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第56話 「龍虎」

ー/ー



大陸に追いやられた『ヤタガラス』は騒然としていた。

連もいない。ヒカルもいない。

そして進軍を続ける『解放軍』。

こうしているうちにも、いくつかの民族政府は『解放軍』によって“解放”され、各地の『親衛隊』は敗走を繰り返していた。

結局、連なしでは彼らに成す術などなかったのだ。

いや、まず『解放軍』が本気を出していなかったからこそ、今までうまく行っていただけなのかもしれない。

これまで積み上げてきた権威が、少しずつ瓦解しつつあった。




そのような中、未だに目を覚まさない連を乗せたバンは、まだ攻め落とされていない拠点にたどり着き、ヘリコプターに乗り換えると、そのまま彼らはまだ戦場になっていない欧州へとたどり着いた。

その間にも、いくつもの犠牲があった。

『解放軍』の対空攻撃を妨害するために決死の奇襲攻撃を行った者たちもいた。

対空攻撃から連の乗るヘリコプターを守るために、いくつものヘリコプターが連の乗るヘリコプターを囲い込み、盾となった。

誰もが、“希望の灯”を消さまいと、その命を投げ出した。

そう、彼こそが、真の平和を世界にもたらしてくれる存在なのだから。




「...!」

連は目を覚ました。

そこには、騒然とする軍たちと心配そうに自分を見守るサラ、ジュン、気狐の姿があった。

「連!!よかった...!!」

「...サラ」

「お前...体は大丈夫なのか...!?」

「...ジュン。ああ、大丈夫だ。しかし、騒がしいな。どんな状況だ」

連がそう言うと、2人はうつむいた。

代わりに気狐が答える。

「戦じゃ。『解放軍』は我が軍を次々と蹂躙して回っておる」

「...そうか」

連は目線を数秒落としたあと、顔を上げ、そのまま立ち上がった。

「お、おい!連!そのまま行くつもりかよ...!」

「オマエたちも、来てくれ。手を借りたい」

こうなってしまうと、彼らにはどうしようもない。

2人は連の意志の固さをよく分かっている。

「...分かった。でも無理はしないこと。いい?」

「ああ」

こうして、連らはそのまま戦場へと向かって行くのだった。




一方その頃、ティエラとT・ユカ、レオ、イド、その他の軍たちは米軍の施政下にあるカザフ民族政府領内で補給を受けていた。

「さて、そろそろ戦車隊が欧州の防衛線を突破しているだろう。歩兵だけでもあそこまで追いつめられるんだ。部隊一つ分の戦車を送られればひとたまりもないはずだ」

ティエラは水分補給をしながらそう言った。

と、そのときだった。

「報告です!!」

一人の軍がティエラらの元へと走ってきた。

「どうした?」

T・ユカは軍に報告を求める。

「戦車隊が......全滅しました!!」

「......は?」

これにはティエラも動揺を隠せなかった。

「......なぜだ?歩兵だけでもあんなに苦戦していたアイツらがどうやって─」

「連です」

「連だと?アイツ一人でなにができる」

「それが...我々にもなにがなんだか...」

軍が言うには、戦車隊からの通信で、攻撃を受けている際に双眼鏡でどんな攻撃を行っているのかを見ていると、連だけが姿を見せていたということだ。

「...あの野郎、ふざけやがって...!戦いをやめたがっていたんじゃなかったのか...!さては俺たちを騙しやがったな...!」

ティエラは苛立ちと怒りをあらわにし、立ち上がる。

「休憩は終わりだ。さっさと行くぞ。連は、必ず殺す。この...俺の手で...!」

そう言うと、ティエラはあの“柄”を顔の前に掲げるのだった。




「戦車隊は全滅したみたいね」

サラは無線越しにそう言った。

「でも油断はできねぇぞ。すぐ次の攻撃が来そうだ。ティエラの部隊が動き始めやがった」

ジュンも無線越しにそう伝える。

サラの能力は千里眼だが、ジュンの場合は動物との『視覚共有』。
現在は渡り鳥の視覚を共有し、ティエラらの真上を通過したときの彼らの様子を伝えている。

「分かった。2人はもう帰ってもいい」

「!?何を─」

「さっきので分かっただろう。今のオレなら、部隊一つ壊滅させることなど造作もない」

「...そうね。でも、いざって時のための助けはいるわ」

「分かっている。そのためにオマエたちは部隊を準備・待機させておくんだ。あまり近くで待機させれば、オマエたちにも危害が及ぶ可能性がある」

「...分かった。サラ、行くぞ」

「うん......」

こうして、2人は戦場から少し離れた地域にいる部隊の拠点へと向かって行った。




戦車隊が全滅したとされる場所に近づいてきたころ...

