その影響で彼は死んだ、しかしDNAは抗えなかった。
「〜っ!」
 慌ててマイクは触手とジョンおじさんの間に割り込んだ。
 それを見たサムエルは驚いた表情をしていたがもう遅い。
「がはっ……!」
 マイクはその触手に背中を思い切り貫かれてしまったのだ、更にその衝撃でガスマスクも外れてしまう。
「やべっ……」
「ちょっとサムエル!」
 焦るサムエルと彼を咎めるテレサ。
「脅しだけのつもりだったんだ……っ、あぁ待てっ!」
 その隙にジョンおじさんには逃げられてしまう。
 その場に残されたのは傷だらけのマイクだけだった。
「かっ、かはぁっ……!」
 汚染物質が大量に馴染んだ空気を吸い込んでしまうマイク。
 その体はどんどん侵食されてしまっていた。
「ヤバい、これ助からないぞ……事件になっちまうっ」
 焦るサムエル。
 しかし彼を他所にテレサは冷静だった。
「いや、急げばまだ助かる」
「何言ってんだ、この状態じゃ人間はもう……!」
 それでもテレサは倒れるマイクの頭を優しく撫でて伝えるのだった。
「あなたは大丈夫、だって私と……」
 その言葉を最後にマイクの意識は途絶えてしまった。
 もう死ぬのだろうか、その覚悟だった。
 次の瞬間、意識に記憶のようなものが流れて来る。
 それは確かにマイクにも覚えのある記憶だった。
『はい、チクっとするよ〜』
 幼い頃の記憶だ。
 よく病院に行って採血など検査をされていた。
「確か小さい頃は体が弱くて……定期的に検査してたっけ、でも何で今……?」
 しかし何故今その記憶を思い出すのだろうか。
 走馬灯のようなものなのなだろうか。
『マイク、もうこれで貴方は好きに生きられるから……』
 そして病院での長い検査が終わり元気になった頃、母親が最後の検診の後に言った事も思い出す。
「母さん……? 何その顔?」
 あの時は回復した嬉しさでよく分かっていなかったが母親の表情が単なる嬉しさだけではない、罪悪感も覚えられるような複雑な表情だったのだ。
「え、え……っ⁈」
 すると次の瞬間、知らない記憶が流れ込んで来た。
 赤黒い空間と蒼い空間が入り混じり世界が汚染されて行く様子。
 これはダスト・ショックなのだろうか。
 いや、それとも。
「うわぁぁぁっ!」
 その禍々しい空間の中にマイクは吸い込まれて行ってしまった。
 ***
「……はっ」
 そして目を覚ましたマイク。
 見知らぬ部屋の中でボロいベッドに寝かされていた。
「え、どこ……?」
 ふと右腕を見ると点滴の注射が刺されていた。
 管の先を見ると血液パックのようなものが。
 輸血をされている事が分かる。
「えっ、えっ……⁈」
 訳が分からない。
 あれからどうなったのだろうか。
 背中から胸まで貫かれた記憶もある、しかしそのような穴は確認できない。
「あ、起きた?」
 するとそこへテレサがやって来る。
 マイクの様子を見た彼女は少し気怠そうな目をして少しだけ嬉しさを表した。
「何で……?」
 テレサの顔を見たマイクは衝撃を受ける。
 彼女はビヨンドのはずだ、という事はあれから自分はまさか。
「まぁ慌てるのも無理ないよね、だって汚染区域にガスマスク無しで居るんだもん」
 その言葉を聞いたマイクは更に慌ててしまう。
 顔を手で触ってみるがガスマスクはない。
 そしてテレサも居るという事はここは汚染区域。
「何で俺、ガスマスク無しで……?」
「ショックだと思うけど貴方は……」
 そして次のテレサの言葉を聞いたマイクはショックのあまりに部屋から飛び出してしまう。
 その際に輸血の途中であった注射針を外し慌てて外に出たのだ。
「っ……!」
 廊下に出た所でサムエルと遭遇する。
 しかしマイクは彼の事も無視した。
「うおっ、お前どこに……⁈」
 するとテレサが出て来てサムエルに告げた。
「彼をお願い、現実が受け入れられないみたいなの」
「はぁ、任せろ」
 そしてサムエルはマイクを追いかけて行った。
 汚染区域内を走るマイク。
 向こう側に聳える壁の形を見て実感する、やはりここは内側なのだ。
「あり得ない、あり得ないっ……!」
 そして汚染区域と外界を繋ぐ出入り口を見つけるマイクはそのまま外へ飛び出して行った。
「おい待て!」
 門番とも言える監視員が飛び出して来たマイクを止めようとするが振り切って走る。
 しかしマイクはすぐに違和感に気付いた。
「がはぁっ……⁈」
 外の世界、つまり今まで自分が暮らしていた世界の空気を吸った途端に目眩が起こったのだ。
 立っていられなくなりその場に倒れてしまう。
「ぐっ、はぁっ……!」
 もがき苦しむマイクに近寄る監視員。
 彼はこのような事を口にした。
「何を血迷ったんだガスマスクも着けずに、ビヨンドが外の空気吸ったらこうなるに決まってるだろ」
 彼はマイクを"ビヨンド"だと言った。
 それは先程のテレサと同じ言葉だ。
 そのまま動けないマイクを捕らえようと手を伸ばして来る監視員。
「(そんなっ、ビヨンドになっちまったんなら母さんに……!)」
 母親に何もしてやる事が出来ない、何よりもそれが不安だった。
 脳裏には母親との記憶がフラッシュバックしてしまう、最後まで分かり合えず喧嘩をしてしまっていた事を今更後悔してしまっていた。
 それでも尚、監視員は手を伸ばし自分を化け物のように捕らえようとして来る。
 するとそこへ。
「おぉっ!」
 赤黒い触手が間に割り込んで来た。
 そのまま監視員が怯んだ隙にマイクを抱える人物。
 彼は急いで汚染区域に戻って行った。
「えっ、誰っ……⁈」
 逆に汚染区域の空気を吸った事で回復してきたマイクはようやく喋れるようになった。
 そしてマイクを助けた人物、サムエルはガスマスクを外して言った。
「ごめんな、ガスマスク取りに行ってて遅くなった」
 そしてマイクは改めて現状を理解してしまう。
 自分がここにいる理由、こうなってしまった原因を。
「ウソだ、本当に俺……?」
 絶望するマイクを抱えたままサムエルは告げる。
 同情するような様子でマイクを憐れんだ。
「気の毒だが、お前は極めて珍しいパターンだ」
 そして彼の陥っている状況を改めて口にした。
「人間からビヨンドに変わったっていうな……」
 テレサもそう言った。
 何故そうなってしまったのか分からない。
 しかし今のマイクの脳裏にはもう二度と会えないかも知れない母親の姿だけが映っていた。
「そんな、母さん……っ!」
 そして二人はそのままビヨンド達が暮らす汚染区域に進んで行くのである。
 母親のためとは言え犯罪に手を染めこうなってしまった事を後悔するマイクだけが在った。
TO BE CONTINUED……