人を殺した。衝動的に、背を向けた男の頭を灰皿で殴った。倒れ込んだ後も呻いていたが、しばらくすると動かなくなった。
始末をするなら埋め屋に限る。生きているもの以外ならば何でも埋めてくれる。何を埋めたのか、どういう理由なのかは聞かれない。
「生きているものは埋められないですからね」
雨の中、軽トラックを走らせてきた埋め屋はビニールシートに巻かれた死体を横目に念を押す。依頼書をかいて、代金を払う。
「なぜ、生き物はだめなんです?」
好奇心から聞くと、埋め屋が濡れたフードの下で、戻るかもしれないから、と呟いた。
***
『戻るかもしれないから』
その一言が妙に気になって、背筋が続々とする。人を殺してしまったという実感が後から湧き、戻ってくるのではないかという不安に駆られた。
実際、幽霊や呪い返し、復活の薬などは簡単に手に入る。
本当に埋められているか、確かめに報告された場所を見に行った。
そこにはひと一人分が入る穴があるだけで死体は埋められていなかった。
とんぼ返りをして、埋め屋に抗議する。
「高いかね払ってるんだぞ!」
怒鳴り声に物怖じせず、その声を無視するかのように埋め屋が背後をじっと見つめていた。
後ろを振り向く前に、頭に衝撃が走った。
「あーあ、生き物は駄目って言ったのに」
***
「埋めてもらってもいいかね?」
人を殺して血まみれになった男が聞いた。
死んでいることを確認し、埋め屋が頷く。
「半額で良いですよ。既に穴が開いているので」