突然ティエラが足を止めた。

「どうした?ティエラ」

「ユカ。ここからは二手に分かれるぞ」

「どう分かれるんだ?」

「俺、と、お前らだ」

「!?どういうつもりだお前!」

T・ユカはティエラの発言に驚愕した。

「俺は連を殺す。今のままでは皆全滅だ。だからまず連を殺し、その後進軍を仕掛ける」

「お前一人で連を......!?」

ティエラはうなずいた。

「殺すとまでは行かなくとも、今の俺なら、ヤツを退けることはできるだろう。これがあればな」

ティエラはソウル・ブラスターをT・ユカに見せた。

「それに、今の俺には、お前らは邪魔だ」

「なんだと?」

「冗談ではない。死ぬぞ」

「っ!!」

T・ユカはティエラの威圧感に圧倒された。

彼の発言は確かに本気のようだ。

「何か...策はあるんだろうな?」

「俺はお前ほど無策な人間じゃないぞ。ユカ」

T・ユカはため息をつくと、渋々ティエラの提案を承諾した。

「30分だ。30分でカタをつけなければ向かう」

「いいだろう」

ティエラはT・ユカの条件に応じ、一人、連の元へと向かって行った。




連は荒野の中、待ち続ける。

「さあ...向かってこい...今日で終わりにしてやる...!」

連は自身の掌を見つめ、静かに握りしめた。

数分後...

「!!」

荒野が砂埃を発たせているころ、ある人影が見えてきた。

「一人...!?」

人影は近づいてくるにつれ、だんだんと砂埃も引いていき、姿があらわになってくる。

そして...

「...ティエラ」

「待たせたな。楽しませてやるよ。だから...」

ティエラはソウル・ブラスターを連に向ける。

次の瞬間、連の掌から光弾が一つ、一直線に飛んできた。

(やはりソレイユの幻日か。だが...)

ソウル・ブラスターから刃が顕現した。

(さあ...お前の力を見せてみろ...!)

すると、ティエラはなんと、幻日を真っ二つに斬り裂いた。

背後に飛んでいった2つの幻日のカケラは数秒後、大爆発を起こした。

そして...

「お前も俺を、楽しませてくれ」

2人の死闘が、ついに幕を開けるのだった。


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大陸に追いやられた『ヤタガラス』は騒然としていた。
連もいない。ヒカルもいない。
そして進軍を続ける『解放軍』。
こうしているうちにも、いくつかの民族政府は『解放軍』によって“解放”され、各地の『親衛隊』は敗走を繰り返していた。
結局、連なしでは彼らに成す術などなかったのだ。
いや、まず『解放軍』が本気を出していなかったからこそ、今までうまく行っていただけなのかもしれない。
これまで積み上げてきた権威が、少しずつ瓦解しつつあった。
そのような中、未だに目を覚まさない連を乗せたバンは、まだ攻め落とされていない拠点にたどり着き、ヘリコプターに乗り換えると、そのまま彼らはまだ戦場になっていない欧州へとたどり着いた。
その間にも、いくつもの犠牲があった。
『解放軍』の対空攻撃を妨害するために決死の奇襲攻撃を行った者たちもいた。
対空攻撃から連の乗るヘリコプターを守るために、いくつものヘリコプターが連の乗るヘリコプターを囲い込み、盾となった。
誰もが、“希望の灯”を消さまいと、その命を投げ出した。
そう、彼こそが、真の平和を世界にもたらしてくれる存在なのだから。
「...!」
連は目を覚ました。
そこには、騒然とする軍たちと心配そうに自分を見守るサラ、ジュン、気狐の姿があった。
「連!!よかった...!!」
「...サラ」
「お前...体は大丈夫なのか...!?」
「...ジュン。ああ、大丈夫だ。しかし、騒がしいな。どんな状況だ」
連がそう言うと、2人はうつむいた。
代わりに気狐が答える。
「戦じゃ。『解放軍』は我が軍を次々と蹂躙して回っておる」
「...そうか」
連は目線を数秒落としたあと、顔を上げ、そのまま立ち上がった。
「お、おい!連!そのまま行くつもりかよ...!」
「オマエたちも、来てくれ。手を借りたい」
こうなってしまうと、彼らにはどうしようもない。
2人は連の意志の固さをよく分かっている。
「...分かった。でも無理はしないこと。いい?」
「ああ」
こうして、連らはそのまま戦場へと向かって行くのだった。
一方その頃、ティエラとT・ユカ、レオ、イド、その他の軍たちは米軍の施政下にあるカザフ民族政府領内で補給を受けていた。
「さて、そろそろ戦車隊が欧州の防衛線を突破しているだろう。歩兵だけでもあそこまで追いつめられるんだ。部隊一つ分の戦車を送られればひとたまりもないはずだ」
ティエラは水分補給をしながらそう言った。
と、そのときだった。
「報告です!!」
一人の軍がティエラらの元へと走ってきた。
「どうした?」
T・ユカは軍に報告を求める。
「戦車隊が......全滅しました!!」
「......は?」
これにはティエラも動揺を隠せなかった。
「......なぜだ?歩兵だけでもあんなに苦戦していたアイツらがどうやって─」
「連です」
「連だと?アイツ一人でなにができる」
「それが...我々にもなにがなんだか...」
軍が言うには、戦車隊からの通信で、攻撃を受けている際に双眼鏡でどんな攻撃を行っているのかを見ていると、連だけが姿を見せていたということだ。
「...あの野郎、ふざけやがって...!戦いをやめたがっていたんじゃなかったのか...!さては俺たちを騙しやがったな...!」
ティエラは苛立ちと怒りをあらわにし、立ち上がる。
「休憩は終わりだ。さっさと行くぞ。連は、必ず殺す。この...俺の手で...!」
そう言うと、ティエラはあの“柄”を顔の前に掲げるのだった。
「戦車隊は全滅したみたいね」
サラは無線越しにそう言った。
「でも油断はできねぇぞ。すぐ次の攻撃が来そうだ。ティエラの部隊が動き始めやがった」
ジュンも無線越しにそう伝える。
サラの能力は千里眼だが、ジュンの場合は動物との『視覚共有』。
現在は渡り鳥の視覚を共有し、ティエラらの真上を通過したときの彼らの様子を伝えている。
「分かった。2人はもう帰ってもいい」
「!?何を─」
「さっきので分かっただろう。今のオレなら、部隊一つ壊滅させることなど造作もない」
「...そうね。でも、いざって時のための助けはいるわ」
「分かっている。そのためにオマエたちは部隊を準備・待機させておくんだ。あまり近くで待機させれば、オマエたちにも危害が及ぶ可能性がある」
「...分かった。サラ、行くぞ」
「うん......」
こうして、2人は戦場から少し離れた地域にいる部隊の拠点へと向かって行った。
戦車隊が全滅したとされる場所に近づいてきたころ...
突然ティエラが足を止めた。
「どうした?ティエラ」
「ユカ。ここからは二手に分かれるぞ」
「どう分かれるんだ?」
「俺、と、お前らだ」
「!?どういうつもりだお前!」
T・ユカはティエラの発言に驚愕した。
「俺は連を殺す。今のままでは皆全滅だ。だからまず連を殺し、その後進軍を仕掛ける」
「お前一人で連を......!?」
ティエラはうなずいた。
「殺すとまでは行かなくとも、今の俺なら、ヤツを退けることはできるだろう。これがあればな」
ティエラはソウル・ブラスターをT・ユカに見せた。
「それに、今の俺には、お前らは邪魔だ」
「なんだと?」
「冗談ではない。死ぬぞ」
「っ!!」
T・ユカはティエラの威圧感に圧倒された。
彼の発言は確かに本気のようだ。
「何か...策はあるんだろうな?」
「俺はお前ほど無策な人間じゃないぞ。ユカ」
T・ユカはため息をつくと、渋々ティエラの提案を承諾した。
「30分だ。30分でカタをつけなければ向かう」
「いいだろう」
ティエラはT・ユカの条件に応じ、一人、連の元へと向かって行った。
連は荒野の中、待ち続ける。
「さあ...向かってこい...今日で終わりにしてやる...!」
連は自身の掌を見つめ、静かに握りしめた。
数分後...
「!!」
荒野が砂埃を発たせているころ、ある人影が見えてきた。
「一人...!?」
人影は近づいてくるにつれ、だんだんと砂埃も引いていき、姿があらわになってくる。
そして...
「...ティエラ」
「待たせたな。楽しませてやるよ。だから...」
ティエラはソウル・ブラスターを連に向ける。
次の瞬間、連の掌から光弾が一つ、一直線に飛んできた。
(やはりソレイユの幻日か。だが...)
ソウル・ブラスターから刃が顕現した。
(さあ...お前の力を見せてみろ...!)
すると、ティエラはなんと、幻日を真っ二つに斬り裂いた。
背後に飛んでいった2つの幻日のカケラは数秒後、大爆発を起こした。
そして...
「お前も俺を、楽しませてくれ」
2人の死闘が、ついに幕を開けるのだった。